守るべきもの、怒るべきもの、斬るべきもの、喰うべき謎 ――キラ、承太郎、カイエン、ネウロのごった煮会話劇   作:ギアっちょ

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アスラン・ザラはインフィニットセーフを拒否する

「……さすがに、もう諦めただろう」

 

アスラン・ザラは、そう言った。

 

場所は、トニオ・トラサルディーの店を出た後の、いつもの小さな広場だった。

 

先日から続く、レディオス・ソープ発案の奇妙キテレツ武装計画。

 

第一弾。

シン・アスカのデスティニーガンダムに、巨大金属バット型対艦打撃兵装を装備させる、デスティニーガンダム・ホームランシルエット。

 

第二弾。

キラ・ヤマトのストライクガンダムに、アウトガンダムの設計思想を取り入れたアウトストライカー。

 

どちらも、全力で却下された。

 

シンは叫んだ。

キラは拒否した。

アスランは通行止めを使った。

ログナー司令が本家の通行止めを発動した。

ラクス・クラインは少しだけ名前の響きに反応した。

怪盗Xiと桂木弥子は笑った。

バクスチュアルは静かに見守った。

 

そして最終的に、野球由来の兵装名は全面的に通行止めになった。

 

アウト。

ファール。

ホームラン。

ホムーラン。

バント。

スクイズ。

送りバント・ミラージュ。

 

すべて禁止。

 

だから、アスランは思ったのだ。

 

さすがに、もうないだろう。

 

「アスラン」

 

キラが少し困ったように言った。

 

「それ、言わない方がいいと思う」

 

アスランはキラを見る。

 

「なぜだ」

 

「なんとなく、フラグっぽい」

 

シンが力強く頷く。

 

「俺もそう思います」

 

アスランは眉をひそめた。

 

「フラグではない。現実的な判断だ。あれだけ却下された以上、ソープ様も――」

 

「やあ、ちょうどよかった」

 

声がした。

 

アスランは黙った。

 

キラは目を閉じた。

 

シンは小さく呻いた。

 

「やっぱり……」

 

ラクスは口元に手を当て、どこか楽しそうに微笑んだ。

 

振り返ると、そこにはレディオス・ソープがいた。

 

隣にはラキシス。

少し後ろに、Xiとバクスチュアル。

そして弥子もいた。

 

弥子は、すでに何か面白いことが始まる顔をしている。

 

アスランは静かに言った。

 

「ソープ様」

 

「何だい、アスランくん」

 

「その先は通行止めです」

 

ソープは首を傾げた。

 

「まだ何も言っていないよ」

 

キラが呟く。

 

「でも言う顔です」

 

シンも頷いた。

 

「俺たちはその顔を知ってます」

 

Xiが笑う。

 

「完全に前科扱いだな」

 

ソープは穏やかに微笑んだ。

 

「今回は野球ではない」

 

アスランは少しだけ目を細める。

 

「本当ですか」

 

「本当だよ。安全性の話だ」

 

ラクスが静かに反応した。

 

「まあ、安全性」

 

アスランは即座にラクスを見た。

 

「ラクス、まだ乗らないでくれ」

 

ラクスは微笑んだ。

 

「まだ、何も申し上げておりませんわ」

 

「その微笑みが危険だ」

 

シンが小声で言う。

 

「アスランさんがラクスさんまで警戒してる……」

 

キラは苦笑した。

 

「最近の流れだと仕方ないね」

 

ソープはアスランに向き直った。

 

「アスランくんの機体、インフィニットジャスティスガンダムだけど」

 

アスランは即答した。

 

「却下です」

 

ソープは驚いたように瞬きをする。

 

「まだ名前も出していないよ」

 

「機体名が出た時点で危険です」

 

Xiが頷く。

 

「正しい」

 

弥子も頷く。

 

「学習してますね」

 

ソープは少しだけ笑った。

 

「では、まず思想から話そう。インフィニットジャスティス。無限の正義。とても良い名だ」

 

アスランは警戒しながらも答える。

 

「ありがとうございます」

 

「そこに、さらに安全性を加える」

 

アスランの眉間が動いた。

 

「必要ありません」

 

ソープはさらりと言った。

 

「インフィニットセーフジャスティスガンダム」

 

アスランは一秒も待たずに言った。

 

「却下です」

 

