天眼の呪術師 作:Wisteria
瞰凜と硝子が出会った時、硝子は一つ嘘をついた。実際には夜蛾から全てを聞いていた事だ。瞰凜の過去も、現在何が起こっているかも。もちろん奈緒美のことも。
硝子は連続補助監督殺害の対応をしたことが何度かあった。幸い硝子が担当した補助監督は一命を取り留めたが、それが事件の全てではなかった。自分がもし奈緒美の事件に対応できていたら。
別にその事に深く後悔した訳じゃない。彼女にとっては日常茶飯事でそれでいちいち凹んでいたら呪術師の世界でヒーラーなんてやってられないだろう。しかしベッドで横たわる瞰凜を見ていると心が締め付けられるような痛みが走った。誰よりも悲惨な運命を持って生まれた少年に同情してしまったのである。
「家入さん、呪術師は辞めません。人をいっぱい助けます。けど、大切な人がいたらそっちに行っちゃうかもしれません。その選択が間違っていたら、あとから叱ってください」
「なんかあったら私のところ来いよ。話聞いてやる」
クズ2人に聞かれたら一生笑われるなと思う硝子だった。
看鳥瞰凜、七海建人、灰原雄の三名が呪術高専東京校に入学した。
黒い装束に身を包む三人は人数の割にはやや広めの教室で自己紹介をしていた。
「看鳥瞰凜です。これからよろしく」
「めっちゃかっこいい名前だね! 灰原雄だよ。よろしくね」
「初対面で名前に触れるのは……七海建人です。よろしくお願いします」
緊張がほぐれたのか瞰凜と雄を中心に話が回っていた。三人のテンションが上がってきたところで教室の扉がガラガラと開かれた。
「なーんだ、男だけか。うーん、一番奥のアイツはなかなかだね。傑は負けちゃうかも」
「冗談はよしてくれ、悟。一年生の顔が淀んでいるぞ。ああ、説明がなかったね。君たちの先輩の夏油傑だ。こっちは五条悟それで……」
入学すぐの彼らの前に現れたのは先輩からの
本人はそんなつもりはないのだが、180センチを超えた白髪丸渕サングラスと変な前髪が迫ってきた状況を怖くないと言う者は少ないだろう。普通にチビる。
「二人に聞いてたけど輩みたいですね、先輩」
「あぁ? てめえ、外でろよ」
「おい、ちょっと待て二人とも。瞰凜、五条ってわかってて煽ったろ?」
「なんの事やら。ちょっとイライラしたから挑発に乗っただけですよ」
「それで怪我しても治してやらないからな」
「え。ちょっと待って、五条さん今のはなかったことに……」
「ならねぇよ。硝子頼みで喧嘩売ってきたってことはお前そんなに強くないな。先輩の恐ろしさ、体に刻み込んでやるよ」
「五条も少し冷静になれ。またヤガセンに締められるぞ。瞰凜は特にな」
黙り込む五条。少し時間が経ち閃いたような顔をした。
「前ヤガセンが言ってた秘蔵っ子ってもしかしてお前か? 変な術式持ってるっていう」
「貴方の完璧な目に比べたら確かに『変』でしょうね。あれ、雑魚はその目で見る気にもなれませんか?」
「ンだとっ!?」
五条が瞰凜の胸ぐらに手を伸ばし、持ち上げた。灰原と七海はあからさまに怖がっている。五条と瞰凜は瞳を合わせていた。
本当は高校入学と物語スタートが同タイミングなはずだったのですが、気が付いたら6話も書いていました。
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