守るべきもの、怒るべきもの、斬るべきもの、喰うべき謎 ――キラ、承太郎、カイエン、ネウロのごった煮会話劇   作:ギアっちょ

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怪物強盗Xiは魔人を連れて出社したい 後編

ヘキサクス本社。

受付ロビー。

 

「社員に言わせるなァァァァァ!!!!!」

 

怪物強盗Xiの絶叫が。

 

広いロビーに響き渡っていた。

 

受付社員は申し訳なさそうに縮こまり。

 

ジョーイ係長は頭を抱え。

 

そして。

 

ネウロは。

 

「ククククク……!」

 

笑っていた。

 

心底。

 

楽しそうに。

 

Xiが睨む。

 

「笑うな!」

 

「いや」

 

ネウロは口元を歪める。

 

「実に面白い」

 

「僕は全然面白くない!」

 

「貴様ほどの怪物強盗が、たった一言でここまで取り乱すとはな」

 

「その一言を言わせてる相手が問題なんだよ!」

 

受付社員が、おそるおそる言った。

 

「あの……本当に申し訳ありません」

 

Xiはすぐに振り返った。

 

「あ、あなたは悪くないから!」

 

「はい……」

 

「本当に。絶対に。言わせた奴が悪いから」

 

「ありがとうございます……」

 

ネウロが言う。

 

「意外と部下には優しいのだな」

 

Xiが振り返る。

 

「そりゃそうだろ! 社員は被害者だよ!」

 

ジョーイ係長が大きく頷いた。

 

「その認識だけで、もうウチの会長よりマシや!」

 

受付社員。

 

「係長」

 

「今のは忘れて」

 

「聞こえました」

 

「忘れて!」

 

その時。

 

エレベーターの到着音が鳴った。

 

ジョーイ係長がため息を吐く。

 

「ほな……行きますか」

 

Xi。

 

「行きたくない」

 

「ここまで来て帰るなや!」

 

「ネウロだけ行ってくれない?」

 

ネウロ。

 

「断る」

 

「なんで!?」

 

「我が輩が見たいのは、貴様とシックスのやり取りだ」

 

Xi。

 

「僕を観察対象にするな!!」

 

三人は。

 

エレベーターへ乗り込んだ。

 

上へ。

 

上へ。

 

ヘキサクス本社の上層階へ。

 

Xiは腕を組んだまま。

 

非常に嫌そうな顔をしている。

 

ジョーイ係長が横から見る。

 

「そんな嫌か?」

 

「嫌だよ」

 

「でも会うだけやで?」

 

「ジョーイ」

 

「なんや?」

 

Xiは真顔で言った。

 

「普通の父親ならね」

 

「うん」

 

「息子が会社に来た時、社員を使って『パパが待ってる』なんて言わせないんだよ」

 

ジョーイ係長。

 

「それは……まあ……」

 

ネウロ。

 

「普通の父親ではないのだろう?」

 

Xi。

 

「だからネウロ連れてきたんだよ!!」

 

「我が輩も普通ではないがな」

 

「そこは知ってる!」

 

エレベーターが止まった。

 

扉が開く。

 

そこには。

 

イエッタと。

 

ログナーが待っていた。

 

Xiが目を丸くする。

 

「なんでいるの?」

 

ログナー。

 

「念のためだ」

 

Xiがネウロを見る。

 

ネウロもログナーを見る。

 

「我が輩を警戒しているのか?」

 

ログナー。

 

「当然だ」

 

「正直だな」

 

「会長室内での能力使用は禁止だ」

 

Xi。

 

「まだ言ってる」

 

ログナーはXiを見る。

 

「お前にも言っている」

 

「僕は使えないよ!」

 

「ネウロに許可を出そうとしていただろう」

 

「…………」

 

ログナー。

 

「通行止めだ」

 

Xi。

 

「はいはい!」

 

イエッタが静かに言った。

 

「ゾディア会長は中でお待ちです」

 

Xi。

 

「……帰っていい?」

 

イエッタ。

 

「ご自由に」

 

Xi。

 

「え?」

 

イエッタ。

 

「会談自体は強制ではありません」

 

「…………」

 

「帰りますか?」

 

Xiは少し黙った。

 

そして。

 

