守るべきもの、怒るべきもの、斬るべきもの、喰うべき謎 ――キラ、承太郎、カイエン、ネウロのごった煮会話劇 作:ギアっちょ
ヘキサクス本社。
ジョーイ係長は。
最近。
少しだけ。
精神的に強くなった気がしていた。
理由は簡単である。
怪物強盗Xiが。
ヘキサクスへ来るたびに。
とんでもない同行者を連れてくるからだ。
最初は。
魔人ネウロ。
次は。
漫画家、岸辺露伴。
その次は。
海洋学者、空条承太郎。
さらに。
星団最強の剣聖、ダグラス・カイエン。
そして前回。
平和監視機構コンパス総裁。
ラクス・クライン。
しかも。
キラ・ヤマト付き。
もう。
大抵のことでは驚かない。
ジョーイ係長は。
そう思っていた。
「……よし」
自分のデスクで。
一人。
頷く。
そこへイエッタが通りかかった。
「何が、よし、なのです?」
「いやな」
ジョーイ係長は腕を組んだ。
「もう慣れた」
「何にです?」
「Xiはんの来客や」
イエッタ。
「……そうですか」
「魔人も来た」
「はい」
「スタンド使いも来た」
「はい」
「剣聖も来た」
「はい」
「コンパス総裁まで来た」
「はい」
ジョーイ係長は。
ふっと笑った。
「もう驚かへんぞ!」
イエッタ。
「…………」
「次は誰や!」
立ち上がる。
「国家元首か?!
それとも神様でも連れてくるんか!!」
イエッタ。
「…………」
ジョーイ係長。
「…………」
「なんで黙るん?」
そこへ。
ちょうどログナーがやってきた。
「何の話だ」
ジョーイ係長。
「司令、聞いてくださいよ!」
「何だ」
「Xiはんの次の同行者ですわ!」
ログナー。
「……そうか」
「もうワシ、驚きませんで!」
「そうか」
「国家元首でも神様でも、どんと来いですわ!」
ログナー。
「…………」
ジョーイ係長。
「司令?」
ログナー。
「係長」
「はい?」
「それ以上言わない方がいい」
「なんでですの!?」
その時。
受付から内線が入った。
『ジョーイ係長』
「はいはい」
『Xi様がお見えです』
「お、来たか!」
ジョーイ係長は。
胸を張った。
「今日は誰連れて来ても驚かへんぞ」
『それが……』
受付社員が少し困った声を出す。
『レディオス・ソープ様とご一緒です』
ジョーイ係長。
「…………」
数秒。
「ソープさん?」
『はい』
ジョーイ係長は。
ほっとした。
「なんや」
イエッタ。
「…………」
ログナー。
「…………」
ジョーイ係長。
「今日は知ってる人やないですか!」
◆
そして。
受付ロビー。
自動ドアが開く。
怪物強盗Xi。
その隣には。
長い黒髪。
ゆったりした服装。
細身の体。
レディオス・ソープ。
「やあ」
ソープが手を挙げた。
ジョーイ係長。
「どうも!」
満面の笑み。
「いやぁ、今日は安心しましたわ!」
Xi。
「何が?」
「ソープさんやからや!」
ソープ。
「僕?」
「そうです!」
ジョーイ係長は。
今までの面々を思い出す。
「魔人でもない!」
ネウロ。
「漫画家でもない!」
露伴。
「スタンド使いでもない!」
承太郎。
「剣聖でもない!」
カイエン。
「政治家でも……」
少し止まる。
「……ないですよね?」
ソープ。
「…………」
Xi。
「…………」
ログナー。
「…………」
ジョーイ係長。
「なんで全員黙るん?」
ソープは。
にこっと笑った。
「今日はよろしくね」
「こちらこそ!」
ジョーイ係長はまだ知らなかった。
その安心が。
あと数分しか続かないことを。
◆
会長室。
シックスは。
机の向こう側から。
入ってきた一同を眺めていた。
Xi。
ジョーイ係長。
イエッタ。
ログナー。
そして。
ソープ。
「今度はお前か」
シックスが言った。
ソープ。
「うん」
「レディオス・ソープ」
「今日はそのつもりだったんだけど」
ソープは。
