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真冬の夜の暗い、厳しい寒さの中、都を脱した奏文たち三人は、元いた村への途についた。吐く息が白く凍り、彼等は嫌な予感がしていたが、それは的中し、夜空から雪がチラチラ降ってきた。
向かう方角は東北だった。途中彼等は幾つかの山々を踏破せねばならず、確かに彼等の今回の冒険は、黄氏軍の支配から脱して自由を取り戻すという意義はあったが、同時に真冬に旅することの危うさがあった。
彼等は平原をずっと山並みの方に向かって、体の芯まで冷たくする冬の強風に吹かれながら、自身の身を抱いて歩いていた。
「馬でもいてくれりゃ、ずっと楽になるんですけどね」、と許義。
「前みたいに岩良におぶって貰ったらどうだ?」、と奏文。
「高いところは寒さがキツいんです」
「馬に乗っても同じだぞ。向かい風がこの時期は、殺人的にまで冷たくなる」
見通しの悪い暗夜。厳寒。不安。様々な負の要素を、旅する彼等は抱えていた。そういう彼等は体力の消耗が激しくなりがちで、夜が明ける前に、ぐったりし、山並みより少し手前にある木立に入ると、荷物の中から幌を出し、木々の間に張って、風よけにした。遊牧生活を送る異民族の道具が大陸に流入して広まったものであり、これを張りさえすれば、どこでも雨風が凌げるのだった。
風に煽られて揺れる木々の葉がザラザラ擦れる音と、フクロウの鳴き声が聞こえる。
隙間風がいささか侵入してはいたが、平原ですっかり晒されていた時に比べれば、幌の中は、ずっと寒さが和らぎ、快適だった。
三人は布を被って横になり、休息に入った。
「寒すぎて寝られそうにないです」、と許義。
「岩良はもう眠った様子だぞ」、と奏文。
「コイツは生来が図太いんですよ。いつでもどこでも寝られる」
「本当に、不思議な男だな」
「えぇ。図太くて、健気なヤツです」
三人は余り気乗りしなかったが、男同士で身を寄せ合って横になった。巨体の持ち主の岩良が寝返りでも打てば隣の者は押し潰されて大変だが、離れて寝るよりずっと温かだったし、この温もりがくれる安気さが、この苦境においては重要だった。
「連中、追ってくるでしょうか?」
「労働者はあそこにたくさんいる。皆使い捨ての駒だ。私たち三人が忽然といなくなったところで、問題にはなるまい」
「もし俺たちが、あそこで最後まで奉仕して、都の完成まで漕ぎ付けたら、それなりの生活が送れるようになったんでしょうか」
「どうだろう。そもそも、都がいつ充分に整備されるのか、まるで予測が付かない」
奏文がそう返すと、沈黙が全体を覆った。その内、許義があくびをして、奏文もそれに釣られた。
彼等は岩良に遅れてしばし眠ることにした。あまり長くは眠らないつもりで、せいぜい夜明けまでだった。
木々のざわめきが、フクロウの鳴き声が聞こえていた。
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