守るべきもの、怒るべきもの、斬るべきもの、喰うべき謎 ――キラ、承太郎、カイエン、ネウロのごった煮会話劇   作:ギアっちょ

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会津合宿編 その6

◆ 午後の観光、塔のへつりへ!

 

 福島県南会津郡下郷町。

 

 長い年月をかけて、大川の流れと風雨が削り出した奇岩の景勝地。

 

 塔のへつり。

 

 その独特な地形は、まるで岩の塔が幾重にも連なっているかのようだった。

 

 午前中の剣術稽古を終え、昼食におろし蕎麦を堪能した一行は、午後の観光を楽しむため、この場所へとやって来ていた。

 

「……わぁ!」

 

 桂木弥子が、歓声を上げた。

 

「すっごい景色ですね!!」

 

 目の前には、切り立った岩壁。

 

 その下を流れる川。

 

 そして、対岸の岩場へと続く吊り橋。

 

 ラクス・クラインも、嬉しそうに微笑んだ。

 

「まあ……素晴らしい景観ですわね」

 

 ラキシスも、興味深そうに岩壁を見上げていた。

 

「ええ。自然が造り出した造形とは思えないほどです」

 

 ソープが、にこにこしている。

 

「へぇ……面白いねぇ!」

 

 その隣で。

 

「…………」

 

 怪物強盗Xiが、少し警戒した。

 

「……陛下?」

 

「何?」

 

「……今、地形が面白いって言った?」

 

「うん!」

 

「……まさか、ちょっと削ってみようとか……」

 

「えー? そんなことしないよ?」

 

「…………」

 

 Xiは、少し安心した。

 

「……良かった」

 

 すると。

 

「でも、どういう構造になってるのか、ちょっと調べてみたいなぁ」

 

「陛下!! 調べるだけだからね?!」

 

「分かってるよ!」

 

 横で聞いていたカイエンが、大笑いした。

 

「ハハッ! ソープも信用されてねぇナ!」

 

「師匠だって同じだよ!!」

 

「……あ?」

 

「昨日、河原でMBT撃とうとしたでしょ?!」

 

「撃ってねぇってばヨ!!」

 

 アウクソーが、静かに口を開いた。

 

「マスター。本日は観光でございますので、くれぐれも……」

 

「分かってるヨ!!」

 

 ソープが、楽しそうに笑った。

 

「ふふ。今日は木剣も持ってきてないしね!」

 

 Xiは、思わず顔を覆った。

 

「……木剣がなくても、師匠は危ないんだよ……」

 

 その横で。

 

「……おいおいおいおい!」

 

 岸辺露伴が、岩壁を見上げていた。

 

「これは凄いじゃあないか!!」

 

 泉京香も、嬉しそうに頷く。

 

「露伴センセ! 綺麗ですね!」

 

「ああ。素晴らしい」

 

 露伴は、既にスケッチブックを取り出していた。

 

「岩壁の形状、侵食による凹凸、そして水面との位置関係……実に興味深い!」

 

 泉は、少し笑った。

 

「先生、まだ着いたばかりですよ?」

 

「だから何だ?」

 

「……いえ、何でもありません」

 

 泉は、苦笑した。

 

 ……今回も、露伴先生の取材意欲は絶好調である。

 

◆ 吊り橋、それぞれの渡り方

 

 やがて、一行は吊り橋の前へやって来た。

 

 橋の向こうには、岩壁に沿った通路が続いている。

 

 しかし。

 

 その下には、川が流れていた。

 

 しかも、なかなかの高さがある。

 

「…………」

 

 Xiは、橋を見た。

 

「……結構、高いね」

 

 キラが、頷いた。

 

「うん。足元には気をつけよう」

 

 カイエンは、平然としていた。

 

「……ま、普通に歩きゃ大丈夫だろ」

 

 ソープも、嬉しそうに頷く。

 

「うん! 景色もいいねぇ!」

 

 橋の混雑具合を確かめ、少人数ずつ渡ることになった。

 

 もちろん、走ったり、わざと揺らしたりするのは禁止である。

 

 ……もっとも。

 

 今回の一行には、別の意味で注意が必要な人物が何人かいた。

 

「……おい、カイエン」

 

 Xiが、声を掛ける。

 

「……何だヨ?」

 

「……普通に歩いてね?」

 

「……何だヨ、いきなり」

 

「……飛んだりしないで」

 

「飛ばねぇヨ!!」

 

 ソープも、にこにこしていた。

 

「大丈夫だよ、Xi!」

 

「……陛下もだからね?」

 

「えー?」

 

「『えー?』じゃないよ!!」

 

 まず、カイエンとソープが渡り始めた。

 

 その足取りには、一切の迷いがなかった。

 

 吊り橋がわずかに揺れても、二人は自然に身体のバランスを取っている。

 

「……おお」

 

 Xiは、少し感心した。

 

「……さすがだね」

 

 キラも、頷いた。

 

「うん。姿勢がまったく崩れない」

 

 続いて、アウクソー。

 

 そして、バクスチュアル。

 

 ファティマたちも、実に安定した足取りだった。

 

「……良い景色ですね」

 

 アウクソーが、穏やかに微笑む。

 

 バクスチュアルも、橋の向こうを見つめた。

 

「足場、確認。問題、ナシ」

 

 Xiが、少し笑った。

 

「……バクスチュアル、頼もしいね」

 

「ウン」

 

 バクスチュアルは、小さく頷いた。

 

「Xiサン。慌テナイ」

 

「……うん!」

 

 Xiも、橋へ足を踏み出した。

 

 ぎしっ。

 

「…………」

 

 わずかな揺れ。

 

 だが、慌てることはなかった。

 

 足元を確かめ、重心を安定させる。

 

 昨日から、何度も繰り返してきたことだ。

 

「……なるほど」

 

 Xiは、少し笑った。

 

「……昨日の稽古が役に立ってるかも」

 

 前方から、カイエンが振り向いた。

 

「……おっ!」

 

 そして、にやりと笑った。

 

「そうだナ!」

 

 Xiも、微笑んだ。

 

「……うん」

 

 カイエンは、続けた。

 

「だが、Xi」

 

「……何?」

 

「足元ばっかり見てんじゃねぇゼ?」

 

「……え?」

 

 Xiが、顔を上げる。

 

 カイエンは、前方を指さした。

 

「進む方向も見ろ。周りも見ろ」

 

「…………」

 

「橋の揺れも、他の人間の動きも、全部含めて考えるんだヨ」

 

