守るべきもの、怒るべきもの、斬るべきもの、喰うべき謎 ――キラ、承太郎、カイエン、ネウロのごった煮会話劇 作:ギアっちょ
怪盗Xiはアウト・ミラージュに乗りたくない 前編
春の陽気に包まれた、カフェテラス。
青空の下、いつもの面々が思い思いに飲み物を楽しんでいた。
弥子はパンケーキを食べ。
シンはアイスコーヒー。
キラは紅茶。
アスランは珈琲。
Xiとバクスチュアルも窓際で珈琲を飲んでいる。
ラキシスがソープへ紅茶を差し出した。
「ソープ様。」
「ありがとう。」
一口飲む。
そして、まるで天気の話でも始めるように口を開いた。
「そうそう……この間のアウト・ミラージュだけど。」
……
…………
……………………
店内が静まり返った。
シンが真っ先に叫ぶ。
「陛下が諦めてなかった!!」
キラもカップを置く。
「設計まで通行止めになりましたよね?」
アスランは真顔だった。
「ログナー司令が止めたはずですが。」
Xiは深くため息をついた。
「僕は今日、静かに珈琲を飲みに来たんだけど。」
ソープは穏やかに笑う。
「だから珈琲を飲みながら聞けばいい。」
「その言い方で安心したこと、一度もありません。」
ラキシスは微笑む。
「今回も長くなりそうです。」
「ラキシス姫様まで受け入れないでください。」
ソープは卓上端末を取り出した。
画面に映し出される白銀の騎体。
黄金の肩。
紫の内部フレーム。
黒いマントのような背面装甲。
Xiは一瞬だけ目を奪われた。
「……カッコいい。」
全員がXiを見る。
Xiはハッとした。
「違う、今の忘れて!」
ソープは嬉しそうに頷く。
「本人から肯定的評価を得たね。」
「感想を契約書に書き込まないでください!」
ソープは説明を始めた。
「前回案とは少し違う。」
「嫌な予感しかしない。」
「これは完全新造騎ではない。」
Xiが嫌そうな顔になる。
「どういう意味?」
「シュペルターの旧設計データと、保管されていた予備部材を再構成した。」
カイエンが珈琲を飲みながら頷く。
「なるほどナ。」
Xiは振り返る。
「師匠、知ってたの?」
「今聞いた。」
「じゃあ何で納得してるんですか!」
ソープは続ける。
「ウォータードラゴンからシュペルターへ。」
「そして。」
「シュペルターからアウト・ミラージュへ。」
「君が受け継ぐ。」
Xiは額を押さえた。
「重い!!」
ソープは首を傾げる。
「大丈夫。」
「LEDミラージュよりは軽い。」
Xiは勢いよく立ち上がる。
「そういう重いじゃないです!!」
シンが吹き出す。
ソープは真面目な顔のまま説明を続ける。
「軽量化しながらフレーム剛性は向上。」
「出力はK.O.G.級。」
「LEDミラージュよりパワーは上だよ。」
Xiは頭を抱えた。
「お気軽さとかの安心できる要素はどこですか!?」
「軽いところかな。」
「重量から離れてください!!」
キラが仕様を眺める。
「フェイズシフト装甲……?」
「局所的に採用した。」
ソープは楽しそうだった。
「肩部・胸部・前腕のみ。」
「二度の受け流しで避け切れなかった場合だけ起動する。」
アスランが感心する。
「MHにMS系技術を融合したのですね。」
「そう。」
「生き延びるためだから。」
Xiがツッコむ。
「そこだけ聞くと凄く真っ当なんですよ!」
「だから断りづらいんです!」
ソープはさらに仕様を送る。
『シュペルターMarkⅡ』
Xiは固まった。
「……何?」
「言うなれば。」
「シュペルターMarkⅡ。」
Xiは叫んだ。
「重い!!」
「名前だけで肩こる!!」
「歴史が一気に二百年くらい増えた!!」
カイエンが笑う。
「悪くねぇヨ。」
「師匠まで!!」
「弟子なら似合う。」
「その一言が一番重い!!」
バクスチュアルが設計図を見る。
「Xiサン。」
「何?」
「似合ウ。」
Xiは黙る。
「…………。」
「否定できないから困るんだよ。」
ソープは嬉しそうに紅茶を飲んだ。
「やはり君が乗るべきだ。」
Xiは机へ突っ伏した。
「陛下まで外堀をコンクリートで埋め立てないで!」
シンが笑う。
「もう逃げ場ないな。」
「ある!」
Xiは即答した。
「乗らない!」
「それが僕の最終防衛ラインだから!」
ソープは少し考えた。
「そういえば。」
Xiが嫌そうな顔になる。
「まだ何かあるんですか。」
「まさかとは思うけど。」
Xiは恐る恐る聞いた。
「……バスターランチャーは付いてこないよね?」
ソープは不思議そうな顔をした。
「?」
Xiは青ざめる。
「その顔やめて。」
「標準装備ではないよ。」
Xiは胸を撫で下ろす。
「よかった……。」
ソープは微笑む。
「オプションで付けようか?」
Xiは即答した。
「要らないです!!」
「取り外し式だから安心だ。」
「安心材料どこ!?」
「携行性も考慮した。」
「バスターランチャーに携行性という単語を使わないでください!!」
アスランが仕様を眺める。
「小型化されていますね。」
Xiは振り返る。
「比較対象がヤクト・ミラージュなんですよ!」
「十分大きいです!」
ログナーが静かに口を開く。
「陛下。」
「何だい?」
「バスターランチャー追加案は通行止めです。」
「まだ概念設計だけだよ。」
「概念も通行止めです。」
Xiは心底ほっとした。
「司令……。」
「今回ほど頼もしく見えたことないです。」
「安心するのは早い。」
「え?」
「バスターランチャーは通行止めにした。」
「ありがとうございます!」
「だが、騎体そのものは通行可だ。」
「そっちを止めてください!!」
「ミラージュ騎士団としては問題ない。」
「僕は問題だらけなんですよ!」
それでもソープは少し残念そうだった。
「では格納庫へ一本だけ置いておこう。」
Xiは絶叫した。
「騎体に付けなければいいって話じゃないです!!」
ラキシスが静かに微笑む。
「ソープ様。」
「何だい。」
「これ以上はXi様がお可哀想です。」
「そうかな。」
「十分楽しませていただきました。」
ソープは紅茶を飲み干した。
「それでは最後に一つだけ。」
Xiは身構える。
「まだあるの!?」
ソープは微笑んだ。
「設計図だけでは分かりづらいだろう?」
「嫌な予感しかしません。」
「もう実物は組み上がっている。」
……
…………。
………………。
全員が固まった。
Xiだけが口をぱくぱくさせている。
「…………え?」
ソープは当然のように言った。
「見に行こうか。」
「行きません!!」
バクスチュアルが袖を引く。
「少シ、見タイ。」
Xiは天を仰いだ。
「君ぃぃぃぃぃ!!」
* 後編へ続く