シンが思わず声を上げる。

 

「早い!」

 

キラは真面目に頷く。

 

「でも正しい」

 

ラクスは少しだけ目を細める。

 

「インフィニットセーフジャスティス……とても安全そうなお名前ですわね」

 

アスランは振り返った。

 

「ラクス」

 

ラクスはにこりと微笑んだ。

 

「もちろん、アスランが困るなら却下ですわ」

 

「ありがとう」

 

ソープは穏やかに言う。

 

「セーフというのは、野球のセーフではないよ。安全という意味だ」

 

シンはすぐに言った。

 

「でも前回の流れだと、絶対セーフ判定のセーフです!」

 

Xiが腕を組む。

 

「限りなく野球に近い安全工学」

 

弥子が笑いをこらえる。

 

「インフィニットセーフ。絶対アウトにならない機体!」

 

アスランは低く言った。

 

「アウトと言うな」

 

ソープは真面目な顔で続けた。

 

「アウト、ファール、ホームラン、バント、スクイズは禁止された」

 

キラは頷く。

 

「はい」

 

「だが、セーフは禁止されていない」

 

アスランは即座に言う。

 

「禁止されていないから許可ではありません」

 

シンも頷く。

 

「その理屈、すごく危険です!」

 

Xiが笑う。

 

「ルールの抜け穴を探し始めた」

 

バクスチュアルが静かに呟く。

 

「抜ケ道」

 

アスランは言った。

 

「その抜け道も通行止めだ」

 

ソープは少し楽しそうだった。

 

「でも、アスランくん」

 

「何でしょう」

 

「君の機体は、すでにかなり特殊な運用をしていたと聞いたよ」

 

アスランの動きが止まった。

 

キラが小さく言う。

 

「あ」

 

シンも気づいた。

 

「あっ」

 

ラクスは静かに微笑んでいる。

 

ソープは穏やかに続けた。

 

「インフィニットジャスティスガンダムに、ズゴックの装甲を被せて運用していた、って聴いたよ?」

 

アスランは黙った。

 

沈黙。

 

Xiが目を輝かせる。

 

「おっと」

 

弥子が小声で言う。

 

「ズゴックの件だ」

 

ソープは畳みかけない。

ただ、穏やかに言う。

 

「それに比べれば、僕のインフィニットセーフジャスティス案は、かなり正統派だと思うんだけど」

 

アスランは口を開きかけた。

 

「……それは」

 

Xiが即座に言った。

 

「反論が鈍った」

 

弥子も言う。

 

「効いてる……!」

 

シンはアスランを見る。

 

「アスランさん!」

 

キラは少し困ったように言った。

 

「ソープさんが、アスランの理屈を使ってる」

 

アスランはようやく言った。

 

「作戦上、必要だった」

 

ソープは頷く。

 

「うん。だから僕も、作戦上必要な安全性を考えたんだ」

 

アスランは再び黙った。

 

シンが小声で言う。

 

「これ、まずいんじゃ……」

 

ラクスはアスランに優しく言った。

 

「アスラン、頑張って」

 

アスランは深く息を吸った。

 

「ソープ様。ズゴックの外装は、作戦上の偽装です」

 

「うん。とても興味深い発想だ」

 

「興味深いと言われると困ります」

 

「なら、インフィニットセーフジャスティスも、外装と防御思想の拡張として――」

 

「そこで繋げないでください」

 

ソープは少し楽しそうに説明を始めた。

 

「まず基本思想は、生存率の向上だ。インフィニットジャスティスは近接戦闘能力が高い。だからこそ、被弾リスクもゼロではない」

 

アスランは真面目に聞いてしまった。

 

「それは、確かに」

 

キラが呟く。

 

「聞いちゃってる」

 

シンが小声で言う。

 

「アスランさん、真面目だから……」

 

ソープは続ける。

 

「そこで、セーフ装甲を増設する」

 

アスランはすぐに眉をひそめた。

 

「セーフ装甲とは」

 

「被弾しても“セーフ”にするための装甲だ」

 

アスランは即答した。

 

「やはり判定ではないですか」

 

ソープは穏やかに言う。

 

「安全性だよ」

 

Xiが笑う。

 

「言い換えで押し切ろうとしてる」

 

弥子は楽しそうに言った。

 

「セーフ装甲、ちょっとかわいいですね!」

 

