守るべきもの、怒るべきもの、斬るべきもの、喰うべき謎 ――キラ、承太郎、カイエン、ネウロのごった煮会話劇   作:ギアっちょ

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すえぞうグッズ企画会議

 いつものカフェテラス。

 

 交易会議も、ついに五回目である。

 

 第一回では、レディオス・ソープがバスター砲を現金化しようとして、キラ・ヤマトに全力で止められた。

 

 第二回では、ミラージュ騎士団支給品の日用品を売ろうとしたものの、血の十字架の圧が強すぎて、コンパス備品には向かないという結論になった。

 

 第三回では、空条承太郎の仲介により、スピードワゴン財団への販路が開いた。

 

 第四回では、LEDミラージュのプラモデルが、キラ・ヤマトという極めて有望な購買層に深く刺さった。

 

 そして今回。

 

 机の中央には、小さな白い生き物がいた。

 

 すえぞうである。

 

「はらへった!」

 

 本人は、元気だった。

 

 その周囲には、すえぞうぬいぐるみ、すえぞうキーホルダー、すえぞう柄ハンカチ、すえぞう柄タオル、すえぞうマグカップ、すえぞうステッカー、すえぞうミニフィギュアの試作品が並んでいる。

 

 さらに、LEDミラージュのプラモデルに同梱予定の、小さなすえぞうフィギュアもあった。

 

 バスター砲はない。

 

 モーターヘッド本体もない。

 

 イレーザーエンジンもない。

 

 血の十字架も、今日はかなり控えめである。

 

 キラは、少しだけ安心していた。

 

 少しだけ、である。

 

「今回は、すえぞうグッズの企画会議だよ」

 

 ソープはにこにこと言った。

 

「外貨獲得の本命になるかもしれないからね」

 

 すえぞうが言った。

 

「うっす!」

 

 桂木弥子は、目を輝かせていた。

 

「いいと思います! すえぞう、かわいいですし!」

 

 ラクス・クラインも、ぬいぐるみを手に取って微笑んだ。

 

「ええ。とても愛らしいですわ。子どもたちにも喜ばれそうです」

 

 空条承太郎は、すえぞうぬいぐるみを無言で見ていた。

 

「……悪くねぇな」

 

 その一言に、Xiがにやりと笑った。

 

「承太郎さん、自分用に欲しいんだ?」

 

 承太郎は帽子のつばを押さえた。

 

「財団で検討するためだ」

 

 ログナー司令は、淡々と資料に書き込んだ。

 

「スピードワゴン財団検討用、一体計上」

 

「おい」

 

「業務上必要な処理です」

 

 キラは小声でラクスに言った。

 

「刺さってますね」

 

「刺さっていますわね」

 

 その横で、岸辺露伴はすえぞうを凝視していた。

 

 すえぞう本人を。

 

 じっと。

 

 非常に真剣に。

 

 手には、いつの間にかスケッチブックとペンがある。

 

「正面、側面、背面。歩行時。空腹時。叱られた時の表情。資料としては、極めて興味深い」

 

 泉京香が、露伴の隣でため息をついた。

 

「先生。今回は商品企画会議です。便乗して好きなだけデッサンする場ではありません」

 

「違う。商品監修だ」

 

「先生はいつからAKDの商品監修になったんですか」

 

「今からだ」

 

 ログナーが即座に言った。

 

「おい、漫画家。その就任経路は通行止めだ」

 

 露伴は眉間に皺を寄せた。

 

「僕はまだ何もしていない」

 

「する顔だ」

 

「最近、この場の人間は顔で判断しすぎじゃあないか?」

 

 Xiが頷いた。

 

「わかるよ。僕もよく言われる」

 

 ログナーはXiを見た。

 

「お前は特に顔に出る」

 

「出してるんだよ」

 

「なお悪い」

 

 泉は、すえぞうぬいぐるみを一つ手に取った。

 