会長室の扉を見る。

 

「……行く」

 

バクスチュアルの言葉が。

 

少しだけ頭をよぎった。

 

自分デ、決メル。

 

だから。

 

ここへ来たことも。

 

中へ入ることも。

 

自分で決める。

 

「行こう」

 

ネウロが笑った。

 

「ククク。少しは腹が決まったか」

 

Xi。

 

「誰のせいで余計疲れてると思ってるの?」

 

「知らんな」

 

扉が開いた。

 

ヘキサクス会長室。

 

大きな窓。

 

重厚な机。

 

整然と並ぶ資料。

 

そして。

 

その中央に。

 

一人の男が座っていた。

 

ゾディア・キューブリック。

 

ヘキサクス会長。

 

シックス。

 

ネウロは。

 

部屋へ入った瞬間。

 

目を細めた。

 

「ほう」

 

シックスも。

 

ネウロを見る。

 

そして。

 

少しだけ笑った。

 

「随分と懐かしい客を連れてきたな、Xi」

 

Xi。

 

「その言い方やめてよ」

 

ネウロ。

 

「久しいな」

 

シックス。

 

「ああ」

 

ジョーイ係長が二人を見比べる。

 

「……ホンマに知り合いなんやな」

 

Xi。

 

「知り合いだよ」

 

「どういう知り合いや?」

 

Xi。

 

「説明すると長い」

 

ネウロは。

 

会長室をゆっくり見回した。

 

机。

 

壁。

 

窓。

 

書類。

 

企業ロゴ。

 

そして。

 

シックス。

 

「ククク……」

 

シックス。

 

「何がおかしい?」

 

「いや」

 

ネウロは笑う。

 

「貴様にも、こういう顔があるのだなと思ってな」

 

「こういう顔?」

 

「企業の会長」

 

ネウロは机を指差した。

 

「人間社会の秩序に従い、部下を置き、組織を作り、書類に判を押す」

 

シックス。

 

「不思議か?」

 

「多少な」

 

ネウロは薄く笑った。

 

「我が輩の知る貴様は、もっと露悪的だったのでな」

 

シックス。

 

「表の立場には表の役割がある」

 

「なるほど」

 

ネウロは。

 

また笑う。

 

「これが貴様の人間社会における巣か」

 

シックス。

 

「会社だ」

 

ネウロ。

 

「似たようなものだろう」

 

ジョーイ係長。

 

「一緒にせんといてください!!」

 

Xiが吹き出した。

 

シックスは。

 

Xiを見る。

 

「それで」

 

「何」

 

「よく来たな」

 

「僕一人じゃないけどね」

 

「ああ」

 

シックスはネウロを見る。

 

「随分と物騒な付き添いだ」

 

Xi。

 

「保険」

 

ログナー。

 

「保険ではない」

 

Xi。

 

「まだ何もしてないよ」

 

ログナー。

 

「するな」

 

シックスは面白そうに笑った。

 

「私に会うために魔人を連れてくるとは」

 

Xi。

 

「誰のせいだと思ってるんだよ」

 

「私か?」

 

「そうだよ!」

 

シックス。

 

「では」

 

少し間を置き。

 

「パパと呼びなさい」

 

Xi。

 

「嫌だ!!」

 

ネウロ。

 

「呼んでやればいいではないか」

 

Xiが。

 

ゆっくり。

 

横を向いた。

 

「…………」

 

ネウロ。

 

「何だ」

 

Xi。

 

「今、なんて?」

 

ネウロ。

 

「呼んでやればいいと言った」

 

Xi。

 

「なんでそっちにつくんだよ!!」

 

ネウロは笑う。

 

「貴様が嫌がるからだ」

 

シックス。

 

「気が合うな」

 

ネウロ。

 

「その点だけはな」

 

Xi。

 

「気を合わせるな!!!」

 

ジョーイ係長。

 

「最悪の組み合わせや……」

 

イエッタ。

 

「予想以上ですね」

 

ログナー。

 

「だから警戒した」

 

Xiがネウロへ詰め寄る。

 

「僕、助けてもらうために連れてきたんだけど!」

 

「我が輩は最初から、貴様を助けるとは一言も言っていない」

 

「知ってるけど!」

 

「なら問題ない」

 

