「....誰だっけ」
靈気が冷たく、でもどこか笑顔で言った。
「え....?」
声が思わず漏れた。だって100年近くずっと一緒にいた家族みたいな関係だったのにこの一言で私たちの思い出が一瞬で消えた感じがしたから。
その時だった、笑顔でこっちを見ていた靈気が煙のように消えてしまった。
「ど、どこに行ったのよ!」
あたりを見渡す。しかし何処を見ても靈気の姿はない。
......いっそのこともう帰ろうかしら。
「お姉ちゃん、何処見てるの.....?」
後ろから靈気の声が聞こえた。
だがとっさに振り返ろうとした時.....
「がッ.....!」
首に強い衝撃がきた。
私は一瞬意識が揺らいだがなんとか倒れずに意識を繋ぎ止めた。
「あれー.....?すご〜い!ちゃんと死ぬように首を蹴ったんだけどなぁ....」
靈気は相変わらずこの調子だ、それにしても靈気は、どうやってあんな急に姿を消すなんてできたのかしら....?
「はぁはぁ、れ、靈気....貴方、どうやってあんな芸当ができるのよ....」
「.....あー、それはねーおれの能力だよ.....」
「の、能力?」
バカな、靈気はまだ能力が使えないはず....これもあの靈気の服の眼と関係が.....?
「.....おれの能力はねー''幻を操る程度の能力''だよー、本当はあんまり教えたくなかった、だって相手の手の内を最後にわかった瞬間の絶望した表情がおれは好きだからねー.....」
「歪んでるわね、でもわかったわこれなら貴方が行う攻撃は全部偽物ってことでしょ。」
「ふふ、まぁね.....さてもうちょっと遊ぼう、お姉ちゃん」
そういうと靈気の服の眼がギョッと私を睨んだ、そして私が瞬きをした時には靈気が二人、三人に増えていた。
「面白いことをするわね、貴方の技は幻.....つまり喰らってもなんともないのよ、さっきも言ったでしょ」
「そっか....じゃあ試してみる.....?」
「え、それはどういうーー」
私が言いかけた時騒ぎを聞きつけたのか何事だと言わんばかりに仲間の天狗たちがやってきた。
「仲間が二人やられたという連絡が入った!お前ら動くな!」
「.....あのさーそんな仲間が死んだなんてどうでもいいからさ.....せっかく楽しく遊んでるところに......水を差さないでくれる.....?」
空気が急に張り詰める、天狗は少し後退りをしながらも持っていた短刀を構えた。
「どうでもいいとはなんだ!あいつらには家族も友達もーー」
天狗が言い終わる前に靈気は天狗の懐に飛び込み腹を殴った。
「グボッ.....」
天狗は口、腹から血を出して少し呻きながら絶命した。
.....少しグロくないかしら.....
「さーて次は君たちだね.....」
「「「ひっ」」」
後ろで見ていた天狗たちを靈気はじろりと睨む、靈気の気迫に押されたのか天狗は一目散に逃げた。
「あらら、逃げちゃった....よし邪魔者もいなくなったことだし再開しようか''遊びを''」
「はぁー全く.....靈気!いい加減目を覚ましなさい!」
もう天狗が三人も死んだ、これ以上靈気が暴れたら妖怪の山がどうという騒ぎじゃない。早く止めないと。
でも正直私が本気で靈気と戦っても勝てるか分からない。
.....でも弱点はわかった、靈気の服の眼だ。あれさえどうかすればいけると思う。
勘だけど。
「.....あっそ目を覚ますって言われてもねぇ......まぁもう飽きちゃったしそろそろ死んでもらおうかな.....」
靈気がそういうと空高く飛び片腕だけを突き出した。
「(何かが来る....!)」
私の読み通り靈気の手が光り始めて今にもたくさんの弾幕たちが出てきそうだった。
「バイバイお姉ちゃん....[幻想地獄].....!」
靈気がどこか寂しそうにいうとナイフやら刀やら岩やら弾幕やらごちゃごちゃした弾幕たちがものすごい密度で迫ってきた。
幻なんかじゃないあれは本物だった。
「も、もしかして全部本物の弾幕かしら....?」
恐る恐る呟く。
「そだよー....実はおれの能力はもう一つあって、それは"幻を具現化する程度の能力"っていうんだ.....」
「は....?」
「ふ、ふふ、あははは!そうそうその顔だよ!その絶望した顔!遠くからじゃよく見えないけどミシミシと伝わってくるよ.....!」
そんなんチートじゃない.....だって私が死ぬっていう幻を見せたら本当に死ぬってことでしょ......
