守るべきもの、怒るべきもの、斬るべきもの、喰うべき謎 ――キラ、承太郎、カイエン、ネウロのごった煮会話劇   作:ギアっちょ

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ダグラス・カイエンは黒酢を飲んでしまう

 その酒屋の店主は、学習していた。

 

 数量限定レモンサワー。

 飲むと全身からすっぱい汗が出るという、意味のわからない酒。

 

 あれを売ってしまった時、店主は心の底から思った。

 世の中には、見た目が普通でも売ってはいけないものがある。

 そして、裏面の会社名は必ず確認するべきだ。

 

 だから、その日。

 問屋の男が笑顔で箱を置いていった時、店主はすぐに怪しんだ。

 

「いやあ、健康志向の商品なんですよ。見本です。タダでいいから置いといてください」

 

 箱には、こう書かれていた。

 

『熟成黒酢』

『からだの動きを、音で感じる。』

『節々まで届く、黒の一滴。』

『一歩ごとに響く、発酵の力。』

 

 店主は箱を見た。

 

 黒酢。

 健康飲料。

 酒屋の片隅に置いても、まあ、不自然ではない。

 

 だが。

 裏面の小さな文字を見た瞬間、店主は動きを止めた。

 

『HEXSACS VINEGAR WORKS』

 

 店主は、すぐに電話を取った。

 

「もしもし。あのう、また変なのが来ましてねぇ」

 

 

 数十分後。

 

 ログナー司令が酒屋に到着した。

 

 隣には、アスラン・ザラ。

 

 その少し後ろに、怪盗Xi、桂木弥子、シン・アスカ、キラ・ヤマト、ラクス・クライン。

 

 なぜかダグラス・カイエンとアウクソーもいた。

 

 カイエンは店先で、棚に並ぶ普通の酒を見ている。

 

「今度こそ普通の酒だろうナ」

 

 ログナーが冷たく言った。

 

「お前は酒を選ぶな」

 

「そこまで言うかヨ」

 

「前例がある」

 

「あれは限定だったんだヨ」

 

 Xiが呆れたように言う。

 

「師匠、その言い訳もう定番になってるよ」

 

 店主は、奥から問題の箱を出した。

 

「これなんですよ。見本だって言われたんですが、前の件がありましたからねぇ」

 

 ログナーは箱を見る。

 

「販売したか」

 

「してません」

 

「開封は」

 

「してません。会社名を見た時点で怖くなりまして」

 

 シンが感心した。

 

「酒屋さん、完全に学習してる……!」

 

 Xiも頷いた。

 

「ヘキサクスは開けない、売らない、食べない。町内標語が効いてる」

 

 弥子は箱のコピーを読んだ。

 

「“からだの動きを、音で感じる”……普通なら健康食品っぽいんですけど」

 

 アスランが真顔で言った。

 

「ヘキサクス製品の場合、文字通りの可能性がある」

 

 キラが苦笑した。

 

「嫌な信頼性だね」

 

 ラクスも箱を見つめる。

 

「“節々まで届く、黒の一滴”……少し不安になる言葉ですわね」

 

 ログナーは手袋をつけ、箱を開けた。

 

 中には、小瓶入りの黒酢が整然と並んでいた。

 

 濃い琥珀色。

 落ち着いたラベル。

 見た目だけなら、高級感がある。

 

「見た目は普通なんですよね……」

 

 弥子が言った。

 

 Xiは即答した。

 

「あの親父の商品は、見た目が普通なほど危ない」

 

 カイエンは小瓶を一本つまみ上げた。

 

「黒酢?」

 

 アスランがすぐに言った。

 

「カイエンさん。飲まないでください」

 

「まだ飲んでねぇヨ」

 

 ログナーも言った。

 

「戻せ」

 

「酢だろ。酒でも梅干しでもねぇ」

 

「ヘキサクス製品だ」

 

「健康にいいんじゃねぇのか? こういうの」

 

