天眼の呪術師 作:Wisteria
説明を忘れていたのですが、オリ主は七海らと同学年です。
少年が救われてから六年と数ヶ月が経った。名は看鳥瞰凜といい、頭脳明晰、運動神経抜群更にはイケメンと同級生男子からは憎悪の目で見られ、女子からは黄色い声援とともにめちゃくちゃモテていた。
「よぉ、瞰凜!お前今日も下駄箱ン中にラブレター入ってたんだってな!くぅ、羨ましいぜ」
「あはは、僕のどこがいいんだかねぇ」
「皮肉か!?モテない俺らへの当てつけか!?」
「違うよ、本心だって。好意を向けてもらってるのはありがたいんだけど、それに応えられるような人間でもないからね」
「モテるヤツの余裕か〜!」
そこに看鳥瞰凜が呪術師と気がついている人間はいない。違和感を持たれることなく過ごし、青春のひとときを楽しんでいた。
夜の帳が降りた頃。瞰凜は呪術師の顔をして墓地を訪れていた。人がいるような場所ではなく、ましてや常人が立ち歩く時間でもない。辺りは暗く、何も見えない。しかし、瞰凜には見えている。黒く、穢れたカタマリが。
そのカタマリの方へ進んでいく。そしてカタマリとの距離が5メートル程になった時、塊が動いた。突如何も無かったところから幼子が出てきたのだ。そしてその幼子を掴むと、カタマリは幼子を喰らった。
呪霊を知っているものならあまり驚くことはないだろう。呪霊が人を喰うことなど当たり前のことなのだから。しかし、今回のことは何か可笑しかった。呪霊は瞰凜が目の前に現れてから子を喰らったのだ。捕食の最中というのは生物にとって最も隙を作る時間のひとつと言ってもいい。そこは呪霊も変わらないだろう。それを敢えて見せたのだ。まるで瞰凜の精神を壊すかのように。
呪霊は等級が高くなれば強く、狡猾になる。そして等級の高い呪霊は時に呪術師を含む人間の心を折りその隙を縫うようにして喰らう。
瞰凜の心は折れていなかった。しかし、瞰凜は何かがプチンと切れたように感じた。
目に止まらぬ素早い移動と拳。呪霊に拳があたったその刹那、黒い稲妻が墓地に駆け抜けた。
拳の打撃と呪力が中るタイムラグが0.000001秒以内の際呪力は黒く轟き、莫大なパワーを生むという。それを体感したものは呪力の核心に触れると言うが定かではない。ともかく─────────それを人は『黒閃』と呼ぶ。
静かな墓地に残ったのは大量に汗を流す瞰凜と少年の下半身だけだった。
少しずつフラフラと歩いていく。頭痛と吐き気を催していた。そして1台の車の前のたどり着く。車の中から出てきたのは奈緒美だった。いつもとれ様子の違う瞰凜に違和感を感じて瞰凜を優しく抱擁した。
「どうしたの?何かあったのかしら?」
「ま、守れなかった。あと少し早く行けたらどうにかできたのかもしれないのに」
現場で死んだ人間を見るのは初めてではなかった。無惨な形で無くなっている人も見た。同じ人間の呪詛師も殺した。しかし、善良な人間を救えたかもしれないのに、救えなかった。その感情が瞰凜の心を縛り離れない。
「それはきっと瞰凜のせいじゃない。でも、瞰凜はそれじゃ納得出来ないよね。けれど、私は瞰凜の味方よ。誰が敵でも『瞰凜は悪くない』っていってやるわ」
瞰凜を縛り付けていた鎖を奈緒美は簡単そうに溶かしてみせた。誰にでもできることではない。それはきっと瞰凜を愛しているからなのだろう。愛だ恋だの言われるそれとは別の愛情を。
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