守るべきもの、怒るべきもの、斬るべきもの、喰うべき謎 ――キラ、承太郎、カイエン、ネウロのごった煮会話劇   作:ギアっちょ

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怪物強盗Xiは剣聖を連れて出社したい

「師匠」

 

「ん?」

 

ダグラス・カイエンは。

昼間から気楽そうにカフェテラスの椅子へ座っていた。

 

「今度、僕と一緒にヘキサクス来てよ」

 

カイエン。

 

「嫌だヨ」

 

Xi。

 

「早いな!」

 

「だって面倒くさそうじゃねぇか」

 

「僕がネウロ誘った時と同じ反応だよ!」

 

「そりゃお前、面倒くせぇ時にしか人を誘わねぇだろ」

 

Xi。

 

「……みんな僕のこと分かりすぎじゃない?」

 

カイエンは笑った。

 

「で?」

 

「何?」

 

「何があった」

 

Xiは少し考えた。

 

「シックス」

 

カイエンの笑顔が。

 

僅かに止まった。

 

「…………」

 

Xi。

 

「今、反応した?」

 

「してねぇヨ」

 

「したよ」

 

「気のせいだ」

 

Xiは。

 

ここぞとばかりに続けた。

 

「ゾディア・キューブリック会長と、僕の今後について話してる」

 

「ふーん」

 

「ヘキサクス会長室長」

 

「へぇ」

 

「ミラージュ騎士団レフトナンバー候補」

 

「いいじゃねぇか」

 

「LEFT No. XI」

 

カイエン。

 

「ブッ」

 

Xi。

 

「笑うな!!」

 

「いや、出来すぎだろソレ」

 

「僕もそう思うよ!」

 

カイエンは肩を揺らした。

 

「で、オレに何してほしいんだヨ」

 

Xi。

 

「同行」

 

「護衛?」

 

「できれば」

 

「用心棒?」

 

「……まあ」

 

カイエンはニヤリとする。

 

「星団最強の剣聖を用心棒に使う気か?」

 

Xi。

 

「師匠じゃん」

 

「その理屈、便利だナ」

 

「ネウロは役に立たなかったし」

 

「だろうナ」

 

「露伴センセは取材始めるし」

 

「だろうナ」

 

「承太郎はちゃんとカッコよかった」

 

「なんでオレだけハードル上がってんだヨ!」

 

Xiは言った。

 

「あと」

 

「まだあんのか?」

 

「シックスが僕を力ずくでどうこうしようとしたら」

 

Xiは。

 

カイエンを見る。

 

「師匠なら止められるでしょ?」

 

カイエンの目が。

 

少しだけ細くなった。

 

「……そりゃ」

 

口元は笑っている。

 

「止められるだろうナ」

 

◆

 

数日後。

 

ヘキサクス本社。

 

ジョーイ係長は。

 

受付ロビーで。

 

腕を組んでいた。

 

「今度は師匠」

 

Xiから。

 

事前に連絡はあった。

 

師匠。

 

それだけ。

 

「師匠いうてもなぁ」

 

ジョーイ係長は独り言を言う。

 

「学校の先生とか、武術の先生とか」

 

そこへ。

 

ログナーが通りかかった。

 

「何をしている」

 

「Xiはん待っとるんです」

 

「そうか」

 

「今日は師匠連れてくるらしいですわ」

 

ログナー。

 

「カイエンか」

 

ジョーイ係長。

 

「…………」

 

「…………」

 

「今なんて?」

 

「ダグラス・カイエンだろう」

 

ジョーイ係長の顔が。

 

引きつった。

 

「ホンマに星団最強の剣聖やないですか!!」

 

ログナー。

 

「そうだな」

 

「なんでそんな平然としてるんです!?」

 

「カイエンだからな」

 

「説明になってへん!」

 

自動ドアが開いた。

 

Xi。

 

そして。

 

長い黒髪。

気楽そうな服装。

軽い笑み。

 

ダグラス・カイエン。

 

「よォ」

 

ジョーイ係長。

 

「…………」

 

Xi。

 

「師匠連れてきたよ」

 

ジョーイ係長。

 

「ホンマに連れてきた……」

 

カイエン。

 

「何だヨ。その顔」

 

ジョーイ係長。

 

「いや……」

 

ログナーが言う。

 

「カイエン」

 

「よォ、ログナー」

 

「会長室で斬るな」

 

カイエン。

 

「いきなり何の話だヨ」

 

