守るべきもの、怒るべきもの、斬るべきもの、喰うべき謎 ――キラ、承太郎、カイエン、ネウロのごった煮会話劇   作:ギアっちょ

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怪盗Xiはアウト・ミラージュに乗りたくない 後編

AKD王城、フロートテンプル巨大格納庫。

 

ゆっくりと照明が灯る。

 

一本。

二本。

三本。

 

闇の中から、一騎のモーターヘッドが姿を現した。

MHアウト・ミラージュ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

白銀の装甲。

黄金の肩。

紫に輝く内部フレーム。

背中から流れる黒い外套。

 

シュペルターの面影を残しながらも、その姿は明らかに新しい。

静かに、堂々と立っている。

 

誰も言葉を発しなかった。

Xiだけが、小さく呟く。

 

「……カッコいい。」

 

ソープは満足そうに頷いた。

 

「本人から正式な肯定を得たね。」

 

Xiはハッとして振り返る。

 

「見た目の感想を受領書に書き換えないでください!」

 

シンが笑う。

 

「もう無理だな。」

 

「何が!?」

 

ソープは機体を見上げた。

 

「シュペルターの魂は残した。」

 

「しかし君のための騎体として生まれ変わった。」

 

Xiは肩を落とす。

 

「その説明だけ聞くと断れないんだよ……。」

 

バクスチュアルは静かに機体を見上げていた。

 

「綺麗……。」

 

アウクソーが嬉しそうに頷く。

 

「姉様も、そう思われますか。」

 

「ウン。」

 

「本当ニ綺麗。」

 

Xiは小声で呟く。

 

「そこまで気に入る?」

 

「ウン。」

 

「乗ッテミタイ。」

 

Xiは天を仰いだ。

 

「君までぇ……。」

 

ソープが笑う。

 

「では。」

 

「乗ってみようか。」

 

「嫌です。」

 

即答だった。

 

ソープは首を傾げる。

 

「どうして?」

 

「どうしてじゃありません。」

 

「巨大ロボですよ?」

 

「僕、怪盗ですよ?」

 

「専門職が違うでしょう!」

 

カイエンが腕を組む。

 

「誰でも最初は初めてだヨ。」

 

「師匠まで!」

 

「初陣は覚えてねぇか?」

 

「覚えてますけど!」

 

「だから緊張するんですよ!」

 

ログナーが腕時計を見る。

 

「予定通り進行しています。」

 

Xiが振り向く。

 

「予定表に入ってたんですか!?」

 

「起動試験一〇時。」

 

「誰の予定ですか!?」

 

「陛下の。」

 

「でしょうね!」

 

ソープは笑顔だった。

 

「安心したまえ。」

 

「今日は戦わない。」

 

「座るだけだ。」

 

Xiは疑いの目を向ける。

 

「本当に?」

 

「もちろん。」

 

バクスチュアルが頷く。

 

「座ルダケ。」

 

Xiはしばらく悩み、

 

深いため息をついた。

 

「……座るだけだからね。」

 

格納庫に拍手が起こった。

 

「拍手しないで!!」

 

・・・

 

数分後。

 

アウト・ミラージュの胸部ハッチが開く。

 

昇降機が降りてきた。

 

Xiとバクスチュアルが乗り込む。

 

コクピットは想像以上に広かった。

 

椅子が静かに身体へ合わせて動く。

 

「おぉ……。」

 

思わず声が漏れた。

 

ソープの声が通信機から聞こえる。

 

『座席は自動調整だよ。』

 

「快適……。」

 

『気に入った?』

 

「そこじゃありません。」

 

バクスチュアルが嬉しそうだった。

 

「広イ。」

 

『それでは動作確認を始める。』

 

Xiが固まる。

 

「え?」

 

『起動。』

 

低い駆動音。

 

格納庫全体が震える。

 

巨大な心臓が鼓動を始めた。

 

Xiは叫ぶ。

 

「陛下ぁ!!」

 

『どうしたんだい?』

 

「起動してます!!」

 

『座席調整には必要だからね。』

 

「それを起動って言うんですよ!!」

 

カイエンの声が割り込む。

 

『力を入れるなヨ。』

 

『騎体が先に動く。』

 

Xiは恐る恐る操縦桿へ手を添えた。

 

ゆっくり。

本当にゆっくり。

 

アウト・ミラージュの右足が前へ出る。

 

