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榻に仰向けになっていた奏文は、物思いに耽っている内に、寝てしまっていたようで、彼はふと目覚めると、辺りはすでに真っ暗だった。ひっそりしているはずが、外で話し声が聞こえ、そのために彼は起こされたのだった。
「おい、お前らのような薄汚い浮浪者が村に居座るな」
「な、何ぃ~!」
外でのやり取りを奏文は耳で聞くだけだったが、どうなっているのか、あらかた推測は立った。
彼は体を起こして榻より下り、あまり気乗りしないものの、外に出ていった。
……。
たいまつを持った夜警の男が、厳しい顔で、宿のそばで並んで座っている許義たちを照らし、尋問しているようだった。そして許義たちは、自分たちの居場所をおわれそうになって、抵抗しているようだった。
奏文は物陰よりこっそり様子を窺うことにした。
「勝手に村に入りやがって」
「おれたちは悪いことはしちゃいない。ここで休んでるだけだ」
「その身なりで信用しろというのは無理がある。お前たちの着ているボロは、その日食べるものさえ満足に得られないことを示唆している」
「ぐっ」、と許義は下唇を噛んだ。図星のようだった。「人を見た目で判断するな。放っておいてくれ」
彼の隣に座る巨漢の岩良は、この状況にも関わらず、眠気に負けて彼等のいさかいなどどこ吹く風という感じで熟睡している。
「いつ侵入してきた?」、と夜警の男。
「侵入なんてしちゃいない。おれたちは堂々と訪れたんだぞ」
「嘘つけ……ん?」
夜警の男が頭ごなしに否定するところに、奏文が現れた。彼の顔がたいまつの火に照らされる。
「誰だ、お前は」
「ここの宿でついさっきまで安らかに眠っていた者だ。何か騒がしくて起きてしまってな」
「それは悪かったな。だが、こっちも村の治安を保つ責任があるものでな」
「彼等は」、と奏文は許義たちの方を目だけで、少し意に染まない感じを覚えたものの、「わたしの連れ合いだ」、と言った。
「連れ合い? お前とこいつらとでは、どうも妙な組み合わせに見えるが」
夜警の男がきょとんとする。
「事情があるのだ。わたしが宿賃を節約したばかりに、彼等は締め出される羽目になった」
「成るほど」
「今晩のところは見逃して欲しい。皆、旅で疲れているのだ」
「そうして欲しければ、お前がこいつらの見張りをしろ。この夜暗い中、盗みなど働かぬように」
そう言われ、許義はギロリと夜警の男を睨むが、蔑むような冷たい目線で返された。
「分かった」、と奏文。「夜が明けるまで、ここで三人で固まっていることにする。用便以外では動くまい」
「そうしてくれ。おれも早く巡回を再開せねばならないのだ」
「面倒を起こして悪かったな」
奏文が陳謝すると、夜警の男は納得して去っていき、夜中の静寂が辺りを包み込んだ。
奏文は許義の隣に座り、「やれやれ」と言った。「結局一人分の宿賃さえ要らなかったというわけだ」
「運が悪かったですな」、と許義。岩良は鼻をピーピー小さく鳴らしながら寝ている。
奏文と許義は、寝静まった村中への気遣いから、声をひそめて話した。
「明日は、お前たちは身なりを整えるべきだな」
「でもおれたち、銭なんか持ってやしないですよ」
「わたしだって持ってないぞ」
「じゃあどうするんです」
「稼げばいいじゃないか」
「稼ぐって、どうやって?」
「仕事を探すんだよ。探せば何かあるだろう」
「ありますかね。おれたち、戦場で働いたことしかありませんが」
「悪人か何かがいて、そいつをやっつける仕事でもあればいいな。廃墟にいたお前たちみたいに」
「そうですね。おれたちみたいなヤカラがこの辺りに出没してたとして、おれたちはそいつらをやっつけて、村から報酬を貰えばいい、そういうわけですね。何か引っかかりますが……」
夜空に無数の星が瞬いていた。きらびやかだったが、奏文の夜空を見上げる目は、その内しょぼついて来、中断していた眠りの気配が近付いてきていた。彼は腕組みしてがっくりと項垂れる恰好で眠り、許義は岩良の腕にもたれかかっていびきをかいて寝た。
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