ジョーイ係長。

 

「斬る可能性あるんですか!?」

 

Xi。

 

「念のためだよ」

 

ジョーイ係長。

 

「前回も聞いたぞ、その『念のため』!!」

 

カイエンは楽しそうだった。

 

「心配すんなヨ」

 

ジョーイ係長。

 

「ホンマですか?」

 

「今日はまだ斬る予定ねぇから」

 

ジョーイ係長。

 

「『今日はまだ』!?」

 

ログナー。

 

「カイエン」

 

「冗談だヨ」

 

ログナー。

 

「お前の場合は冗談にならん」

 

◆

 

会長室。

 

扉が開いた。

 

シックスは。

 

机の向こうに座っていた。

 

その顔が。

 

カイエンを見る。

 

「……これはまた」

 

少し笑う。

 

「随分と大物を連れてきたな」

 

Xi。

 

「師匠」

 

カイエン。

 

「兼、用心棒だナ」

 

Xi。

 

「そこまで言ってないよ!」

 

カイエン。

 

「大体同じだろ」

 

シックス。

 

「ダグラス・カイエン」

 

カイエン。

 

「よォ、シックス」

 

二人の視線が。

 

静かにぶつかる。

 

ジョーイ係長が。

 

なんとなく。

 

一歩下がった。

 

イエッタが。

 

すぐ横に立っている。

 

ログナーもいる。

 

Xiが言った。

 

「師匠」

 

「ん?」

 

「何か言いたそうだね」

 

カイエン。

 

「いやぁ?」

 

そしてシックスを見る。

 

「そういやオマエんとこの商品には、いろいろ世話になったっけナ」

 

シックス。

 

「ほう」

 

Xi。

 

「……始まった」

 

カイエンは指を一本立てた。

 

「まず、レモンサワー」

 

Xi。

 

「ああ」

 

ジョーイ係長。

 

「嫌な予感する」

 

カイエン。

 

「飲んだら、しばらく汗まで酸っぱくなった」

 

ジョーイ係長。

 

「うわぁ……」

 

カイエン。

 

「次、梅干し」

 

Xi。

 

「黒歴史が蘇るやつ」

 

「昔の恥ずかしい記憶が次から次へと出てきやがった」

 

シックス。

 

「記憶力の向上では?」

 

カイエン。

 

「都合よく言い換えんなヨ」

 

二本目。

 

「黒酢ドリンク」

 

Xi。

 

「関節」

 

カイエン。

 

「飲んだら全身の関節が悲鳴上げた」

 

イエッタ。

 

「それは健康飲料ではありませんね」

 

ジョーイ係長。

 

「ワシもそう思います」

 

そして。

 

カイエンは三本目。

 

「美女とディナーだと思ったら」

 

Xi。

 

「待って」

 

カイエン。

 

「Xiだった」

 

Xi。

 

「それ僕じゃん!!」

 

ジョーイ係長。

 

「会長関係ないやろ!」

 

カイエン。

 

「元を辿ればヘキサクスの限定ディナーから始まった話だろ」

 

Xi。

 

「因果関係をそこまで遡る?!」

 

ログナー。

 

「逆恨みが混じっているな」

 

カイエン。

 

「細けぇこと言うなヨ」

 

さらに。

 

「あとリンスインシャンプー」

 

Xi。

 

「それも遠いよ!」

 

カイエン。

 

「実験台にされた」

 

ジョーイ係長。

 

「それも会長案件なんですか?」

 

Xi。

 

「かなり薄い」

 

カイエン。

 

「でも元を辿りゃヘキサクスだ」

 

ログナー。

 

「やはり逆恨みだな」

 

カイエン。

 

「うるせぇヨ」

 

シックスは。

面白そうに聞いていた。

 

「随分と恨まれているらしい」

 

カイエン。

 

「半分くらいは冗談だヨ」

 

Xi。

 

「半分なんだ」

 

「全部冗談とは言ってねぇ」

 

ジョーイ係長。

 

「ややこしいな!」

 

その時。

 

シックスが。

 

Xiを見る。

 

「それで」

 

「何」

 

「お前はまた他人を連れてきたわけだ」

 

Xi。

 

「そうだけど」

 

「ずいぶんと慎重だな」

 

「あんた相手だからね」

 

シックス。

 

「だが」

 

ゆっくりと言う。

 

「最終的には、お前自身がここへ来る」

 

Xiの表情が。

 

少し硬くなる。

 

「またそれ?」

 

