機動戦士ガンダム サナリィから盗んだ「小型化技術」で、禁断のサイコフレームを再起動させる負け犬たちの逆襲   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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G-B.R.Dの真意

「……はあ。この世で一番信用できない言葉、知ってる? それは『圧倒的な攻撃力』よ。カタログスペックを飾り立てる派手な主砲(メインウェポン)なんて、実は中身の空っぽな不安を隠すためのただのハリボテだったりするんだから」

 

アナハイム・エレクトロニクス(AE)第2事業部(2事)の特殊兵装試験室。あたし、アイリス・オーランド(アイリス)は、目の前に鎮座する巨大な「塊」を睨みつけ、噛みかけのガムを吐き捨てた。

 

宇宙世紀0113年。

RX-99……ネオガンダムの1号機と2号機が形になり、次に求められたのはサナリィ(S.N.R.I.)のF91が持つヴェスバー(V.S.B.R.)を上回る、圧倒的な火力の証明だった。

本社の上層部、アルバート・エルマ(専務)からの要求は極めてシンプルで野蛮。「一撃で艦隊を沈める槍を造れ」。

 

その要求への回答が、このG-B.R.D(ジーバード)だ。

 

正式名称は「ジェネレーター・ビーム・ライフル・デバイス(Generative Beam Rifle Device)」。モビルスーツ(MS)の携行兵器としては規格外のサイズを誇り、その内部に専用の大型ジェネレーターを2基搭載している。機体本体からの供給に頼らず、これ自体が独立した「動く発電所」であり「巨大な大砲」なのだ。

 

「アイリスさん、お疲れ様です。ジーバードの最終同期試験、始めますか?」

カール・シュトレーム(カール)が、重そうなバイザーを跳ね上げてこちらを見た。

 

「ええ。ジェネレーターの臨界値、15%増しで設定して。……専務が見るモニターには、派手な出力グラフだけが出るように細工しといてね」

 

「わかってますよ。……でも、本当にいいんですか? これの真の機能……バレたら、それこそ『欠陥品』の烙印を押されますよ」

 

カールが不安げに見つめる先、ジーバードの内部構造図には、公式の設計図には存在しない「空洞」と、複雑な「爆破ボルト」の回路が組み込まれていた。

 

「いいのよ。あのアゴ専務や、戦争を権力争いの道具にしか思っていないバズ・ガレムソン(バズ)大尉みたいな連中に、本当の『技術』の意味なんて教える必要はないわ」

 

あたしはコンソールに指を滑らせ、ジーバードの隠しコードを呼び出した。

ジーバードは、一見すればただの巨大なビーム砲だ。だが、あたしがそこに隠した真の機能は、攻撃ではなく「守備」……それも極限状態からの「逃走」にある。

 

大型ジェネレーターと推進剤を積み込んだこの兵器は、いざという時、ブースター・ポッドとして機能する。パイロットを乗せたコア・ファイターが機体から脱出する際、このジーバードとドッキングすることで、宇宙世紀0113年現在のいかなる追撃も振り切る「超高速脱出艇」へと変貌するのだ。

 

「……最強の武器が、実は最強の『逃げ足』だなんて、最高に皮肉よね」

 

「……アイリス。また何か企んでいるのか」

背後から、低い、けれどどこか信頼の混じった声がした。トキオ・ランドール(トキオ)だ。

深夜の極秘改修を経て、彼は1号機の「本当のポテンシャル」を知る唯一のパイロットになっていた。

 

「企むだなんて人聞きが悪いわね。これは保険よ、トキオ。あんたを死なせないための、とびきり高価なね」

 

「……ジーバードか。持ってみたが、重くて取り回しは最悪だ。だが、不思議と安心感はある」

 

「そう。それはあんたが、あたしたち技術者の『エゴ』を背負ってるからよ。いい、トキオ。この武器を使う時、あんたは『敵を殺すこと』じゃなく、『自分が生きて帰ること』だけを考えなさい。それが、あたしの設計思想(プライド)なんだから」

 

トキオは、漆黒の塗装に反射する自分の顔を黙って見つめていた。

 

その時、試験室の警告灯が赤く点滅した。

 

「アイリスさん! 大変です! 2号機の移送スケジュールが前倒しされました! 今、1事(第1事業部)のハンガーで、バズ大尉の部隊が実機を受け取っています!」

 

カールの叫び声に、あたしの血の気が引く。

まだ1号機のジーバードとの同期は完全じゃない。それなのに、あの「黒い死神」が解き放たれるというのか。

 

「……専務め、焦ったわね。2号機の暴走を『事故』として処理するための舞台装置を、もう動かし始めたんだわ」

 

あたしは震える手で、1号機の起動シークエンスを強制実行した。

 

「トキオ、乗りなさい! 1号機の封印を解くわ。……ジーバードの真の機能(コード)、今あんたのデータ・バンクに転送したわよ。使い方は……あんたのセンスに任せる!」

 

「了解だ。……アイリス、お前の言う通り、この『最強の武器』で、俺は俺の命を救ってやるよ」

 

1号機のハッチが閉まり、ネオ・サイコミュが青白い光を放ち始める。

宇宙世紀0113年。AEという巨大企業の闇の中で、一人の技術者の「祈り」を秘めた大砲が、ついに火を吹こうとしていた。

 

ジーバードの真意。それは殺戮の道具に魂を売ったフリをして、最前線のパイロットに「生還」を約束する、技術者からの最後のラブレターだった。

 

「……さあ、見せてあげなさい。数字しか見えない連中に、本当の『命の価値』ってやつを!」

 

あたしの叫びと共に、1号機の重厚な足音が、2事のハンガーに響き渡った。

戦場はもう、月面の荒野へと移っていた。

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