建物の中は静かだった。
これといって物が散らかっている訳でもない。
ただ、“誰かがいた痕跡”と言えるものがまるで見当たらないのが、不気味だった。
「……ここ…どうなって…」
階段があったので下に降りた。
すると、そこには上の階のオフィスのような場所よりも広い空間があった。
オフィスと違って、情景や物からどんな部屋なのか推測することの難しそうな部屋だった。
ふと、机の上の端末に目線が向いた。
近づいて電源ボタンを押してみると、意外にも端末は起動した。
……したはしたのだが
「……画面、暗いまま…」
おまけにロック画面?をよく見ると、少女と思しき誰かが血を流して倒れている画面が表示されている。
「…持ち主は悪趣味だった、のかな……?」
端末の電源を落として、私は出口に向かおうとした。
すると、
“ガシャン!“
ガラスの割れる音。
直ぐにアサルトライフルを手に持ち、物に隠れながら階段で上に向かう。
顔を少し出してみると、自律可動型のロボット兵器が見えてるだけでも4体ほど侵入していた。
「……ちょっとまずい、かも」
アビドスから離れて以来、戦闘を避けながら生きてきた私にとって、戦闘はざっと8年ぶり…
対して、相手は人が作り上げた戦闘のために存在する兵器である。
戦闘を避けようにも、相手はカメラで自分たち以外の動体を全て排除する自動迎撃兵器……
先人たちの遺した遺物の1つ。
「とりあえず……」
私はドローンを起動し、1機を撃破、2機目も爆発の余波で吹き飛ばし、
そのまま飛び出して3機目と4機目を銃撃で破壊した。
量産型なのか、そこまで硬くはなかった。
このままあわよくば脱出……
そのまま窓ガラスの外を見た私は瞬時に近くの机をひっくり返して盾にした。
外には大量のロボット兵器、しかも照準がこちらを向いていた。
「ゴホッ、ゴホッ……
痛っ……」
私はさっきまでいた地下室に閉じこもっていた。
咄嗟に防御ができたは良いものの、その後は概ね予想通りだった。
今は爆風を受けて何発か銃弾を受けて……全身傷だらけだ。
……ん、おかしい。
いくら戦闘してこなかったからって、普通なら銃弾程度で致命傷にはならない。
ミサイルの爆風ぐらいしかまともにダメージを受けるものなんて……
ふと、落ちていたガラス片に映った自分の顔を見た。
「……そういうこと」
なんとなく、頭の中で納得した。
ガラス片に映った私のヘイローに、ヒビが入っている。
色も少々暗いように見える。
「ふぅ……」
一息付いて、その場で立ち上がる。
軽く止血を済ませて、銃の残弾を確認する。
ドローンは砲口が2つ潰れていたけど問題はない。
多分、死にかけで思考がどうにかなっていたんだろう。
この時の私は、ドアを開け放って全力で特攻する気満々だった。
……机の上で光る、端末を見るまでは。
「…え…」
触ってもない、さっき確かに電源を切ったはずの端末の画面が光っていた。
よろよろと端末に近づくと、画面には黒い髪の少女がいた。
全身が血で汚れたようになっており、怪我もしているみたいだった。
「……! █████さん、ですよね。」
「えっ」
今、私に喋った?
「ん……えっと、うん」
「良かった……そうだ、まずは認証を済ませて欲しくて…。」
少女はそう言うと、指を画面に裏側から当てるようにした。
「まずは指紋認証です。
私の指と、貴方の指を合わせるんです。」
「……ん、なんか、その、旧時代的って言うか」
「いいから早くしてください!」
「ん……分かった」
私と少女が指を合わせると、ホワン、という未来的な音と共に、画面の明るさが少し強くなった。
廃病院のような部屋に、少女は立っていた。
「次がもう最後です。
今から私が言うパスワードを……。」
その時。
“ドンッドンッ!”
「ひゃっ!?なんの音ですか!?」
「あ、えっと、今、兵器に追われてて……」
「それ早く言ってくださいよぉ!
それと早くパスワードを言ってください!」
「いや私パスワードまだ聞いて……」
そう言いかけた時、何かが割れるような音がして、本能的に焦った。
「まだ私パスワード聞いてない!」
「あっそうでしたすいません……
……ってそんなことより!
パスワードは今から私が言うので一緒に続けてください!」
「ん、分かった!」
「「“ ……我々は望む、七つの古則を。”」」
「「“ ……我々は覚えている、ジェリコの嘆きを。”」」
「接続パスワード承認、シッテムの箱へようこそ、繧キ繝ュ繧ウ先生!」
ドアが破られる音がした。
「先生!移動を開始しますよ!」
「先生!?
それに移動ってどこに……」
「貴方の傷は私の全てをかけて直します。
ですから……”キヴォトス”を、よろしくお願いします!」
「それってどういう……」
視界が、白い光に包まれる。
何も見えない。
ただ一言、聞こえた。
「……私のミスでした」
まさかこんなに時間を空けて完結するとは