 Xiは、少し驚いた。

 

「……ああ!」

 

 そして、頷いた。

 

「……そうか。足元だけ見てても駄目なんだね」

 

「おう」

 

 カイエンは、嬉しそうに笑った。

 

「足場を見ろってのは、真下だけ見て歩けって意味じゃねぇんだヨ」

 

「……なるほど!」

 

 Xiは、改めて橋の先へ目を向けた。

 

 前方の状況。

 

 周囲の人。

 

 足元の感覚。

 

 そのすべてを意識しながら、落ち着いて歩く。

 

「……うん」

 

 Xiは、微笑んだ。

 

「……分かったよ、師匠!」

 

 カイエンも、頷いた。

 

「……その調子だナ!」

 

 ……星団最強の剣聖。

 

 観光中であっても、なかなか良い指導をする男である。

 

 ただし。

 

 必要以上の技を使わなければ、の話だったが。

 

◆ 桂木弥子、吊り橋と戦う

 

 一方。

 

 別の組で橋を渡り始めた弥子は、少しだけ緊張していた。

 

「……うわぁ」

 

 ぎしっ。

 

「……結構、揺れますね」

 

 隣には、キラとラクス。

 

 ラキシスも、優雅な足取りで歩いている。

 

「弥子さん、大丈夫ですか?」

 

 ラクスが、優しく声を掛けた。

 

「はい! 大丈夫です!」

 

 弥子は、元気に答えた。

 

 しかし。

 

 ちらっ。

 

 橋の下を見る。

 

「…………」

 

 川が流れている。

 

 岩が見える。

 

 高い。

 

 ……思ったより、かなり高い。

 

「…………」

 

 弥子は、そっと手すりを握った。

 

「……やっぱり、下は見ない方がいいですね!」

 

 キラが、微笑んだ。

 

「うん。無理に覗き込まなくていいよ」

 

 ラキシスも、頷いた。

 

「ええ。ゆっくり参りましょう」

 

 弥子は、少し安心した。

 

「……はい!」

 

 その時。

 

 橋の向こう側から、カイエンの声が飛んできた。

 

「おーい! 弥子!」

 

「……はい?!」

 

「前見て、普通に歩きゃいいんだヨ!」

 

「……は、はい!」

 

 弥子は、慎重に歩き続けた。

 

 ぎしっ。

 

「……ひゃっ!」

 

 わずかな揺れに、思わず声が出る。

 

 すると。

 

 カイエンが、にやりと笑った。

 

「ハハッ! そんなに怖がることねぇゼ!」

 

 Xiが、慌てて口を挟んだ。

 

「……師匠!」

 

「……何だヨ?」

 

「みんなが師匠みたいに平気なわけじゃないんだよ!!」

 

「……お?」

 

「……怖い人もいるんだから、もう少し優しく!」

 

 カイエンは、少し考えた。

 

 そして。

 

「……ああ、そうだナ」

 

 頷いた。

 

「……悪ぃ、弥子!」

 

 弥子は、少し笑った。

 

「いえ! 大丈夫です!」

 

 そして、前を向く。

 

「……よし!」

 

 一歩。

 

 また一歩。

 

 ゆっくりと、確実に進んでいく。

 

 やがて。

 

「……やったぁ!!」

 

 弥子は、無事に橋を渡り終えた。

 

「渡れました!!」

 

 Xiが、笑った。

 

「……お疲れさま!」

 

 キラも、微笑む。

 

「うん。良かったね!」

 

 ラキシスも、嬉しそうだった。

 

「ふふ。頑張りましたね」

 

 弥子は、少し照れくさそうに笑った。

 

「ありがとうございます!」

 

 カイエンが、満足そうに頷いた。

 

「ハハッ! いいじゃねぇかヨ!」

 

 Xiは、少し笑った。

 

「……師匠」

 

「何だ?」

 

「……今のも稽古?」

 

 カイエンは、にやりと笑った。

 

「……ま、そんなところだナ!」

 

「……うん」

 

 Xiは、頷いた。

 

「……でも、弥子ちゃんは剣術習ってないよ?」

 

「ハハッ! んなもん関係ねぇヨ!」

 

 そして、少し真面目な顔になる。

 

「慌てず、よく見て、自分で歩く。それだけでも十分だろ?」

 

「…………」

 

 Xiは、微笑んだ。

 

「……そうだね」

 

 ……やはり、今日のカイエンは。

 

 ちょっと格好いい。

 

◆ 岸辺露伴、強がる

 

 続いて。

 

 岸辺露伴が、橋の前に立った。

 

「……ふむ」

 

 露伴は、腕を組んだ。

 

「なるほど。ここから見ると、また違った景観だな」

 

 泉が、隣から覗き込んだ。

 

「……先生」

 

「何だ?」

 

「……大丈夫ですか?」

 

 露伴は、少し不満そうだった。

 

「おいおいおいおい! 僕を誰だと思っているんだ?」

 

「……はい?」

 

「岸辺露伴だぞ?」

 

「……それは知ってますけど」

 

「……ふん」

 

 露伴は、堂々と橋へ足を踏み出した。

 

 ぎしっ。

 

「…………」

 

 ぴたり。

 

 足が止まった。

 

「…………」

 

 泉が、首を傾げた。

 

「……先生?」

 

「……何だ?」

 

「……どうしました?」

 

「……別に」

 

 露伴は、橋の下をちらりと見た。

 

「…………」

 

 深い渓谷。

 

 流れる川。

 

 岩壁。

 

 ……思ったより、迫力がある。

 

「…………」

 

 露伴は、すっと視線を前へ戻した。

 

 泉が、心配そうに声を掛ける。

 

「……先生?」

 

「今、足場の状態を確認しているんだ。話しかけるんじゃあない!」

 

「……はい!」

 

 Xiが、向こう側から見ていた。

 

「…………」

 

 そして。

 

「……先生」

 

「何だ!」

 

「……結構、怖いんじゃない?」

 

「怖くない!!」

 

「……本当に?」

 

「僕は取材のために、もっと危険な場所へ行ったこともあるんだぞ!!」

 

 カイエンが、思わず笑った。

 

「ハハッ! じゃあ、さっさと渡って来いヨ!」

 

「…………」

 

 露伴は、少し考えた。

 

 そして。

 

「……今、渡るところだ!!」

 

 ぎしっ。

 

 一歩。

 

 また一歩。

 

 慎重に歩く。

 

 手すりも、きちんと利用する。

 

 途中で、橋の向こうに見える岩壁へ目を向けた。

 

