第11話
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奏文は金策のために仕事を探して、村中の人々に声をかけてみたのだが、案外あっさりと見つかった。それが軽作業などであれば気軽だったのだが、その実重労働のようだった。
最初奏文は通りを行く一人の男性に尋ね、彼は農業従事者のようだったが、家の仕事が忙しいと奏文に援助を求め、それが出来ればきちんと報酬を出すと約束した。
「分かった。しかしどういう仕事なのだろう?」、と奏文。
「女房に聞いてくれ」、と農業従事者の男は返し、指で近傍の家屋を示した。そこが彼の家のようだった。村中に並ぶ瓦屋根の一軒だった。男は先を急ぐのか去っていった。
「ぶっきらぼうな男ですね」、と許義。隣に立つ岩良はうんうんと頷いて同意する。
「馴染みのない顔なのだから、致し方なかろう」
どういう仕事をせねばならぬのか、奏文たちはいまいちしっくり来なかったが、とりあえず家を訪問してみることにした。
木製の二枚扉の内片方が、採光のためか開いている。
奏文がノックして入ってみたが、中には数人の女性が床に座って何やら作業中のようだ。白髪頭でしわしわの高齢の女性、ざんばら髪の中年の女性、溌剌とした若年の女性という三人だったが、彼女等はそれぞれ親と子に見える。
「何だい、この忙しい時分に」、と高齢の女性が苛立ちを滲ませて言う。
屋内にはうっすらと湯気がたちこめていて、竈の鍋で湯が煮立っていた。若年の女性は鍋を棒でかき混ぜており、中年の女性は台の上で何か整理しており、高齢の女性は糸繰車を操作している。彼女等が協力してやっているのは、紡績作業のようだ。
「ここに仕事があると聞いて来たのだが」
「あぁ、その通りにあるさ。たっぷりとね」
「だとさ」、と、奏文が背後に隠れるようにしている許義の方に振り向いて言う。
「『だとさ』って、おれたちに振られても……」
「この者たちの衣服を購う金を稼ぐために、手伝わせて貰おう」
「ケッ」
高齢の女性が、許義たちのボロを見て軽蔑するように唾を吐き捨てる。
「糸繰車が空いてる。今は蚕の繭糸を絹糸にしてるところなんだよ」
台上で作業している中年の女性が、奏文のところに籠を持ってきてハイ、と手渡すのだが、中は白い繭糸でいっぱいだった。
奏文たちはきょとんとして突っ立っているばかりだ。
「ほら、糸を渡したんだから、早くやっておくれよ」
中年の女性が呶鳴り、奏文たちはその怒声にたじたじになって、勝手が分からなかったが、とりあえず空いている糸繰車の前にそれぞれ糸で満杯の一箱を持って付いた。
そして使い方が分からずおどおどしていると、中年の女性がやってきて、ビシバシ新人の助っ人たちを指導した。
奏文たちは久々に女性に怒鳴られることの怖れと驚きに震えあがって恭順にその指導に従い、早速命じられた作業に入っていったのだった。
新人だけど三人も加わればずいぶん楽に作業が進むだろうと彼等は半ば侮って予想したが、思いのほか紡績作業というのはコツがいり、体力も要して、苦労するのだった。
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