 シンが言った。

 

「普通なら、そういうイメージですけど!」

 

 カイエンはラベルを読む。

 

「“からだの動きを、音で感じる”ねぇ」

 

 Xiが嫌な顔をした。

 

「師匠、そこを疑って」

 

「どうせ大げさな宣伝文句だろ」

 

「前もコピーに釣られたよね」

 

「今回は限定じゃねぇ」

 

 アウクソーが静かに言った。

 

「マスター。お戻しください」

 

「一口くらいで何が起きるんだヨ」

 

 全員が、同時に「あっ」という顔をした。

 

 カイエンは小瓶の封を開けた。

 そして、ほんの一口だけ飲んだ。

 

「……酸っぱ」

 

 沈黙。

 

 五秒。

 

 十秒。

 

 何も起きない。

 シンが恐る恐る言った。

 

「普通……?」

 

 カイエンは少し得意げに笑った。

 

「ほら見ろ。たまにはこういうのもあるヨ」

 

 その瞬間。

 Xiの端末が鳴った。

 

 件名。

『一族自慢の一品について』

 

 Xiは画面を見て、額に手を当てた。

 

「あー……来た」

 

 ログナーが短く言う。

 

「読み上げろ」

 

 Xiは嫌そうに読み上げた。

 

『我が一族の醸造蔵で熟成させた、特製の黒酢だ。

 常人が飲むと、関節が古い扉のように軋む音を立てるが……

 酢の力で、己の可動域を音で実感できるよう仕上げた。

 慣れるとクセになる。』

 

 店内が静まり返った。

 

 シンが叫んだ。

 

「音で実感しなくていい!!」

 

 弥子も箱を見た。

 

「“からだの動きを、音で感じる”って、そういう意味!?」

 

 キラは苦笑した。

 

「またコピーに嘘は少ないんだ……」

 

 カイエンは眉をひそめた。

 

「関節が鳴る? そんなもん――」

 

 そう言って、一歩踏み出した。

 

 ギシ。

 

 全員が止まった。

 

 カイエンも止まった。

 

「……」

 

 シンが小声で言った。

 

「鳴りましたよね」

 

「床だヨ」

 

 カイエンは即答した。

 

 ログナーが店の床を見た。

 

「床は動いていない」

 

「じゃあ下駄だ」

 

 アウクソーが静かに言う。

 

「マスター。今の音は、左膝からでした」

 

「はっきり言うなヨ」

 

 カイエンは肩を回した。

 

 ギィ……。

 

 シンが叫んだ。

 

「肩!」

 

「椅子だ」

 

「椅子に座ってません!」

 

 カイエンは腕を軽く振った。

 

 キシ。

 

「肘です」

 

 アウクソーが即座に言った。

 

「確認すんな」

 

「とても聞き取りやすかったです」

 

「褒めてねぇだろ、それ」

 

 Xiは腹を抱えかけている。

 

「師匠、古い屋敷みたいな音してる」

 

「笑うな」

 

 ネウロは、いつの間にか酒屋の片隅に立っていた。

 

「ククク……達人の無音の初動を、古い民家の床板に変える悪意か。実にくだらん」

 

 シンが振り返る。

 

「いつからいたんですか!?」

 

「軋みの匂いがしたのでな」

 

「匂いじゃなくて音です!」

 

 ログナーはカイエンを見た。

 

「カイエン」

 

「何だヨ」

 

「今のお前は、騎士戦において最も避けるべき状態だ」

 

 カイエンの顔が少し険しくなる。

 

「……何だヨ」

 

「初動が読める」

 

「……」

 

「剣筋が聞こえる」

 

「……」

 

「フェイントも音でわかる」

 

「そこまで言うかヨ」

 

「事実だ」

 

 カイエンは不機嫌そうに口を曲げた。

 

「だったら、音がしても読めねぇくらい速く動きゃいいだろ」

 

 ログナーが即座に言った。

 

「やめろ」

 