「……ほう」

 

 そして。

 

「……なるほど」

 

 少しだけ、表情が変わった。

 

 怖さよりも、好奇心が勝ったらしい。

 

「……これは、なかなか興味深い」

 

 岩の形状。

 

 川の流れ。

 

 自然が造り出した独特の景観。

 

 漫画家の目が、再び輝いた。

 

「……面白いじゃあないか!」

 

 そう言いながら、橋を渡り終える。

 

 Xiが、笑った。

 

「……先生、お疲れさま」

 

 露伴は、当然のように答えた。

 

「何がだ?」

 

「……いや、無事に渡れて良かったね」

 

「当たり前だろう」

 

 そして、胸を張った。

 

「僕は別に、怖がっていたわけじゃあないからな!」

 

 その横で。

 

 ネウロが、愉快そうに笑った。

 

「ククク……橋の途中で妙に慎重になっていたようだが?」

 

「おいおいおいおい! 観察だよ、観察!!」

 

「ほう。自分の足元をか?」

 

「うるさい!!」

 

 Xiは、思わず吹き出した。

 

 ……剣聖カイエンだけでなく。

 

 漫画家岸辺露伴も、日常では意外な弱点を見せるらしい。

 

◆ 泉京香、渡れない

 

 さて。

 

 残るは、泉京香だった。

 

「…………」

 

 泉は、吊り橋の前に立っていた。

 

 目の前には、細長い橋。

 

 その下には、川。

 

「…………」

 

 泉は、そっと足を踏み出した。

 

 ぎしっ。

 

「……ひっ?!」

 

 すぐに足を引っ込めた。

 

「…………」

 

 もう一度、橋を見た。

 

 そして。

 

「……無理です」

 

 小さく呟いた。

 

 その時。

 

「……泉くん!」

 

 向こう側から、露伴が声を掛けた。

 

「どうした! 早く渡って来たまえ!」

 

「…………」

 

 泉は、顔を上げた。

 

「……露伴センセ」

 

「何だ?」

 

「私、無理です!!」

 

「おいおいおいおい!!」

 

「下が見えるんです!!」

 

「吊り橋なんだから当たり前じゃあないか!」

 

「当たり前でも怖いものは怖いんです!!」

 

 露伴は、少し考えた。

 

 そして。

 

「……まったく」

 

 ため息をついた。

 

「……仕方ないな」

 

 泉が、顔を上げる。

 

「……先生?」

 

「無理なら、そこで待っていたまえ」

 

「……え?」

 

「向こう側の景色は、僕が取材してくる」

 

「…………」

 

「写真も撮っておくし、スケッチも描く。それで十分だろう?」

 

 泉は、少し驚いた。

 

 そして。

 

「……はい!」

 

 嬉しそうに頷いた。

 

「ありがとうございます、露伴センセ!」

 

 露伴は、ふんと鼻を鳴らした。

 

「……別に。仕事だからな」

 

 Xiが、少し微笑んだ。

 

「……先生、優しいところもあるんだね」

 

「おいおいおいおい! 何だその言い方は!!」

 

 カイエンが、大笑いした。

 

「ハハハッ! 露伴らしいじゃねぇかヨ!」

 

 ネウロも、愉快そうに笑っている。

 

「ククク……渡れぬ者を無理に引きずるわけにもいくまい」

 

 泉は、少し不満そうに言った。

 

「……ネウロさん。そういう言い方はやめてください!」

 

 ネウロは、肩をすくめた。

 

「ほう。人間の恐怖心とは、実に興味深いものだな」

 

「怖いものは怖いんです!!」

 

 こうして泉は、吊り橋の手前から景色を楽しむことになった。

 

 その隣には、すえぞう。

 

 そして、すえぞうを見守るバクスチュアルもいた。

 

「……すえぞう」

 

 泉が、笑った。

 

「一緒に待ってようね」

 

「うっす!」

 

 すえぞうは、嬉しそうに胸を張った。

 

 バクスチュアルも、小さく頷いた。

 

「安全、第一」

 

 泉は、微笑んだ。

 

「……そうですね」

 

 無理して渡らなくても、景色は楽しめる。

 

 それもまた、正しい選択なのだった。

 

◆ 岩場では、もっと慎重に

 

 吊り橋を渡った一行は、岩壁に沿った通路へ進んだ。

 

 長い年月をかけて削られた岩の形。

 

 その間を通る、細い道。

 

 場所によっては、足元に注意が必要だった。

 

「……うわぁ」

 

 弥子が、少し驚いた。

 

「……橋の向こうも、結構怖いですね」

 

 ラクスが、頷いた。

 

「ええ。足元に気をつけましょう」

 

 キラも、周囲を確認した。

 

「無理に先へ進まず、通れるところだけにしよう」

 

 カイエンは、岩場を見つめていた。

 

「……なるほど」

 

 Xiが、振り向く。

 

「……師匠?」

 

「……何だヨ?」

 

「……どうしたの?」

 

 カイエンは、足元を指さした。

 

「……こういう場所だヨ」

 

「……え?」

 

「昨日、オマエが苦戦してたのは」

 

 Xiは、少し考えた。

 

「……ああ!」

 

 確かに。

 

 大きさの違う岩。

 

 平らではない足元。

 

 ちょっとした傾斜。

 

 河原での稽古を思い出させる地形だった。

 

 カイエンは、頷いた。

 

「戦う場所がいつでも平らとは限らねぇ」

 

「……うん」

 

「だが、今日は観光だ」

 

「……うん」

 

 カイエンは、にやりと笑った。

 

「戦う必要なんざねぇ。転ばねぇように歩けば、それで十分だヨ」

 

「…………」

 

 Xiは、少し驚いた。

 

 そして。

 

「……うん!」

 

 嬉しそうに笑った。

 

「……そうだね!」

 

 ソープも、頷いた。

 

「うん。今日は景色を楽しもうね!」

 

 その言葉を聞いて。

 

 Xiは、ようやく安心した。

 

 ……今日の二人は、ちゃんと観光客をしている。

 

 それだけでも、何だか嬉しかった。

 

 すると。

 

「……おいおいおいおい!」

 

 露伴が、突然声を上げた。

 

「……何?」

 

 Xiが、振り向く。

 

 露伴は、岩壁を見上げていた。

 

「この形状、実に面白いじゃあないか!」

 

 そして、鞄からスケッチブックを取り出そうとする。

 

「……先生!」

 

 Xiが、慌てて声を掛けた。

 

「……何だ?」

 

「ここで立ち止まって描くのは危ないよ!!」

 

「……お?」

 

「足元、ちゃんと見て!」

 

 露伴は、少し不満そうだった。

 

「分かっているよ」

 

「……本当に?」

 

「当然だろう」

 

 そして、少し考えた。

 

「……まあ、落ち着いた場所で描くことにするか」

 

 Xiは、ほっとした。

 

「……うん。それがいいよ」

 

 カイエンが、笑った。

 

「ハハッ! Xi、なかなかいいこと言うじゃねぇかヨ!」

 

 Xiも、笑った。

 

「……師匠の受け売りだけどね」

 

「……それでいいんだヨ!」

 

 カイエンは、嬉しそうだった。

 

 ……この師弟。

 

 確かに、少しずつ良い関係になっているらしい。

 

◆ 全員集合、記念撮影!

