酒寄彩葉に泣かされる優柔不断で悪いモブの話【完結】 作:ゴリラ皇子
本作を既読された方向けとなります
細かい設定等矛盾があるかもしれませんが雰囲気重視でお楽しみください
酒寄彩葉により開発された月見ヤチヨの現実世界でのボディ
それは実際の人間と遜色ないほどの精度を持っており、色々な意味で世界へ大きな衝撃と貢献をもたらした
何事も順風満帆というわけにはいかなかったが
それでも完成へと漕ぎつけたのは偏にヤチヨへの愛ゆえだろう
これはヤチヨが初めて月見ヤチヨのボディで現世へとログインした時の話
「ん、んん…?」
ゆっくりと開けた目に光が飛び込んでくる
えーとヤチヨは何をしていたんだっけ?
ぼーっと考えていると
視界にヤチヨの大好きな彩葉が顔を覗かせてくる
「お目覚めかな?」
「…彩葉?」
「おはよう、ヤチヨ」
寝起きに大好きな顔が見れたのが嬉しくなって腕を上げてその顔へ触れようとする
でも、腕が重くてその顔に触れることができない…悔しい
何故こんなに腕が身体が重いのだろうか?
考えているうちに思考がクリアになり
いまがどういう状況なのかを思い出した
そうだ
いま彩葉達の世界にいるんだ…!
「おはよう彩葉~」
つい嬉しくなって顔がふにゃりとなってしまう
「ん…調子はどう?違和感とかある?」
「身体が重いかな~って」
身体をゆっくりと起こしてみるけど…本当に身体が重い
原因は恐らくツクヨミと現実の重力の違いと肉体があるかどうかの差なのだろうか
「ヨヨヨ~今まで楽をしていたツケがきたのです~」
「ふふっじゃあゆっくり慣れていかないとね」
「うんっ」
「彩葉~もう入って良い~?」
2人で笑い合っていると扉から顔を覗かせたかぐやがそう尋ねてくる
もう半分入っているのはご愛敬ってやつかな
「ごめんごめん、もういいよ」
「ヤチヨ~かぐやっほ~!」
「かぐや~ヤオヨロ~!」
かぐやに続いて芦花、真実、朝日、乃依、雷が部屋へと入り挨拶をしてくれた
「ヤチヨちゃんよっす」
「うわぁ~ホントにヤチヨじゃん」
「おはよう」
「ヤチヨちゃんおはよ」
「ヤチヨちゃん~おはよ~」
この研究所の人を含め皆、ヤチヨの身体を作るのに協力してくれた大切な人達だ
本当に…本当に感謝しかない
ヤチヨは泣き虫になってしまったので思わず涙が零れそうになってしまう
ま~このボディはプロトタイプ的なのだからそんな機能ついてないんだけどね~たはは~
「ヤチヨ、テスト始めるよ」
「かしこまり~」
挨拶もそこそこに彩葉の指示に従って身体を動かしていく
腕を動かすたび足を動かすたび皆がおお~と驚くのはなんだか面白いなぁって思った
「じゃあ最後のテストね」
「う、うん…!」
ひと通りテストが終わり
いよいよ最後のテストとなった
彩葉が絶対につけるといってくれた機能
恐る恐る彩葉の指へふれた
続いて腕へふれる
背中へ両手をまわし
抱きしめる
「あったかい…あったかいなぁ…」
望んで願って夢見て諦めていた
大好きな…大好きな彩葉の体温を感じる
「いろは…いろはぁ…」
叶うことはないとこれが私の運命だとそう嘯いていた
ヤチヨの中のモブちゃんが泣いていた
「随分…待たせちゃったね」
安心させるように彩葉が頭を撫でてくれる
手のひらから感じるあたたかさがとても心地いい
顔を埋めた胸から彩葉の心臓の鼓動を感じると
あたたかさが全身へ広がっていく
「ううん、ヤチヨには…一瞬だったよ…」
皆が手を離さないでいてくれたから辿り着けたんだよ
そう言ってくしゃくしゃになって笑いあった
「ヤチヨ~!かぐやちゃんも味わえ~!」
「わわっ…かぐやはポカポカだね~」
我慢できなくなったかぐやが抱き着いてくる
彩葉より体温が高いのかな…あったかいなぁ
「かぐやは太陽みたいにあったかいねぇ」
「えへへ~そうかなぁ~?」
「うん~ずっと思ってたとおり…あったかい」
いつも明るくて太陽のように全てを照らすかぐや
さわったらあったかいんだろうなって
ずっと…ずっと思ってた
「心までポカポカしちゃうなぁ…」
「まじぃ?かぐやちゃん凄すぎ~!」
芦花と真実も普段ツクヨミでやっているように
頬をくっつけるようにぎゅっとしてくれる
その様子を黒鬼の3人が温かく見守ってくれている
あぁ幸せだなぁ
「彩葉…ありがとう」
「まだまだ、こんなもんじゃないから覚悟しててね」
ハッピーエンドはまだずっと先なんだと
ヤチヨが愛する人はそう言って笑った
「ヤチヨは果報者なのです…」
ヤチヨは心からそう思ったんだ
ある日のこと
YC型のボディへ幾度目かのアップデートを行い
遂に…遂にヤチヨ待望のある機能が実装された
「「祝~味覚実装~!」」
「「いえ~い!」」
「感謝感激雨アラモード~!」
場所はいつものタワーマンション
彩葉がほがらかに笑いかぐやが踊り
芦花と真実がお祝いのクラッカーを鳴らしてくれる
