流れるままに   作:小粒でピリリ

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ポケモンたちと日常を過ごしたいね。


昼寝日和

 穏やかに過ごすことが好きだ。柔らかな風が頬を撫で、爽やかな川のせせらぎが耳を擽る。穏やかな日差しは眠気を誘い、枕にしたウールーからはお日様の匂いが漂う。夜になれば都会にはない満点の星空を天井に鍋をかき混ぜる。香りに誘われて寄ってきたポケモン達と食を共にし、カレーに舌鼓を打つ。特別な事は何も無いし、かといって退屈なわけでも無い。誰にも指図されず、気ままに過ごせるここハロンタウンはまさに理想郷だ。生まれた場所がここでよかったと心の底からそう思う。

 

 

 5歳になった年の春、麗らかな日差しの中いつものように放牧されてるウールーを枕にしてると、頭上に影が差した。見上げると見慣れない顔の女の子がこちらを見下ろしていた。

 

「初めまして!今日引っ越してきましたユウリです!」

 

 どうやら新しい住人だったらしい。隣の家が改装工事してたからお隣さんかな?

 

「初めまして〜。僕はサンショだよ。よろしくね」

 

「えへへ、よろしく!まだハロンタウンのこと全然知らないから教えてくれると嬉しいな」

 

「もちろん。穏やかで自然豊かなハロンタウンの良さ、いっぱい紹介できるよ。まず手始めにこの子なんてどうだい?」

 

 そう言って僕は自分の隣のウールーの毛をポフポフ叩く。

 

「いいの!?」

 

 ユウリちゃんは目を輝かせながらも恐る恐るウールーに手を伸ばす。

 

「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。この子はいつも枕になってくれる優しい子だからね。人慣れしてるんだ」

 

「ぐめめぇ」

 

「う、うん」

 

 そしてユウリちゃんが伸ばした手はウールーの毛に沈み込んだ。程よい弾力と心地よい暖かさに包まれた彼女は先ほどの緊張した表情から一転ふにゃりと破顔して身を預けた。

 

「なにこれぇふかふかであったかい…。お日様の匂いがして落ち着く…」

 

「ふふ、一発で気に入ったみたいでなによりだよ。僕こうやってお昼寝するのが好きなんだ。ユウリちゃんもこれからやってみるといいよ」

 

「いつでもこのふかふかに会えるなんてここは天国?」

 

 ユウリちゃんは顔を埋めながらそう言った。相当気に入ったようだ。

 

「まだまだ序の口だよ。これからもっとここの良い所教えてあげるから楽しみにしてて」

 

「うん〜。ありがとぉ〜」

 

 最初の溌剌とした彼女はもはやおらず、今いるのは極上の羊毛の虜になった人間が一人。

 

「こうしてまた一人虜になりましたと。君は罪なポケモンだねぇ」

 

「ぐめ?」

 

 頭を撫でながら語りかけるとウールーは何もわかってないような表情を浮かべながらもされるがままだった。

 

「さて、じゃあ次はどうしようか。ユウリちゃんは何か気になる事ある?」

 

 いまだにウールーに抱きついているユウリちゃんに声をかける。しかし返事はなかった。不思議に思い様子を確認すると、どうやらリラックスしすぎてそのまま寝てしまっているようだった。

 

「ありゃ、寝ちゃってる。疲れてたのかな」

 

 初めて訪れた土地に興奮してたのか、はたまた緊張してたのかは本人しか分からないけれど、ゆっくり過ごしなよ。ここでは急ぐ必要もせっつかれることも無いんだしさ。

 僕は横に置いていたリュックを手繰り寄せて、中からうちの畑で採れたウイのみを取り出す。来ていたパーカーを脱いでユウリちゃんに掛け、ウイのみはウールーにあげる。この子は珍しくしぶい味が好きなんだ。

 

「いつもありがとうね。悪いけどもう少しだけお願いできるかな」

 

「ぐめしゃ」

 

 ウールーはむしゃむしゃとウイのみを咀嚼して、ケプッと息を吐いて満足したのか眠りについた。僕も元の位置に戻ってもたれ掛かる。優しい日差しと暖かく柔らかい羊毛に包まれる中、今日もいい日だなと目を閉じる。

 

 ここはハロンタウン。人とポケモン、そして自然が集う憩いの町。新たな住人を迎えども、今日も変わらずお昼寝日和。

 

 

___________

 

 

 横からモゾモゾと動く気配を感じて瞼を開ける。どうやら僕も寝落ちてしまったみたい。隣には今日引っ越してきた新たな住人のユウリちゃんが伸びをしていた。

 

「おはよう。お昼寝はどうだったかな?」

 

「おはよ〜。ウールーのおかげでとってもグッスリ眠れたよ。ありがとう!」

 

「ぬもぅ」

 

 ユウリちゃんはウールーを優しい手つきで撫でる。心なしか僕が撫でるよりも気持ち良さそうにしてない?