Xi。

 

「ログナーみたいなこと言うな!」

 

ログナー。

 

「俺を巻き込むな」

 

Xi。

 

「みんな冷たい!」

 

シックスは椅子へ深く座る。

 

「それでXi」

 

「何」

 

「名刺案は見た」

 

Xiの顔が曇る。

 

「まだ仮だから」

 

「会長室長」

 

「仮」

 

「Xi・キューブリック」

 

「仮!」

 

「悪くない」

 

「僕が決める!」

 

シックスは少し笑った。

 

「最終的にはな」

 

Xi。

 

「『最終的には』じゃない」

 

「何?」

 

Xiは。

 

シックスを真っ直ぐ見る。

 

「最初から僕が決めるんだよ」

 

少し。

 

部屋が静かになった。

 

Xiは続ける。

 

「僕がヘキサクスに関わるか」

 

「…………」

 

「会長室長になるか」

 

「…………」

 

「キューブリックを名乗るか」

 

「…………」

 

「全部」

 

Xiは言った。

 

「僕が決める」

 

シックスは。

 

しばらく。

 

Xiを見る。

 

やがて。

 

「だが」

 

口元を歪めた。

 

「最終的にお前が私の後を継ぐことに変わりはない」

 

Xi。

 

「ほら、それ!」

 

シックス。

 

「何だ?」

 

「そうやって最初から結末を決めるところ!」

 

「私には見えているだけだ」

 

「僕には見えてないよ!」

 

その時だった。

 

「つまらんな」

 

ネウロが言った。

 

シックスの目が。

 

ネウロへ向いた。

 

「何?」

 

ネウロは。

 

腕を組んだまま。

 

笑っていた。

 

ただし。

 

先ほどまでの。

 

Xiをからかう笑いとは。

 

少し違っていた。

 

「つまらんと言ったのだ」

 

「何が?」

 

ネウロはシックスを見る。

 

「貴様は、自分の望む結末を最初から決めている」

 

シックス。

 

「だから?」

 

「その通りにXiを動かし」

 

ネウロは指を一本立てる。

 

「その通りの椅子へ座らせ」

 

「…………」

 

「その通りに後を継がせる」

 

ネウロは。

 

口元を歪めた。

 

「どこに面白みがある?」

 

シックス。

 

「…………」

 

Xiも。

 

少し驚いてネウロを見る。

 

ネウロは続けた。

 

「人間は」

 

一歩。

 

部屋の中央へ進む。

 

「思惑通りに動かないから面白い」

 

シックス。

 

「お前が人間を語るか」

 

ネウロ。

 

「我が輩ほど人間を観察してきた者も少ない」

 

「…………」

 

「貴様の望む道をXiが歩くのを見るより」

 

ネウロは。

 

Xiを横目で見る。

 

「貴様の予想を裏切って」

 

笑った。

 

「こいつが何を選ぶかを見る方が、よほど面白い」

 

Xi。

 

「……ネウロ」

 

ネウロ。

 

「何だ」

 

Xi。

 

「今ちょっとだけ、僕の味方した?」

 

ネウロ。

 

「勘違いするな」

 

即答だった。

 

「ですよね!」

 

ネウロは続ける。

 

「我が輩はただ、予定調和が嫌いなだけだ」

 

シックス。

 

「……なるほど」

 

ネウロ。

 

「もしXiが結果として貴様の会社を継いだとしても」

 

「…………」

 

「貴様に選ばされた結果と」

 

ネウロは笑う。

 

「こいつ自身が選んだ結果では」

 

一拍。

 

「味が違う」

 

シックスの口元が。

 

僅かに。

 

上がった。

 

「お前らしいな」

 

ネウロ。

 

「褒め言葉として受け取っておこう」

 

Xiは。

 

二人を見る。

 

「なんかさ」

 

「何だ?」

 

「僕の人生を料理の味みたいに評価するのやめてくれない?」

 

誰も謝らなかった。

 

ジョーイ係長が。

 

少しだけ笑った。

 

イエッタも。

 

静かにXiを見る。

 

ログナーは。

 

何も言わない。

 

Xiは。

 

改めてシックスを見る。

 

「だから」

 

「何だ?」

 

「僕がここに来るとしても」

 

