守るべきもの、怒るべきもの、斬るべきもの、喰うべき謎 ――キラ、承太郎、カイエン、ネウロのごった煮会話劇 作:ギアっちょ
福島県会津若松市。
剣術合宿、三日目。
芦ノ牧温泉での二泊三日の滞在を終えた一行は、会津若松市内へと戻ってきていた。
午前中には、カイエンとソープによる最後の剣術稽古が行われた。
木剣からスパッドのスタンモードへと進み、Xiは二人の圧倒的な技量を改めて思い知らされた。
それでも、成果はあった。
初日には、足場を気にするだけで精いっぱいだった。
二日目には、相手の重心を読み、カイエンを半歩だけ動かせた。
そして三日目には、ソープに一度、真剣に剣を受けさせることができた。
もちろん、勝てたわけではない。
実力の差は、まだまだ途方もなく大きい。
それでも。
「……うん」
Xiは、少し嬉しそうに微笑んだ。
「……本当に、いい合宿だったなぁ」
その隣で、カイエンが笑った。
「ハハッ! オマエもよく頑張ったじゃねぇかヨ!」
「……ありがとう、師匠!」
ソープも、にこにこしている。
「ふふ。楽しかったねぇ!」
「……はい、陛下!」
そんな三人の様子を見て、キラ・ヤマトも微笑んでいた。
「……さて」
手元の旅程表を確認する。
「みんな、そろそろお昼にしようか」
「……おっ!」
その言葉に、猛烈に反応する者がいた。
桂木弥子である。
「お昼ご飯!!」
Xiが、振り向いた。
「……弥子ちゃん」
「はい?」
「……今朝、ビュッフェで相当食べてたよね?」
「はい!」
弥子は、満面の笑みだった。
「とっても美味しかったです!」
「……うん」
Xiは、頷いた。
「……それで、もうお昼?」
弥子は、不思議そうに首を傾げた。
「……え?」
そして。
「だって、朝ご飯とお昼ご飯は別ですから!!」
「…………」
Xiは、少し考えた。
「……まあ、そうなんだけど」
その横で、ラキシスも嬉しそうに微笑んだ。
「ふふ。最後のお食事も楽しみですね」
ソープが、頷いた。
「うん! 何を食べるの?」
キラは、旅程表を見た。
そして。
「今日は、会津名物の馬刺し定食を食べようと思っています」
「……馬刺し?」
ソープが、目を輝かせた。
「へぇ! 馬のお刺身なんだねぇ!」
カイエンも、嬉しそうだった。
「ほう。そいつは旨そうだナ!」
弥子が、元気よく頷いた。
「はい! 会津の馬刺しは、辛子味噌で食べるんですよ!」
ラクス・クラインが、微笑んだ。
「まあ。楽しみですわね」
すえぞうも、ぴょこんと顔を上げた。
「……ウマ?」
Xiが、笑った。
「……そう。馬だよ」
「ウマ!!」
すえぞうは、得意げに胸を張った。
カイエンが、大笑いした。
「ハハッ! 新しい言葉を覚えたナ!」
その横で。
岸辺露伴が、興味深そうに手帳を開いた。
「……なるほど。会津では馬肉を生で食べる文化があるのか」
泉京香が、嬉しそうに頷く。
「露伴センセ! 地元ならではの食文化ですね!」
「ああ。なかなか興味深いじゃあないか」
脳噛ネウロが、愉快そうに笑った。
「ククク……食べ物の話になると、貴様らは実に元気だな」
弥子が、振り向いた。
「何よ! 美味しいものを食べるのは楽しいでしょ!」
「我が輩は貴様ほど食欲に支配されておらんのでな、家畜」
「誰が家畜よ!!」
……こうして。
一行は、最後の会津名物を求めて、会津若松駅前の食堂へと向かった。
◆ 会津名物、馬刺し定食!