 

「ここがいいの?うりつり〜」

 

「ぐめめめめぇ」

 

「元から人懐っこい子だけど打ち解けるの早いね。ユウリちゃんはポケモンに好かれるタイプなのかな」

 

「そんな事ないと思うけど?サンショ君の言う通りこの子が特別人懐っこいだけじゃないかな」

 

会話を続けながらも撫でる手は止めないユウリちゃん。ウールーはもはや五体投地の姿勢だった。

 

「いやこの子のこんな姿見た事ないんだけど…。ユウリちゃん特性テクニシャン?」

 

「特性なんて持ってないよ!?」

 

 ユウリちゃんは反応が大きくて面白いなぁとか考えてると、リュックから出てきたスマホロトムが肩を小突いてきた。

 

「ん、結構日も落ちてきたなぁ。そろそろ帰らないとね。ユウリちゃんは新しい家までの道分かる?」

 

「あ、うん。この牧草地の横の道をまっすぐ進んだ先にある森の手前って聞いてるよ」

 

「じゃあやっぱりお隣さんなんだ。その横僕の家なんだぁ。改めてお隣さん同士これからよろしくね」

 

「うん!こちらこそよろしく!」

 

 そうしてウールーに手を振って別れを告げながら二人で牧草地を後にする。ウールーはコロコロと転がりながら厩舎へと帰って行った。夕陽に照らされた土の道を歩きながらふとユウリちゃんが口を開く。

 

「実は初めての場所に行くの不安だったの。知ってる人も居ないし、友達できるかなって。そんな時ウールーを枕にして寝てるサンショ君を見かけたの。すごい安らかな顔してたから気になって声をかけに行ったんだ」

 

「今日はとてもいい天気だったからさ、これは絶好の昼寝日和だって直行したんだ。そしたら新しい出会いがあったし今日はいい日だったね」

 

「えへへ、ありがとう。サンショ君はいつも何してるの?」

 

「僕?そうだなぁ、家の畑の手伝いした後は川に涼みに行ったり森から遊びに来た友達と昼寝したり、今日みたいにウールー枕で昼寝したり、雨の日ならベットで雨音を聞きながら昼寝したり…」

 

 あれ、改めて思い返せば寝てばっかりだな。僕もしかして寝過ぎ…?まぁいいか。

 

「寝てばっかりだね…。確かに今日のお昼寝はすごいリラックスできたけど、そんなに寝たらカビゴンになっちゃうよ」

 

「カビゴンかぁ。いつかあのお腹の上で昼寝してみたいな。絶対気持ちいいと思うんだ」

 

「そう言う事じゃなくて…確かに気持ち良さそうだけど」

 

「何事もマイペースが一番だよ。変に焦ったり無理したりする方が上手くいかないんだから。僕にとってのマイペースはのんびりやってく事」

 

「マイペースね。君の過ごし方を聞いてハロンタウンがすごく穏やかな場所だってことがよく分かるよ。いい所だね」

 

 そう言ってユウリちゃんは微笑んだ。

 

「でしょ?自分の好きなものを褒めてもらえると嬉しくなるね。このお昼寝マイスターに任せて貰えばおすすめお昼寝スポットを色々教えちゃうよ〜」

 

「寝過ぎは良くないと思うから程々でお願いしますー」

 

「りょーかい〜」

 

 なんて会話をしながら歩いていると、あっという間に家へと辿り着いていた。

 

「ありゃ、もう着いちゃった。お喋りが楽しくてあっという間だったね」

 

「こっちがサンショ君の家ってことはあっちが私の新しい家なんだ」

 

「ハロンタウンに来るの初めてって言ってたし引越し先の家に来るのも初めてだった?」

 

「実はそうなんだ。お父さんたちと別れる前に道順は聞いてたんだけど、サンショ君がいてくれて助かったよ」

 

「お役に立てたようで何より。それじゃ、またね」

 

「うん!またね」

 

 そうして僕たちは別れを告げてそれぞれの家へと帰った。




ウールーはもふもふ。
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