ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】 作:マイマイ
全員を絶望の淵へと叩き落とそうとする中、一条の光が戦場に降り立つ。
――非情な自分の結末すら受け入れた少年が
「レイジ!!」
「っと……」
いきなり抱きついてくるカグヤにバランスを崩しそうになるが、どうにか堪える。
見ると、カグヤの瞳には大粒の涙が滲んでいる。
「……恐かったんだね」
当然だ、あんな目に遭って恐くないはずがない。
しかし、レイジの言葉にカグヤは首を横に振った。
「違うの……もう一度、レイジに会えて……嬉しかったの……」
「……カグヤ」
「よかった……レイジにまた会えて、本当に……」
「…………」
その言葉に、レイジは優しく彼女を抱きしめ返す。
「レイジ!!」
「……みんな、どうにか無事だったね」
「まあな……それにしても、お前がミュウツーを蹴り飛ばしたのか?」
「まあね」
「まあねって……」
あっけらかんとそう言い放つレイジに、カイリは頬を引きつらせた。
「レイジくん!!」
「おわっ!?」
後ろからの衝撃。
慌てて振り向こうにも、抱きしめられているためにそれも叶わない。
だが、こんな事をする人など確認しなくても誰だかわかる。
「……シロナさん、ご無事でなによりです」
「レイジくんもよく来てくれたわ……やっぱり貴方は私の」
「シロナさん、今はそれどころじゃないみたいですよ」
カグヤを腕の中から降ろし、シロナを優しく引き離しながら……ミュウツーを吹き飛ばした場所を睨みつける。
刹那、瓦礫の山が吹き飛ばされ――ミュウツーが憎悪に満ちた表情をこちらに向けてきた。
「くっ………!」
身構えるカイリ達だが、レイジはそんな彼等を手で制しながら一歩前へ。
そして、暫しミュウツーを見つめてから……こう呟いた。
「………やはりか」
と。
「えっ……?」
「――邪魔ヲスルナラ殺ス!!」
まるで爆発したようなスピードで、ミュウツーがレイジとの間合いを一瞬で詰める。
右手を振り上げ、レイジの華奢な身体を真っ二つにしようとして。
――瞬時に、レイジはミュウツーの真横に移動し、右手を添え力ある言葉を解き放った。
「在るべき世界に還るんだ、ミュウツー!!」
瞬間、今までとは比べものにならない強い光がレイジの手から放たれ、ミュウツーを包み込む。
「グ、ォ、ガ………!」
「よし!!」
「これでミュウツーも元に戻るね!」
何せアルセウスに力を完全解放してもらったのだ、きっとミュウツーだって元に戻してくれただろう。
そう、その場に居た誰もがそう信じていた。
「————やっぱり、もうダメだったか」
……レイジ以外は。
「えっ……?」
「ダメって……何がだよ?」
首を傾げながら聞き返すと、レイジは信じられない事実を口にする。
「もうミュウツーは元には戻らない、アルセウスに力を解放した僕でさえ。
だから、もう……これ以上ミュウツーが苦しまないように――楽にしてあげるしかないんだ」
「なっ———!?」
「そんな……!!」
「……もって五分か。みんな、すぐに倒れている人達をここから避難させるんだ、このままだと戦闘になった時巻き添えを食らってしまうから。
起こせる者は自力で避難してもらって、ポケモン達にも協力をしてもらうんだ!!」
言うやいなや、倒れている者達に向かって走るレイジ。
しかし、一方的にそう言われてカイリは納得できなかった。
「待てよレイジ!! そんな簡単に諦めるなんてお前らしく――」
「これでも、君はそう言えるの?」
そう言ってレイジがカイリに見せたのは、先程ミュウツーの身体に浄化の力を流し込むために添えた右手。
「っ!!?」
それを見て、カイリだけでなくその場に居た全員が息を呑んだ。
……“溶けている”。
ミュウツーの身体に触れたレイジの右手の皮が、ものの見事に溶けていた。
