Fate/Strange Order : 冠位影法録(シャドウ・レコード)   作:りー037

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【閑話】特異点への幕間:影の底の記憶、泥にまみれて尚その盾は折れず

 木々がざわめき、土と青葉の入り混じった湿った匂いが肺を満たす。

 

 現実と見紛うほどに精巧に構築されたシミュレート空間の深い森の中。木漏れ日が差し込む小さな開けた場所で、荒々しい呼気と金属の擦れる音が静かに溶けていた。

 

「……はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」

 

 

 

 およそ一時間に及ぶ、一対一の体術による模擬戦。呪力強化を施された彼から放たれる、変幻自在の打撃を捌き、いなし、時に吹き飛ばされながらも、彼女は必死に食らいつき続ける。

 

 デミ・サーヴァントとしての驚異的な耐久力があるとはいえ、精神的な疲労と、手足に蓄積された重い疲労が彼女の体を軋ませていた。

 

「……ひと段落とするか。座れ、マシュ」

 

 

 対するヴァルナは、息一つ乱していない。

 

 泥一つ跳ねていないコートの裾を軽く払い、小川のほとりにある大きな倒木の上に腰を下ろす。

 

「はい……っ、ありがとうございます、先輩……」

 

 

 マシュはフラフラとした足取りで歩み寄り、盾を横に置いて、ヴァルナの隣の倒木に腰を下ろした。冷たい水筒の水を喉に流し込むと、ようやく少しだけ呼吸が落ち着きを取り戻す。

 

「やはり、先輩は強いですね……。盾の扱いにも慣れてきたのですが、先輩の動きは……全く予測がつきません」

 

「俺の動きは複数の武術と暗殺術の掛け合わせだからな。基本の型というものがない。慣れるまでは読みにくいはずだ」

 

 

 彼が淡々と答えると、仮想空間の空から、ホログラム通信が開く。

 

 画面の向こうで、コーヒーカップを片手に持ったロマニ・アーキマンが、保護者のように心配そうな顔を覗かせた。

 

『大丈夫かい、マシュ? 管制室のモニターで見ていたけど、新人君ったら容赦がないんだから。あの速度と重さ、人間の出力じゃないよ。怪我はないかい?』

 

「大丈夫です、ドクター。先輩はちゃんと加減してくださっています。急所の攻撃は直前で軌道を逸らしてくれていましたし……ただ、私の反応が遅れているだけです」

 

『加減してあれかい……。いやはや、モニター越しに君の戦いぶりを見て、とんでもなく強いのは知っていたけど……改めて間近で見ると凄いね』

 

 

 ロマンは『ふぅ』と息を吐き、モニター越しのヴァルナへと視線を向けた。

 

『式神なしでも、生身でサーヴァントと打ち合えるマスターなんて、歴史を遡ってもそういない。しかも、君のその力は、僕たちが知る一般的な魔力とは異なる、別の法則が働いているように見える。……その異常な体術は、やはり聖堂教会で習ったのかい? ?』

 

「土台はそうだが、基本的には独学だ」

 

 

 ヴァルナは水面を眺めながら、どこか遠くを見るような瞳で答えた。

 

「生き延びるために、世界中の武術を拾い集めて、俺の呪力と掛け合わせただけだ。最も効率よく、最短で敵を排除するための最適解を探し続けた結果、こうなったに過ぎない」

 

「独学、ですか……。それであれほどの技術を身につけるなんて……」

 

 

『それと、もう一つ気になっていたんだ。あの使い魔のような、影から出てくる獣たちは一体どういう理屈で動いているんだい? 使い魔の使役魔術にしては、あまりにも出力がでたらめすぎる。それに、影そのものを操っているようにも見えた』

 

 

 ロマンの問いに、マシュも「私も気になっていました」と身を乗り出す。

 

「あれは、俺が生まれつき肉体に刻みつけられてきた術式だ」

 

 