「何でだヨ」

 

「音が増える」

 

 シンが思わずツッコんだ。

 

「そこなんですか!?」

 

 カイエンはログナーを睨む。

 

「うるせぇナ。説教すんなヨ」

 

 そのまま、軽くログナーの肩を小突こうとした。

 

 普段なら、誰も気づかないほど自然な動きだった。

 

 少なくとも、普通の人間なら。

 

 だが今回は違った。

 

 肩が鳴った。

 ギィ。

 肘が鳴った。

 キシ。

 手首が鳴った。

 ギギ。

 ログナーは、寸前で一歩ずれた。

 

「右手だな」

 

 カイエンの手は空を切った。

 

「読むなヨ!」

 

「読んだのではない。聞こえた」

 

「余計悪いわ!」

 

 アウクソーが静かに言う。

 

「マスター。肩、肘、手首の順で申告しておりました」

 

「申告って言うな」

 

「次の動作は左膝から始まると思われます」

 

「俺の膝を部下みてぇに扱うなヨ」

 

 シンはもう笑いをこらえきれない。

 

「剣聖の攻撃が、音声ガイド付きになってる……!」

 

 アスランは真面目に分析していた。

 

「これは潜入任務では致命的です」

 

 Xiが頷く。

 

「怪盗業でもアウトだね。忍び込む前に廊下でバレる」

 

 キラが言った。

 

「戦闘でも、タイミングが全部聞こえるのは厳しいね」

 

 ラクスが少し困ったように言う。

 

「ご本人にとっては、とても不本意ですわね」

 

 カイエンは腕を組もうとした。

 

 ギシ。

 

 キシ。

 

「腕を組むだけで鳴るんですか……」

 

 弥子が呟いた。

 

「鳴ってねぇ」

 

「鳴ってます」

 

 弥子は即答した。

 

 すえぞうが店先から顔を出す。

 

「ギシギシ!」

 

 カイエンが言った。

 

「お前まで言うな」

 

「エライ?」

 

 シンが首を傾げた。

 

「今の“エライ”は、偉いなのか、大変なのか……」

 

 Xiが言った。

 

「両方じゃない?」

 

 すえぞうは元気よく言った。

 

「カイエン、エライ!」

 

「やめろ。どっちの意味でも嫌だ」

 

 ログナーは黒酢の瓶を回収し、検査を始めた。

 

 毒性なし。

 薬物性なし。

 記憶改変なし。

 精神誘導なし。

 魔界由来なし。

 骨、関節、筋肉への実害なし。

 ただし摂取後数時間、関節運動時に軋み音を発生。

 音量は、本人の運動量、関節数、動作の大きさに比例。

 騎士の高速機動では音が連続し、初動の秘匿性を著しく損なう。

 

 ログナーは結果を読み上げた。

 

「健康被害は確認されない」

 

 弥子がほっとした。

 

「よかった……」

 

「ただし、騎士戦、潜入、奇襲、フェイント、静かな交渉、図書館、美術館、映画館での摂取は通行止め」

 

 シンが叫ぶ。

 

「黒酢を飲んで映画館に行くことあります!?」

 

 アスランが真面目に言った。

 

「静かな場で鳴るのは困る」

 

「それはそうですけど!」

 

 ログナーは続けた。

 

「ご飯前、風呂上がり、健康目的での摂取も通行止め」

 

 カイエンが言う。

 

「健康目的も駄目なのかヨ」

 

「健康ではなく騒音になる」

 

「言い方」

 

 その時、レディオス・ソープが黒酢の小瓶を興味深そうに覗き込んだ。

 

「関節運動を音で確認できるのか。身体動作のフィードバックとしては面白いね」

 

 ログナーが即座に言った。

 

「陛下、通行止めです」

 

「まだ何もしていないよ」

 

「“面白い”が出ました」

 

 ソープは少し考える。

 

「訓練用に、初動の癖を音で確認できる飲料として――」

 