今回の昼食場所は、会津若松駅から歩いて行ける場所にある、昔ながらの食堂。
地元の料理を中心に提供している店で、馬刺し定食も人気の一品だった。
※物語上の架空の食堂です。
「いらっしゃいませ!」
店員が、笑顔で迎えてくれた。
キラは、予約していたことを伝えた。
「先ほどお電話した、キラです」
「ああ! お待ちしておりました!」
すえぞうについても、事前に相談済みである。
店側で用意してもらった広めの席に、一行が順番に腰を下ろしていく。
「……ふぅ」
Xiは、少し嬉しそうに店内を見渡した。
「……いい雰囲気だね」
カイエンも、頷いた。
「おう。こういう食堂、嫌いじゃねぇゼ」
ソープが、にこにこしている。
「うん。地元のお店って感じだねぇ!」
やがて。
注文していた馬刺し定食が、順番に運ばれてきた。
「お待たせいたしました!」
「……わぁぁ!!」
弥子が、目を輝かせた。
目の前には、鮮やかな赤色の馬刺し。
きれいに切り揃えられた赤身が、皿の上に並んでいる。
そして。
炊きたてのご飯。
味噌汁。
小鉢。
さらに、会津らしい辛子味噌。
「……おお」
カイエンが、感心したように頷いた。
「綺麗な色してるじゃねぇかヨ!」
露伴も、興味深そうに見つめている。
「……ほう。実に鮮やかな赤身だな」
泉が、微笑んだ。
「美味しそうですね、先生!」
店員が、食べ方を説明してくれた。
「こちらの辛子味噌を少しつけて、お召し上がりください」
Xiは、頷いた。
「……ありがとうございます」
そして。
一切れ、口に運んだ。
「…………」
少し噛む。
「……あっ」
柔らかい。
赤身ならではの旨味が、口の中に広がっていく。
脂っこさは少なく、後味もすっきりしていた。
「……うわぁ」
Xiは、嬉しそうに笑った。
「……これ、美味しいね!」
カイエンも、一切れ食べていた。
「……おっ!」
そして、にやりと笑う。
「旨ぇじゃねぇかヨ!!」
ソープも、嬉しそうだった。
「へぇ! 辛子味噌ともよく合うねぇ!」
ラキシスは、上品に馬刺しを口に運んだ。
「……まあ」
そして、微笑んだ。
「とても美味しいです」
ラクスも、頷いた。
「ええ。辛味が良いアクセントになっていますわね」
キラも、微笑んだ。
「うん。これはご飯が進むね」
その横で。
「……んんんっ!!」
弥子が、満面の笑みだった。
「美味しいぃぃ!!」
馬刺しを一切れ。
続いて、ご飯。
さらに、辛子味噌を少しつけて、もう一切れ。
「……んー!!」
弥子は、幸せそうだった。
「これ、ご飯にすっごく合いますね!!」
Xiは、少し笑った。
「……本当に美味しそうに食べるね」
「はい!」
弥子は、元気よく頷いた。
「会津に来て良かったです!!」
その様子を見ていたカイエンが、大笑いした。
「ハハッ! オマエはどこへ行っても、食い物が一番だナ!」
弥子は、少し考えた。
そして。
「……えへへ!」
嬉しそうに笑った。
……どうやら、否定するつもりはないらしい。
◆ 桂木弥子は、もう一人前食べたい
「……ごちそうさまでした!」
弥子が、両手を合わせた。
皿の上は、きれいに空になっている。
Xiは、少し安心した。
「……美味しかったね」
「はい!」
弥子は、満面の笑みだった。
そして。
「……すみませーん!」
「…………」
Xiが、ぴたりと止まった。
キラも、顔を上げた。
「……弥子ちゃん?」
弥子は、にっこり笑った。
「馬刺し定食、もう一人前お願いします!!」
「…………」
Xiは、少し考えた。
そして。
「……弥子ちゃん」
「はい?」
「……今朝の朝食ビュッフェ、覚えてる?」
「はい!」
「……いっぱい食べたよね?」
「はい!」
「……それで、もう一人前?」
弥子は、不思議そうだった。
「……え?」
そして。
「だって、馬刺しは脂が少なくて、さっぱりしてますから!」
「またその理論?!」
Xiが、思わず叫んだ。
キラは、苦笑した。
「……まあ、確かに脂は少ないけどね」
カイエンが、大笑いした。
「ハハハッ! いいじゃねぇかヨ! せっかく会津に来たんだからナ!」
「師匠!! また弥子ちゃんを援護して!!」
すると。
ラキシスも、店員へ声を掛けた。
「すみません。私も、もう少しいただけますか?」
「はい。ありがとうございます!」
Xiは、ゆっくりとソープを見た。
「……陛下」
「何?」
「……姫様も、馬刺しが気に入ったみたいだね」
「うん!」
ソープは、嬉しそうに笑った。
「ラキシス、美味しそうに食べてるねぇ!」
「…………」
Xiは、少し考えた。
「……まあ、いいか」
キラも、微笑んだ。
「ちゃんと食べられる量なら、いいと思うよ」
弥子が、嬉しそうに頷いた。
「もちろんです!」
そして。
追加の馬刺し定食が運ばれてくると、弥子は再び嬉しそうに箸を取った。
「……いただきまーす!!」
Xiは、そんな様子を眺めながら、少し笑った。
……初日のカツ丼三十人前。
二日目のおろし蕎麦。
そして、三日目の馬刺し。
今回の合宿は、剣術だけでなく。
会津の美味しいものを堪能する旅行でもあった。
……ただし。
弥子ちゃんにとっての「堪能する」は、普通の人とは少しばかり規模が違うのだった。