会長室のソファーへ座った。
少し考える。
「でも」
Xi。
「?」
ソープ。
「今回の話なら」
ログナーの表情が。
ほんの少しだけ変わった。
ソープ。
「こっちの立場で話した方がいいかな」
ジョーイ係長。
「こっち?」
ソープの周囲で。
空気が。
ふわりと揺れた。
さらさらと。
光が流れる。
黒い髪。
服装。
そして。
その姿そのものが。
静かに変化していく。
ジョーイ係長。
「…………」
Xi。
「来た」
白銀の髪。
荘厳な装束。
そこに座っている人物は。
もはや。
MHマイスター・レディオス・ソープではなかった。
ログナーは。
すぐに一礼した。
「陛下」
イエッタも頭を下げる。
「陛下」
ジョーイ係長。
「…………」
アマテラスを見る。
ログナーを見る。
もう一度。
アマテラスを見る。
「…………」
Xi。
「ジョーイさん?」
「ちょっと待って」
ジョーイ係長は。
指を一本立てた。
「今」
アマテラスを指す。
「この方は?」
Xi。
「アマテラス陛下」
「それは知ってます」
「惑星デルタ・ベルン大統領」
ジョーイ係長。
「…………」
「A.K.D.党首」
「…………」
ログナー。
「天照家当主でもあられる」
ジョーイ係長。
「司令、今は情報増やさんといてください」
Xi。
「あと地球側の分類なら」
ジョーイ係長。
「待って」
Xi。
「異界神<アーク>かな」
ジョーイ係長。
「…………」
数秒。
理解した。
「両方やないかァァァァァァ!!!!!」
会長室に。
絶叫が響いた。
アマテラス。
「?」
ジョーイ係長。
「ワシ、国家元首『か』神様って言うたんやぞ!?」
Xi。
「うん」
「なんでAND条件で来んねん!!」
Xi。
「僕に言われても」
アマテラス。
「僕、帰った方がいい?」
ジョーイ係長。
「そういう意味やありません!!」
「じゃあいるね」
「軽い!!」
シックスだけは。
ほとんど表情を変えていなかった。
「なるほど」
アマテラスを見る。
「今日はレディオス・ソープではなく」
少し笑う。
「A.K.D.のアマテラスとして来たということか」
アマテラス。
「そういうこと」
「随分と大袈裟になったものだな」
Xi。
「誰のせいだと思ってるんだよ」
シックス。
「お前が毎回連れてくるからでは?」
Xi。
「原因を僕に返すな!」
アマテラスは。
静かにシックスを見る。
「でも」
「何だ?」
「僕も、一度君とはこの話をしておいた方がいいと思ってた」
シックス。
「Xiについてか?」
「うん」
ジョーイ係長は。
静かに壁際へ下がった。
「……なんでウチの会長室で首脳会談始まっとんねん」
イエッタ。
「静かに見守りましょう」
「イエッタはん、適応早すぎません?」
アマテラスが言った。
「シックス」
「何だ」
「君はXiに、ヘキサクスを継がせたいんだよね?」
「ああ」
「本人が望まなくても?」
「最終的には望む」
Xi。
「またそれ」
アマテラス。
「どうしてそう思うの?」
シックス。
「私の子だからだ」
アマテラス。
「それだけ?」
「私の細胞から生まれた」
「それで?」
シックスの目が。
少し細くなる。
アマテラスは。
あくまで穏やかだった。
「僕もね」
少し。
姿勢を変える。
「人に役割を与える立場なんだ」
ログナーを見る。
「ミラージュ騎士団もそう」
「…………」
「国家もそう」
「…………」
「誰かに、これをしてほしい」
「…………」
「ここにいてほしい」
「…………」
「そうお願いすることはある」
シックス。
「だから何だ?」
アマテラス。
「でも」
笑う。
「役割を与えることと、その人を所有することは違うよ」
部屋が。
少し静かになった。
シックス。
「所有しているつもりはない」
Xi。
「僕からすると結構あるけどね」