「通行止めです」

 

「騎士の稽古に使えば、自分の癖を――」

 

「通行止めです」

 

 ラキシスがそっと言った。

 

「ソープ様。私は、普通の黒酢ドリンクがよろしいですわ」

 

 ソープは微笑んだ。

 

「普通の黒酢か」

 

 ログナーが言う。

 

「通行可です」

 

 Xiが小声で言った。

 

「姫様ブレーキ、今日も強い」

 

 カイエンはまだ不満そうだった。

 

「俺は普通の黒酢を飲んだつもりだったんだヨ」

 

 ログナーが言った。

 

「ヘキサクス製だった」

 

「見てなかった」

 

「だから飲むなと言った」

 

「一口だけだろ」

 

「一口で鳴っている」

 

 カイエンが軽く足を動かした。

 

 キィ。

 

 ログナーが視線を落とす。

 

「今のは右足首だ」

 

「いちいち報告すんな」

 

 アウクソーが補足する。

 

「音質から見て、足首です」

 

「音質で判断するな」

 

 ネウロが笑った。

 

「ククク……剣で斬る前に、関節が口を割る。達人ほど屈辱だろうな」

 

 カイエンはネウロを睨んだ。

 

「黙れ魔人」

 

 ネウロはさらに笑った。

 

「言葉より先に膝が鳴っているぞ」

 

「鳴ってねぇ!」

 

 ギシ。

 

 シンが吹き出した。

 

「今鳴りました!」

 

 カイエンは黙った。

 

 酒屋の店主は、気の毒そうに言った。

 

「これは……売らなくて本当によかったですねぇ」

 

 ログナーは頷いた。

 

「正しい判断です」

 

「いやあ、前のレモンサワーで懲りましたからねぇ」

 

 Xiが言う。

 

「酒屋さんも勝ったね」

 

 店主は笑った。

 

「勝ちなんですかねぇ」

 

 弥子は力強く言った。

 

「被害がカイエンさんだけで済みました!」

 

 カイエンが睨む。

 

「済ませるな」

 

 アスランは真面目に店主へ確認した。

 

「この商品を他に受け取った店は?」

 

「たぶん何軒かあると思います。問屋が同じなら」

 

 ログナーの目が冷たくなる。

 

「納入経路を確認する」

 

 店主はすぐに伝票を出した。

 

「これです。必要なら全部見てください」

 

「協力に感謝する」

 

 ログナーは封筒を出した。

 店主が慌てる。

 

「いやいや、今回は売ってもないし、飲んでもないですから」

 

「通報、保管、納入経路提供の手間が発生している。補填対象だ」

 

「でもねぇ」

 

「受け取ってください」

 

 店主は苦笑して受け取った。

 

「じゃあ、ありがたく」

 

 Xiがぽつりと言った。

 

「ヘキサクスの嫌がらせが、また通報報奨金になった」

 

 キラが微笑む。

 

「今回はお店がちゃんと止めたからね」

 

 ラクスも頷いた。

 

「正しい判断が報われるのは、よいことですわ」

 

 ログナーは報告書を書き始めた。

 

『ヘキサクス製黒酢。

 酒類販売店に無料見本として搬入。販売前に店主が通報。

 販売店側の判断は適切。

 ただしダグラス・カイエンが一口摂取。

 摂取後、関節運動時に軋み音を確認。

 健康被害なし。尊厳被害あり。

 通常なら不可視・不可聴に近い初動が音声化。

 騎士戦、潜入、奇襲、フェイント、ログナーへの不意打ち的ツッコミにおいて致命的。

 飲料として通行止め。』

 

 カイエンが横から覗いた。

 

「おい」

 

「何だ」

 

「“ログナーへの不意打ち的ツッコミ”って何だヨ」

 

「実例だ」

 

「消せ」

 

「通行止めだ」

 

「俺の報告書で遊ぶな」

 

「事実を書いている」

 