◆ 桂木弥子は、馬レバ刺しも食べたい
追加の定食も楽しみ終え、一行がそろそろ帰りの列車の時刻を確認しようとしていた頃。
「……あっ!」
弥子が、壁のお品書きを見つめた。
「……あれ?」
Xiが、振り向く。
「……どうしたの?」
弥子は、お品書きを指さした。
「ねえ、キラくん!」
「……ん?」
「馬刺しって、赤身だけじゃないんですね!」
「……ああ、そうみたいだね」
キラが、頷いた。
すると。
弥子の目が、輝いた。
「この『馬のレバ刺し』、食べたいです! 追加してもいいですか?!」
「…………」
キラが、固まった。
「……えっ?」
そして、手元のメモを確認した。
「……ちょっと待って。予算、大丈夫かな……」
Xiも、思わず口を挟んだ。
「……弥子ちゃん」
「はい?」
「……さっき、馬刺し定食をおかわりしたよね?」
「はい!」
「……まだ食べるの?」
弥子は、真剣な顔になった。
「……だって!」
そして。
「今、レバーのお刺身って、なかなか食べる機会がないじゃないですか!」
「……うん」
Xiは、頷いた。
「……まあ、そうかもしれないけど」
弥子は、続けた。
「せっかく会津に来たんですから!!」
「弥子ちゃん!! それ言ってたらキリがないよ!!」
カイエンが、大笑いした。
「ハハハッ! 確かにナ!」
「……師匠」
「何だヨ?」
「……今度は僕の味方?」
カイエンは、にやりと笑った。
「いや、馬のレバーってのも旨そうじゃねぇか!」
「結局そっち?!」
すると。
ラキシスも、お品書きを覗き込んだ。
「……まあ」
そして、微笑んだ。
「馬のレバーですか。私も少し興味があります」
「…………」
Xiが、固まった。
「……姫様?」
弥子が、嬉しそうに頷いた。
「ですよね!!」
ラキシスも、微笑んだ。
「ふふ。少しいただいてみたいですね」
ソープが、嬉しそうだった。
「じゃあ、みんなで一皿頼んで、分けて食べようか」
Xiは、少し考えた。
「……陛下まで」
その時。
キラが、顔を上げた。
「……うん」
旅費のメモを確認し終えたようだった。
「共通の予備費に少し余裕があるし、みんなで分ける一皿なら大丈夫だよ」
弥子が、ぱっと笑顔になった。
「やったぁ!!」
キラは、微笑んだ。
「ただし、追加はこれで最後にしようね。帰りの列車もあるから」
「はい!!」
弥子は、元気よく頷いた。
そして、店員へ声を掛けた。
「すみませーん! 馬のレバ刺し、一皿お願いします!」
店員が、笑顔で応じた。
「ありがとうございます。少々お待ちください」
少しして。
「お待たせいたしました。こちらが本日最後の一皿になります」
「…………」
弥子の目が、さらに輝いた。
「わぁ!! 間に合って良かったぁ!!」
Xiは、思わず笑ってしまった。
「……弥子ちゃん」
「はい?」
「……こういう時の運、本当に強いね」
「えへへ!」
ネウロが、愉快そうに笑った。
「ククク……食べ物に関する嗅覚だけは、相変わらず見事だな、家畜」
「だから誰が家畜よ!!」
やがて。
小皿に取り分けられた馬レバーを、一行が味わった。
「……んっ!」
弥子が、目を輝かせた。
「美味しい!! 赤身とはまた違いますね!!」
ラキシスも、微笑んだ。
「まあ。独特の食感ですね」
カイエンが、頷いた。
「ほう。こいつも悪くねぇナ!」
ソープも、興味深そうだった。
「へぇ。部位が違うと、こんなに変わるんだねぇ」
Xiは、少し笑った。
「……本当だね」
弥子は、名残惜しそうに空になった皿を見つめた。
そして。
「……はぁぁ……」
満足そうに息を吐いた。
「……美味しかったです!!」
キラも、微笑んだ。
「良かったね」
「はい!」
弥子は、元気よく頷いた。
そして。
「また会津に来たいです!!」
Xiは、少し笑った。
「……うん。また来たいね」
すると。
弥子は、続けた。
「次は、大内宿のネギ蕎麦も食べたいです!」
「……ああ」
「それから、厚切りの煮込みソースカツ丼も!」
「……うん」
「あと、今日の馬刺しも、また食べたいです!!」
「…………」
Xiは、ゆっくりと顔を上げた。
「……弥子ちゃん」
「はい?」
「もう次の食事計画が始まってる!!」
カイエンが、大笑いした。
「ハハハッ! 次の合宿も会津でいいんじゃねぇかヨ!」
「師匠?! もう次の合宿の話?!」
ソープが、嬉しそうに頷いた。
「うん! また来たいねぇ!」
ラキシスも、微笑んだ。
「ふふ。私も賛成です」
Xiは、少し考えた。
そして。
「……まあ」
嬉しそうに笑った。
「……また来るのも、いいかもしれないね」
……こうして。
剣術合宿の最後の昼食も、賑やかに終了した。
キラは、予定していた時間内に全員が食事を終えたことを確認した。
そして、会計も無事に完了。
追加注文はあったものの、予算内で収まった。
「……よし!」
キラは、ほっと息を吐いた。
「じゃあ、駅へ向かおうか」
「はーい!!」
一行は、店員に礼を言って食堂を後にした。
会津での最後の昼食。
それは、とても美味しく、そして少しだけ名残惜しいものになった。
◆ 帰りの列車、出発!
