ダンジョン仕草   作:埴輪庭

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第9話:首都ユーガリット

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 君はルクレツィアとモーブの残虐ファイトに「良いものが見れた」と一応の満足感を覚える。

 

 特にルクレツィアの魔法は君をして瞠目に値するものであった。

 

 本来戦闘用ではない魔法を殺しの道具にするとは、なかなかアドリブ力がきいててよい。

 

 魔法の融合、という観点ではさほど目新しいものではない。

 

 例えば君の使う切り札の一枚、『核炎』は火、氷、雷、三種の呪文の合成により放たれる。

 

 これら三つの力を融合させることで発生する広域破壊呪文、『核炎』は真語(トゥルー・ワード)をもって正しい手順で放たれれば5.5 × 10^13ジュール……すなわち、広島型原子爆弾1発分に等しいエネルギーでもって対象を破壊せしめる。

 

 当然術者にも被害がありそうなものだが、術式には当然その対策となるものが組み込んでおり、対象を破壊した際の余剰のエネルギーをそのまま転移に転用し、破壊的力場ごと虚数空間へ吹き飛ばし残留エネルギーによる被害がでないようにしているのだ。

 

 とはいえ、熟達者(マスターランク)に達したばかりの魔法使いでは、このような本当の『核炎』は使いこなせないわけであるが。

 

 魔法に格があるように、術者にも格がある。

 

 やっと1人の足で立てたような魔法使いの放つ『核炎』などは、ちょっとした上級の火炎呪文のようなものだ。

 

 未熟なそれと構成する三種の力を同時に、かつ全て等しい力を行使し、それを融合する本物の『核炎』を比べるならば、大人のパンチと新生児のパンチ以上の差があるだろう。

 

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 それから暫く君たちは馬車で雑談をしたり、流れる景色をみながら過ごした。

 

 神聖国まではおおよそ3日。

 

 初日にこそ野盗がでたものの、残る道程は特に何事もなく消化した。

 

 ■

 

「我が君、ここよりカナン神聖国の領土となります。我々は首都のユーガリットに向かい、わたくしが見て、聞いてきた大迷宮の魔について報告をいたします。その性質上、我が君にも教団より話があるかもしれません」

 

 君は鷹揚に頷いた。

 

 この世界には神が存在しているのだそうだ。

 

 そして、その神を国として奉じているのがカナンであるとのことだった。

 

 神聖魔法の類はすべて神から力を借りて行使している……らしい。

 

 ともあれ君は神というものにも興味があった。

 

 というのも、ライカードにも法神という神はいるにはいるのだが、それはライカードの国教をつかさどる宗教組織が作り出した一種のガーディアンゴーレムなのだ。

 

 これは一般では知られていないが、魔導部隊に属するものならみんな知っていることである。

 

 何故そんなことを知らされているかといえば、ライカード魔導部隊は人に仇なす邪神の類も討滅しなければならないからだ。

 

 神という超常存在を必要以上に畏れてしまっては不覚を取るおそれもある。

 

 だから魔導散兵は『神などという絶対的な存在はいない、いたとしてもそれは殺せる存在であり、いってみれば神みたいなかんじの魔物である』……と考えるように教育されている。

 

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 馬車を進めること暫く。

 

 君たちの目に白い外壁が飛び込んできた。

 

 街をぐるりと取り囲んでいるように見える高く大きな壁はなるほど、一大宗教の総本山を守るに相応しいものだと思わされる。

 

 立派なものだと君が褒めると、モーブが説明をしてくれた。

 

「ありがとう御座います。あの城壁は法の壁と呼ばれておりまして、強い退魔の力がこめられているのです。例えば弱いアンデッドのような不浄の存在は、あの壁に近付くだけで塵と化すでしょう」

 

 ただ、と続けるモーブ。

 

「あくまでも不浄の存在に対する効果にすぎません。物理的な、という意味ではむしろ脆いかもしれません。見栄えを良くするという意味もありますが、魔力はこめやすいものの、衝撃に少々弱い白鳥石をつかっているのです」

 

 一長一短かと君は頷き、壁を眺めていた。

 

 奥に大きな門が見える。

 

 街への入り口だろうか? 

 

「我が君、あの大きな門がユーガリットと外界を繋ぐ大門ですわ。本来は少々時間のかかる手続きもいるのですが、さいわいにもわたくし共はこちらでは顔がききます。使命を賜ったということもございますし、難なく通れるはずです」

 

 ルクレツィアが言うと、モーブも頷いた。

 

 うん、と君は頷き、水筒から水を呷る。

 

 緊張するようなタマではないが、それでも少しワクワクしているのだろうか? 

 

 喉が渇く。

 

 未知なる世界の未知なる都市、これでドキドキしなければ冒険者ではないだろう。

 

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