 カイエンは文句を言おうとして、一歩踏み出した。

 

 ギシ。

 

 ログナーは見ずに言った。

 

「左膝」

 

「だから言うな!」

 

 アウクソーが静かに言う。

 

「マスター。しばらく安静にされた方がよろしいかと」

 

「安静にしたら鳴らねぇのか」

 

「動かなければ」

 

「根本解決になってねぇヨ」

 

 シンが笑いをこらえながら言った。

 

「剣聖が、動くと鳴るから安静に……」

 

 カイエンが睨む。

 

「笑うな」

 

「すみません。でも、これは……」

 

 弥子も口元を押さえていた。

 

「カイエンさん、剣は超一流なのに、酸味系に弱すぎません?」

 

「まとめるな」

 

 Xiが指折り数える。

 

「レモンサワーで酸っぱい汗。梅干しで釣りの記憶。黒酢で関節ギシギシ」

 

「並べるな」

 

 すえぞうが元気よく言った。

 

「すっぱい! ギシギシ!」

 

「楽しそうに言うな」

 

 

 黒酢は全数回収された。

 

 店主は普通の商品だけを棚に戻した。

 

 カイエンは、できるだけ動かないように腕を組んでいた。

 

 だが、腕を組み直すたびに小さく鳴る。

 

 キシ。

 

 ギシ。

 

「……うるせぇな」

 

 ログナーが言った。

 

「うるさいのはお前の関節だ」

 

「言うと思ったヨ」

 

 アウクソーが静かにタオルを差し出した。

 

「マスター。帰りはゆっくり歩きましょう」

 

「速く歩いたらどうなる」

 

「音が増えます」

 

「……」

 

 シンが小声で言った。

 

「完全に古い床板扱い……」

 

 アスランは真面目に言う。

 

「カイエンさん。次からは、検査前に飲まないでください」

 

「わかってるヨ」

 

 ログナーが即座に言う。

 

「本当か」

 

「うるせぇナ」

 

「レモンサワーの時も、梅干しの時も、同じ流れだった」

 

「今回は健康にいいと思ったんだヨ」

 

「ヘキサクス製品に健康を期待するな」

 

 弥子が深く頷いた。

 

「普通の黒酢なら、健康にいいかもしれません。でもヘキサクス製は駄目です」

 

 キラも頷く。

 

「普通って大事だね」

 

 ラクスが微笑んだ。

 

「普通の食品が、普通に体に良い。それだけでありがたいですわ」

 

 ソープが少し考える。

 

「普通の黒酢を、普通に飲む……」

 

 ログナーが警戒する。

 

「陛下」

 

「何もしていないよ」

 

 ラキシスが穏やかに言った。

 

「ソープ様。普通でよろしいのですわ」

 

「そうだね、ラキシス」

 

 Xiは黒酢の箱を見ながら、ため息をついた。

 

「あのクソ親父、今度は関節かよ」

 

 ネウロが笑う。

 

「忘れるチーズ、思い出す梅干し、泣かせる塩昆布、鳴らす黒酢。日常を少しずつ壊す手口としては、実に小粒で悪趣味だ」

 

 シンが言った。

 

「小粒なのに、被害者の尊厳だけはちゃんと削ってくるんですよね」

 

 カイエンが言う。

 

「削れてねぇ」

 

 ギシ。

 

 ログナーが見る。

 

「削れている」

 

「関節の音で判断すんな」

 

 その日の教訓は、単純だった。

 

 健康食品でも、ヘキサクス製なら飲むな。

 

 黒酢は普通なら健康に良いかもしれない。

 

 だが、ヘキサクス製なら関節が鳴る。

 

 そして、騎士にとって初動が音になることは、ほぼ敗北に近い。

 

 カイエンは最後まで認めなかった。

 

「負けてねぇヨ」

 

 ログナーは即答した。

 

「右肩が先に負けを申告していた」

 

「俺の肩を勝手に喋らせんな!」

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