幸いにも薄皮一枚なので痛々しくは映らないものの……それが何を意味するかは、誰もが理解できた。
「……元々ミュウツーは普通の生まれのポケモンじゃない。
それにロキによって散々身体を弄くられた彼はもう……アルセウスの力ですら戻せないまでに、進んでしまっているんだ」
「…………」
「助けたいのは僕だって同じだ。でも……何もかもが手遅れなんだよ」
あの時――自分の力が完全に通らなかった。
その結果、反動として右手が傷ついたのだ。
もちろん本当の意味での“全力”を出せば、あるいは届くかもしれない。
だが……ロキとの戦いがある以上、力の使用は望めない。
「――本当に、それしかないんだな?」
「…………」
ロストのどこか懇願するような問いかけにも、レイジは無情な頷きを返す事しかできない。
それを見て、ロストは寂しげに呟きを漏らす。
「全てを、救う事はできないのだな」
「カイリ、さっさと気絶してるヤツらを叩き起こして避難させるぞ。まともにヤツと戦えるのは、どうやらオレ達だけみたいだからな」
「っ」
悔しそうに、唇を噛み締め拳を握りしめるカイリは、まるで泣くのを精一杯我慢している子供のようだ。
何故助けられないのか、何故救う事ができないのか。
自問は無情な現実を突きつけるだけ、導き出される答えは。
……ミュウツーを救う方法はない、ただそれだけ。
「――わかったよ、レイジ」
内なる怒りも、現実に対して何もできない己の不甲斐なさも、全て蓋をして。
カイリは、ミュウツーを倒すために動き出す。
そして、レイジも全ての決着をつける為に動き出した。
「カグヤ、シロナさん」
「どうしたの?」
「君達2人は、僕と一緒に来てほしい」
「えっ……」
「ミュウツーの事はカイリ達に任せて、僕は――ロキを討つ」
ヴァルハラに視線を向けるレイジ。
全ての元凶を倒さねば、戦いは終わらない。
自らがしてきた事を償わせる為にも、レイジは元凶を討つ決意を固めた。
しかし、自分1人ではあの悪魔には届かない。
だから、彼にとって最も大切な存在である2人に、傍に居てほしいと願ったのだ。
「僕達3人で、あのヴァルハラを落とす。だから、力を貸してほしい」
「……うん。わかったよレイジ」
「わかったわ。レイジくん」
彼の心中を理解し、二つ返事で頷きを返すカグヤとシロナ。
それに――嬉しかった。
そんな大切な戦いに、自分達の力を貸りたいと言ってくれたのが。
心の底から信頼してくれているのがわかったから、嬉しかった。
「はい、レイジ」
「…………」
カグヤの手には、6つのモンスターボールが装着されたボールホルスターが。
「ティナはミュウツーの攻撃を受けてダメージを受けたけど、他のみんなは大丈夫だよ」
――あの時。
カグヤは、ミュウツーの衝撃波が来る前にティナとルギアをボールに戻す事に成功した。
だから、レイジのポケモン達はほぼフルメンバーで戦える。
「カグヤ達のポケモンは?」
「私は……ラティオスとエネコロロ、ムウマージが戦えるよ」
「私はミロカロスとルカリオだけね」
「……薬は?」
「全部切れちゃった」
「そうか……わかった、とにかくどうにかそれで頑張るしかないな」
ボールからルギアを取り出し、場に出す。
「………マスター」
「遅くなってごめんね、ルギア」
「本当だぞまったく……だが、ちゃんと間に合ったから許してやる」
いつも通りの彼女にほっとしつつ、レイジはカグヤ達と共にルギアの背に。
そして、すぐさま最高スピードで大空へと飛翔した。
「しかしマスター、あの鬱陶しいバリアはどうする?」
そうだ、ディアルガの技でも一時的でしか破る事はできなかったバリアをどう突破するというのか。
「ティナ」
その質問には答えず、ボールからティナを出す。
「――ティナ、サイコセイバー」
〈はい〉
指示を受け、光の剣をその手に生み出すティナ。
