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奏文は、旅で寄った東涼の、廃れてしまった村に散らばる遺骸を集め、許義のものと共に、火葬した。その日はまだ冬の只中で、雪が降っていて、大勢の骸に燃焼する炎はメラメラと燃え盛り、煙は降雪に抗するように灰色の空へ昇っていった。
奏文と、岩良と、徐氏の三人で並んでしゃがみ、その光景をぼんやり見、ついでに暖を取っていたが、それぞれどこかボーッとして上の空だった。許義をはじめとして、李転が、彼の女房が、母が、奏文の知己だった者たちが、見るも凄惨なる恰好で、勢いの増す炎に包みこまれ、チリチリという燃焼音と共に、黒くなっていった。
結局、許義は、勇を鼓して、情が芽生えたという、李転のめとられた娘を、彼の気に食わない兵士のところより奪い去るべく、奮闘したのに、こういう末路になってしまった。それがひどく虚しいように思え、奏文は、意気消沈してくるのだった。
「この炎が燃え尽きたら、この村を発つつもりです」
奏文がそのように、誰に対してでもなく言った。
徐氏はハッとし、どこか心細そうに、「どこに?」と尋ねた。
「ふるさとです。一旦帰るのです。母が単身待っているので」
「そうですか」、と徐氏は、やはり寂しそうに述べた。「羨ましいことです。わたしは父母をなくしてしまいましたので」
「岩良が付いてくるのですが、徐さんもいかがですか?」
「よろしいのですか?」
「わたしと岩良が去って、徐さん一人になっては、不安でしょう。世の中はまだまだ安寧には程遠い」
「ありがたいお言葉。ぜひ甘えさせていただきたく存じます」
村人たちを葬る大いなる炎は一日中燃え続け、月が空に浮かびだす頃になってようやく弱まり、そして消えた。後には真っ黒の炭だけが残った。
奏文たちは三人で協力して、事前に深く掘っておいた穴の中に、炭と化した骸を埋めていった。廃屋が並ぶ村の様相は、未だに不穏で戦乱の雰囲気が濃く留まっていたが、そこに人の遺体が残っているよりは、はるかにマシに思われた。
その夜を明かして翌朝に、奏文たちは出立することにした。
比較的損傷の少ない家屋で風雪を凌ぎ、奏文たちは夜くつろいだ。
寝る時、奏文はなかなか寝付かれなかった。これまでのことがめくるめく目蓋の裏に蘇ってきて見え、興奮が覚めなかったせいだった。父との日々、一年余の旅生活、賊だった許義たちに遭遇し、命を奪い合ったが後に打ち解けたこと、黄氏軍指導のもとでの労働生活、許義の死、そして、全てを包み込む大いなる焔……。
身の回りに起きた全てのことが、過去という隔たりを越えて当人の心に再び回帰して来、当時と同じか、あるいはそれ以上の深い印象を彼に刻んだ。
母は変わらないだろうか、と奏文は想像した。
父のいなくなったふるさとの情景は、奏文が旅立つ頃のものとは違う雰囲気となっているだろうが、それでも、彼は、何か胸温まるものの存在を信じてやまなかった。
ふるさとというのは、そういうものなのだろうかと、奏文はぼんやり考え、その内彼を覆う闇が濃くなり、深い眠りに入っていったのだった。
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