 

 観光を終えた一行は、再び吊り橋を渡って戻ってきた。

 

 無事、全員が元の場所へ集合する。

 

「……はぁ!」

 

 弥子が、嬉しそうに伸びをした。

 

「楽しかったですねぇ!」

 

 ラクスも、微笑んだ。

 

「ええ。素晴らしい景色でしたわ」

 

 ラキシスも、頷く。

 

「本当に美しかったですね」

 

 泉は、少し照れくさそうだった。

 

「……私、橋は渡れませんでしたけど」

 

 すると。

 

 Xiが、笑顔で答えた。

 

「……いいんじゃない?」

 

「……え?」

 

「……無理して渡る必要ないし」

 

 カイエンも、頷いた。

 

「おう。怖ぇなら、無理しなきゃいいんだヨ」

 

 泉は、少し驚いた。

 

「……カイエンさん」

 

 カイエンは、笑った。

 

「ハハッ! 今日は観光なんだからナ!」

 

 ソープも、嬉しそうに頷いた。

 

「そうだね!」

 

 露伴は、手帳を閉じた。

 

「……まあ、向こう側の景色は僕が記録したしな」

 

 泉が、嬉しそうに微笑む。

 

「ありがとうございます、先生!」

 

 すると。

 

 キラが、カメラを取り出した。

 

「……せっかくだから、みんなで写真を撮ろうか」

 

「……おっ!」

 

 Xiが、顔を上げた。

 

「……いいね!」

 

 全員が、安全な展望場所へ集まった。

 

 カイエン。

 

 ソープ。

 

 Xi。

 

 キラとラクス。

 

 露伴と泉。

 

 弥子。

 

 ネウロ。

 

 ラキシス。

 

 アウクソー。

 

 バクスチュアル。

 

 そして、すえぞう。

 

 十二名と、ドラゴン一匹。

 

 奇妙な組み合わせだった。

 

 だが、今ではもう。

 

 それが当たり前のように感じられる。

 

「……はい!」

 

 キラが、カメラのタイマーを設定した。

 

「みんな、こっちを向いて!」

 

 Xiが、笑った。

 

「……師匠、ちゃんと笑ってね!」

 

「ハハッ! 分かってるヨ!」

 

 ソープも、嬉しそうに微笑んだ。

 

 ラクスとラキシスも、並んで笑顔を見せる。

 

 弥子は、元気よく手を振っていた。

 

 露伴は、少し気取った表情。

 

 泉は、満面の笑み。

 

 ネウロは、いつもの不敵な笑み。

 

 アウクソーとバクスチュアルも、穏やかに微笑んでいる。

 

 そして。

 

 すえぞうが、胸を張った。

 

「……うっす!」

 

 ぱしゃっ。

 

 シャッターが切られた。

 

 こうして。

 

 塔のへつりでの、楽しい思い出が一枚残された。

 

◆ 剣聖の美学、ロックンロール講座

 

 観光を終えた一行は、少し休憩することになった。

 

 その時。

 

「ろっくんろーる!!」

 

 すえぞうが、元気よく鳴いた。

 

「……すえぞう」

 

 Xiが、笑った。

 

「……まだ覚えてるんだね」

 

「ろっくんろーる!!」

 

「……うんうん」

 

 弥子も、楽しそうだった。

 

「すえぞう、本当に気に入ってますね!」

 

 すると。

 

「……おい、すえぞう」

 

 カイエンが、何かを思いついたように声を掛けた。

 

 すえぞうが、顔を上げる。

 

「うっす!」

 

 カイエンは、少し真面目な顔になった。

 

「……ちっといいか?」

 

「うっす!」

 

「……いいか、すえぞう」

 

 カイエンは、腕を組んだ。

 

「あんまり何回も『ロックンロール!』って言ってばっかだと、ちっとダサいゼ?」

 

「?!」

 

 すえぞうが、目を丸くした。

 

 Xiも、目を丸くした。

 

「……師匠?」

 

 しかし、カイエンは続けた。

 

「こういうのはナ、ここぞって時にだけ言うから格好いいんだヨ」

 

「……うっす!」

 

 すえぞうは、真剣に聞いている。

 

 カイエンは、にやりと笑った。

 

「……そう!」

 

 そして、拳を握った。

 

「決める時に、腹の底から……ロッケンロー!!」

 

「……!!」

 

 すえぞうの目が、輝いた。

 

「ろっけんろー!!」

 

 カイエンが、満足そうに頷いた。

 

「ヨシ!!」

 

「師匠!! 何教えてるの?!」

 

 Xiが、思わず叫んだ。

 

 カイエンは、不思議そうだった。

 

「……何って、せっかくだから格好いい決め台詞をだナ……」

 

「だから、すえぞうに決め台詞なんて教えなくていいんだよ!!」

 

 カイエンは、少し不満そうだった。

 

「……おいおい。こういうのにも美学ってもんがあるんだヨ」

 

「美学?!」

 

「おう。何事もタイミングが大事だってことだナ!」

 

「…………」

 

 Xiは、少し考えた。

 

 そして。

 

「……師匠」

 

「何だ?」

 

「剣術の教訓を、そんなところに応用しないで!!」

 

 露伴が、すかさず反応した。

 

「おいおいおいおい!!」

 

 Xiが、振り向く。

 

「……先生?」

 

 露伴は、興味深そうにカイエンを見ていた。

 

「つまり剣聖は、技の使いどころだけでなく、掛け声の使いどころにもこだわるわけか!」

 

 カイエンが、嬉しそうに笑った。

 

「おう! 分かってるじゃねぇかヨ!!」

 

 Xiが、頭を抱えた。

 

「先生!! そこを真面目に分析しないで!!」

 