と、レイジはティナからその内の一対を手に取りルギアに指示を出した。
「ルギア、ヴァルハラの真上まで飛んで」
「むっ……わかった」
すぐさまヴァルハラの真上まで飛び上がるルギア。
「来たぞマスター、それでどうする?」
「そのまま突っ込んで」
『はぁっ!!?』
一体何を言ってくるのだろう彼は、レイジの言葉に全員が素っ頓狂な声を上げた。
しかし、レイジは決して冗談を言っているわけではなかった。
「僕の力でバリアを破るから、ルギアはそのまま突っ込んで内部に侵入するんだ」
「……本当に大丈夫なのか?」
突っ込んだはいいが、バリアに弾かれた……なんて結末は御免こうむる。
だが、レイジは不敵な笑みを浮かべはっきりと言い放つ。
「あんな程度、簡単にぶち壊してやるさ」と。
「わぁ………」
「言うわね……」
〈自信満々なお父様も、素敵です……〉
「わかったわかった、突っ込めばいいのだな?」
「お願いね、ルギア」
「わかっておる。……しかし、本当に大丈夫なのか……?」
ぶつくさと文句を言いながらも、律儀にヴァルハラに向かって真っ直ぐ飛んでいく。
「みんなはルギアの身体に掴まってて!!」
言うやいなや、ルギアの背に立ちサイコセイバーをバリアに向けて突き出した。
「光の剣よ……我が力、我が命に従い、今ここに浄化の力を!!」
力ある言葉、けれどそれはいつもとは違うものだった。
瞬間、サイコセイバーの光は広がり――ルギアの身体を包み込む。
そして、真っ向からバリアとぶつかり合った!!
「ぐ、ぬ、ぁ………!」
プラズマと閃光を撒き散らし、侵入しようとする者を排除しようとする力が、ルギアに襲いかかった。
それは、如何に幻のポケモンと呼ばれる彼女でも消し炭にしてしまう程、強力な熱を孕んでいるが……彼の守護の前では、そんなものはまったく意味のないものだった。
「ぐぅぅぅぅ………!」
「頑張れルギア!!」
痛みはないが、押し出そうとするバリアを突破するのは骨が折れる。
レイジの応援を聞きながら、ルギアは少しずつバリアを抜けていく……。
「もう少しだ!!」
「ぬ、ぐ、うぅぅ………だぁぁぁっ!!!!」
裂帛の気合いを込め、遂にルギアはヴァルハラのバリアを突き抜け――渾身の一撃を繰り出した。
「消えよ!!」
逞しい両の翼から放たれたエアロブラストは、ヴァルハラの分厚い外装を易々と撃ち貫き、内部へと道を作り出す。
間髪入れずにその中へ入り込み、レイジ達はヴァルハラへの侵入を成功させた。
「ここが、ヴァルハラの内部……」
機会仕掛けの壁や地面、近未来的な造りは珍しいのか、カグヤはキョロキョロと忙しなく辺りを見回していた。
「この中に、ロキが居るのね……」
「ルギアありがとう、今はゆっくり休んでいて」
ルギアをボールに戻し、それと同時にサイコセイバーも消し去る。
意識は内側に、このヴァルハラの中に居る人間がどれくらいかを調べようとして……レイジは、ある事実に気がついた。
「………えっ?」
「レイジくん、どうしたの?」
「……人が、殆ど存在していない?」
それだけではなく、ポケモンの気配もこのヴァルハラには存在していない。
この中に居る人間は、レイジ達を除いて……たった2人だけだ。
おまけにポケモンの数はゼロである。
その人間が持っているであろうボールの中には入っていると思われるが……見張りのポケモンまで居ないとは、一体どういう事なのか。
「えっと……ロキが用意した罠、とか?」
「だとしても、見張りを用意しないのはあまりにおかしい」
狡猾なロキの事だ、このヴァルハラに侵入してくるという事はわかっていただろう。
だというのに、どうしてヤツは自分達をすぐに始末しないのか。
それに――どうしてロキは“彼女”だけを残して誰もこの要塞に……。
そこまで考え、レイジは一度思考を中断させる。
「とにかく、今は中央のエリアに急ごう。そこに……ヤツが居る」