 ヴァルナは自身の足元――木漏れ日の落ちる草むらの『影』を指差した。

 

「『十種影法術』。それが俺の術式だ。自身の影を媒体として、十種類の式神を召喚し使役することができる。影絵を作るのが基本的な召喚のプロセスだな。両手で対象の式神を模した影絵を形成し、影に投影することでそこから顕現する。」

 

「影絵……ですか? 犬や、鳥の形を両手で作る、あの影絵遊びの?」

 

 

 マシュが少し驚いたように、自分の両手で不器用に犬の形を作ろうとする。

 

「そうだ。だが、必ずしも手元で作る必要はない。俺は影の形を操作して、遠く離れた場所にある影を実体化させ、影絵を結ばせることで『遠隔召喚』を行うこともできる」

 

『なるほど……。影をポータルのように利用しているわけだ。それにしても、最大十種類か。今まで見せてくれた式神で……』

 

 

 ロマンが考え込むように呟くと、マシュが指を折りながら数え始めた。

 

「ええと……私が今まで拝見したのは、白と黒の狼のような式神、空を飛ぶ鳥の式神、それに、傷を癒やしてくれた神々しい鹿のような式神ですね。それに巨大な牛や、蛙、兎、それから大きな白蛇もいました」

 

 

 指を七本折ったところで、マシュは顔を上げた。

 

「白と黒の狼を同じ個体と数えて、全部で七種類……。ということは、あと三種類、まだ見ていない式神がいるんですか?」

 

「ああ。術式の核ともいえる切り札がある。あの場(特異点)で出すには少しリスクが高かったが」

 

「他にもいるんですね……! 他の式神はどんなものなんですか?」

 

 

 純粋な好奇心に目を輝かせて身を乗り出した。

 

 ロマンも『確かに、あの巨大な牛や鹿でも十分凄いけど、それを上回る切り札があるなら知っておきたいね』と頷く。

 

 

 だが、ヴァルナはその問いに対し、スッと目を伏せて濁す。

 

「……最強の切り札。それは、どんなものか、言葉で説明するのは難しいな」

 

 

 彼の脳裏に、かつて何度も対峙した、その絶対的な威容が浮かぶ。

 

「使う時が来れば、明かす。……だが、できればこれを使う事態にはしたくないな。俺自身にとっても、あまりにも重すぎる」

 

「先輩がそう仰るなんて……。やはり先輩はとても凄いです」

 

 

 マシュが、ヴァルナの圧倒的な力と底知れない力の深奥に、感嘆のため息を漏らす。

 

 しかし、ヴァルナはゆっくりと首を横に振った。

 

「勘違いするな。俺は、最初から強かったわけじゃない。……埋葬機関、という単語に聞き覚えはあるか?」

 

 

 マシュは少し記憶を探るように視線を上に向けてから、こくりと頷く。

 

「はい、言葉だけなら。カルデアのデータベースで確認したことがあります。聖堂教会が抱える戦闘要員、代行者たちの中でも、さらに頂点に位置する者たちが在籍する秘密組織……ですよね?」

 

 

 その知識の広さに、ヴァルナは感心したように頷く。

 

『マシュの言う通りだ。僕も深い詳細までは把握していないが……魔術協会の間でも、かなりの悪評が轟いている組織だよ』

 

 

 ロマンが深刻な声で補足する。

 

『在籍している者たちは、一人一人が主の御業そのものを代行するとされるほどの隔絶した力を持つ化け物揃いだ。実力最優先の組織であり、信仰心や人格は二の次、三の次。そのためメンバーは人格破綻者だらけで、なんなら人外すら所属しているという噂まであるくらいだ』

 

「……まあ、魔術協会での悪評は、ほぼほぼ局長のせいだろうな。だが、その噂は概ね本当だ」

 

 

 ヴァルナは淡々と事実を肯定する。

 

「先輩も……その、埋葬機関に所属なされていたんですか?」

 