「事実だ」

 

「まだ決めてないよ」

 

「いずれ決める」

 

「僕が?」

 

「結果は変わらん」

 

Xiが何か言おうとした。

 

その前に。

 

カイエンが。

 

「シックス」

 

静かに。

 

名前を呼んだ。

 

部屋の空気が。

 

変わった。

 

つい先ほどまで。

 

酸っぱい汗だの。

 

黒歴史だの。

 

美女だの。

 

くだらない被害談を笑って話していた男。

 

その男が。

 

笑ったまま。

 

シックスを見ていた。

 

ただ。

 

目だけが。

 

冷えている。

 

「何だ?」

 

シックスが問う。

 

カイエンは。

 

口元の笑みを消さない。

 

「オマエ」

 

少し。

 

首を傾げた。

 

「Xiをどうするつもりだ?」

 

シックス。

 

「何度も話している」

 

「会社を継がせる?」

 

「ああ」

 

「本人が嫌だっつっても?」

 

シックス。

 

「いずれ理解する」

 

カイエン。

 

「力ずくで?」

 

シックスは。

 

少しだけ。

 

笑った。

 

「必要ならな」

 

Xi。

 

「……師匠」

 

カイエンは。

 

静かだった。

 

「シックス」

 

「何だ」

 

「貴様の態度次第じゃ」

 

ジョーイ係長が。

 

息を止めた。

 

ログナーの目が。

 

僅かに鋭くなる。

 

カイエンは。

 

笑ったまま。

 

言った。

 

「オマエが気付く間もなく、その首をハネてやろうと思ってたヨ」

 

Xi。

 

「師匠?!」

 

ジョーイ係長。

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください!!」

 

イエッタ。

 

「カイエン様」

 

ログナー。

 

「カイエン」

 

シックスだけが。

 

表情を変えなかった。

 

「ほう」

 

カイエン。

 

「冗談だヨ」

 

ログナー。

 

「お前の場合は冗談にならん」

 

Xi。

 

「そうだよ!!」

 

ジョーイ係長。

 

「会長室で首をハネる話せんといてください!!」

 

カイエンは肩をすくめた。

 

「まァ」

 

そして。

 

何でもないことのように。

 

「やったらやったで」

 

笑う。

 

「オレの首に懸かった賞金が、また増えるだけだけどナ」

 

Xi。

 

「そこ軽く言うところじゃないよ!!」

 

ジョーイ係長。

 

「なんで賞金増えるの前提なんですか!」

 

カイエン。

 

「慣れてるから」

 

ログナー。

 

「慣れるな」

 

少しだけ。

 

空気が戻った。

 

だが。

 

カイエンの目は。

 

まだシックスを見ていた。

 

「まァ、今までの商品の件はどうでもいい」

 

Xi。

 

「どうでもよかったの?」

 

「半分はナ」

 

「残り半分は?」

 

「恨んでる」

 

「やっぱり恨んでるじゃん」

 

だが。

 

カイエンは続けた。

 

「でも」

 

シックスを見る。

 

「Xiの話は別だ」

 

「…………」

 

「コイツはオマエの所有物じゃねェ」

 

シックス。

 

「私の細胞から生まれた」

 

カイエン。

 

「だから何だ?」

 

即答だった。

 

シックス。

 

「私の子だ」

 

カイエン。

 

「だから何だ?」

 

また。

 

同じ。

 

カイエンはXiを見る。

 

「オレはコイツを鍛えた」

 

Xi。

 

「……うん」

 

「剣を教えた」

 

「うん」

 

「戦い方も見た」

 

「うん」

 

「逃げ腰なのも」

 

Xi。

 

「おい」

 

「面倒くさがりなのも」

 

「師匠?」

 

「美女に化けて人を騙すのも」

 

Xi。

 

「それ今関係ないだろ!!」

 

カイエン。

 

「でもナ」

 

声が。

 

少しだけ真面目になる。

 

「自分で立って」

 

Xiを見る。

 

「自分で考えて」

 

そして。

 

「自分で選んでる」

 

Xiは。

 

何も言わなかった。

 

カイエンは。

 

シックスへ向き直る。

 

「だったら」

 

静かに。

 

「誰が作ったとか」

 

「…………」

 

「誰の細胞だとか」

 

「…………」

 

「誰の子だとか」

 

ほんの少し。

 

笑う。

 

「そんなモンで、コイツの行き先は決められねぇヨ」

 

シックス。

 