会津若松駅。
ホームには、郡山方面へ向かう列車が停車していた。
「……さて」
キラが、人数を確認する。
「みんな、忘れ物はない?」
「……大丈夫!」
Xiが、答えた。
ラクスも、微笑む。
「はい。皆さんのお荷物も揃っていますわ」
ラキシスが、すえぞうへ声を掛けた。
「すえぞう、お忘れ物はありませんか?」
「うっす!」
アウクソーが、荷物を確認した。
「すえぞうのお荷物も、問題ございません」
バクスチュアルも、頷く。
「確認、完了」
カイエンは、軽く伸びをした。
「……ふぅ」
そして、満足そうに笑った。
「いやぁ! 楽しかったナ!」
ソープも、嬉しそうだった。
「うん! また来たいねぇ!」
Xiも、微笑んだ。
「……そうだね」
やがて。
一行は、順番に列車へ乗り込んだ。
席に着き、荷物を整える。
キラが、全員の乗車を確認した。
そして。
列車が、ゆっくりと動き始めた。
ごとん。
ごとん。
窓の外には、会津の町並み。
やがて、田園風景。
さらに、その向こうには山々が広がっている。
「…………」
Xiは、窓の外を眺めていた。
少しだけ、名残惜しい。
三日間。
本当に、いろいろなことがあった。
初日のカツ丼三十人前。
芦ノ牧温泉。
旅館の豪華な吹き抜け。
剣術の稽古。
卓球大会。
おろし蕎麦。
塔のへつり。
そして、花火。
すえぞうの小さな炎。
……思い出すだけでも、笑顔になってしまう。
「……ふふ」
Xiは、小さく笑った。
すると。
「……Xi」
隣から、声がした。
「……ん?」
カイエンだった。
「……何笑ってんだヨ?」
「……いや」
Xiは、微笑んだ。
「……本当に楽しかったなぁって」
カイエンも、笑った。
「ハハッ! そうかヨ!」
「……うん」
Xiは、頷いた。
「……ありがとう、師匠」
カイエンは、にやりと笑った。
「……いいってことヨ!」
ソープも、嬉しそうに頷いた。
「ふふ。また一緒に行こうね!」
「……はい、陛下!」
Xiは、笑顔で答えた。
……これで。
会津合宿も、無事に終わり。
あとは、帰るだけ。
そう思っていた。
……その時までは。
◆ 剣聖は、シュペルターを壊していた
会津若松から郡山へ向かう列車内。
窓の外には、会津の田園風景が広がっていた。
キラは、旅程表を確認している。
ラクスとラキシスは、楽しそうに旅の思い出を話していた。
弥子は、駅で買ったお菓子を眺めている。
露伴は、スケッチブックに描いた塔のへつりの岩壁を確認していた。
……もっとも。
昨夜ネウロと遅くまで話し込んでいたせいか、時々、眠そうに欠伸をしていたが。
その横で、ネウロは実に涼しい顔だった。
さて。
Xiは、隣のカイエンと話していた。
「……しかし、師匠」
「……ん?」
「……今回は、生身の剣術訓練で良かったよ」
カイエンが、首を傾げた。
「……あ?」
Xiは、少し笑った。
「……だって、師匠がモーターヘッドまで持ち込んでたら、もっと大惨事だったかもしれないし」
「…………」
カイエンは、少し考えた。
そして。
「……まあナ」
軽く頷いた。
「持ってきたくても、無理だったからナ」
「…………」
Xiが、止まった。
「……え?」
カイエンは、何でもないことのように続けた。
「……そういや、ソープ」
「……ん?」
ソープが、振り向く。
「何、カイエン?」
「今度、シュペルター診てくんねぇか?」
「……シュペルター?」
「おう」
カイエンは、少し困ったように笑った。
「ちっとばっかし、壊しちまってヨ」
「…………」
Xiが、固まった。
キラも、顔を上げた。
「……え?」
そして、驚いたように尋ねた。
「……カイエンさんの乗るモーターヘッドを、壊せる相手がいるんですか?!」
カイエンは、少し考えた。
「……いや」
「……はい?」
「……そうじゃなくてナ」
ソープも、不思議そうだった。
「カイエン、何かやったの?」
「……おう」
カイエンは、頷いた。
そして。
「三分身して、MBTを三連撃したら、シュペルターの背骨シャフトが曲がっちまってナ」
「…………」
沈黙。
Xiが、ゆっくりと顔を上げた。
「…………」
キラも、固まっていた。
ソープは、少し考え込んでいる。
そして。
「はぁぁぁぁぁ?!」
Xiの叫び声が、車内に響いた。
慌てて口を押さえる。
「……あっ、ごめん!」
周囲の乗客に小さく頭を下げたあと、声を落としてカイエンへ詰め寄った。
