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東涼の領土の境界線の近くで、王朝軍と黄氏の軍の戦争が勃発して以後、早急に情報が伝令の派遣によって集められ、戦況は、黄氏の方が有利のようだった。また、各地で起きている反乱において、反乱軍が節度使を制して自治権を奪い取ったという知らせがいくつか届けられた。
機運が巡ってきているようだった。長い平和に慣れた王朝政府は、外部の民族と手を組んだところで、もはや乱を鎮める決定的な能力を有しておらず、王都は続々と戦場と化し、荒廃し、時代の相は混沌の感じを強めていた。
奏文たちは、黄氏の軍の援軍として現地に送り込まれ、そこで武勇を揮った。敵方の士気は高くなく、統率が取れておらず、脆かった。敵方の軍は、王朝政府の擁する最大の軍団であり、これが崩れれば、王朝政府は全てを失ったのと同然だった。彼等は敗北し、崩壊し、分散した。
王朝政府は皇帝がいる限り存続し、皇帝は、辛くも地方に逃げ延びた。
奏文たちは、戦争で荒廃した王都の復旧作業に、戦後従事することになった。損壊した家屋を立て直し、井戸を掘り、城門を構え、新しい皇帝のための宮殿の建築が企てられた。
優れた技術者などではない奏文たちは、建材の運搬を主にやっていた。これから新たに建てる建物もあれば、部分的に修繕する建物もあり、運ぶべき建材は夥しくあり、人手はいくらあっても多過ぎるということはなく、奏文たちは馬車馬のように働かされた。
人の上に立つのも下に立つのも好まない奏文は、使役されるばかりの生活にうんざりしていたが、一段落付くまでは投げ出さないつもりだった。せめて王都の復旧のめどが付くまでは、今の曹栄の配下という立場に甘んじ、その後はまた旅立つ腹積もりだった。許義と岩良は……同伴するか定かではなかった。
奏文たちは王都内に簡易に作られた仮設小屋で寝食する生活を送り、その内、黄氏が皇帝を追い詰めて廃し、みずから名乗り上げて新しい皇帝となった旨の知らせが聞こえた。
だが――奏文たちにとって、この知らせは欣快ではなく、心中複雑だった。
なぜなら、黄氏というのは……
「痛っ!」
そう言って、木材を持ち上げた許義は顔を引きつらせ、その場に跪いて木材をほとんど落とす格好で下ろし、腰をさすった。重い木材を運び続けたため、とうとう腰を痛めたようだった。
休養が必要だったが、作業の指示を出す黄氏軍の将兵が、厳しく許さなかった。東涼の軍は同盟を結んだというのに、黄氏軍に対して対等ではなく、隷属の恰好だった。
黄氏軍の者は、王朝政府を倒した、いわば英雄だというのに、そこに拠って立つべき義がなく、蛮族同然だった。そのため、人を導くということが分からず、上の立場に立つと、とにかく下の者を雑巾のように雑に使うのだった。
許義は何度か木材の運搬を試みようとしたが、故障した腰で運搬など出来るわけがなく、将兵は大きなため息を吐くと、諦めたように彼に拘泥することをやめた。許されたわけではなかったが、とにかく許義は壊れた腰をいたわる時間を与えられたようだった。
奏文は、体が壊れないよう、のらりくらりと作業に従事し続けたが、黄氏軍の将兵に監督されて作業するこの生活に、ひどくムカムカしていた。
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