アスランは弥子を見る。

 

「かわいさは不要だ」

 

ソープは手を広げる。

 

「さらに、ファトゥムの機動力を活かして、危険領域からの離脱能力を高める」

 

キラが少しだけ反応した。

 

「そこだけ聞くと、まともですね」

 

シンも頷きかける。

 

「確かに、生存性向上なら……」

 

アスランは二人を見る。

 

「流されるな」

 

ラクスが言う。

 

「けれど、安全性を高めるという方向そのものは、悪くないのでは?」

 

アスランは少し困った顔をした。

 

「ラクス」

 

「もちろん、名称は再考すべきですわ」

 

「名称だけではない」

 

ソープは嬉しそうに頷く。

 

「そう、名称だけではない。中身も大切だ」

 

アスランは嫌な予感を覚えた。

 

ソープが技術の話を始める時は危険だ。

 

ホームランシルエットは、素材の話から具体化した。

アウトストライカーは、いつの間にかアウト・ミラージュになった。

 

今回は、すでにインフィニットジャスティスの構造に踏み込んでいる。

 

アスランは止めようとした。

 

だが、その一瞬だけ遅かった。

 

ソープは言った。

 

「だから背部のファトゥムに、LEDミラージュのイレーザーエンジンを載せて、大出力を確保して――」

 

空気が止まった。

 

キラが目を見開く。

 

シンは固まる。

 

Xiは「あ」と声を漏らす。

 

バクスチュアルも静かに目を瞬かせた。

 

ラキシスは、少しだけ困ったように微笑んだ。

 

そして。

 

「陛下」

 

低い声が響いた。

 

全員が振り返る。

 

ログナー司令がいた。

 

いつからいたのか。

誰もわからない。

 

ただ、いた。

 

アスランは少しだけ安堵した。

シンも同じ顔をした。

 

キラは小声で言う。

 

「本家が来た」

 

ログナーはソープを見ていた。

 

「今、何と」

 

ソープは平然と言った。

 

「ファトゥムにLEDミラージュのイレーザーエンジンを」

 

「陛下」

 

ログナーの声は静かだった。

 

だが、静かすぎた。

 

「それは、通行止めどころではありません」

 

ソープは首を傾げる。

 

「そうかな」

 

ログナーは即答する。

 

「そうです。LEDミラージュの駆動系・出力系技術は門外不出。流出禁止です」

 

Xiが小声で言う。

 

「おっと」

 

キラも呟く。

 

「急に話が機密管理になった」

 

シンは少し安心した顔をする。

 

「よかった……のか?」

 

アスランは静かに言った。

 

「助かった……」

 

ログナーがアスランを見る。

 

「助かってはいない」

 

アスランは姿勢を正した。

 

「はい」

 

ログナーは続ける。

 

「そもそも、他文明の機動兵器にLEDの技術を搭載する計画自体が問題です」

 

ソープは穏やかに言う。

 

「でも、出力には余裕が出るよ」

 

ログナーは即答した。

 

「余裕が出る前に外交問題が出ます」

 

Xiが小さく吹き出した。

 

「うまい」

 

ログナーの視線が飛ぶ。

 

「黙れ」

 

Xiはすぐ黙った。

 

弥子は小声で言う。

 

「道路じゃなくて国境越えちゃった感じですね」

 

ログナーは頷いた。

 

「その認識で概ね正しい」

 

ソープは少し考える。

 

「では、イレーザーエンジンではなく、簡易型の――」

 

ログナーが遮る。

 

「却下です」

 

「早いね」

 

「前例があります」

 

キラがしみじみと言った。

 

「前例、多すぎます」

 

シンも深く頷いた。

 

「本当に」

 

ログナーはアスランに向き直る。

 

「アスラン・ザラ」

 

「はい」

 

「ズゴックの外装については、作戦上の必要性があったのだろう」

 

「はい」

 

「だが、それを陛下の新兵装案の根拠に使われる隙を作ったことは反省しろ」

 

アスランは一瞬だけ言葉を失った。

 

「……はい」

 

シンが小声で言う。

 

「アスランさんまで怒られた」

 

キラも小さく言った。

 

「ログナー司令、強いね」

 

ラクスは少し楽しそうに微笑んだ。

 

「公平ですわね」

 

ソープはまだ諦めていなかった。

 