「師匠!! 何その超弩級の離れ業?!」
カイエンは、不思議そうだった。
「……何だヨ」
「何だヨ、じゃないよ!!」
Xiは、指を折りながら続けた。
「まず、MBTって、生身で撃ってもモーターヘッドを破壊できるほどの剣技だよね?!」
「おう」
「それを、今度は巨大なモーターヘッドの機体を使って撃ったんだよね?!」
「……おう」
「しかも!」
Xiは、目を見開いた。
「三分身しながら、三連撃?!」
カイエンは、頷いた。
「……そうだナ」
「そりゃ、機体の背骨だって曲がるよ!!」
キラも、驚きを隠せなかった。
「……ちょっと待ってください」
「……おう?」
「そんな技を三連続で使って、相手はどうなったんですか?」
そして。
「それで相手を吹き飛ばしたんですか?!」
カイエンは、首を横に振った。
「……いや」
「……え?」
「相手の足場を壊して、体勢を崩すために使ったんだヨ」
「…………」
キラが、止まった。
Xiも、止まった。
カイエンは、平然と続けた。
「トドメは、その後だナ」
「…………」
Xiは、ゆっくりと目を閉じた。
そして。
「……師匠」
「……何だヨ」
「それだけの大技を三連続で使って、目的は足場を崩すことだったの?!」
「おう」
「相手を直接斬ったわけじゃなくて?!」
「……そうだって言ってんだろ」
「…………」
Xiは、少し考えた。
そして。
「規模がおかしいよ!!」
カイエンが、大笑いした。
「ハハハッ! そうかヨ!」
「笑い事じゃない!!」
その時。
アウクソーが、静かに口を開いた。
「……マスター」
「……おう?」
「シュペルターへの負荷について、あらかじめお考えにはならなかったのですか?」
「…………」
カイエンは、少し考えた。
「……いや、まあ」
「……はい」
「……大丈夫だと思ったんだヨ」
「…………」
アウクソーは、穏やかに微笑んだ。
「そうでございましたか」
そして。
「次回は、機体への負荷も考慮なさってください」
「……おう」
バクスチュアルも、小さく頷いた。
「三連撃。負荷、大キイ」
「……まあナ」
「シャフト、曲ガッタ。修理、必要」
「……おう」
Xiは、思わずため息をついた。
「……もう」
そして、ソープを見た。
「……陛下」
「何?」
「……修理できそう?」
ソープは、少し考えた。
「うーん。実物を見てみないと分からないけどね」
「……うん」
「背骨シャフトが曲がったなら、周辺の構造にも歪みが出ているかもしれないし」
「…………」
ソープは、カイエンを見た。
「帰ったら、ちゃんと診てみようか」
カイエンが、嬉しそうに笑った。
「おお! 助かるゼ!」
「うん!」
ソープは、にこにこしていた。
「でも、カイエン」
「……ん?」
「今度はもう少し、機体のことも考えて使ってね?」
「……おう」
「シュペルターだって、無理をすれば壊れちゃうんだから」
「……分かってるヨ」
「…………」
Xiは、カイエンを見た。
そして。
「……師匠」
「……何だ?」
「……ちょっと確認していい?」
「……おう」
Xiは、静かに尋ねた。
「そんな技を、初日の河原で生身のまま撃とうとしたんだよね?」
「…………」
カイエンが、ぴたりと止まった。
「……おい」
「……うん?」
「またその話かヨ?!」
Xiは、頷いた。
「だって、話を聞けば聞くほど怖くなるんだよ!!」
キラも、真剣な顔になった。
「……確かに、そんな威力の技を河原で使っていたら……」
Xiは、深く頷いた。
「河原どころか、芦ノ牧温泉の景観とか、川の流れにまで影響してたかもしれないよ?!」
「……おいおい」
カイエンは、苦笑した。
「そこまで派手にやるつもりはなかったゼ?」
「シュペルターの背骨シャフトを曲げた人の『加減する』は信用できないよ!!」
アウクソーが、静かに頷いた。
「ですから、あの時点でお止めいたしました」
Xiは、彼女を見た。
「……アウクソー」
「はい?」
「本当に、ありがとう!!」
アウクソーは、少し照れくさそうに微笑んだ。
「ふふ。お役に立てて何よりです」
ラキシスも、深く頷いた。
「アウクソー姉様のおかげで、皆様が安全に稽古を続けられましたね」
カイエンは、頭を掻いた。
「……ったく」
そして。
「だから、結局撃ってねぇだろうがヨ!!」
Xiは、即答した。
「撃たなかったから良かったんだよ!!」
カイエンは、しばらく黙っていた。
そして。
「……まあ」
