天眼の呪術師 作:Wisteria
少年の号泣から数分後、涙の跡が乾いた頃に男はまた少年に問いかけた。
「君は生きたいと言った。それに嘘はないな?」
「はい。死にたくはないです。だから、生きることのできる方法を教えてください」
そこに泣きじゃくっていた子供の面影は無い。
そして男は少年や男自信が持っている力について説明を始めた。
「まずは我々の世界について話そう。────という訳だ。それで君には呪力の制御を学んで欲しい」
「一応、わかりました。それで呪力ってどうやったら制御できるんですか?」
「それなんだが、まずは君に呪力を感知できるようにしたい。なので君には私の呪力をずっと感じていてほしい」
「それって夜蛾さんにずっとくっ付いて生活するってことですか?」
頷く夜蛾。嫌そうな顔をする瞰凜。
「それしかないと言うのなら受け入れます。あっ、でも学校とかは、どうすればいいんですか?」
「それはこちらでどうにかしておく。すまない、不憫をかける。それと、呪力を感知できるようになったらすぐ言うように」
「わかりました。これからよろしくお願いします、夜蛾さん」少年と夜蛾の共同生活が始まった。トイレや風呂以外は基本的に一緒に過ごしていた。二日ほど経ったある日少年は
「大丈夫か!? 瞰凜!?」
「は、はい。夜蛾さん。多分これが『呪力』ってやつなんですよね?」
少年の身に何かが纏わる。触ったら怪我をしてしまそうな程に刺々しい何か。少年本人もその刺々しさには気が付いていないようだ。
しかし、夜蛾は違った。この少年をしっかりと育てていかなければならない。堕としてはいけないと、心に刻んだ。
それから少年には別の課題が課せられる。夜蛾から少年に渡された槍に呪力を纏わせて制御せよ、というものだった。少年の身長の二倍ほどの槍に纏わせる。これは呪力を知覚し始めたばかりの少年にとって決して簡単なことではなかった。しかしコツを掴んだ少年は槍も含めた全身にできるだけ薄く膜のように呪力を張る。そこで夜蛾から声がかかった。
「瞰凜、上手くなったな。それだけ操れれば今は上出来だ。それでだな、瞰凜のこれからのことに関してのことだ。君には普通に小学校、中学校を卒業してもらう。そしてそのあとは高専に戻ってきてほしい。もちろん腕が訛ってしまうのを防ぐために学校に行っている時には高専所属の呪術師として低級の呪霊を祓ってもらう」
「わかりました。夜蛾さんの言う通りにします。夜蛾さんのことだから手続きの準備はできているんでしょう?」
「いいのか、瞰凜? それだけ制御できているのなら普通に暮らしていても問題はない。断る道も『ありません。どうせ死ぬ運命だった命。それを助けていただいたのです。それに、僕には呪霊によって被害が出てしまうのを許せないと思うんです』やはり、君は達観しているな。まるで世の理が見えているかのようだ。それと一人暮らしは危ないからな、一人補助監督を付ける。保護者代わりだ」
「ありがとうございます。じゃあ僕は二週間後には三年生ってことですね! 学校行くの久しぶりだなぁ」
瞰凜の年齢に驚く夜蛾。本当の年齢だったら人生何周目かだろ。心の中でつぶやく夜蛾正道であった。