…まぁいいでしょう。
「ここって所謂釣りスポット…なのかな」
少女はそこら辺の店で入手した釣竿を川に投げ込んでいた。
何故釣りスポットだと思ったのか?
それは至って単純。
少女以外にも釣りをしている先客がいたのだ。
「(左を見て)…左には釣り竿を構えてる猫と犬、」
左には、まるで競っているようなオーラを纏っている様に見える
猫と犬が釣り竿を構えている。
「(右を見て)…右にはオオトカゲとカモメの群れ……」
オオトカゲの家族だろうか。
オオトカゲ達は水にちゃぷちゃぷと浸かりながら
小魚をハンティングしている。
カモメの群れは上空から魚めがけて急降下を繰り返している。
推定200羽はいる中、何羽かこちらを見てくるカモメがいる。
絶対狙ってるよね。
「……なんか、釣り仲間で釣りしに来たみたい」
1人と2匹と3匹と推定200羽は黙々と魚を釣り上げていた。
◆◆◆◆◆◆
1人は何となく、2匹と3匹は食欲、
推定200羽は巣で帰りを待つ子どものために。
バラバラの理由でおよそ30分間共に魚を釣っていた者たちには、
何故か絆が生まれ始めていた。
「あ、釣れた……でもこれ骨が硬いし…食べる?」
「?」
トカゲの家族は少女が差し出した魚を美味しそうに食した。
どうやら硬い骨もこの一家には関係ないようだ。
向こうでは、猫と犬がカモメに魚を捕られないように
共同戦線を組んでいた。
仲は良さげかもしれない。
そんな光景を見ていた少女のそばにカモメが一羽来た。
「ん、どうしたの」
しばらく喉をグェッ、グェッと鳴らした後に、
カモメは口からロブスターのような節足動物を取り出した。
色は青いが甲殻の隙間から美味しそうな身が覗いている。
「おぉ…これいいの?」
カモメは首を縦に振って肯定している。
「それじゃあ遠慮なく……ってどうしたの?」
カモメの後ろで猫と犬とトカゲ一家が涎を垂らしている。
「……しょうがないね」
少女は釣竿を置くと手に持つ袋からライターを取り出した。
◆◆◆◆◆◆
適当に積み上げられた木の枝が燃えている。
その周りで少女、猫、犬、トカゲ一家が炎を囲むように座っている。
と、いうか猫と犬はともかくなんとトカゲ一家も
上体を起こして座っている。
カモメ達は炎の上で踊るように飛んでいる。
炎の近くには5本の棒が刺さっており、
先端でロブスターが焼かれている。
「ん、そろそろ良いかな」
少女は棒を抜くとそれぞれを猫、犬、トカゲ一家に差し出し、
火から離れた場所に1本を刺した。
そして少女は大きく口を開けて、
甲殻の剥がれたロブスターの肉を口に入れた。
「……おいしいっ」
猫は猫舌なのか、はふはふしながら、
それでも美味しそうに食べている。
犬は熱さ関係なしにガツガツと豪快に食べている。
トカゲ一家は一匹ずつ肉を齧っては飲み込んでいく。
カモメ達は肉の周りに集まって我先にとついばんでいる。
香ばしい匂いのする、一夜だった。
◆◆◆◆◆◆
全員が食べ終わってひと段落した釣り仲間達は、
互いにそれぞれの戦利品を交換しあい、
それぞれの帰路、もしくは旅路についた。
彼ら彼女らが再会することは万にひとつもないだろうが、
重要なのはまた会えるかではなくどんな思い出を作ったかだ。
少女は再び旅を続ける。
廃都市のなかで水浸しの高校が目を引く。
少女はそれに少し目を向けたが、すぐに逃げるようにその場を離れた。
偶然出会った人達の間に気づいたら絆が芽生えてた…そんなシーンが好きです。
というかトカゲ一家座れるんだ……