小さく笑った。
「……そいつは、そうだナ」
……剣聖ダグラス・カイエン。
今回は、素直に認めた。
もっとも。
それで初日のMBT未遂事件が帳消しになるわけではない。
恐らく、今後もしばらく言われ続けることだろう。
◆ 一歩と、三連撃
しばらくして。
Xiは、少し考え込んでいた。
「…………」
カイエンが、声を掛ける。
「……どうした?」
「……いや」
Xiは、顔を上げた。
「……師匠」
「……おう?」
「……ちょっと、分かったことがあるんだ」
カイエンが、首を傾げた。
「……何だ?」
Xiは、ゆっくりと答えた。
「……相手を倒すために、必ずしも直接攻撃する必要はないんだね」
「…………」
カイエンは、Xiを見た。
「……おう」
「相手の立っている場所を変えたり、重心を崩したりすれば、そこに隙ができる」
「……そうだナ」
「……それって」
Xiは、微笑んだ。
「……今回、師匠が教えてくれたことと同じだよね?」
カイエンは、にやりと笑った。
「……ハハッ!」
そして。
「そういうことだヨ!」
Xiは、嬉しそうに頷いた。
「……うん!」
カイエンは、続けた。
「剣で相手を倒すってのは、ただ強く斬ることじゃねぇ」
「……うん」
「相手が動けねぇ状況を作れば、それだけで有利になる」
「……うん」
「相手の足場を崩すのも、重心を誘うのも、そのための手段だ」
Xiは、静かに頷いた。
「……なるほど」
カイエンが、笑った。
「今回の合宿で、少しは分かってきたみてぇだナ!」
「……うん!」
Xiは、嬉しそうに答えた。
そして。
「……でも、師匠」
「……何だヨ?」
「僕は木剣で地道に練習するからね?!」
「分かってるって!!」
キラが、思わず笑ってしまった。
ソープも、嬉しそうだった。
「ふふ。基本は同じでも、使い方は自分で考えないとね」
Xiが、頷いた。
「……はい!」
その時。
「……おいおいおいおい!!」
少し離れた席から、声がした。
露伴だった。
先ほどまで眠そうにしていたはずなのに、今は完全に目を輝かせている。
「……何だ、今の話は?!」
Xiが、振り向いた。
「……先生?」
露伴は、興奮していた。
「三分身して、MBTを三連撃だと?!」
カイエンが、ぴたりと止まった。
「……おい」
露伴は、手帳を開いた。
「それは是非とも詳しく聞きたいぞ!」
「…………」
「まず、三分身の際、身体の動きはどうなっていたんだ?!」
「…………」
「そして三連撃の間隔は?! それほどの技を連続で放つ際、何を意識していた?!」
「…………」
カイエンは、ゆっくりと目を閉じた。
そして。
「……キラ」
「……はい?」
「……次の合宿だけどヨ」
「……はい」
「やっぱり、承太郎を呼んでくれねぇか……?」
「…………」
Xiが、吹き出した。
「……師匠!」
露伴が、目を丸くした。
「おいおいおいおい!! どうしてそこで承太郎が出てくるんだ?!」
カイエンは、即答した。
「アイツなら、夜中まで質問攻めにしねぇだろうからナ!!」
「今は昼間だろう!!」
「昨日も一昨日も、昼間からずっと質問してただろうがヨ!!」
ネウロが、愉快そうに笑った。
「ククク……剣聖の弱点は、好奇心旺盛な漫画家だったというわけか」
カイエンが、じろりと睨んだ。
「テメェも同罪だヨ!!」
Xiは、お腹を抱えて笑ってしまった。
……こうして。
星団最強の剣聖は、帰りの列車でも取材攻勢にさらされることとなった。
ただし。
そのおかげでXiは、今回の稽古で学んだことを、改めて理解することができた。
強い力を持っていることより、何のために、どう使うか。
それが、何より大切なのだった。
……もっとも。
その教訓を実証するために、シュペルターの背骨シャフトまで曲げる必要があったかどうかは、また別の話である。
◆ 怪物強盗Xiは、お土産を忘れたくない
列車は、会津の山々を抜け、郡山へ向かっていた。
シュペルター破損事件の衝撃も、ようやく一段落した頃。
Xiは、窓の外を眺めながら、ふと何かを思い出した。
「…………」
少し考える。
そして。
「……あっ」
キラが、振り向いた。
「……どうしたの?」
Xiは、ゆっくりと一同を見渡した。
「……ところで」
「……うん?」
「誰か、ログナー司令にお土産買ってある……よね?」
「…………」
沈黙。
カイエンが、窓の外を見た。
ソープは、少し考えている。
露伴は、手帳を閉じた。