アマテラスは続ける。
「ログナーは僕の騎士だ」
ログナー。
「はい」
「だけど」
ログナーを見る。
「ログナーの人生そのものが、僕の所有物になるわけじゃない」
ログナーは。
何も言わない。
ただ。
静かに一礼した。
「カイエンもそう」
Xi。
「師匠はだいぶ自由だね」
ログナー。
「自由すぎる」
アマテラス。
「そうだね」
一瞬。
笑いが起きる。
そして。
アマテラスはXiを見る。
「Xiも同じ」
Xi。
「僕?」
「もし君がミラージュに入ったとしても」
「…………」
「君は僕の所有物にはならない」
Xiの表情が。
少しだけ変わった。
アマテラス。
「僕は君に来てほしいと思ってるよ」
Xi。
「……うん」
「お目付役も欲しいし」
Xi。
「そこは正直なんだ」
ログナー。
「必要です」
Xi。
「司令まで」
アマテラス。
「でも」
Xiを見る。
「『来てほしい』と、『来るべきだ』は違う。」
Xiは。
何も言わなかった。
シックス。
「拒否したら?」
アマテラス。
「残念だね」
「それだけか?」
「うん」
「使える人材を手放すと?」
「Xiが選ばないなら仕方ないよ」
ログナー。
「…………」
Xiが。
ログナーを見る。
「司令、ちょっと不満そうじゃない?」
ログナー。
「陛下のご判断だ」
「顔に出てるよ」
ログナー。
「出していない」
アマテラス。
「でもログナー」
「陛下」
「本人を捕まえて連れてきちゃ駄目だよ」
ログナー。
「承知しております」
Xi。
「一応そこ確認するんだ?!」
シックスが言う。
「では」
アマテラスを見る。
「Xiが自ら私を選んだ場合は?」
Xi。
「僕を親権争いみたいに扱わないでよ!」
アマテラス。
「その場合も」
一切迷わない。
「Xiの選択を尊重する」
シックス。
「A.K.D.よりヘキサクスを選んでも?」
「うん」
「ミラージュ加入を断っても?」
「うん」
ログナー。
「陛下」
アマテラス。
「だって」
少し笑う。
「Xiの人生だから」
Xi。
「…………」
それは。
当たり前のようで。
Xiには。
少しだけ。
重い言葉だった。
これまで。
自分は。
誰にでもなれた。
誰の姿にも。
誰の声にも。
誰の仕草にも。
変わることができた。
だから。
自分が何者なのか。
分からなくなったこともあった。
シックスの細胞から生まれた。
だから。
シックスの後継者になるのか。
ミラージュに向いている。
だから。
ミラージュになるのか。
違う。
Xiは。
小さく息を吐いた。
「僕さ」
アマテラス。
「うん」
「最近」
少し笑う。
「ようやく分かってきた気がする」
「何が?」
「僕の中身」
シックスが。
Xiを見る。
ログナーも。
イエッタも。
ジョーイ係長も。
黙って聞いていた。
Xi。
「誰かみたいになれることじゃない」
「…………」
「誰かに決めてもらうことでもない」
「…………」
「僕が何を選んだか」
自分の胸を指す。
「その積み重ねが」
笑う。
「僕なんだと思う」
アマテラスも。
小さく笑った。
「いいんじゃない?」
Xi。
「それだけ?」
「それ以上、僕が決めたら意味がないと思わないか?」
Xiは。
少し目を丸くして。
そして。
笑った。
「……確かに」
その時。
Xiの頭に。
バクスチュアルの言葉が浮かぶ。
『Xiサンハ、Xiサン』
肩書きが増えても。
所属が増えても。
姿が変わっても。
最後に残るもの。
XiはXi。
アマテラス。
「ヘキサクス会長室長になっても」
Xi。
「まだなってないよ」
「ミラージュになっても」
「それもまだ」
「怪物強盗でも」
「それは現在進行形」
「全部」
アマテラスは。
にこっと笑った。
「Xiでいいんじゃないかな」
Xi。
「……うん」
シックスが。
静かに言った。
「なら」
全員。