「かわいいです」

 

 その場の空気が、少しだけ明るくなった。

 

 だが、泉はすぐに仕事の顔になった。

 

「かわいいですけど、かわいいだけで商品化すると事故ります」

 

 キラは思わず頷いた。

 

「まともな意見が来た……!」

 

 ログナーも頷く。

 

「通行可です」

 

 ソープは首を傾げた。

 

「事故る?」

 

「はい。まず対象年齢。音声機能つきぬいぐるみなら、電池の安全性、誤飲防止、洗濯可否、音量設定、耐久性、販売地域ごとの安全基準。このあたりは確認必須です」

 

 キラの顔が明るくなった。

 

「すごく普通の企画会議だ……!」

 

 ラクスも微笑む。

 

「泉様、とても頼もしいですわ」

 

 泉はぬいぐるみの腹を押した。

 

『はらへった!』

 

 すえぞうぬいぐるみが鳴いた。

 

 本人のすえぞうも続いた。

 

「はらへった!」

 

 弥子が笑顔で言った。

 

「本人監修です!」

 

 泉は一瞬だけ考えた。

 

「本人確認という言葉で合っているのか、少し迷いますね」

 

「うっす!」

 

 すえぞうは元気だった。

 

 ソープは嬉しそうに言った。

 

「音声は、“はらへった!”と“うっす!”の二種類で考えてるんだ」

 

 キラが頷く。

 

「それなら、まだ平和的ですね」

 

 Xiが手を上げた。

 

「シークレット音声は?」

 

 ログナーが即座に言った。

 

「通行止めだ」

 

「まだ内容言ってないよ」

 

「お前が言う時点で通行止めだ」

 

 Xiはにこにこした。

 

「“もっとはらへった!”とか」

 

 キラが頭を抱えた。

 

「それ、購買者の食費に影響が出ませんか?」

 

 泉が即座に頷いた。

 

「出ます。少なくとも、保護者から“子どもがお菓子を欲しがる”という問い合わせが来る可能性があります」

 

 弥子が驚いた顔をした。

 

「そこまで考えるんですか!?」

 

「考えます。商品企画ですから」

 

 ラクスが感心したように微笑む。

 

「正論ですわね」

 

 露伴が小さく言った。

 

「泉京香は、こういう時、本当に容赦がない」

 

「先生に鍛えられました」

 

「それは僕への苦情か?」

 

「事実です」

 

 ログナーは静かに頷いた。

 

「編集殿、話が早い」

 

 露伴はログナーを睨んだ。

 

「おい、ログナー。僕の担当をそちら側に引き込むな」

 

「正論の通る道は通行可です」

 

「僕の創作は?」

 

「要審査だ」

 

「横暴だな」

 

「前歴を考慮しています」

 

 ソープは次の試作品を出した。

 

「これは、すえぞうキーホルダー」

 

 小さなすえぞうが、丸いアクリルの中でにこにこしている。

 

 弥子が声を上げた。

 

「かわいい!」

 

 ラクスも頷いた。

 

「これは配りやすそうですわね」

 

 泉は手に取って確認した。

 

「良いと思います。価格帯も下げられますし、子ども向けにも大人向けにも展開できます。ただし、尖った部分は丸めてください」

 

 ログナーが資料へ書く。

 

「キーホルダー、通行可。安全基準要確認」

 

 Xiがひょいと覗き込んだ。

 

「シークレット版は?」

 

 泉が即座に言った。

 

「販売比率と再販予定を明記してください。転売対策も最初から設計してください」

 

 Xiは目を丸くした。

 

「えっ」

 

「購入制限、抽選方式、再販告知、全部です。限定版を煽りすぎると荒れます」

 

 ログナーはXiを見た。

 

「聞いたか。お前の逃げ道は編集者にも塞がれた」

 

「この人、怖いね」

 

 泉は淡々と言った。

 