「では、イレーザーエンジンを使わないインフィニットセーフジャスティスならどうだろう」

 

アスランは即座に言った。

 

「却下です」

 

ログナーも言う。

 

「却下です」

 

ソープはラキシスを見る。

 

ラキシスは優しく微笑んだ。

 

「却下ですわね」

 

ソープは少しだけ肩をすくめた。

 

「三方向から却下された」

 

Xiが言う。

 

「むしろ今までよく粘ったな」

 

バクスチュアルが静かに言う。

 

「粘リ強イ」

 

シンはアスランの横に立った。

 

「アスランさん、今回は俺も味方です!」

 

アスランは頷く。

 

「助かる」

 

キラも言う。

 

「僕も。ストライクをアウトにされた経験があるし」

 

Xiが手を挙げる。

 

「俺も。アウト・ミラージュにされかけた」

 

バクスチュアルも続いた。

 

「私モ」

 

アスランは全員を見た。

 

「……そうか。これは、被害者の会か」

 

弥子は楽しそうに言った。

 

「ソープ様発案奇妙キテレツ武装計画・被害者の会ですね!」

 

ソープは少し不思議そうに言う。

 

「被害ではないよ。提案だよ」

 

シンが叫ぶ。

 

「提案の圧がすごいんです!」

 

キラも頷く。

 

「しかも具体的すぎるんです」

 

Xiが言う。

 

「気づいたら接続規格と素材と試作番号まで決まってる」

 

アスランも真面目に言った。

 

「そして今回は国家機密に踏み込んでいます」

 

ログナーが低く言う。

 

「そこが最大の問題だ」

 

ソープは少し考えた。

 

「では、名称だけでも」

 

アスランは即答する。

 

「却下です」

 

「インフィニットセーフ」

 

「却下です」

 

「インフィニットサバイブジャスティス」

 

アスランが少しだけ黙った。

 

キラがすぐ言う。

 

「アスラン、少し迷った?」

 

「迷っていない」

 

シンが疑う。

 

「今、ちょっとカッコいいと思いませんでした?」

 

「思っていない」

 

Xiが笑う。

 

「サバイブはちょっとアリだと思った顔だな」

 

アスランはXiを見る。

 

「通行止めだ」

 

ログナーが低く言う。

 

「勝手に使うな」

 

アスランは即座に頭を下げた。

 

「すみません」

 

ソープはさらに続ける。

 

「では、インフィニットガードジャスティス」

 

アスランは言う。

 

「却下です」

 

「インフィニットライフジャスティス」

 

「却下です」

 

「インフィニット無事ジャスティス」

 

シンが吹き出した。

 

「無事!?」

 

キラも思わず笑った。

 

「急に日本語が混ざった」

 

ラクスは楽しそうに言う。

 

「無事であることは、大切ですわ」

 

アスランは頭を抱える。

 

「ラクス、そこに反応しないでくれ」

 

弥子は笑いながら言った。

 

「インフィニット無事ジャスティス、めっちゃ縁起良さそうですね!」

 

Xiが続ける。

 

「交通安全のお守りみたいだな」

 

ログナーが言う。

 

「お守りとしてなら許可する」

 

ソープは顔を上げる。

 

「では、お守り型の追加装備として」

 

ログナーは即座に言った。

 

「通行止めだ」

 

Xiが小さく言う。

 

「本家、速い」

 

バクスチュアルが頷く。

 

「速イ」

 

ソープはとうとう少し笑った。

 

「みんな、なかなか厳しいね」

 

アスランは真剣に言った。

 

「機体は遊びではありません」

 

ソープは頷く。

 

「もちろんだよ」

 

「では」

 

「だから真面目に考えている」

 

アスランは言葉に詰まった。

 

キラが苦笑する。

 

「そこが一番困るところなんだよね」

 

シンも頷く。

 

「本気だから止めにくいんです」

 

ログナーは短く言った。

 

「本気でも止めます」

 

ラキシスはソープの隣で、柔らかく告げる。

 

「ソープ様。今日はここまでになさいませ」

 

ソープはラキシスを見る。

 

「ラキシスまで」

 

「はい。アスランさんが、とてもお困りです」

 

アスランはすぐに頷いた。

 

「困っています」

 

シンも言う。

 

「俺もまだ少し怖いです!」

 

