君はルクレツィアとモーブの残虐ファイトに、良いものが見れたと一応の満足感を覚える。
特にルクレツィアの魔法は、君をして瞠目に値するものであった。本来戦闘用ではない魔法を殺しの道具にするとは、なかなかアドリブ力がきいててよい。
もっとも魔法の融合という観点では、さほど目新しいものではない。
例えば君の使う切り札の一枚、『核炎』は火、氷、雷、三種の呪文の合成により放たれる。これら三つの力を融合させて発生する広域破壊呪文であり、
当然、術者にも被害がありそうなものだ。だが術式にはその対策が組み込んである。対象を破壊した際の余剰エネルギーをそのまま転移へ転用し、破壊的力場ごと虚数空間へ吹き飛ばして、残留エネルギーによる被害が出ないようにしているのだ。
とはいえ
魔法に格があるように、術者にも格がある。
やっと自分の足で立てたような魔法使いの放つ『核炎』などは、ちょっとした上級の火炎呪文のようなものだ。未熟なそれと、構成する三種の力を同時に、かつ全て等しく行使して融合させる本物の『核炎』とを比べるならば、大人のパンチと新生児のパンチ以上の差があるだろう。
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それから暫く、君たちは馬車で雑談をしたり、流れる景色を眺めたりして過ごした。
神聖国まではおおよそ三日。初日にこそ野盗が出たものの、残る道程は特に何事もなく消化した。
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「我が君、ここよりカナン神聖国の領土となります。我々は首都のユーガリットへ向かい、わたくしが見て、聞いてきた大迷宮の魔について報告をいたします。その性質上、我が君にも教団より話があるかもしれません」
君は鷹揚に頷いた。
この世界には神が存在しているのだそうだ。そして、その神を国として奉じているのがカナンであるとのことだった。神聖魔法の類はすべて神から力を借りて行使している……らしい。
ともあれ君は神というものにも興味があった。
というのも、ライカードにも法神という神はいるにはいるのだが、それはライカードの国教をつかさどる宗教組織が作り出した一種のガーディアンゴーレムなのだ。一般には知られていないが、魔導部隊に属する者ならみんな知っている。
何故そんなことを知らされているかといえば、ライカード魔導部隊は人に仇なす邪神の類も討滅しなければならないからだ。神という超常存在を必要以上に畏れては不覚を取るおそれもある。だから魔導散兵は、神などという絶対的な存在はいない、いたとしてもそれは殺せる存在であり、いってみれば神みたいなかんじの魔物である──と考えるように教育されている。
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馬車を進めること暫く。君たちの目に白い外壁が飛び込んできた。
街をぐるりと取り囲む高く大きな壁は、なるほど一大宗教の総本山を守るに相応しいものだと思わされる。立派なものだと君が褒めると、モーブが説明をしてくれた。
「ありがとう御座います。あの城壁は法の壁と呼ばれておりまして、強い退魔の力がこめられているのです。例えば弱いアンデッドのような不浄の存在は、あの壁に近付くだけで塵と化すでしょう」
ただ、とモーブは続ける。
「あくまでも不浄の存在に対する効果にすぎません。物理的な、という意味ではむしろ脆いかもしれません。見栄えを良くするという意味もありますが、魔力はこめやすいものの衝撃に少々弱い、白鳥石をつかっているのです」
一長一短か。君は頷き、壁を眺めた。
奥に大きな門が見える。街への入り口だろうか。
「我が君、あの大きな門がユーガリットと外界を繋ぐ大門ですわ。本来は少々時間のかかる手続きもいるのですが、さいわいにもわたくし共はこちらでは顔がききます。使命を賜ったということもございますし、難なく通れるはずです」
ルクレツィアが言うと、モーブも頷いた。
うん、と君は頷き、水筒から水を呷る。
緊張するようなタマではない。それでも少しワクワクしているのだろうか。
喉が渇く。
未知なる世界の未知なる都市。これでドキドキしなければ探索者ではないだろう。