「正論です」

 

 承太郎が短く言った。

 

「転売屋は面倒だからな」

 

 Xiが肩をすくめる。

 

「僕、まだ転売するとは言ってないよ」

 

 ログナーと承太郎が同時に言った。

 

「する顔だ」

 

「する顔だな」

 

 Xiは笑った。

 

「仲いいね、二人」

 

「よくない」

 

「よくねぇ」

 

 キラは少しだけ笑った。

 

「そこも合うんですね……」

 

 次に、ソープはハンカチとタオルを広げた。

 

 白地に、すえぞうが小さく刺繍されている。

 

 前回の血の十字架入り支給品とは違い、かなり柔らかい印象だった。

 

 キラはほっとした。

 

「これはいいですね」

 

 ラクスも微笑む。

 

「可愛らしくて、普段使いしやすそうですわ」

 

 泉は頷いた。

 

「日用品としてはかなり良いです。柄も強すぎませんし、品質も良さそうです」

 

 ソープは嬉しそうにした。

 

「品質はミラージュ騎士団支給品と同じだからね」

 

 キラが一瞬だけ固まった。

 

「……血の十字架は入ってませんよね?」

 

「入ってないよ」

 

「よかった」

 

 ログナーが資料に書き込む。

 

「すえぞう柄ハンカチ、タオル。通行可」

 

 Xiが言った。

 

「裏地に小さく血の十字架を――」

 

「入れないでください!」

 

 キラが即座に止めた。

 

 ログナーも言った。

 

「その意匠経路は通行止めだ」

 

 ソープは少しだけ残念そうにした。

 

「限定版なら」

 

 承太郎が言った。

 

「やめろ」

 

 ラクスは上品に微笑んだ。

 

「今回は、すえぞうの愛らしさを前面に出しましょう」

 

「うっす!」

 

 すえぞう本人も同意した。

 

 たぶん。

 

 露伴は、またすえぞうを見てペンを動かしかけた。

 

 泉がその手元を見た。

 

「先生」

 

「資料だ」

 

「許可を取りましたか」

 

「商品企画に必要だろう」

 

「なら商品企画用の資料として提出してください。勝手に漫画のネームにしないでください」

 

 露伴は目を逸らした。

 

「……まだしていない」

 

 ログナーが言った。

 

「その“まだ”は通行止めだ」

 

 Xiが嬉しそうに笑う。

 

「露伴先生も“まだ”で止められてる」

 

 露伴は不満そうに言った。

 

「君と同じ扱いは納得がいかないな」

 

 承太郎が低く言った。

 

「似たようなもんだ」

 

「承太郎!」

 

 弥子は苦笑した。

 

「でも、露伴先生の絵でパッケージ作ったら、すごく売れそうですよね」

 

 その場が一瞬だけ静かになった。

 

 露伴の目が光った。

 

 泉の目も光った。

 

 ログナーの目が細くなった。

 

「桂木弥子殿」

 

 ログナーが静かに言った。

 

「危険な通路を開きましたね」

 

「えっ、私!?」

 

 露伴は腕を組んだ。

 

「悪くない。いや、むしろ当然だ。すえぞうという不可思議な存在を、僕が描く。商品としても作品としても価値がある」

 

 泉は即座に言った。

 

「先生が描くなら、ラフ、構図、表現範囲、使用媒体、掲載許可、全部確認します」

 

「担当編集らしいことを言うな」

 

「担当編集です」

 

 ログナーも続けた。

 

「すえぞう殿および関係者に失礼のない表現であること。姫様に関わる情報を含まないこと。商品企画の範囲を逸脱しないこと。以上を条件に、要審査です」

 

 露伴は眉を動かした。

 

「要審査か。通行止めではないんだな」

 

 ログナーは淡々と答える。

 

「商業的価値は認めます」

 

 露伴は少しだけ口元を緩めた。

 