キラも言う。

 

「僕も前回の記憶が」

 

Xiも言う。

 

「俺もアウト・ミラージュの記憶が」

 

バクスチュアルも静かに言う。

 

「私モ、少シ」

 

ソープは周囲を見た。

 

それから、少しだけ残念そうに頷いた。

 

「わかった。インフィニットセーフジャスティス計画は、今日は取り下げよう」

 

アスランは即座に言った。

 

「今日は、ではなく今後もです」

 

ログナーも続ける。

 

「今後も、です」

 

ラキシスも微笑む。

 

「今後も、ですわね」

 

ソープは小さく笑った。

 

「わかった。今後も取り下げるよ」

 

全員が、ようやく息を吐いた。

 

だが、アスランだけは気を抜かなかった。

 

「ソープ様」

 

「何だい」

 

「念のため確認します。今後、インフィニットジャスティスに、セーフ、アウト、ファール、ホームラン、ホムーラン、バント、スクイズ、お守り、イレーザーエンジンを組み合わせることは禁止でお願いします」

 

ソープは少し考えた。

 

「お守りも?」

 

ログナーが即答する。

 

「禁止です」

 

「では、安全祈願ステッカーは?」

 

アスランは目を閉じた。

 

「禁止です」

 

弥子が笑いをこらえる。

 

「ステッカーくらいなら……」

 

アスランが振り向く。

 

「貼らない」

 

Xiが笑う。

 

「アスラン、今日は頑固だな」

 

アスランは真面目に答えた。

 

「守るべきものが多すぎる」

 

キラは頷いた。

 

「機体と仕様書と尊厳だね」

 

シンも力強く言う。

 

「あと名前です!」

 

バクスチュアルが静かに言った。

 

「名前、大事」

 

ラクスは微笑んだ。

 

「ええ。名前は、とても大切ですわ」

 

ソープは少しだけ空を見上げる。

 

「名前か……」

 

全員が一斉に身構えた。

 

ログナーが言う。

 

「陛下」

 

ソープは笑った。

 

「言わないよ」

 

アスランは静かに息を吐いた。

 

その日、アスラン・ザラはインフィニットセーフを拒否した。

 

彼は一度だけ、ズゴックの件を突かれて反論が鈍った。

だが、ソープが余計なことを言った。

 

ファトゥムに、LEDミラージュのイレーザーエンジンを載せる。

 

その一言で、計画は安全工学から国家機密管理問題へ移行した。

 

結果、ログナー司令が現れた。

通行止めでは足りなかった。

門外不出だった。

 

キラはストライクを守った。

シンはデスティニーを守った。

Xiはバクスチュアルを守った。

そしてアスランは、インフィニットジャスティスを、セーフ判定とイレーザーエンジンと安全祈願ステッカーから守った。

 

ラクスは帰り道、少し楽しそうに言った。

 

「でも、インフィニット無事ジャスティスは、少し可愛らしかったですわ」

 

アスランは即答した。

 

「ラクス」

 

「冗談ですわ」

 

キラが笑う。

 

「アスラン、まだ警戒してる」

 

シンも笑った。

 

「仕方ないですよ。今日はズゴックの件まで突かれましたし」

 

アスランは静かに言った。

 

「あれは作戦上必要だった」

 

Xiが後ろから言う。

 

「大体みんなそう言うんだよな、変なことした時」

 

アスランは振り向いた。

 

「Xi」

 

Xiは両手を上げた。

 

「通行止め?」

 

アスランは少し黙った。

 

そして、ログナーの方を見た。

 

ログナーは短く言った。

 

「許可しない」

 

アスランは頷いた。

 

「……では、やめておく」

 

キラは小さく笑った。

 

シンも笑った。

 

ラクスも微笑んだ。

 

ソープは少し離れた場所で、ラキシスに言った。

 

「でも、安全性を高めるという思想自体は悪くないと思うんだ」

 

ラキシスは柔らかく微笑んだ。

 

「ソープ様」

 

「何だい?」

 

「今日は、ここまでですわ」

 

ソープは少しだけ残念そうに笑った。

 

「そうだね」

 

けれど、アスランは思った。

 

あの顔は、まだ何か考えている顔だ。

 

だからアスランは、帰り道でもしばらく、インフィニットジャスティスの仕様書が入った端末から手を離さなかった。

 

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