 すると。

 

 すえぞうが、胸を張った。

 

「ろっけんろー!!」

 

「…………」

 

 カイエンが、ぴたりと止まった。

 

 Xiも、止まった。

 

 カイエンは、ゆっくりとすえぞうを見た。

 

「……おい、すえぞう」

 

「うっす!」

 

「今はまだ、ここぞって時じゃねぇヨ」

 

「?!」

 

 すえぞうが、目を丸くした。

 

 Xiは、思わず叫んだ。

 

「だったら最初から教えないでよ!!」

 

 ラキシスが、くすっと笑った。

 

「ふふ。すえぞう、新しい言葉を覚えたのですね」

 

 アウクソーは、少し困ったように微笑んだ。

 

「……マスター」

 

「……何だヨ?」

 

「すえぞうへのご指導は結構ですが、危険な技は教えないでくださいね」

 

「教えねぇって!!」

 

 バクスチュアルが、小さく頷いた。

 

「言葉、覚エタ。使イドコロ、重要」

 

 Xiは、バクスチュアルを見た。

 

「……君まで納得しちゃったの?」

 

「ウン」

 

「…………」

 

 Xiは、深いため息をついた。

 

 ……どうやら。

 

 すえぞうの「ロックンロール」は、正式に進化してしまったらしい。

 

 ロッケンロー!!

 

 ただし。

 

 その言葉が、本当に役に立つ日が来るかどうかは。

 

 まだ、誰にも分からなかった。

 

◆ 旅館へ帰還、そして夕食へ

 

 午後の観光を終え、一行は芦ノ牧温泉の旅館へ戻ってきた。

 

 夕暮れが近づき、渓谷の景色も柔らかな色に変わっている。

 

「……はぁ」

 

 Xiは、満足そうに息を吐いた。

 

「……楽しかったね」

 

 キラも、微笑んだ。

 

「うん。いい観光だったね」

 

 ラクスも、嬉しそうだった。

 

「ええ。皆さんとご一緒できて、本当に楽しかったですわ」

 

 弥子が、元気よく頷く。

 

「はい!」

 

 そして。

 

「……あっ!」

 

 何かを思い出したように顔を上げた。

 

「そろそろ夕食ですね!」

 

「…………」

 

 Xiが、振り向いた。

 

「……弥子ちゃん」

 

「はい?」

 

「……お昼、お蕎麦五人前食べたよね?」

 

「はい!」

 

「……もうお腹空いたの?」

 

 弥子は、少し不思議そうだった。

 

「……え?」

 

 そして。

 

「だって、お昼はお蕎麦で軽かったですから!」

 

「…………」

 

 Xiが、固まった。

 

 キラも、固まった。

 

「……軽かった?」

 

 キラが、静かに尋ねた。

 

「はい!」

 

 弥子は、満面の笑みだった。

 

「お蕎麦って、さっぱりしてますから!」

 

 Xiは、ゆっくりと口を開いた。

 

「……弥子ちゃん」

 

「はい?」

 

「軽いのは味でしょ?! 量じゃないよね?!」

 

「……え?」

 

 弥子は、きょとんとした。

 

「でも、カツ丼よりは軽いですよ?」

 

「その比較基準がおかしいんだよ!!」

 

 カイエンが、大笑いした。

 

「ハハハッ! まあ、確かにカツ丼よりは軽いだろうナ!」

 

「師匠!! 変なところで同意しないで!!」

 

 その横で。

 

 ラキシスも、楽しそうに微笑んだ。

 

「ふふ。確かにお蕎麦は、さっぱりしていて美味しかったですね」

 

 弥子が、嬉しそうに頷いた。

 

「ですよね!!」

 

 ラキシスは、続けた。

 

「ですから、夕食も楽しみにしておりました」

 

「…………」

 

 Xiは、静かにソープを見た。

 

「……陛下」

 

「何?」

 

「……姫様も、お腹空いたみたいだね」

 

「うん!」

 

 ソープは、嬉しそうに笑った。

 

「ラキシス、楽しそうだねぇ!」

 

「…………」

 

 Xiは、深いため息をついた。

 

 その時。

 

「ゴハン!!」

 

 すえぞうが、元気よく鳴いた。

 

 Xiが、振り向く。

 

「……君も?」

 

「ハラヘッタ!!」

 

「…………」

 

 Xiは、キラを見た。

 

「……キラ」

 

「……うん」

 

「……今夜、大丈夫かなぁ」

 

 キラは、少し考えた。

 

 そして。

 

「……大丈夫だよ」

 

「……本当?」

 

 キラは、微笑んだ。

 

「定額ビュッフェだからね」

 

「…………」

 

 Xiは、静かに頷いた。

 

「……そうだったね」

 

 ……その判断は。

 

 会計面では、完全に正しかった。

 

 ただし。

 

 厨房側の事情までは、考慮されていなかった。

 

◆ 料理長、自慢の大艦隊

 

 一方。

 

 旅館の厨房では、夕食の準備が進められていた。

 

「……よし」

 

 料理長が、並べられた料理を見渡した。

 

 天ぷら。

 

 肉料理。

 

 魚料理。

 

 煮物。

 

 郷土料理。

 

 そして、デザート。

 

 昨日の夕食より、さらに多くの料理が準備されていた。

 

「……うむ」

 

 料理長は、満足そうに頷いた。

 

「いい仕上がりだ」

 

 スタッフも、嬉しそうだった。

 

「料理長! 準備完了です!」

 

「うむ!」

 

 料理長は、腕を組んだ。

 

「昨日のお客様方、今日もお越しになるんだったな」

 

「はい!」

 

「……確か、大変よく召し上がる方がいらっしゃったな」

 

「……はい」

 

 スタッフが、少しだけ真面目な顔になった。

 

「……昼食は、お蕎麦だったそうです」

 

「……ほう」

 

 料理長は、頷いた。

 

「それなら、今夜も楽しみにしていただけそうだな」

 

「……はい」

 

 スタッフは、少し考えた。

 

「……ただ」

 

「……ん?」

 

「……お蕎麦を五人前召し上がったそうです」

 

「…………」

 

 料理長が、止まった。

 

「……五人前?」

 

「……はい」

 

「…………」

 

 しばしの沈黙。

 

 料理長は、ゆっくりと頷いた。

 

「……なるほど」

 

 そして。

 

「……昨日の昼食は?」

 

 スタッフが、答えた。

 

「……煮込みソースカツ丼を九杯だったそうです」

 

「…………」

 

 料理長は、しばらく黙っていた。

 

