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廃集落に住み着いていた賊と思しき男たちは、いい生活をしていなかったのか、ひどく衰えていて、人数の割に弱く、旅人風の男『奏文』は、彼等の洗練されていない攻撃を比較的容易に潜り抜け、反対によく磨かれた武芸でもって、彼等を打ち負かしてしまった。
賊たちの内何人か奏文の華麗なる反撃によって死んでしまったが、戦いの途中で不利を悟ると、乱れた長い髪の妖怪めいた男が降参と叫び、命乞いした。
「頼む。殺さないでくれ」
腰を地に着けて正面に突き出した片手をわなわな震わせる男は、そのように哀願した。
「一人と思って侮っていたようだが」、と剣の切っ先を相手に突き付けて、奏文が言う。「あいにくわたしは、武芸の道には通じている」
「おれたちの負けでいい。だから許してくれ」
妖怪男の辛くも生き残った仲間たちは、ぐったり倒れるか、伸びてしまっている。
「ここで何をしている。元々住んでいたはずの住人はどうした?」
「分からない。おれたちは戦争で敗れた落人で、逃げてきたんだ。ここは最初から廃墟だった」
「そうか」
納得したように言い、奏文は剣を鞘に納めて片手を柄の上にのせ、首をひねって空に目を遣った。夕闇が濃くなっていて、夜が迫っていた。下草を揺らす風が乾いていて涼しく、けれど、出血した死体が放つ血なまぐささが、うっすらとその涼感に混じり込んで、風情を削いでいた。
「戦争か。どこへ行っても、そればかりだな」
奏文がどこか憂わしげに、そう呟く。
「アンタは強い。やるまでは分からなかったが、相当なもんだ。旅人なのか? どこかの国の軍隊に入れば、出世できるだろうに」
「そうかもな。あまり興味がないが」
「なぜだ? そこまで強いのに」
「よく言われる。まぁ、ただの物好きとでも思っておけ」
そう言い、奏文は馬の方に寄っていき、ヒョイと跨ると、ゆっくりと進める。
妖怪男は怪訝そうにポカンとして立ち上がると、「おれたちを殺さないのか」、と叫んで尋ねた。
奏文は彼等の方に一瞥をくれたが、濃くなっていく夕闇の下で、賊たちの姿は、ひどく悲壮に見え、一度は手をかけたが、殲滅しようという気は、彼にはなくなっており、プイと正面に向き直ると、脇腹をトンと蹴って馬を走らせた。
その日夜を明かす場所を彼は探していて、野原の中にポツンとある集落は恰好の環境に思え、幸運と思ったが、蓋を開けてみれば賊の住処となっていて、訪れた際にざっと見てみたが、廃屋の中に白骨化した死体があったりし、賊のことと合わせて、不適当と判断した。
どこかの木陰で休むしかあるまい、そのように奏文は憂わしさと共に考え、暗くなっていく空の下、いささかの焦燥感と共に、馬で走るのだった。
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