「随分と弟子思いだな」

 

カイエン。

 

「そうかァ?」

 

ログナー。

 

「珍しいな」

 

カイエン。

 

「オイ」

 

Xi。

 

「僕もちょっと意外」

 

カイエン。

 

「弟子まで乗るなヨ!!」

 

一瞬。

 

笑いが戻る。

 

だが。

 

シックスはまだ。

 

カイエンを見ていた。

 

「では」

 

シックスが言う。

 

「Xiが自分の意思で私の後を継ぐと言ったら?」

 

カイエン。

 

「好きにすりゃいい」

 

Xiが見る。

 

「いいの?」

 

「オマエが決めたならナ」

 

「ミラージュと兼業でも?」

 

「好きにしろヨ」

 

「怪物強盗のままでも?」

 

「今さらだろ」

 

Xi。

 

「…………」

 

カイエンは。

 

肩をすくめた。

 

「オレなんざ」

 

指を立てる。

 

「ハスハの剣聖」

 

一本。

 

「ミラージュ騎士団のエースナンバー」

 

二本。

 

「カステポー・ナイトギルドの総評議長」

 

三本。

 

「ついでに星団最強の賞金首」

 

四本。

 

Xi。

 

「最後だけ両立しちゃいけない肩書きだって前にも言ったよね?!」

 

カイエン。

 

「細けぇナ」

 

ログナー。

 

「細かくない」

 

カイエンは。

 

Xiを見る。

 

「肩書きなんざ、いくつあったっていいんだヨ」

 

Xi。

 

「…………」

 

「全部オマエなら」

 

少し笑う。

 

「それでいいだろ」

 

Xiの頭の中に。

 

別の声が浮かぶ。

 

バクスチュアル。

 

『Xiサンハ、Xiサン』

 

Xiは。

 

少しだけ。

 

笑った。

 

「……そうかもね」

 

カイエン。

 

「そうだヨ」

 

シックス。

 

「では会長室長になることにも問題はないな」

 

Xi。

 

「なんでそっちに着地するんだよ!!」

 

ジョーイ係長。

 

「会長、今ええ話やったでしょう!」

 

シックス。

 

「だから結論を出した」

 

Xi。

 

「出すな!」

 

◆

 

会談の終わり。

 

一行が会長室を出る。

 

Xiは。

 

カイエンの隣を歩いていた。

 

「師匠」

 

「ん?」

 

「ありがとう」

 

カイエン。

 

「何が?」

 

Xi。

 

「……いろいろ」

 

カイエンは。

 

Xiを横目で見た。

 

「別に」

 

「…………」

 

「師匠だからナ」

 

Xiは。

 

ほんの少しだけ。

 

目を丸くした。

 

そして。

 

笑った。

 

「そっか」

 

「ただし」

 

カイエン。

 

「何?」

 

「次に変なヘキサクス製品が来たら」

 

Xi。

 

「うん」

 

「会長室へ直接送り返す」

 

Xi。

 

「それがいいと思う」

 

ログナー。

 

「食べ物なら廃棄しろ」

 

カイエン。

 

「夢がねぇナ、ログナー」

 

「安全管理だ」

 

ジョーイ係長が。

 

後ろから追いついた。

 

「Xiはん!」

 

「何?」

 

ジョーイ係長は。

 

疲れた顔をしていた。

 

「次は?」

 

Xi。

 

「次?」

 

「次は誰連れてくるん?」

 

Xiは。

 

少し考える。

 

カイエンも横で聞いている。

 

「ラクス・クライン」

 

ジョーイ係長。

 

「…………」

 

「コンパス総裁」

 

「…………」

 

「前プラント最高評議会議長、シーゲル・クラインの一人娘」

 

ジョーイ係長。

 

「…………」

 

Xi。

 

「どうしたの?」

 

ジョーイ係長。

 

ゆっくり頭を抱えた。

 

「政治家?!そこまで来たぁぁぁ!!」

 

カイエン。

 

「いいじゃねぇかヨ」

 

ジョーイ係長。

 

「よくない!!」

 

ログナー。

 

「まだ国家元首ではない」

 

ジョーイ係長。

 

「『まだ』って何ですの!?」

 

Xiは。

 

何も言わなかった。

 

カイエンも。

 

何も言わなかった。

 

ログナーだけが。

 

少し遠くを見る。

 

ジョーイ係長は。

 

まだ知らない。

 

この後。

 

本当に。

 

国家元首が来る予定であることを。

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