ドォン……

 

格納庫へ響く重低音。

 

シンが口を開けた。

 

「歩いた……。」

 

アスランが感心する。

 

「初搭乗とは思えない。」

 

ソープは微笑む。

 

『二歩目。』

 

「えっ?」

 

『三歩目。』

 

「待って待って待って!」

 

それでも、

 

機体は静かに歩いた。

 

三歩。

 

ぴたりと停止する。

 

ソープが嬉しそうに言う。

 

『初回としては十分だ。』

 

Xiは放心していた。

 

『降りようか。』

 

・・・

 

数分後。

胸部ハッチが開く。

昇降機がゆっくり降りてくる。

 

最初にバクスチュアル。

続いてXi。

 

床へ足を着けた瞬間、

Xiはその場へしゃがみ込んだ。

 

両手で床を触る。

 

弥子が駆け寄る。

 

「初めて巨大ロボに乗ってどうだった?」

 

Xiは床を撫でながら、

 

心の底から言った。

 

「……地面最高。」

 

「そこ!?」

 

Xiは床をぽんぽん叩いた。

 

「動かない。」

 

「揺れない。」

 

「急にK.O.G.級出力にならない。」

 

「剣聖の弟子として期待もされない。」

 

「この安心感……。」

 

「地面って素晴らしい。」

 

シンは笑いを堪えきれない。

 

「三歩しか歩いてないだろ。」

 

「三歩もだよ!!」

 

ソープは満足そうだった。

 

「操縦適性は問題ないね。」

 

Xiが勢いよく立ち上がる。

 

「今の僕を見て、どこに適性を感じたんですか!?」

 

「転倒させなかった。」

 

「評価基準が教習所なんですよ!!」

 

カイエンが笑う。

 

「上出来だヨ。」

 

「褒めないでください!」

 

「次があるみたいになる!」

 

その横で。

 

アウクソーはバクスチュアルへ向き直った。

 

「姉様。」

 

「ハイ。」

 

「シュペルター系エンジンの特性ですが、起動直後は出力の立ち上がりが鋭いため……」

 

Xiが勢いよく振り返る。

 

「そこ!」

 

全員が見る。

 

「アウクソーも!」

 

「僕とバクスチュアルがこのMHに乗る前提の引き継ぎやめて!」

 

アウクソーはきょとんとした。

 

「ですが姉様は補助制御を担当されますので。」

 

「担当しません!」

 

「Xi様が力みすぎた場合は、姉様が出力を抑えて差し上げてください。」

 

「ウン。」

 

「分カッタ。」

 

「分からなくていい!」

 

「実習へ進まないで!」

 

ログナーが静かに頷く。

 

「教育計画は順調だ。」

 

Xiは絶叫した。

 

「教育計画になってる!!」

 

ソープは紅茶を一口飲む。

 

「面白いと思わないか?」

 

Xiは天井を見上げた。

 

「全然。」

 

「僕だけが笑えない。」

 

皆が笑う。

 

バクスチュアルだけは、

そっとXiの手を握った。

 

「Xiサン。」

 

「……何?」

 

「一緒ナラ、大丈夫。」

 

Xiは少しだけ笑った。

 

「……それは、そうかもしれない。」

 

ソープは嬉しそうに頷いた。

 

「本人から二度目の肯定を得たね。」

 

Xiは顔を上げる。

 

「だから都合よく切り取らないでください!!」

 

「そうそう……」

 

「まだあるの?」

 

ソープは小さなケースを差し出した。

 

中には、銀色の始動キー。

美しい紋章が刻まれている。

 

Xiは嫌そうな顔になる。

 

「……何これ。」

 

「アウト・ミラージュの始動キー。」

 

「返します。」

 

「まだ受け取ってないよ。」

 

「受け取る前に返します。」

 

「陛下。」

 

「なに、ログナー?」

 

「鍵の引き渡しは本人の意思を確認してからです。」

 

「そうだった。危なかったね。」

 

「危なかったね、じゃないですよ!!」

 

格納庫いっぱいに笑い声が響いた。

 

その日。

怪盗Xiは最後まで、

「乗ります」とは一度も言わなかった。

 

しかしAKD整備班では、

アウト・ミラージュの整備予定表に、

静かにこう書き加えられたという。

 

『次回試験予定 騎士:怪盗Xi(予定)』

 

Xiはまだ、その事実を知らない。

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