第41話
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村に戻った奏文たちは、彼等が企てていたように、元やっていた李転の家業に復することにした。蚕は冬に活動しないので、新たな繭は生産されず、やることはといえば、桑畑の木々の剪定と、道具の整備くらいのものだった。蚕が活動していた時期は多かった労働量が、秋冬になると半減し、奏文たちは、労働力としては余り歓迎されるものではなかった。
許義と岩良は、その桑の木々の剪定に従事することに決め、李転の管理下に入った。
奏文といえば、いよいよ望郷の念が昂じて来、父母への心配から、一度様子を確かめに帰ろうと思い、その実行のために、まずは失った馬、迅影の捜索をしないといけなかった。
帰村後、旅先での模様に興味を持った徐氏に話を求められた奏文は、彼女に従って滔々と話し、旅と絵描きの好きな彼女は、どこにどういったものがあるのか興味津々のようだった。女性というのは生来話好きの気質がある場合が多く、徐氏は盛んに質問し、貪欲に情報を得、想像した。
徐氏の家では、紙の製造が行われていて、旅に出ていない間は、徐氏は父母の手伝いに従事するのだった。隙あらば趣味のために旅に出かける風変りな娘のことを、彼等は余り喜ばしく思っておらず、時折見せるため息は、彼女の素行に対してのもののようであった。
彼女の住居兼工房には、紙を漉く時に用いる台とすのこがあり、別のところには長方形のすでに出来ている紙が重ねて置かれている。
奏文はちょっと聞きたいことがあって訪ねたのだが、徐氏の父母の白い目に引け目を感じ、比較的温かい屋内から、寒空の下に出てきたのだ。二人は村の端の低い石塀のところで、村外の風景に向かって並んでいた。空は晴れていたが、雪が積もっていた。山の岩肌はいかめしく露出し、枯草と枯れ木は雪に降られてしなびていた。朝日が頂点まで上ろうとする頃だった。
奏文は馬を失ったことを彼女に伝えた。
「迅影っていうんです。父に譲り受けた駿馬で、どうもここの飼育員に預けた後、彼と共に行方不明になってしまったようで……」
「伝説の汗血馬なら、短い期間で長い距離を移動します。あるいはもう遙遠の異国まで行っているかも知れませんね」
「旅する日々を通じ、わたしはあの馬を手懐けてきたつもりです。餌を貰ったり愛撫されたりしたくらいで、他人にたやすくなびくような恩知らずではないと信じてます」
「胡馬北風に依るといいます。奏文さんの馬がもし忠誠心を保っているならば、今頃心細く帰りたがっているでしょう」
「であれば、迎えに行ってやりたいものですが、いかんせん場所の手がかりがまるでないものでして……」
ふと、ぶっきらぼうに声がかけられ、奏文と徐氏は振り向いたが、彼女の父が娘を連れ戻しに来たのだった。奏文は恐縮して話を打ち切りにし、別れ際徐氏は、馬の商人が村に来るから尋ねてみるといいと、彼に勧めてくれた。
各地で馬を見て回っている商人なら、確かに何か知っている可能性があるという風に奏文は納得し、その時を待って聞いてみることにした。
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