「ふん。わかっているじゃあないか」

 

 泉が言った。

 

「先生。浮かれないでください」

 

「浮かれていない」

 

「ペンが早いです」

 

 露伴は、もうすでにすえぞうの横顔を描いていた。

 

 すえぞうはそのスケッチブックを覗き込んだ。

 

「うっす!」

 

 弥子が笑う。

 

「すえぞう、気に入ったみたいです!」

 

 ラクスは微笑んだ。

 

「素敵な絵ですわ」

 

 ソープも頷いた。

 

「いいね。これは売れそうだ」

 

 ログナーは言った。

 

「露伴殿監修パッケージ。要審査の上で通行可」

 

 露伴は不満そうに言った。

 

「最後まで君の許可がいるのか」

 

「今回の商品はAKDの外貨獲得計画ですので」

 

「正論だな」

 

 泉が静かに言った。

 

「正論です」

 

 次に、ソープは小さな箱を出した。

 

「これは、すえぞうまんじゅう」

 

 弥子の目が輝いた。

 

「食べ物!」

 

 キラが少し警戒した。

 

「変な効能はありませんよね?」

 

 ソープは笑った。

 

「普通のおまんじゅうだよ」

 

 承太郎が低く言った。

 

「普通、だな?」

 

「たぶん」

 

 キラと承太郎が同時に反応した。

 

「たぶん!?」

 

「たぶん、はやめろ」

 

 ラクスは箱を開け、中身を見た。

 

 白くて丸いまんじゅうに、すえぞうの顔が焼き印されている。

 

「まあ。かわいらしいですわ」

 

 弥子は真剣に見つめた。

 

「これは売れます。絶対売れます」

 

 泉も頷いた。

 

「食品展開は良いと思います。ただし、賞味期限、アレルギー表示、製造元、流通温度帯、全部確認してください」

 

 ログナーが書き込む。

 

「すえぞうまんじゅう。通行可。食品表示要確認」

 

 すえぞう本人がまんじゅうを見た。

 

「はらへった!」

 

 キラが慌てた。

 

「本人の前で本人モチーフのまんじゅうを食べていいんですか!?」

 

 泉が即座に言った。

 

「その倫理確認は必要です」

 

 露伴は面白そうに言う。

 

「本人が食べたがっているように見えるが」

 

 弥子はすえぞうを見る。

 

「すえぞう、食べたい?」

 

「うっす!」

 

 ログナーは少しだけ沈黙した。

 

「本人同意あり、と記録します」

 

 キラは頭を抱えた。

 

「それでいいんですか……?」

 

 承太郎はまんじゅうを一つ手に取り、しばらく見ていた。

 

「……味は?」

 

 弥子が即答した。

 

「確認しましょう!」

 

 そして、試食が始まった。

 

 弥子は一つ食べた。

 

 目を輝かせた。

 

「おいしいです!」

 

 ラクスも一口食べて微笑む。

 

「上品な甘さですわ」

 

 キラも食べた。

 

「普通においしいですね」

 

 承太郎も食べた。

 

「……悪くねぇ」

 

 すえぞうも食べた。

 

「うっす!」

 

 ソープは満足そうに頷いた。

 

「よかった」

 

 Xiはいつの間にか二つ目を手に取っていた。

 

 ログナーが無言で手を差し出した。

 

「返せ」

 

「まだ食べてないよ」

 

「食べる前に取り上げるから管理と言うんだ」

 

「試食だよ」

 

「窃盗だ」

 

 泉が冷静に言った。

 

「試食数は管理してください。原価計算が狂います」

 

 ログナーは頷いた。

 

「編集殿、実に通行可です」

 

 Xiは笑った。

 

「この人、会議に一人いると強いね」

 

 露伴が言った。

 

「僕はいつも、この調子で締め切りを管理されている」

 

「先生が締め切りを守れば、そこまで言いません」

 

「守っている」

 