Xiは言った。

 

「あなたに押し込まれて来るんじゃない」

 

「…………」

 

「僕が、ここで何かできると思ったら」

 

少しだけ。

 

ジョーイ係長を見る。

 

イエッタを見る。

 

そして。

 

「僕が選んで来る」

 

シックスは。

 

しばらく黙っていた。

 

やがて。

 

「好きにしろ」

 

Xiが少しだけ目を丸くする。

 

「……え?」

 

「選びたいのだろう」

 

「まあ」

 

「なら選べばいい」

 

Xi。

 

「…………」

 

一瞬。

 

ほんの一瞬だけ。

 

話がまともに終わりそうだった。

 

シックス。

 

「ただし」

 

Xiの顔が曇った。

 

「嫌な予感」

 

シックス。

 

「会社ではパパと呼びなさい」

 

Xi。

 

「そこは諦めろォォォ!!」

 

会長室に。

 

再び絶叫が響いた。

 

ネウロ。

 

「ククククク!」

 

ジョーイ係長。

 

「会長もそこだけは譲らへんな!」

 

イエッタ。

 

「業務上の必要性はありません」

 

シックス。

 

「私が面白い」

 

Xi。

 

「それが一番ダメなんだよ!!」

 

ログナー。

 

「私的な嫌がらせだな」

 

Xi。

 

「司令! そこはもっと強く言って!」

 

ログナー。

 

「会社内部の問題だ」

 

Xi。

 

「ドライ!!」

 

◆

 

しばらくして。

 

会談は終わった。

 

会長室を出たXiは。

 

廊下で大きく息を吐いた。

 

「……疲れた」

 

ネウロ。

 

「我が輩は楽しめたぞ」

 

「でしょうね!」

 

「悪くない父親ではないか」

 

Xi。

 

「どこが!?」

 

「貴様を苛立たせる技術だけは一流だ」

 

Xi。

 

「そこ評価するな!」

 

エレベーター前。

 

ジョーイ係長がXiへ言った。

 

「でもな」

 

「何?」

 

「さっきの話」

 

「どれ?」

 

「自分で選んで来る、いう話」

 

ジョーイ係長は。

 

少しだけ真面目な顔をした。

 

「それでええと思うで」

 

Xi。

 

「…………」

 

「こっちは条件出す」

 

「うん」

 

「お願いもする」

 

「うん」

 

「外堀も……」

 

Xiが睨む。

 

ジョーイ係長。

 

「……なるべく埋めへん」

 

Xi。

 

「なるべく?!」

 

「努力目標や!」

 

「確約してよ!」

 

ネウロが横で笑う。

 

Xiは。

 

深くため息を吐いた。

 

「……次は」

 

弥子の顔が。

何となく頭に浮かんだ。

 

「もう少し、僕の味方になってくれそうな人を連れてこよう」

 

ネウロ。

 

「誰だ?」

 

Xiは少し考えて。

 

答えた。

 

「露伴センセ」

 

ネウロ。

 

「…………」

 

少し間があった。

 

「人選を間違えているぞ」

 

Xi。

 

「ネウロに言われたくない!!」

 

◆

 

後日。

 

その話を聞いた桂木弥子も。

まったく同じことを言った。

 

「Xi?」

 

「何?」

 

「露伴先生って」

 

「うん」

 

「本当にXiの味方してくれると思う?」

 

Xi。

 

「…………」

 

弥子。

 

「取材対象が増えたって喜ぶだけじゃない?」

 

Xi。

 

「…………」

 

「しかも相手、シックスだよ?」

 

Xiは。

 

しばらく考えた。

 

そして。

 

「……世界規模の軍需産業トップと直接会談できるよ、って言えば」

 

弥子。

 

「絶対来るよ」

 

「でしょ?」

 

「でも、そこじゃない!!」

 

こうして。

 

怪物強盗Xiの。

会長室への同行者選び。

第一弾。

魔人ネウロ編は。

一応。

終了した。

 

なお。

 

Xiはまだ。

 

ヘキサクスに入社していない。

会長室長でもない。

 

だが。

 

既に会長室には。

魔人を一人。

連れ込んだ。

 

ジョーイ係長は。

 

今後の職務規程について。

少し本気で考え始めていた。

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