弥子は、お菓子を食べる手を止めた。
キラは、旅費のメモを見た。
「…………」
Xiは、全員を見た。
そして。
「おい!!」
カイエンが、振り向いた。
「……何だヨ」
「何だヨ、じゃないよ!!」
Xiは、思わず叫んだ。
「ログナー司令、陛下が三日間も合宿に行くのを許可してくれたんだよ?!」
ソープが、頷いた。
「うん!」
「……それなのに」
Xiは、少し頭を抱えた。
「お土産もなしで帰ったら、絶対に何か言われるよ!!」
カイエンが、笑った。
「ハハッ! 別にいいじゃねぇかヨ!」
「師匠は良くても、僕は気になるんだよ!!」
その時。
「……ご心配ありませんわ」
「…………」
一同が、振り向いた。
ラクスだった。
にっこり微笑んでいる。
「ちゃんと、会津の名物、あわまんじゅうを買ってあります」
「…………」
Xiが、目を丸くした。
キラも、顔を上げた。
そして。
「ラクス!! ありがとう!!」
キラが、心底ほっとした様子で言った。
Xiも、大きく息を吐いた。
「……良かったぁぁ……!」
ラクスは、優雅に微笑んだ。
「ふふ。せっかくの旅行ですもの。お留守番の皆様にも、会津の味を楽しんでいただきたくて」
ラキシスも、嬉しそうだった。
「まあ。素敵なお心遣いですね」
ソープが、にこにこしている。
「うん! ログナーも喜ぶねぇ!」
すると。
ラクスが、少し楽しそうに続けた。
「このあわまんじゅう、災難に遭わないように、という願いが込められているそうですわ」
「…………」
Xiが、ぴたりと止まった。
そして。
ソープを見た。
カイエンを見た。
もう一度、ソープを見た。
「…………」
深く頷いた。
「……うん」
ソープが、首を傾げた。
「……Xi?」
Xiは、静かに答えた。
「ログナー司令には、特に必要な御利益かもしれないね……」
「……え?」
ソープが、不思議そうに首を傾げた。
「どうして?」
「陛下がいるからだよ!!」
「えー?!」
カイエンが、大笑いした。
「ハハハッ!! 違ぇねぇナ!!」
ラキシスが、くすっと笑った。
「ふふ。ログナーも喜ぶことでしょう」
アウクソーも、穏やかに頷いた。
「ええ。とても良いお土産ですね」
バクスチュアルが、小さく呟いた。
「災難、避ケル。大切」
Xiは、深く頷いた。
「本当にね!!」
……ログナー司令。
日々、陛下のお目付け役として奔走する男。
その苦労を考えれば、あわまんじゅうは実に相応しいお土産だった。
ただし。
おまんじゅうを食べたからといって、ソープ様の突拍子もない思いつきまで防げるかどうかは分からない。
……Xiは、そのことについては考えないことにした。
◆ すえぞうから、アルバートへのお土産
「……それから」
ラクスが、もう一つの袋を取り出した。
「こちらは、アルバートさんへのお土産ですわ」
「……アルバートさん?」
Xiが、顔を上げた。
そして。
「……あっ!」
何かを思い出したように笑った。
「……そうか。アルバートさんも、今回はお留守番だったね」
キラも、頷いた。
「うん。コンパスで待ってくれてるね」
ラクスは、微笑んだ。
「ええ。こちらは、すえぞうさんからです」
「…………」
Xiが、目を丸くした。
「……すえぞうから?」
その時。
「ろっけんろー!!」
すえぞうが、元気よく鳴いた。
「…………」
カイエンが、笑った。
「ハハッ! 決まったナ!」
Xiは、少し笑った。
「……すえぞう、今のはいいところだったの?」
すえぞうは、得意げに胸を張る。
「うっす!!」
ラクスは、袋から小さな箱を取り出した。
そして。
中身を見せる。
「……あっ!」
弥子が、歓声を上げた。
「赤べこ!!」
それは、会津の郷土玩具。
赤い牛の姿をした、小さな置物だった。
丸みを帯びた身体。
愛嬌のある顔。
そして、軽く触れるとゆらゆらと揺れる頭。
「……へぇ!」
Xiは、嬉しそうに笑った。
「……可愛いね!」
ラクスも、微笑んだ。
「ふふ。すえぞうさんが、この赤べこをとても気に入られたようでしたので」
すえぞうが、嬉しそうに鳴いた。
「うっす!!」
そして。
赤べこの頭が、こくこくと揺れる。
すえぞうも、それに合わせて首を振った。
「……うっす! うっす!」
「…………」
弥子が、大笑いした。
「可愛いぃぃ!!」
ラキシスも、嬉しそうだった。
「ふふ。すえぞう、仲良しですね」
Xiも、思わず笑った。
「……本当だ!」