「いや、俺は違う」

 

 

 ヴァルナは即答した。

 

「俺はただの代行者の下っ端だ。出世に興味はなかったし、何度か上から声がかかったが、すべて無視していた。……あの集団は、あまり好きじゃなかったからな」

 

『声がかかる時点で十分に異常だと思うけどね……』

 

「そもそも、俺は好きで教会という組織に身を置いていたわけじゃない。拾われた時からそこで徹底的に鍛えられ、過ごしてきた。吸血鬼を狩り、悪霊を祓い、教会に仇なす存在を抹消する。俺にとっては、ただそれが呼吸をするのと同じ『日常』だったというだけだ」

 

 

 凄惨な血の匂いを感じさせる過去を、彼はまるで昨日の夕食のメニューを語るように、一切の感情を交えずに語る。

 

「まあ、実際、二十歳手前頃に嫌気が差して辞めたしな。その後はヨーロッパを放浪して……いつの間にか、カルデアに流れ着いた」

 

「……大変な幼少期だったんですね」

 

 

 マシュが、痛ましそうな、そして少しだけ悲しそうな瞳で彼を見つめる。

 

 だが、ヴァルナは「いや」と小さく笑った。

 

「そんなことはない。俺のいた環境は確かに異常だったが……昔から環境には恵まれていた。さっき、俺は最初から強かったわけじゃないと言っただろう?」

 

 

 倒木に背を預け、木漏れ日を見上げながら目を細める。

 

「俺は昔、あの異常者……教会の先輩、変人どもに、よくボロ雑巾のように転がされたものだ。純粋な膂力で叩き伏せられ、理不尽な魔術で吹き飛ばされ、何度も死にかけた」

 

 

 その言葉には、恨み言ではなく、強者に対する純粋な敬意と、どこか懐かしむような響きがある。

 

「本気でムカついた時は、『未調伏の式神』の儀式にそいつらを巻き込んで、怪物をけしかけ、憂さ晴らしをしていたものだ」

 

「み、未調伏の式神、ですか?」

 

「ああ。十種影法術の式神は、最初から全部使えるわけじゃない。最初は二匹の犬だけが与えられ、他の式神は、術者自身が術式を使って呼び出し、戦闘して倒す……つまり『調伏』することで初めて手札として使役できるようになる」

 

 

 影絵の形を指先で作りながら説明を続ける。

 

「この調伏の儀式には、他者を巻き込むことができる。複数人で挑むことも可能だが、その場合、倒したとしても調伏は無効になる。俺は昔、勝てない先輩への嫌がらせとして、絶対に倒せない強力な式神の儀式にそいつを巻き込んで、無理やり戦わせていたというわけだ。……今でこそ、俺は十種すべてを調伏済みだがな」

 

 

 

 そう語り終えた、その瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 ――ゴクリ。

 

 

 森の空気が、突如として重く沈んだ。

 

 マシュの肌が粟立ち、ホログラム越しのロマンの表情がサッと青ざめる。

 

『な、なんだ!? ヴァルナ君、君のバイタル数値が……いや、波長が、急激に跳ね上がっているぞ!?』

 

「え……? 先輩、体が、青黒い炎のようなものに……!」

 

 

 ヴァルナの全身から、青黒い呪力がまるで逆巻くオーラのように立ち上り、周囲の空間をびりびりと震わせていたのだ。

 

(……ああ、なるほど)

 

 

 

 湧き上がる莫大な呪力。体内の回路が限界まで拡張され、式神たちへのリンクがより強固なものとなる。

 

「マシュ、ちょうどいい」

 

 

 ヴァルナは倒木からゆっくりと立ち上がり、コートの裾を翻してマシュへと向き直った。

 

「え?」

 

「やるつもりはなかったが、出力が上がったんでな。第2ラウンドに入ろう」

 

 

 彼の瞳が、獲物を狙う猛禽のように鋭く細められる。

 

