少しグロいので注意してください。
靈気と紫⓵
「じゃいってきまーす!」
買い物を頼まれたのでおれは今住んでいる家を出る。
「いってらっしゃい。」
玄関の奥から声が聞こえてくる。声の主はおれの育ての親で、山でおれを見つけて拾ってくれた、命の恩人だ。おれはその声に見送られながら村の市場に向かった。
家を出ると川と山、自然が広がるいつもの見慣れた景色が広がった。
おれはすぐ近くで田植えをしているおじさんに軽く挨拶をした。
「おじさんこんにちは!」
「おお、誰かと思えば靈気ちゃんじゃないか。今日はどこに行くんだ?」
このおじさんいやこの村全員おれのことをちゃん付けする....ちゃんじゃなくてせめてくん付にしてくれよ!
「ちゃんじゃなくてくんね!今日はちょっと市場に買い出しに。」
「ああ、そうだったな悪い悪い。市場気をつけていけよ。最近は妖怪も出るって噂だ。いくら妖怪退治屋さんたちが見回ってくれてるっていっても
油断は禁物だ。」
おじさんのいう通り最近は妖怪の噂が後を経たない、妖怪は人間を喰うこともあるらしいから気をつけないとな。
おれははーいといっておじさんと別れた。
「相変わらずここは人が多いな....」
いつも市場は人が多いけど、今日はなんだか違うみたい....お祓い棒にお札..あーなるほど、神社の妖怪退治屋さんがいるのか....まあいいやおれには関係ない。
おれは市場で魚、野菜を買って家に帰ろうとすると....
「お、すまんぶつかった、この辺は妖怪がうようよいるから気をつけて帰れよ。」
「あ、はい!ぶつかってすみません」
さっさとここを退散しようとするとなぜか妖怪退治屋さんにぶつかってしまった。
「はははいいんだ、いいんだ!ささっと帰りなさい、親が心配しているよ....
うん.....?」
さっきまで笑っていた退治屋の雰囲気が変わった。今までの一人の人間を見る目とは打って変わってまるで敵を見るかのようなかんじになった。
「あのーどうかしましたか?」
「.....ッ!妖怪だ!みんな、こいつは人間じゃない!離れろ!」
突然おれから距離をとって声を上げた。え......?
「おれが、妖怪.....?」
そんな馬鹿なおれは純粋な人間だ。決して妖怪なんかじゃない、そうだおれは人間だ。人間なんだ。こいつのいってることは全部嘘だ。
自分にいい聞かせているうちにもどんどんおれが妖怪だっていうデタラメが村に広がっていく。
「おいおい..,.靈気ちゃんが妖怪....?それって本当か?」
「ああ、本当らしいぜ。俺たちも早く逃げよう!あいつに喰われちまう!」
ひそひそと聞こえてくる。
もう耐えられない。
早く家に帰ろう。
.....おれが妖怪なわけない。
「何処に行く気だ?」
後ろから声が聞こえてくる。
こっそり逃げるつもりだったけど走って逃げるしかないな。
そう、考えているとビュンという音と共に足に激痛....というより火傷のような痛みが走った。
「あぐッ....」
「効いているな、これは妖怪によ〜く効くお札だ。
人間には効果がない!....え?なんで効いてるかって?それはお前が妖怪だからだ。」
お札....?人間には効果がない?じゃあなんでこんなに痛いの....?
もしかしておれ本当に ’’妖怪''?
「う、嘘だ嘘だ!おれは妖怪なんかじゃない!」
震える声だった。
「いい加減認めろ。お前は妖怪なんだ....少しかわいそうではあるがそろそろ退治するとしよう。」
早く逃げないと....くっだめだ足が動かない....おれ、死ぬのかな。
こんなついさっきまで優しくしてくれた退治屋、市場の群衆たちおれが妖怪だって知った途端....
市場の人たちは今おれに石を投げつけ、罵声を飛ばし挙句の果てには、
殺されされそうなおれを今か今かと笑顔で待っている者もいる。
妖怪ってこんな感じに死ぬんだ、こんなクズに見られながら。
....死にたくない.....やめて.......やめろ....やめろやめろやめろ....
おれの意識はここで途絶えた。
「血の味がする....」
目が覚めるとそこはあの世....ではなく誰もいないあの村だった。
誰もいない、いや"いた痕跡"の方が正しいのかもしれない。
そこにあったのは大量の血だまり、骨、肉片。
そしておれの口の中には血の味....え?もしかしておれ
人喰った.....?
いやそんなはずない。おれは急いで家に向かって走った。
途中には骨と肉片....さっき少し前に話した、田植えをしているおじさんの姿はなく、代わりに....いや考えるな大丈夫。おじさんは生きてる。
家に帰ると玄関には血のあと廊下には死体.....もうだめだ耐えられない。
おれはもうその場にいられなくなり、山の方へ走った。
「はぁはぁ、何処か遠くに....!」
この山は妖怪が出るとよく言われているが、もうおれには関係のない話だ。
パニックになっているせいか、今は暗くもないのに前が見えない。
「「いて....!」」
誰かにぶつかった。おれはそのまま逃げようとしたらぶつかった相手から声をかけられた。ちゃんと前を向いてはしれ!とかそんな感じに怒られるのかな?
「ちょっと待ちなさい!.....ねえ貴方ってもしかして妖怪?」
またこれだ。今日で妖怪って単語聞くの何回目だろう。
「なんか悪い....?」
この子はおれよりも小さい、女の子って感じだった。
しかも服はぼろぼろ、息は切らしてまるで誰かから逃げているような様子だった。
.....なんで妖怪ってわかるんだよ。
「私も妖怪なの....ねえ、貴方かなりの人を喰ったのねそれも今日自分が妖怪ってわかったらしいわね。
それでパニックって人を喰っちゃた感じかしら?」
「なんでわかるんだよ.....」
この子はまるでさっきまでの様子を見たかのように詳しく話す。
「ふふ、それはねこの"スキマ"をつかったの....これのおかげで私は自由に場所を移動できるの。もちろんこの能力で敵を閉じ込めて殺すことだってできる.....私はねこれのせいで仲間に気持ち悪がられて、裏切られて....」
悲しそうに話す。
そっかこの子もおれと同じなんだ。
「ねえ私と貴方は嫌われ者の妖怪....共通点も、多い。きっといい友達になれるとおもうの。
友達になってくれるかしら?靈気?」
「だからなんでおれの名前を知ってんの?まあいいや、もしおれがダメって言ったらどうする?」
結構小さいから泣いちゃったりするのかな。
「貴方はまだまだ弱い妖怪よ。
私にかかれば貴方なんて簡単に消すことだってできるのよ。」
怖、脅しじゃん。
「はぁ、わかったわかった。友達になるから。」
「ふふ、ありがとう。私は"八雲紫"というの、これからよろしくね。」
ここからおれと紫の何千年にも及ぶ長い長い付き合いが始まった。