 そして。

 

「……そうか」

 

 静かに呟いた。

 

「昨日は、カツ丼に助けられていたんだな……」

 

 スタッフも、頷いた。

 

「……そうかもしれません」

 

 料理長は、深く息を吸った。

 

 そして。

 

「……よし!」

 

 力強く頷いた。

 

「今夜は、万全の態勢でお迎えしよう!!」

 

「はい!!」

 

 厨房に、緊張が走った。

 

 ……ただし。

 

 この戦いにおける敵とは、決してお客様ではない。

 

 料理長の敵は、料理を切らしてしまうこと。

 

 そして、美味しい料理を、最高の状態で提供できなくなることだった。

 

 料理長は、料理人としての誇りを胸に、静かに宣言した。

 

「温かい料理は温かいうちに! 補充は順番に! 決して無理をして作り置きするな!」

 

「承知しました!!」

 

 こうして。

 

 旅館の厨房では、夕食ビュッフェの準備が整った。

 

 ……その様子は、さながら。

 

 料理長自慢の大艦隊が、出撃を待っているかのようだった。

 

◆ 夕食ビュッフェ、第二ラウンド!

 

 午後六時。

 

 夕食会場。

 

「……わぁ!!」

 

 弥子が、歓声を上げた。

 

「今日も美味しそうなお料理がいっぱい!!」

 

 ラキシスも、嬉しそうに微笑んだ。

 

「まあ。昨日とは違うお料理もありますね」

 

 ソープが、楽しそうに頷いた。

 

「うん! いいねぇ!」

 

 ラクスも、微笑んでいる。

 

「ふふ。今夜も楽しみですわね」

 

 Xiは、料理の並ぶ様子を見渡した。

 

「……へぇ」

 

 そして、少し笑った。

 

「……すごいね」

 

 キラも、頷いた。

 

「うん。昨日も美味しかったし、今日も楽しみだね」

 

 その時。

 

「……あっ!」

 

 弥子が、目を輝かせた。

 

「この天ぷら、美味しそう!!」

 

 すぐに皿を手に取る。

 

 そして。

 

「……あっ、こっちも!」

 

 肉料理。

 

 魚料理。

 

 煮物。

 

 次々と選んでいく。

 

 Xiが、少し不安そうに見つめた。

 

「……弥子ちゃん」

 

「はい?」

 

「……今日も、いっぱい食べるんだね」

 

「はい!」

 

 弥子は、満面の笑みだった。

 

「だって、お昼は軽かったですから!!」

 

「…………」

 

 Xiは、静かに目を閉じた。

 

「……そうだったね」

 

 その横で。

 

 ラキシスも、上品に料理を盛り付けていた。

 

「ふふ。どれも美味しそうですね」

 

 ソープが、にこにこしている。

 

「ラキシス、楽しそうだねぇ!」

 

「はい、ソープ様」

 

 さらに。

 

「ゴハン!!」

 

 すえぞうが、嬉しそうに鳴いた。

 

 専用の場所で、ラキシスたちが取り分けた料理を待っている。

 

 アウクソーが、穏やかに微笑んだ。

 

「すえぞう、少し待っていてくださいね」

 

「うっす!」

 

 バクスチュアルも、頷いた。

 

「順番、守ル」

 

「うっす!」

 

 ……こうして。

 

 夕食ビュッフェ、第二ラウンドが始まった。

 

◆ 第一波、天ぷら艦隊

 

 食事開始から、しばらくして。

 

「……料理長」

 

 スタッフが、厨房へ戻ってきた。

 

「……ん?」

 

「天ぷらが、よく出ています」

 

「……そうか」

 

 料理長は、頷いた。

 

「では、次の分を揚げ始めよう」

 

「はい!」

 

 熱い油の中へ、食材が入る。

 

 じゅわっ。

 

 揚げたての天ぷらが、次々と出来上がっていく。

 

 料理長は、満足そうに頷いた。

 

「……よし。いい仕上がりだ」

 

 スタッフが、料理を運ぶ。

 

「お待たせいたしました!」

 

 すると。

 

「あっ!」

 

 弥子が、嬉しそうに声を上げた。

 

「揚げたてですか?!」

 

「はい!」

 

「わぁ! ありがとうございます!!」

 

 にっこり笑って、皿に取る。

 

 ラキシスも、微笑んだ。

 

「まあ。美味しそうですね」

 

 そして、上品に料理を選んでいく。

 

 ……数分後。

 

「……料理長」

 

「……ん?」

 

「天ぷら、またよく出ています」

 

「…………」

 

 料理長は、少し考えた。

 

 そして。

 

「……いいことじゃないか」

 

「……はい!」

 

「美味しいと言って召し上がってくださるなら、料理人冥利に尽きる」

 

 スタッフも、嬉しそうに頷いた。

 

「……はい!」

 

 料理長は、笑った。

 

「……よし。次も温かいものを出そう!」

 

「承知しました!」

 

 ……天ぷら艦隊。

 

 第一波、善戦。

 

 しかし。

 

 この戦いは、まだ始まったばかりだった。

 

◆ 第二波、肉料理戦線

 

 その頃。

 

 弥子は、肉料理のコーナーへ向かっていた。

 

「……わぁ!」

 

 目の前には、焼きたての肉料理。

 

「美味しそう!!」

 

 スタッフが、笑顔で声を掛ける。

 

「いかがですか?」

 

「いただきます!」

 

 皿に盛られる肉料理。

 

 弥子は、嬉しそうに席へ戻った。

 

「……んー!!」

 

 一口食べる。

 

 そして。

 

「美味しい!!」

 

 満面の笑み。

 

 Xiが、思わず笑った。

 

「……本当に美味しそうに食べるね、弥子ちゃん」

 

「はい!」

 

 弥子は、嬉しそうに頷いた。

 

「こういうお肉料理、大好きです!」

 

 カイエンも、肉料理を口に運んでいた。

 

「……おっ!」

 

 そして、頷いた。

 

「なかなか旨ぇナ!」

 

 ソープも、嬉しそうだった。

 

「うん! 美味しいねぇ!」

 

 ラキシスも、上品に微笑む。

 

「ええ。とても美味しいです」

 

 その様子を見ていたキラは、少し安心した。

 

「……みんな、楽しそうだね」

 

 ラクスも、微笑んだ。

 

「ええ。良いお食事ですわね」

 

 だが。

 

 その数分後。

 

「……料理長」

 

 スタッフが、再び厨房へ戻ってきた。

 

「……ん?」

 