「でもレイジ、こういう時はまずエンジンとかぶっ壊して使い物にしない方がいいんじゃないかな?」
「確かに……動力源を破壊してしまえば、これ以上の進行は」
「僕も初めはそのつもりだった、けど……これを今この場所で落とすわけにはいかない。
どこか誰の邪魔にもならない所まで移動させないと、二次災害が起きてしまうからね」
「あ、そっか」
「だから狙うはただ1人……ロキだけだ」
言うやいなや、金属音を響かせながら走り出すレイジ。
慌ててカグヤ達もその後を追った。
「でもレイジ、ミュウツーをカイリ達だけに任せても大丈夫なの!?」
あの常識外な力を見せつけられた以上、カグヤの問いは当然ともいえるもの。
しかし――レイジは何故か悲しげな表情で彼女の問いに答えた。
「ミュウツーはもう勝てないよ、並の相手ならともかく……カイリ達には絶対に勝てない」
「えっ……?」
「さっきミュウツーの力の殆どは封印した、浄化の力で元に戻せない時を考えて、ね」
………。
一方、地上では。
「ゴウカザル、マッハパンチ!!」
「バシャーモ、ブレイズキック!!」
「レジェンド、ほのおのパンチだ!!」
レイジの呪縛を解いたミュウツーを、カイリとケイジ、そしてロストの3人で抑え込んでいた。
先程の一撃により、殆どの者は戦う事ができなくなってしまったのだ。
幸いにもデッドポケモン達も全滅してくれたのだが……それでも事態は良くなったどころか悪くなっている。
まず第一にそれぞれゴウカザル、バシャーモ、そしてレジェンドしかまともに戦えるポケモンがいない事。
もちろんカイリ達の手持ちのいくつかは戦える者が残っているが、皆の避難や傷の手当てなどに当てられて戦いどころではない。
それにいつまたデッドポケモン達が現れるかわからない以上、守りに戦力を割くしかなく……この三体で化け物と化したミュウツーを倒さなくてはならないのだ。
三体同時、それもあらゆる方向からの拳と蹴りの連打にも、ミュウツーは全てを見切り回避していく。
「地面にマッハパンチ!」
ゴウカザルの拳が地面を貫く。
すると削れた地面がミュウツーへと降り注いだ。
しかしそんなものでは止められない、気にした様子もなくミュウツーはゴウカザルへと手を翳し。
後ろから、頭部に強力なブレイズキックを叩き込まれてしまった。
「グッ―――!?」
先程のマッハパンチは単なる囮、わざと隙を見せるための行動だ。
顔から地面を滑りながらも、右手で跳び上がり標的を視界に捉えようとして。
「ブレイブバード!!」
いつの間にか移動していたバシャーモのブレイブバードを、背中からまともに受けてしまった。
「ガ、ァ………!?」
呻き声を上げながら、どうにか空中でバランスを直すミュウツー。
だが、それは圧倒的なまでの隙を生んだ。
「レジェンド、ブラストバーン!!」
融解してしまう程の激しい火柱が、ミュウツーを包み込んだ。
「グ、ォ――ガッ」
(効いている、が……まだ決定打には遠いか)
しかし、とロストは疑問を頭に浮かべる。
確かに今のミュウツーは強い、強いというより規格外と言ってもいい。
ゴウカザル、バシャーモ、そしてレジェンドを同時に相手にしてもまだ余力があるのだから、悪い夢だと思いたいくらいだ。
だが……先程に比べると、明らかに弱体化しているのはどういうわけか。
ディアルガを倒し、パルキアの全力の一撃を受けても尚、生きていた時の破天荒さはなりを潜めている。
もちろんダメージが蓄積しているからという理由もあるかもしれないが……それでも、正直肉迫できる相手と思ってはあなかったため、首を傾げてしまう。
「――時よ、我が命に従え!!」
カイリの力ある言葉が解き放たれ、レジェンド達の傷と疲れが瞬時に消え去った。
「よ、よし……このまま一気に……」
「カイリ、無理をするな」
彼はヒメカの傷を治すために、そして今回も力を使い大幅に体力を消耗している。