「たまにです」

 

「泉京香」

 

「事実です」

 

 ソープはさらに資料をめくった。

 

「あと、これはどうかな。すえぞう非常食セット」

 

 その瞬間、キラ、ラクス、泉、ログナー、承太郎がほぼ同時に反応した。

 

「名前が悪いです」

 

「名称が少し誤解を招きますわ」

 

「名称が最悪です」

 

「通行止めです」

 

「やめろ」

 

 ソープは慌てて説明した。

 

「違うよ。すえぞうを非常食にするんじゃなくて、すえぞうが非常時に食べるセット」

 

 キラが言った。

 

「それでも名前がダメです!」

 

 泉は即座にペンを走らせた。

 

「“すえぞうおでかけフードセット”にしてください」

 

 ラクスが微笑む。

 

「まあ。可愛らしいですわ」

 

 弥子も頷いた。

 

「それなら安心です!」

 

 ログナーが資料を修正した。

 

「名称変更により通行可」

 

 ソープは感心したように言った。

 

「泉さん、すごいね」

 

「商品名は大事です」

 

 Xiが言った。

 

「“すえぞう非常食セット”の方がインパクトあるけどね」

 

 ログナーが睨んだ。

 

「炎上商法は通行止めだ」

 

「まだ燃やしてないよ」

 

「燃やす顔だ」

 

 承太郎が低く言う。

 

「てめーは本当に黙ってろ」

 

「今日もみんな厳しいなあ」

 

 会議はさらに続いた。

 

 すえぞうスタンプ。

 

 すえぞうマグカップ。

 

 すえぞうステッカー。

 

 すえぞう抱き枕。

 

 すえぞう型フードコンテナ。

 

 LEDミラージュ模型付属ミニすえぞう。

 

 泉は一つ一つ、対象年齢、価格帯、流通、広告表現、転売対策を確認した。

 

 キラは安全性を見た。

 

 ラクスは印象と販路を見た。

 

 承太郎は財団向けに通せるかを判断した。

 

 ログナーは通行可と通行止めを振り分けた。

 

 Xiは隙間を探した。

 

 露伴はすえぞうを描いた。

 

 弥子は試食した。

 

 すえぞうは食べた。

 

 そして、ソープは満足そうだった。

 

「かなりまとまってきたね」

 

 ログナーが資料を読み上げた。

 

「第一弾商品。すえぞうぬいぐるみ通常版。音声は“はらへった!”“うっす!”の二種。自動音声は初期設定オフ」

 

 承太郎が頷く。

 

「それでいい」

 

「すえぞうキーホルダー。すえぞう柄ハンカチ、タオル。すえぞうマグカップ。すえぞうステッカー」

 

 ラクスが微笑む。

 

「良いと思いますわ」

 

「LEDミラージュ模型付属ミニすえぞう。露伴殿監修パッケージは要審査」

 

 露伴は言った。

 

「通す気はあるんだな」

 

 ログナーは答えた。

 

「条件付きです」

 

 泉が言った。

 

「先生、条件は守ってください」

 

「わかっている」

 

「本当に?」

 

「……たぶん」

 

 泉とログナーが同時に言った。

 

「たぶんは不可です」

 

「たぶんは通行止めだ」

 

 露伴は少しだけ顔をしかめた。

 

「君たち、相性が良すぎるな」

 

「仕事です」

 

「管理です」

 

 さらにログナーは続けた。

 

「食品展開。すえぞうまんじゅう。すえぞうおでかけフードセット。いずれも表示確認後、通行可」

 

 弥子が手を上げた。

 

「試食担当、必要ならやります!」

 

 泉が即答した。

 

「試食数は管理します」

 

「はい!」

 

 最後に、ログナーは別紙をめくった。

 

「通行止め。夜中に勝手に鳴るぬいぐるみ。“もっとはらへった!”連呼版。血の十字架入り高額限定版。Xi監修シークレット版。ラキシス様監修フローズンヨーグルト連動キャンペーン」