靈気のいう通り絶望しているうちにも弾幕たちがやって来る。
私はそれを境界に全部流し込んで防いでいる。
ナイフや岩の他にもお札まで飛んできてもうえらいこっちゃみたいな状況.,ってお札!?
そうかわかったわ、靈気に渡したお札は僅かな枚数.....つまりお札は私も持っているということ.....そのお札を靈気の服の眼に貼る....何が起こるのか分からないのだけれどもしかしたら倒せるかもしれない。
私は靈気の攻撃を取り込むスキマとお札を入れるスキマの二つを出した。
そして靈気の後ろにもお札を入れるスキマに繋がるスキマを出す。
そしてお札をスキマに投げた。
「うぐッ.....!?」
予想通り私のお札は靈気の後ろのスキマに通って靈気に当たった。
でも予想外だったのが一つ.....それは靈気の眼にピンポイントに張り付いたことだ。全く色々謎だらけね靈気は.....そう考えていると空から落ちている靈気に目を飛び出した。
失礼、予想外だったのがもう一つあったわ。
なんでお札を貼られただけで倒れちゃうのよ。
私は落ちて来る靈気をしっかりと受け止めた。
「やっぱり軽いわね.....」
私はそう呟き今妖怪の山に留まっても面倒なだけなので少し前から住処にしてる山にスキマを使って移動した。
ーーー少女移動中ーーー
ふぅ〜とそこら辺にあった岩に腰をかけて靈気をそこら辺の草に寝かしてその寝顔を覗いた。
「.....かわいいわね....」
思わず呟いとしまった。それくらいさっきまであんな悪魔みたいな雰囲気
だったのに今は天使みたいな寝顔だ。
それにしてもほんとに靈気は男の子なのかしら?実は女の子でした〜とか言われたほうが納得ね。
私はこんなかわいい顔のどこにあんな悪魔が潜んでいるのか気になって...
いや正直にいうとすやすやと眠る靈気が可愛すぎて無意識に顔をめっちゃ近づけてました。
その時だった私が靈気の鼻に当たるか当たらないかのところまで顔を近づけている時に靈気が目を覚ました。
「はっ.....うわーーーーー!!!」
「うるさいわね.....」
急に靈気が耳元で叫んできた。まあ顔を近づけたのは私なんだけど....
「お前!おれに何しようとしてるんだよー!」
「いやそんないかがわしいことはしてないわよー」
「当たり前じゃい!」
目を覚ました靈気はさっきまでとは別人で私がよく知る靈気だった。
.....二重人格ってやつかしら?
「...,そんなことより覚えてないのかしら?あの時のことを」
「何だ?いきなり覚えるも何も天狗に見つかったーってなったら急に場面が変わって今紫に襲われかけている場面になったんだけど?」
「はぁーもう、本当に覚えてないのね。貴方はね天狗をーーーーー」
......やっぱり言えないわ。靈気は昔無意識に人を皆殺しにしちゃったというトラウマを抱えてる.....とても貴方は天狗を三人殺したのよーなんて言いっこないわ。
「や、やっぱりなんでもないわー」
「.....変な紫.....まあいっか!さっさと次のとこに行こうぜ!
なんかさ竹から生まれたなんとか姫ーみたいなやつがいるらしいんだ、次はそいつがいる都に行こう!」
「へー」
靈気はしばらく私を疑っていたがもうどうでもいいかとなったのか次の旅の行き先について胸を躍らせながら私に話しかけた。
私はそれを適当に流し考えた。
靈気はなぜあそこまで変貌を遂げてしまったのか。そしてその時の記憶が一切ないことだ。
まあそのことについてはもう答え的なものは出ている。
靈気は危険な存在だということ。
そして私が靈気を守るということ。
それを心に誓って私たちは靈気のいう竹から生まれた不思議な人のいる場所に向かった。
最後のバトルスキマスキマ言いすぎじゃね...?