天眼の呪術師   作:Wisteria

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第参話

 桜のカーペットが一面を覆う季節。別れを悲しみ、出会いを喜ぶそんな頃。ランドセルを背負い黄色い帽子をかぶる瞰凜。その隣でスーツを身に纏う女。

 

「瞰凜くん、学校頑張れそう?」

 

「はいっ、もちろんです。いってきます」

 

「あ、その前に。もし呪霊を見つけてもなにか起こさないように。放課後私に連絡をして。弱そうだったら一緒に倒しちゃいましょう」

 

 大きな声ではぁい、といいながらかけていく瞰凜。年相応なところもあるんだなと女は感心した。

 

 

 数時間後、事務仕事を行っていた女の携帯が鳴る。名前を見ると少し嬉しそうに承諾のボタンを押した。

 

『奈緒美さん! 呪霊です! きっと三級くらいです』

 

『了解、わかったわ。五分くらいで着くわね』

 

 女の名前は西園寺奈緒美。御三家である加茂家の分家の分家出身。呪霊が見えるからという理由で呪術の道へ進んだが術式の発現はせず冷遇された。分家の家が関東にあったため呪術高専東京校へ入学。先輩である夜蛾に鍛えられたが自分では呪術師は無理だと補助監督の道に移った。ほぼ夜蛾の専任のような形で働いていたが色々あって瞰凜の保護者役をしている。

 

「いきなり子守りをやってほしいって言われた時は驚いたけれどかわいいあの子だと思えば楽なものよね」

 

 着崩していたスーツを直し独り言ちる。そして家の扉を開けた。

 

 

 

 

 

 ファミリーレストラン。そこに二人は足を運んでいた。

 

「戦闘中に油断は禁物だってあれほど言ってたのに」

 

「ごめんなさい」

 

「わかっていればいいのよ。好きな物食べちゃいましょ」

 

「はい。あのそういえば最近呪力の塊? が見えるんです」

 

「詳しく教えてちょうだい」

 

「ええと、実は今日見つけた呪霊もその塊に近付いてみたらいたんです。壁とか関係なく透視能力みたいに。クラスの皆も見えるんですけど全然ちっちゃくて」

 

「ふぅん、今度の休みに高専に行きましょう。君は時代のリーダーになるかもしれないわね」

 

 そのあとは楽しく話をしながら(夜蛾の口座から振り込まれている食費代で)たらふく飯を食らうのであった。

 

 

 §

 

 

 奈緒美の提案で二人は高専を訪れていた。結界の前に車を止めると敷地内に足を踏み入れる。しばらく歩くと組手をする生徒を眺めている夜蛾の姿があった。

 

「夜蛾さん、到着しました」

 

「ああ、久しぶりだな。瞰凜も。それと瞰凜の術式が発覚したというのは本当か?」

 

「はい、恐らく。建物を挟んでいても呪力の塊が『見える』そうです。先程もここに大きい塊があると言っていました」

 

「成程……あまり聞いた事のない術式だ。調べてみる、少し待っていてくれ」

 

 

「すまない二人とも。過去五十年の間に高専に所属してきた呪術師に該当するものはいなかった」

 

「それは大変ね。うーん、名前は『鳥檻術式(ちょうかんじゅつしき)』ってところかしらね」

 

「なんかちょっとカッコイイですね。っう! ちょっとクラクラします」

 

 そう言いながら瞰凜は奈緒美に体重を傾けた。奈緒美は慈母のような微笑みで瞰凜の頭を撫でる。すると瞰凜は少しはずがしがりながらも満更でもない表情をしながら瞳を閉じていった。

 

「術式の発覚に伴う呪力枯れだろう。医務室に連れて行ってやれ」

 

 次に瞰凜が目に入れた景色は白い天井だった。体を起こすと奈緒美と目が合う。向かってくる手を跳ね除けることなく静かに頭を差し出した。

 

「あら、甘えん坊かしら。つかれたのね。よしよし、もう少し休んでてもいいのよ?」

 

「もう大丈夫です。ずっと隣いてくれてたんですよね。ありがとうございます」

 

「いいのよ、私がやりたくてやっていたことだもの。あっそうだ! 良かったら高専見学していかない? 進学するかもしれない学び舎よ」

 

「初めて来た時はそんなこと頭になかったのでやってみたいです!」

 

 ベッドから飛び起き年相応にはしゃぐ瞰凜。そんな瞰凜を奈緒美は微笑ましく眺めていた。




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