君は完璧で究極の式神 作:スギ花粉ナイトメア
とある高校の女子寮にて。
お風呂場で玉犬を呼びだしてみた。
白い子は尻尾をちぎらんばかりにフリフリしながら飛びついてくる。
浴槽からバシャバシャとお湯を溢れさせながら、わたしの首筋をぺろぺろと舐め始める。ちょっと重い。
黒い子はいくら呼んでも出てこない。
反抗的な子なのかと思いきや、敵に相対するといっそ過保護な程にわたしを守ろうとし、なんなら勝手に出てくる。
先日も影絵を組んだ時には既に、火山頭の呪霊の首に噛みついていた。そういえば初めて黒閃を決めたのもこの子だ。
……お風呂が苦手なのかも。
甘えん坊な白い子もかわいいし、クールな黒い子もとってもかわいい。
恵くんの所の玉犬よりもなんだか個性的な気がする。
素直な白い子をなでなでしながら、ふと思いつく。
思えばこの子達は式神の中でも特別なのかもしれない。
最初は自分の術式のことなんてなにもわからなかったから、不完全な形でしか顕現させられなかった。それでも何の見返りも求めずに「アイ」の味方をしてくれたのはこの子たちが初めてだった。
後に五条先生に教わったことだけれど。十種影法術では最初に、二匹の「玉犬」のみが術師に与えられる。その他の式神は倒して調伏する必要があった。
今は頼れるわたしの切り札「魔虚羅」も、絶対に調伏できないから顕現させてはいけないと、珍しく真剣な声音で五条先生に釘を刺されていたのだ。
結果的にいいつけは破ってしまったわけだけれど、いざ調伏に成功すると、先生は大はしゃぎだった。
そんな魔虚羅にどうやって打ち勝ったのか、実のところよく覚えていない。
なんだかとても必死な男の子の声が影から響いて、魔虚羅が足首から下だけ残して消え去った。
そんな朧げな記憶だけがあった。
約5年の歳月をかけて、玉犬たちと共に、個性が溢れすぎている十種の式神たちを調伏してきたのだ。ちょっと感慨深い。
苦労を共にしたこの子たちに、名前をつけてみよう。そんなことを思う。
式神としての名前ではなく、アイの最初の家族としての名前が必要だ。
わたしはあんまり学がないけれど。可愛いくてかっこいい、素敵な名前をつけてあげよう。
なんだかとっても不思議で、ワクワクする。子供ができたら。こんな気持ちなのかな?
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寮の自室の浴室から出ると、アイは深く椅子に腰かけて、机に向かう。
ノートを広げて、候補をあれこれ考えて、思いを巡らす。
夜も更けたころ。アイに天啓が降りた。
玉犬「黒」は「星野ブラックサファイア」
玉犬「白」は「星野ホワイトオパール」
そのように命名された。
――影から小さなため息が漏れたが、誰の耳にも届くことはなかった。
?「おにいちゃんも素直になればいいのに。」