おそらくこれ以上の使用はできないだろう、すなわち……これが最後の治療となる。
――ブラストバーンの火柱が破られる。
全身に火傷、更に左足と尻尾は完全に融解しており、グロテスクな光景が広がっていた。
「く、くそ……なんてしぶといヤツなんだ、コイツは……」
「チッ――バシャーモ、かえんほうしゃ!!」
「ゴウカザル、オーバーヒート!!」
かえんほうしゃとオーバーヒート、2つの炎技がミュウツーに迫る。
これでは簡単に避けられるだろう、軌道は単調だしスピードだって決して速くはない。
だがそんな事は百も承知だ、この技で隙を作るのが目的なのだから。
どちらに回避するか、それとも反撃をしてくるのか、どこから来てもいいように全員が警戒し身構えるが。
しかし、結果は回避されるわけでも、反撃されるわけでもなかった
「えっ――」
「何………?」
「これ、は……」
3人して、間の抜けた声を出してしまう。
何故なら――あんな単調な攻撃に、ミュウツーが呆気なく受けてしまったからだ。
回避もせず、反撃もせずに、炎に焼かれている。
効かないから避けなかったわけではない、明らかに苦しんでいる声を上げていることからも、それを理解した。
一体どうしたのか、そんな疑問を抱く中で。
「――レジェンド、最後の攻撃だ」
ロストは、レジェンドに静かに指示を出す。
「ロストさん……」
「……2人共、勝手な願いですまないが……ミュウツーは、おれとレジェンドが楽にする」
「…………」
「一時的とはいえ、アイツはおれのパートナーだった、だから……もう戻れなくなったアイツは、主人であるおれの手で……楽にしてやりたい」
声が震える。
一度決めた決意が、音を立てて崩れていっていきそうだ。
殺したくない、救いたい。
その想いが、ロストに逃げ道を作っていく。
――まだ救う方法があるんじゃないか?
――殺さなくてもいいのではないか?
――自分が楽にする必要があるのか?
内なる自分が、甘い蜜のような甘美さを孕んだ毒の誘いを囁き続ける。
「……ロストさん、俺がやりましょうか?」
「カイリ……」
「もし辛いなら、俺達がミュウツーを――」
カイリがそこまで言いかけ、彼の肩に手を置いてケイジは制した。
「これはお前の出る幕じゃない」
「ケイジ……だけど」
「手を出してはダメだ、これは他の誰でもない……ロストがやらねばならない事だ」
「…………」
俯き、身体を震わせ拳を痛いくらいに握りしめるカイリ。
そんな彼を、ケイジは黙って見つめていた。
「――すまないな。カイリ、ケイジ」
彼等の心中、そして優しさが身に染みり、謝罪の言葉を口にするロスト。
……覚悟は、できた。
「……レジェンド、すまない。お前にこんな事をさせたいわけじゃないが……」
ロストの言葉に、気にするなとレジェンドは彼の身体に自らの顔を擦り寄らせた。
「……ありがとう」
再び、ミュウツーに対し視線を向ける。
炎は消えたが、ミュウツーが立ち上がる様子はない。
しかし……その瞳に宿るのは、憎悪だけだった。
「……兵器として生み出され、せっかく普通の生き方ができるはずだったというのに……また、身勝手な理由で兵器に仕立て上げられた。
――お前の存在は、一体何だったのだろうな」
呟く言葉は、ミュウツーに対する同情か、それとも……。
「今、楽にしてやるぞ。ミュウツー」
すまない、そう謝罪の言葉を呟いてから。
ロストは——彼との別れになる指示を、レジェンドに告げた。
「――シャイニングフレアだ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
――荒野に、風が吹いた。
優しく、僅かに森の息吹を感じさせるような風は、灰となったミュウツーを空へと運んでくれる。
それを、ロスト達はこの目に焼き付けようと眺めながら……そっと、涙を流した。
To.Be.Continued...