「肉料理の補充も、少し早めた方が良さそうです」

 

「…………」

 

 料理長は、頷いた。

 

「……分かった」

 

 そして。

 

「……よし。次の分を焼こう!」

 

「はい!」

 

 ……肉料理戦線。

 

 こちらも、順調に補充が進んでいた。

 

 ただし。

 

 料理の減る速度は、昨日より明らかに速かった。

 

◆ 料理長、戦況を確認する

 

 夕食開始から、一時間ほど。

 

 料理長は、厨房の状況を確認していた。

 

「……天ぷらは?」

 

「補充できています!」

 

「……肉料理は?」

 

「次の分が焼き上がります!」

 

「……煮物は?」

 

「問題ありません!」

 

「……デザートは?」

 

 スタッフが、少し考えた。

 

「……そちらも、よく出ています」

 

「…………」

 

 料理長は、腕を組んだ。

 

「……なるほど」

 

 そして、少し笑った。

 

「……いいじゃないか」

 

 スタッフが、顔を上げる。

 

「……料理長?」

 

「お客様が美味しそうに食べてくださっている。それが一番だ」

 

「……はい!」

 

 料理長は、頷いた。

 

「ただし、無理に急いで品質を落とすことだけは避けよう」

 

「承知しました!」

 

「……よし」

 

 料理長は、満足そうに微笑んだ。

 

「最後まで、気持ちよく召し上がっていただこう!」

 

「はい!!」

 

 ……料理長自慢の大艦隊。

 

 天ぷら艦隊、健在。

 

 肉料理戦線、健在。

 

 煮物部隊、健在。

 

 デザート予備隊も、まだ余力がある。

 

 全艦隊、壊滅せず!!

 

 ……もっとも。

 

 スタッフたちが、少しばかり忙しくなったことは否定できなかった。

 

◆ 弥子ちゃんの、満足度

 

 その頃。

 

 食事会場では。

 

「……はぁ!」

 

 弥子が、満足そうに息を吐いた。

 

「ごちそうさまでしたぁ!!」

 

 Xiが、少し安心した。

 

「……弥子ちゃん、満足した?」

 

「はい!」

 

「……良かった」

 

 キラも、微笑んだ。

 

「うん。美味しかったね」

 

「はい! とっても美味しかったです!」

 

 弥子は、元気よく頷いた。

 

 そして。

 

「……さて」

 

 椅子から立ち上がった。

 

「…………」

 

 Xiが、固まった。

 

「……弥子ちゃん?」

 

「はい?」

 

「……どこ行くの?」

 

 弥子は、にっこり笑った。

 

「デザートをいただいてきます!」

 

「…………」

 

 Xiが、キラを見た。

 

「……キラ」

 

「……うん」

 

「……まだ終わってなかったね」

 

「……うん」

 

 弥子は、嬉しそうに続けた。

 

「だって、今日はお昼がお蕎麦でしたから!」

 

「まだ言うの?!」

 

 カイエンが、大笑いした。

 

「ハハハッ! いいじゃねぇかヨ!」

 

 ソープも、嬉しそうだった。

 

「うん! デザートも楽しみだねぇ!」

 

 ラキシスが、微笑んだ。

 

「ふふ。私もご一緒してよろしいですか?」

 

「もちろんです!」

 

 弥子は、嬉しそうに頷いた。

 

 二人は、仲良くデザートコーナーへ向かった。

 

 Xiは、その後ろ姿を見送った。

 

「…………」

 

 そして。

 

「……キラ」

 

「……何?」

 

「……料理長、大丈夫かなぁ」

 

 キラは、少し考えた。

 

 そして。

 

「……補充もきちんとされているし、大丈夫だと思うよ」

 

 Xiは、頷いた。

 

「……そうだね」

 

 その横で。

 

 すえぞうが、嬉しそうに鳴いた。

 

「デザート!!」

 

「…………」

 

 Xiが、振り向いた。

 

「……君も覚えたの?!」

 

「うっす!」

 

 カイエンが、笑った。

 

「ハハッ! すげぇナ!」

 

 アウクソーが、少し困ったように微笑んだ。

 

「……マスター」

 

「……ん?」

 

「すえぞうが覚える言葉が、どんどん増えていますね」

 

「……おう」

 

 バクスチュアルも、頷いた。

 

「学習、早イ」

 

 Xiは、少し考えた。

 

 そして。

 

「……でも、食べ物の名前ばっかりだね」

 

 弥子が、遠くから声を上げた。

 

「Xiくーん! こっちのデザートも美味しそうですよー!」

 

「……うん!」

 

 Xiは、思わず笑った。

 

 ……まあ。

 

 みんなが楽しそうなら、それでいいのかもしれない。

 

◆ 大艦隊、戦闘終了!

 

 やがて。

 

 夕食の時間も終わりに近づいた。

 

 食事会場では、お客様方が満足そうに席を立っていく。

 

 そして、厨房。

 

「……料理長」

 

 スタッフが、少し疲れたように声を掛けた。

 

「……ん?」

 

「……本日の夕食、無事に終了です」

 

「…………」

 

 料理長は、ゆっくりと頷いた。

 

「……そうか」

 

「はい!」

 

「……料理は?」

 

「最後まで、きちんと補充できました!」

 

「……品質は?」

 

「問題ありません!」

 

「……食べ残しは?」

 

「ほとんどありませんでした!」

 

「…………」

 

 料理長は、満足そうに微笑んだ。

 

「……それは良かった」

 

 そして。

 

 深く息を吐いた。

 

「……いい仕事だったな」

 

 スタッフも、嬉しそうに頷いた。

 

「はい!」

 

 料理長は、腕を組んだ。

 

「お客様方も、楽しんでくださっただろうか」

 

「はい! 皆さん、とても喜んでいらっしゃいました!」

 

 料理長は、微笑んだ。

 

「……それなら、何よりだ」

 

 こうして。

 

 料理長自慢の大艦隊は、見事に二日目の夕食を守り抜いた!!

