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最早関わる必要はあるまいと見捨てたはずの許義たちと再び行動を共にしていることに、奏文自身、怪訝に思わないではなかった。
「お目をかけていただき、本当にありがとうございます」
馬に乗っている奏文のそばで、許義が両手を擦り合わせてにこやかに言う。彼はなぜか奏文と同じ目線にいたが、巨漢の岩良の肩におぶさっているのだった。
「勘違いするな」、と奏文は忌々しそうに眉をひそめて返す。「赤貧なのに野辺にポツンと取り残されるお前たちの境遇を思い、哀れで仕方なかっただけだ。人里に着くまでの限定的な関係に過ぎない」
「わたしは、奏文様に仕えたく存じます」
「冗談ではない」
奏文は微かな身震いと共にそうはねつけた。
野原の先の山岳地帯の斜面を、奏文たちは進んでいた。空は青天井が覗いているものの、おおむね曇り模様で、厚い灰色の雲の陰が山地を暗くしていた。
「お前たちには、聞いておきたいことがあったのだ」
「といいますと?」
「落ちぶれるまでの経歴だ。どこかの国の軍隊に所属していたのだろう?」
「えぇ。わたしたちは辺境の兵士として働き、常日頃、王朝の最も外縁に位置することから、王朝に与しない周辺諸民族としのぎを削っておりました」
「国境の防衛か」
「仰る通りです。わたしたちは王朝に忠義を持つ者として、その権勢を死守すべく努めました。ですが……」
下草の生える広大な斜面をずっと行くと、行く方角に向かって斜面がなだらかに下っていくようになり、下方に、建物の密集が見えた。
「村だ」、と奏文が言う。
「そのようですね」、と許義。
「廃墟でないことを願うが……」
一行は下り坂の斜面を下りだし、また話が続けられた。
「さっきの続きを申せ」
「はい」、と答える許義は、岩良の肩より跳び下り、それぞれ単独で歩きだした。
「我々は辺境の鄙びた都市の兵士に過ぎませんでした。それに対し、相手は北方騎馬民族。屈強で機動的で、我々は支援がなければ有利に戦えませんでした」
「ふむ。王朝は権威を尊ぶ。その権威に歯向かう勢力を滅するための支援ならば、惜しむはずはないが」
「そうです。ところが王朝内で紛争がありました。そのために支援が滞り、我々は苦境に立たされ、ですがある日内地より軍が訪れたのです」
「軍? 援軍か?」
「それが、違ったのです。ヤツらは……」
許義曰く、ある日援軍然と辺境を訪れたのは、実は援軍ではなく、独自に発達した新興勢力の差し向けた派遣軍だったのである。許義たちの属する軍、及び地方都市は、奇襲に近い侵攻を受けて手もなく潰滅させられ、その結果、彼等は落人となり、さまよう羽目になったようだった。
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