 

 ソープが少しだけ反応した。

 

「ラキシス監修は」

 

「通行止めです」

 

「まだ何も」

 

「通行止めです」

 

 キラが小声で言った。

 

「徹底してる……」

 

 Xiが笑った。

 

「Xi監修シークレット版、ダメ?」

 

「当然だ」

 

 承太郎も言った。

 

「ダメに決まってるだろうが」

 

「限定一個だけ」

 

 泉が言った。

 

「転売対策上、不可です」

 

 Xiは肩をすくめた。

 

「三方向から塞がれた」

 

 ログナーは淡々と言う。

 

「お前の抜け道は、今後も重点的に塞ぐ」

 

「ひどいなあ」

 

 すえぞうが言った。

 

「はらへった!」

 

 ソープは笑った。

 

「じゃあ、最後にもう一つだけ」

 

 全員が警戒した。

 

 ソープは小さな布を取り出した。

 

「すえぞう用の小さなミラージュマント」

 

 すえぞうに掛けると、白い生き物が、妙に誇らしげに胸を張った。

 

「うっす!」

 

 ラクスが手を合わせた。

 

「まあ……かわいらしいですわ」

 

 弥子が叫んだ。

 

「かわいい!」

 

 キラも思わず笑った。

 

「これは……いいですね」

 

 承太郎は黙って見ていた。

 

 だが、少しだけ口元が緩んだ。

 

 露伴は即座にペンを走らせた。

 

 泉はその手元を見た。

 

「先生」

 

「これは描くだろう」

 

 ログナーも珍しく止めなかった。

 

「……これは、通行可です」

 

 Xiが言った。

 

「血の十字架マーク入り?」

 

 キラが即座に言った。

 

「小さめでお願いします」

 

 泉も頷いた。

 

「小さめなら、意匠として成立します」

 

 ログナーが資料に書き込む。

 

「すえぞう用ミラージュマント。限定展示用。通行可」

 

 ソープは嬉しそうに頷いた。

 

「よかった。すえぞう、似合ってるよ」

 

「うっす!」

 

 交易会議第五回。

 

 結論。

 

 すえぞうグッズは、地球圏向け外貨獲得の有望商品である。

 

 ぬいぐるみ、キーホルダー、ハンカチ、タオル、マグカップ、ステッカー、まんじゅう、ミニフィギュア。

 

 すえぞう本人の愛嬌と、露伴の絵と、泉の正論と、ラクスの品の良い見せ方と、キラの安全確認と、承太郎の販路と、ログナーの通行止めにより、企画はかなり現実的な形になった。

 

 ただし。

 

 夜中に鳴る機能。

 

 過剰な空腹音声。

 

 血の十字架入り高額限定版。

 

 Xi監修版。

 

 ラキシス監修フローズンヨーグルト連動キャンペーン。

 

 それらは、すべて通行止めである。

 

 会議の最後、すえぞうは机の上に置かれた自分のぬいぐるみをじっと見た。

 

 それから、本人は元気よく言った。

 

「はらへった!」

 

 ぬいぐるみも鳴った。

 

『はらへった!』

 

 弥子が笑った。

 

 ラクスも微笑んだ。

 

 キラは少し困ったように笑った。

 

 承太郎は帽子のつばを押さえた。

 

 露伴は描いた。

 

 泉はその原稿を確認した。

 

 Xiは何かを企んでいた。

 

 ログナーはそれを見逃さなかった。

 

「Xi」

 

「まだ何もしてないよ」

 

「する顔だ」

 

「会議が終わっても、それ言うんだ」

 

「お前がいる限り言う」

 

 ソープは楽しそうに、すえぞうを見た。

 

「これで、外貨獲得もかなり進みそうだね」

 

 すえぞうは胸を張った。

 

「うっす!」

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