「十分に休んだだろう。次は、俺の体術じゃない。――『式神』を使っての戦闘訓練だ」

 

「し、式神ですか!?」

 

 

 マシュが慌てて立ち上がり、盾を構え直す。

 

「ああ、そうだ。行くぞ」

 

 

 急な第二フェーズの始まり。マシュは気を引き締め、全神経を集中させる。

 

 何が来てもいいように、彼女は頭の中で、特異点で見た多彩な式神たちを思い浮かべた。素早い狼か、それとも地中からの蛇か。

 

 

 

 

 

 次の瞬間。

 

 ヴァルナが胸の前で、両手を組み合わせて『牛』を模した影絵を作った。

 

 

「――貫牛」

 

 

 

 

 

 

 ボゴォォォォッ!!!!

 

 

 彼の背後の影が爆発的に膨張し、そこから軽トラックほどの大きさを持つ、巨大な黒い猛牛が顕現した。

 

 マシュが驚愕したのは、その出現のプロセスではない。「顕現から動き出すまで」が、異常なまでに早い。

 

 

 貫牛はすでに猪突猛進のフルスピードで、マシュ目掛けて大地を削りながら突っ込んできている。

 

「まずいっ!」

 

 

 回避は間に合わない。マシュは咄嗟に重心を極限まで落とし、大盾を地面に深々と突き立てて防壁とした。

 

 

 

 

 

 

 ズガァァァァァァァァァァンッ!!!!

 

 

 森の中に、爆弾が弾けたような凄まじい衝突音が轟き、火花が散る。

 

「くぅぅぅぅぅぅっ……!!」

 

 

 マシュの口から、苦悶の呻きが漏れた。

 

 

 

 重い。尋常ではない重さだ。

 

 彼女は知らない。この貫牛の能力が「助走距離に比例して威力が増大する」という特性を持っていることを。

 

 今回は顕現直後であり、助走距離はほぼゼロに等しい。この条件下の貫牛であれば、デミ・サーヴァントの盾の敵ではない。

 

 だが、今のヴァルナは『開示』によって呪力出力が大幅に底上げされている。その強化のバフを乗せられた式神の威力は、初期状態であっても圧倒的な暴力を伴っていた。

 

 

 

 防ぎ切れると踏んでいたマシュの足が、泥を削りながらジリジリと後退させられていく。

 

「止ま、ってっ!!」

 

 

 彼女の筋力が貫牛の勢いを相殺し、ついにその巨大な角を完全に押し留めた。

 

 

 

 

 

 

 ――だが。

 

 

「チィィィィィィィンッ……!!」

 

 

 何かが飛翔するような、空気を切り裂く甲高い鳴き声が上空から響く。

 

 

 

 マシュがハッとして上を見上げる。

 

 

 いつの間に召喚したのか。

 

 彼女の頭上の空には、異形の骸骨面を持つ巨鳥『鵺』が、青白い雷鳴を纏って羽ばたいていた。すでに、極大の雷撃を落とすチャージ態勢に入っている。

 

(しまった……!)

 

 

 気づくのが遅れた。

 

 ヴァルナは、貫牛をあえてマシュの真正面に『大きく』展開し、突進の重圧で彼女の視界と意識を完全に牛へと固定させた。すべては、上空の鵺による奇襲を隠すためのブラインド。

 

 

 

 

 

 

 バチィィィンッ!!!!

 

 

 鵺の翼から、青白い雷撃がマシュの脳天目掛けて放たれる。

 

「やぁぁぁっ!!」

 

 

 マシュは咄嗟の判断で、押し留めていた貫牛の角を盾で上へと強引にカチ上げた。その反動を利用し、強引に右サイドへとステップを踏んで、落ちてくる雷撃の軌道から身を逸らす。

 

 

 

 

 

 ドゴォォォォンッ!!