シックスを見る。
「お前が自分で選んだ結果」
「…………」
「私の後を継ぐなら問題はないわけだな」
Xi。
「そういう可能性まで否定はしないよ」
ジョーイ係長が。
少し驚いた顔をする。
Xi。
「でも」
シックスを見る。
「その時は」
一拍。
「あなたに選ばされたからじゃない」
「…………」
「僕が選んだからだ」
シックスは。
僅かに。
口元を上げた。
「ならば好きにしろ」
Xi。
「そうする」
一瞬。
きれいに話が終わった。
本当に。
一瞬だけ。
シックス。
「ところで」
Xi。
「嫌な予感」
「会社ではパパと呼びなさい」
Xi。
「まだ諦めてなかったの?!」
ジョーイ係長。
「会長ぉぉぉ!!」
イエッタ。
「業務上の必要性はありません」
シックス。
「私が楽しい」
Xi。
「それがダメなんだよ!」
アマテラス。
「面白いね」
Xiが。
ゆっくり。
アマテラスを見る。
「…………」
ログナー。
「陛下」
アマテラス。
「まだ何もしてないよ」
ログナー。
「その表情をおやめください」
Xi。
「神様までシックス側に行かないで!!」
アマテラス。
「いや、Xiが嫌がってるから」
Xi。
「理由まで一緒じゃないか!!」
シックス。
「気が合うな」
Xi。
「気を合わせるなァァァ!!」
ジョーイ係長は。
頭を抱えた。
「神様呼んでも結局こうなるんか……」
◆
会談終了後。
アマテラスは。
立ち上がった。
「じゃあ」
さらさらと。
再び。
光が流れる。
荘厳な姿から。
いつもの。
レディオス・ソープへ。
ソープ。
「これでいいかな」
ジョーイ係長。
「……戻るんや」
Xi。
「そっちの方が慣れてるでしょ?」
「もう何に慣れたらええのか分からん」
◆
ソープは。
Xiの隣を歩く。
「今日は来てよかった?」
Xi。
「うん」
「そう」
「ありがとう」
ソープ。
「どういたしまして」
少し歩いて。
ソープが言う。
「ところで」
Xi。
「何?」
「アウト・ミラージュの保管場所なんだけど」
Xiの足が。
止まった。
ソープ。
「専用施設を新しく造れば」
Xi。
「今すごくいい話してたよね?!」
ソープ。
「え?」
「僕の自由意思とか!」
「うん」
「僕は僕とか!」
「うん」
「その直後に専用格納庫造って外堀増やすの?!」
ソープ。
「便利だと思うよ」
Xi。
「そういう問題じゃない!!」
ログナー。
「陛下」
ソープ。
「まだ造ってないよ」
ログナー。
「通行止めです」
「案だけでも?」
「通行止めです」
ソープ。
「残念」
Xi。
「残念そうにするな!」
後ろから。
ジョーイ係長が。
疲れ切った声で言った。
「Xiはん」
「何?」
「一つだけ確認してええ?」
「うん」
「もう」
少し間を置く。
「これ以上すごい人、残ってへんよな?」
Xi。
「…………」
ジョーイ係長。
「なんで黙るん?」
Xi。
「いや」
少し考える。
「今回は一応、国家元首で神様まで行ったから」
ジョーイ係長。
「せやろ?」
「たぶん天井」
ジョーイ係長は。
ようやく。
胸を撫で下ろした。
「よかった……」
ログナー。
「係長」
「はい?」
「油断するな」
ジョーイ係長。
「まだ何かあるんですか!?」
◆
怪物強盗Xiは。
この日。
国家元首を連れて。
ヘキサクスへ出社した。
そして。
その国家元首から。
ひとつのことを。
改めて教えられた。
誰かの下に立つことと。
誰かのものになることは。
同じではない。
役職も。
所属も。
名前も。
自分で選び取ったものなら。
それは。
自分を失うための鎖ではなく。
自分自身を形作る、新しい一部になる。
なお。
その大事な話の直後。
アマテラス陛下は。
アウト・ミラージュ専用格納庫を建てようとしたが
ログナー司令によって即座に
通行止めとなった。