天眼の呪術師 作:Wisteria
なんとなく筆を走らせたら良さげな物語ができあがったの投稿してみました!
彼は何かが見えていた。
ある人は救世主だと。ある人は疫病神だと。
彼が何者か、何が見えているのか、それが分かる人間はそこにはいなかった。
ある冬の日。とある神社でその日は一族が集まり宴を楽しんでいた。少し地が揺れた。だがあまり大きくない。大騒ぎしないのが日本人の長所であり、短所でもある。そうしていればあれほどの悲劇は起こらなかったのに今回はそれが仇となってしまった。手洗いに行った人間が帰ってこないと気付いたのは揺れから数十分後だった。不審に感じた一同は外に出ようとした。その時、生暖かい風を感じたのだ。暖房なんてつけていない。冬に冷たい風以外が吹いていることなんてないし、そもそも構造上その部屋に外の風が入ることは無い。しかし、そこまで考えていた者はいなかった。なぜなら、そこには辛うじて人と分かるほどの塊しかなかったのだから。
更に人間が来たのは三日経った時だった。黒い服装を見に包み、坊主のような髪型の厳つい男。腐臭に鼻をつまみながら惨状を確認するとすぐに携帯を出し、どこかに連絡をした。もうこんな所うんざりだと言うが如く、来た時に用いた車に向かおうと外に出ると子供の鳴き声を耳にする。何事だと周りを見渡すと小さな御堂があった。追加の仕事と思い手に何かを纏わせた。御堂の引き戸をこじ開け、拳を振りあげようとした時に少年がいることに気が付いたのだ。男は少年を見るやいなや脇に抱え車に戻った。
「夜蛾さん!? なんで男の子いるんですか!? 誰も居なかったんじゃないんですか?」
「人が亡くなっている所には居なかった。近くの小さな御堂にいたんだよ」
「は、はぁ。上には私から連絡しておきます。その子、こちら側の人間ですか?」
意味深に『こちら側』と言う坊主の男と同じくらいの年齢の女性。少し面倒くさそうにしながら運転をしていた。
「恐らく。君にも分かるだろう。これはこの歳の少年が持っていていい呪力量ではない。呪力を感じて寄ってきた呪霊による犯行だろう。しかし本人は御堂の御守りに守られていたという訳だ。形跡を見るに二日三日経っている。よく耐えたものだ」
「それは凄いですね。あれ、もう寝ちゃったかな? 子供の寝顔は可愛いですね」
「ああ、そうだな」
苦虫を噛み潰したような顔をした男はそれだけ言い残して夢の中に落ちていった。
男は車の停車に気が付き目を覚ました。
「すまない。少し寝てしまっていたようだ」
「いいんですよ。疲れているんですから。私たちはその疲れを体感しない分こうやって雑務をこなしているんですから」
そういうことを言わせたいのではなかったと言うような顔をする男。それすら無粋かと言葉を飲み込んだ。
「それにちょうど良かったので。もう高専着きましたよ。その子はどうします? こちらで預かることもできますが」
「いやいい、私が預かる」
「了解いたしました。それでは失礼します」
黒塗りの車が遠ざかっていく。森の中に男と少年が取り残されたのであった。
起き上がった少年は見た事のない男に嫌悪感を示すことなくどこか諦めたかのような顔をしていた。
「少年、名前はなんだ」
「
「失礼、まだ名乗っていなかったな。私の名前は夜蛾正道。27だ。まだおじさんでは無い」
根に持ってるかのように強調した夜蛾。しかしそれとは裏腹に夜蛾の手は少年の手に伸びていた。まるでこれから見せる地獄から守るように。
「突然ですまないが君のご家族は全員亡くなった。嘘ではない、事実だ。君には才能がある。そして君はまだ小さい。今の君にはその才能を使いこなすことは出来ない。才能の使役ができなければまた君の家族達のような事件が君の周りで頻発するだろう。そして君は死んでしまう」
なるべく感情を載せぬよう、そう言った。少年は頭を抱えながら口を開いた。
「えっと、どういうことですか? 皆が死んだって? 僕は何か特別なものを持ってるって?」
「飲み込みが早いな。全てあっている。そして君には選択肢がある。ここで死ぬか、その才能を制御して生き残るかだ」
「死ぬ? やだ、まだやだ、やっと今まで見放されず来れたのに、死にたくない! どうしたらいいんですか!?」
「そうか、その言葉が聞けて良かった。今は君も少し興奮している。だから少し時間を開けよう」
強面の男と涙を流す少年がいる部屋は少年の泣き声だけが響いていた。
読んでくださりありがとうございます。気に入っていただけましたらお気に入り登録や感想のほどよろしくお願いします。