「せっかくのお祝いの最初がコレでいいの?」
そう言って渋い顔をした彩葉が持ってきてくれたのは
何を隠そう「彩葉特製 水と粉のパンケーキ」である
愛しいヤチヨの熱望に負け、彩葉が渋々作ってくれた
「ヤチヨ~止めといた方が良くない?これクソまじぃよ~?」
「うわ…彩葉、流石にこれはないって」
「食べ物に対するぼうとくだよぉ~!」
「いやー改めて見ると我ながらひどいね」
さもありなん、制作者の彩葉含めて非難轟々である
実際目のあたりにすると何とも言えぬ迫力がすごい
でもヤチヨはど~してもこれが食べてみたかった
そうでなくとも愛しの彩葉が作ってくれたものを残すという選択肢はない
ヤチヨは意を決してパンケーキ?を口へ入れた
「ゔっ」
「わー!ヤチヨぺっしなさい!ぺっ!」
皆があたふたと慌てふためく中、かぐやは理解者面でうんうんと深く頷いていた
口へ広がる得も言えない味の中で…微かに感じる、ほの甘い味
「あはは~クソマズいね~!」
「もー!無理しないの!」
「無理しなきゃいけないもの…かぐやへ食べさせたの…?」
夢にまで見たあのパンケーキは涙が出そうな味だった
「ヴェ~!?やっぱりクソまじぃ~!」
「ごめんね~かぐやと一緒のもの、食べてみたかったんだ~」
「かぐやちゃん愛されすぎ~?照れますなぁ~」
「ゔっ…彩葉これ本当やばいよ…」
「彩葉~?」
「うぅ反省してます…」
せっかくだからと皆で食べてみたけど阿鼻叫喚の有様である
彩葉が真実に怒られるという珍しい光景が見れた
笑っちゃダメなんだけど…ごめんね彩葉~
「さて、じゃあお口直しといきますか」
「「ご査収くださ~い」」
「「いぇ~い!」」
次に彩葉達が用意してくれていたのは
ふわっふわのパンケーキ!しかも3段重ね!
かぐやとハイタッチして喜びを分かち合う
「ふわぁ…♡」
真実監修のもと作られたパンケーキ
上部にアイスが鎮座しておりその上へイチゴがちょこんと乗っている
目の前へ置かれた極上のパンケーキにヤチヨの目がキラキラ輝く
その様子を彩葉達が微笑ましいものを見るように見守っていた
「ヤチヨ、召し上がれ」
彩葉の言葉へこくこく頷き
恐る恐るパンケーキを食べやすいように切り分けると
ぎゅっと目をつぶって口へと入れる
身体を包む極上の甘み
全身がとろけてしまいそうになり自然と口角が上がっていく
あまりの美味に落ちそうになる頬をとっさに押さえるが
抑えきれない感情が溢れ気づけば身体中で喜びを表現していた
「おいしぃ~~~♡」
くねくねと身体を動かしながら
とろけきった顔で感じたままを言葉にした
だって~本当に美味しいんだもん~!
「んまぁ~!」
「食べるの早すぎっ」
「はっへ~がまんできなひぃ~」
「分かるーヤチヨちゃん見てたら私も食べたくなっちゃうもん」
「いや~喜んでもらえて良かったよ~うまぁ~」
「おいひぃ~♡しあわせ~♡」
ひと口ひと口を噛みしめるように食べ進めていく
パンケーキは本当に、本当に美味しくて
あっという間になくなってしまった…
もっと食べたいなぁ
ふわふわパンケーキ…
しょんぼりした気持ちで空になったお皿を眺めていると
「あ〜ん」
そう言って彩葉がパンケーキの刺さったフォークを
ヤチヨの口へと持っていく
彩葉はこうしてヤチヨの喜ぶことを本当に沢山やってくれる…
もう…もっと好きになっちゃうよ…
「あ〜ん♡」
ヤチヨは愛情が最高の調味料という言葉を実感することになる
だって彩葉がくれたそのパンケーキはさっきよりも甘く感じたのだから
「かぐやも!かぐやもやって!」
そうやって5人で幸せな時間を過ごしていると
真実がこんなことを言い出した
「家で作るのもいいけどさ、食べ歩きとかしてみたいよね~」
「パンケーキの食べ歩き!?いく!いく~!」
「パンケーキ限定なんだ」
「ヤチヨは本当にパンケーキ好きだね~」
「うん♡好きぃ〜」
彩葉に苦笑されてしまうが仕方ない
ヤチヨのパンケーキへの思いは生半可なものではないのだから
その証拠に
「ヤチヨね…?」
「うん?」
「パンケーキ食べたすぎてね…?」
「待って???」
彩葉が嫌な予感を感じて静止をかけるが
一足遅かった
そしてヤチヨは今まで誰にも明かしていなかった
ある秘密を打ち明けた
それは、もちろん
「ツクヨミの地形、パンケーキにしちゃった…♡」
衝撃の事実にかぐや達が声も出ず絶句するなか
彩葉は渾身の叫び声を上げた
「蛇足ぅー!!!」
水と粉のパンケーキを作るときは思った10倍水を入れた方がいい
感想と高評価、並びにお気に入り登録ありがとうございます!
神々の皆様が楽しんで読んでいただけていることが何よりの救いです
後日談をあといくつか投稿したいと考えておりますので
引き続き感想・評価よろしくお願いいたします!
読みたい後日談
-
復帰ライブ・10年後ライブ
-
ジョンカーターの子孫
-
YC型の初起動・味覚実装