 

 天ぷら艦隊、損耗多数。

 

 肉料理戦線、激戦。

 

 煮物部隊、善戦。

 

 デザート予備隊、最後まで奮闘。

 

 ……しかし。

 

 料理長の誇りは、決して揺らがなかった。

 

「……また来てくださるといいな」

 

 料理長は、静かに微笑んだ。

 

 その横で。

 

 スタッフが、ぽつりと呟いた。

 

「……料理長」

 

「……ん?」

 

「……次回は、もう少し多めに仕込んでおきましょうか」

 

「…………」

 

 料理長は、少し考えた。

 

 そして。

 

「……そうだな」

 

 深く頷いた。

 

「次は、もう少し余裕を持ってお迎えしよう」

 

 ……かくして。

 

 旅館の厨房は、二日目の夕食も無事に乗り切ったのであった。

 

◆ 今夜は、まだ終わらない

 

 夕食を終えた一行は、ロビーへ戻ってきた。

 

「……はぁ!」

 

 弥子が、満足そうに伸びをした。

 

「美味しかったですねぇ!」

 

 ラキシスも、優雅に微笑む。

 

「ええ。とても素敵なお食事でした」

 

 ラクスも、頷いた。

 

「ふふ。皆さんと一緒ですと、お食事も楽しいですわね」

 

 ソープも、嬉しそうだった。

 

「うん! 今日もいい一日だったねぇ!」

 

 Xiは、窓の外へ目を向けた。

 

 夜の温泉街。

 

 静かな山々。

 

 そして、遠くに聞こえる川の流れ。

 

「……うん」

 

 Xiは、少し微笑んだ。

 

「……本当に、楽しかったね」

 

 キラも、頷いた。

 

「うん」

 

 その時。

 

 キラが、何かを思い出したように旅程表を取り出した。

 

「……そうだ」

 

 Xiが、振り向く。

 

「……何?」

 

「今夜、もうひとつ予定があるんだけど」

 

「……え?」

 

 キラは、微笑んだ。

 

「旅館の方に、屋外で手持ち花火をしてもいいか相談しておいたんだ」

 

「……花火?!」

 

 弥子が、嬉しそうに声を上げた。

 

「わぁ!! 楽しそう!!」

 

 ラクスも、微笑んだ。

 

「まあ。素敵ですわね」

 

 ラキシスも、嬉しそうだった。

 

「ふふ。楽しみですね」

 

 ソープが、にこにこしている。

 

「いいねぇ! 花火!」

 

 カイエンも、笑った。

 

「ハハッ! そいつは楽しそうだナ!」

 

 Xiは、少し考えた。

 

 そして。

 

「……花火かぁ」

 

 嬉しそうに微笑んだ。

 

「……いいね!」

 

 その時。

 

「……!」

 

 すえぞうが、顔を上げた。

 

「……ヒ?」

 

 ラキシスが、優しく声を掛けた。

 

「ふふ。そうですよ、すえぞう。花火です」

 

 すえぞうは、少し考えた。

 

 そして。

 

「……ヒ、ツケル?」

 

「…………」

 

 Xiが、固まった。

 

「……え?」

 

 すえぞうは、得意げに胸を張った。

 

「……ヒ、ツケル!!」

 

 カイエンが、にやりと笑った。

 

「……おっ?」

 

 Xiが、嫌な予感を覚えた。

 

「……師匠?」

 

「……何だヨ?」

 

「……今、何考えた?」

 

 カイエンは、笑った。

 

「ハハッ! ドラゴンなんだから、火ぐらい吐けるだろ?」

 

「…………」

 

 Xiが、目を見開いた。

 

「師匠?!」

 

 ソープも、興味深そうだった。

 

「そういえば、すえぞうの火炎ブレスって、どのくらい細かく調節できるんだろうね?」

 

「陛下まで?!」

 

 ラキシスは、優しくすえぞうの頭を撫でた。

 

「ふふ。すえぞう、無理はしないでくださいね」

 

「うっす!」

 

 アウクソーが、静かに口を開いた。

 

「……マスター」

 

「……ん?」

 

「……花火は、普通に楽しみましょうね」

 

「……おう」

 

 バクスチュアルも、頷いた。

 

「安全、第一」

 

「……うん!」

 

 Xiは、深く頷いた。

 

「絶対に安全第一だからね!!」

 

 その時。

 

 すえぞうが、静かに胸を張った。

 

「…………」

 

 そして。

 

「……ココゾ!」

 

「…………」

 

 Xiが、固まった。

 

「……え?」

 

 カイエンも、固まった。

 

「……お?」

 

 すえぞうは、得意げに頷いた。

 

「……マツ!」

 

「…………」

 

 Xiは、ゆっくりとカイエンを見た。

 

「……師匠」

 

「……何だヨ」

 

「……すえぞう、さっきの教えを覚えてるみたいだよ」

 

 カイエンは、嬉しそうに笑った。

 

「ハハッ! いいじゃねぇかヨ!!」

 

 Xiは、深いため息をついた。

 

「……なんか、嫌な予感がする……」

 

 その横で。

 

 露伴が、スケッチブックを開いた。

 

「……ほう」

 

 泉が、振り向く。

 

「……先生?」

 

 露伴は、目を輝かせた。

 

「星団最強の存在、LEDドラゴンの幼生が、火炎ブレスを披露するかもしれないんだぞ?!」

 

「……えっ?!」

 

 泉が、目を丸くした。

 

「露伴センセ?! そんなものを旅館で披露して大丈夫なんですか?!」

 

 ネウロが、愉快そうに笑った。

 

「ククク……今夜も面白くなりそうだな」

 

 キラは、静かに旅程表を閉じた。

 

「…………」

 

 そして。

 

「……Xi」

 

「……何?」

 

「……念のため、花火の時はみんなでちゃんと見ていようね」

 

 Xiは、深く頷いた。

 

「……うん」

 

 そして。

 

「すえぞうの火炎ブレスで、旅館を燃やしたりしないようにね!!」

 

 すえぞうは、元気よく鳴いた。

 

「うっす!!」

 

 カイエンは、愉快そうに笑った。

 

「ハハッ! 大丈夫だろ!」

 

 アウクソーが、静かにカイエンを見た。

 

「……マスター」

 

「……ん?」

 

「……昨日のMBTの件を、お忘れでは?」

 

「…………」

 

 カイエンは、少し考えた。

 

 そして。

 

「だから、あれは撃ってねぇってばヨ!!」

 

 ……芦ノ牧温泉、二日目の夜。

 

 夕食ビュッフェは、無事に終了した。

 

 料理長自慢の大艦隊も、見事に戦線を維持した。

 

 しかし。

 

 星団最強のドラゴンの幼生が、今夜火炎ブレスを披露するかもしれない。

 

 その事実に。

 

 怪物強盗Xiは、ほんの少しだけ不安を覚えていた。

 

 ……そして。

 

 その夜には、もうひとつ。

 

 剣聖ダグラス・カイエンの安眠を巡る、重大な問題が控えているのだった。

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