 

 

 雷撃がマシュのいた地面に直撃し、土砂を吹き飛ばす。

 

 直撃こそ避けたものの、着弾の余波による放電がマシュの体を舐め、強烈な痺れが彼女の筋肉を硬直させた。

 

「あ、ぁぁっ……!」

 

「すぐに立て。次が来る」

 

 

 容赦のないヴァルナの冷徹な声。

 

 マシュが霞む視界で顔を上げると、森の奥の暗がりから、木々をなぎ倒しながら這い寄ってくる巨大な白蛇――『大蛇』の長大な胴体が迫ってきているのが見える。

 

「――っ!」

 

 

 マシュは痺れる体に鞭を打ち、泥だらけになりながらも盾を掴んで無理やり立ち上がり、防御姿勢をとる。

 

 

 息つく暇もない、無限に続くかのような波状攻撃。

 

 呪術師による、優しさの欠片もない鬼教官のスパルタ特訓は、ここからさらに苛烈さを極めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シミュレーター空間からログアウトした現実のカルデア。

 

 その医務室の清潔なベッドの上に、マシュ・キリエライトは静かに横たわっていた。

 

「……はぁ。まったく、君という奴は……」

 

 

 ベッドの脇で医療用タブレットを確認しながら、ロマニ・アーキマンが深い深いため息を吐いた。

 

 彼の視線の先、ベッドの隣のパイプ椅子に腰掛けているヴァルナは、気だるげに頬杖をつきながらロマニの小言を聞き流している。

 

「模擬戦とはいえ、やりすぎだ。彼女のバイタルは魔力枯渇寸前、疲労度はレッドゾーンを振り切っている。、正直ヒヤッとしたよ」

 

「問題ない。加減はした」

 

「加減してこれかい……。まぁ、肉体的な損傷がこの程度なのは、流石のコントロールだとは思うけどね。しばらくは絶対安静だ」

 

 

 ロマニは「やれやれ」と肩をすくめると、ヴァルナに軽い目配せをして医務室から出て行った。

 

 

 静かになった部屋の中。

 

 ヴァルナは、すやすやと規則正しい寝息を立てるマシュの寝顔を、無言で見つめる。

 

(……よく、食らいついてきた)

 

 

 彼の脳裏に、シミュレーターの中での彼女の姿が浮かぶ。

 

 貫牛の突進を受け止め、鵺の雷撃を躱し、大蛇の奇襲を盾で弾き返す。何度も何度も泥にまみれ、魔力が尽きかける絶望的な状況にあっても、彼女は決して盾を手放すことはなかった。限界を迎えて倒れ伏す、その最後の瞬間まで。

 

 

 彼女は、決して戦闘が好きなわけでも、戦いそのものが得意なわけでもない。

 

 純粋な闘争に身を委ね、効率と殺戮を極めてきたヴァルナとは、完全に対極にある在り方だ。

 

 

 

 

 だが。

 

 だからこそ、彼女のその真っ直ぐな意志が、眩しく映った。

 

 出会った当初。彼女は自分が造られた生命であり、短い寿命で死ぬ運命にあることを受け入れ、どこか「空っぽ」の目をして諦めていた。

 

 

 だが今は違う。明確な目的を持ち、彼を守るという誓いを立て、どんな絶望にも抗おうと必死に足掻いている。

 

 ヴァルナはゆっくりと右手を伸ばし、眠る彼女の薄紅色の髪に触れ、その頭にポン、と軽く掌を乗せる。

 

(……人間らしく、好ましい)

 

 

 感情の起伏が薄く、人間という種族を外側から観察し続けてきた彼が抱いた、純粋な感情。

 

 それは、妹の成長を喜ぶような、あるいは、信頼できる友人の背中を眺めるような、そんな温かい誇らしさに似ている。

 

 

 人類の未来を取り戻すための、過酷な七つの特異点への旅路。

 

 その本番を目前に控え、孤高の呪術師は、己の隣で盾を構える少女の寝顔を、いつまでもしずかに見守り続けていた。

 

 




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