その時。
「……しかし」
露伴が、興味深そうに赤べこを見た。
「ドラゴンの幼生が、牛の郷土玩具を選んで、それを科学者へ贈るわけか」
泉が、首を傾げた。
「……旅のお土産、ですよね?」
露伴は、頷いた。
「そうだな」
そして。
「……そういえば、その科学者は、以前すえぞうを巨大なニワトリと勘違いしていたんだったな?」
Xiが、苦笑した。
「……うん」
カイエンが、大笑いした。
「ハハハッ! 今度は牛かヨ!」
Xiが、振り向いた。
「……師匠!」
「……何だ?」
「アルバートさん、ちゃんと赤べこが牛だって分かるよね?!」
カイエンは、少し考えた。
そして。
「……さあナ?」
「そこは分かってるって言ってよ!!」
ソープが、楽しそうに笑った。
「ふふ。アルバートも喜ぶと思うよ」
Xiは、少し安心した。
「……うん。そうだね」
そして。
すえぞうを見た。
「……いいお土産を選んだね、すえぞう」
すえぞうは、嬉しそうに胸を張った。
「うっす!!」
Xiは、静かに微笑んだ。
かつて、アルバートはすえぞうの身体構造に強い興味を示し、研究したがっていた。
その際には、本人の意思や安全を尊重するよう、みんなで止めたこともあった。
だが、今回は違う。
研究材料でも、実験のための試料でもない。
すえぞうが自分で選んだ、純粋な旅のお土産。
アルバートも、きっと喜んでくれるだろう。
「……うん」
Xiは、満足そうに頷いた。
「……いいね。こういうの」
バクスチュアルが、静かに微笑んだ。
「すえぞう、自分デ、選ンダ」
Xiも、微笑み返した。
「……うん!」
そして。
「……自分で選ぶって、大事だね」
バクスチュアルは、小さく頷いた。
「ウン。大切」
Xiは、嬉しそうに笑った。
……剣術合宿の最後に。
こんなところでも、同じことを感じられるとは思わなかった。
◆ 怪物強盗Xiは、また旅に出たい
列車は、山々の間を走り続けていた。
窓の外には、会津の美しい景色が流れていく。
やがて。
Xiは、もう一度窓の外を眺めた。
「…………」
楽しかった三日間。
本当に、いろいろなことがあった。
もちろん、剣術の稽古は大変だった。
カイエンにも、ソープにも、何度も負けた。
自分がまだまだ未熟であることを、思い知らされた。
だが。
今まで見えていなかったものが、少しずつ見えるようになった。
足場。
重心。
隙。
相手の動き。
そして、自分の判断。
どれも、今回の合宿で教わったことだった。
「…………」
Xiは、少し微笑んだ。
自分が、これからどんな道を選ぶのか。
まだ、分からない。
騎士になるのか。
アウト・ミラージュをどうするのか。
あるいは、別の道を歩むのか。
それは、これから考えればいい。
だが。
今は、一つだけ分かっている。
自分の意思で選んだ今回の合宿は、本当に楽しかった。
それだけで、十分だった。
「……ねえ、師匠」
Xiが、声を掛けた。
「……ん?」
カイエンが、振り向いた。
「……何だヨ?」
Xiは、微笑んだ。
「……また、みんなで旅行に行きたいね」
カイエンは、にやりと笑った。
「……おう!」
そして。
「次は、もうちっと厳しく鍛えてやるゼ!」
「……うん!」
Xiは、嬉しそうに頷いた。
だが。
「……ただし、師匠」
「……何だ?」
「次もMBTは禁止だからね?!」
「まだ言うのかヨ!!」
ソープが、楽しそうに笑った。
「ふふ。じゃあ、次はもっと高度な剣術を教えようか」
「……はい!」
Xiが、笑顔で答えた。
その横で。
露伴が、顔を上げた。
「……ほう。次の合宿か」
カイエンが、ぴたりと止まった。
「…………」
露伴は、興味深そうだった。
「それなら、僕もぜひ取材を……」
「次は承太郎を呼べって言っただろうがヨ!!」
「おいおいおいおい!! 何で僕が外されるんだ?!」
カイエンは、即答した。
「オマエと同じ部屋じゃ、寝られねぇからだヨ!!」
露伴は、少し考えた。
そして。
「……なら、部屋を別にすればいいだろう?」
「…………」
カイエンが、止まった。
Xiも、止まった。
キラが、顔を上げた。
「……あっ」
少し考える。
「……確かに、それなら問題ありませんね」
Xiも、頷いた。
「……うん。そうだね」
カイエンは、しばらく黙っていた。
そして。
「……まあ」
少し考えた。
「……そいつは、そうだナ」
露伴は、満足そうだった。
「ふん。最初からそうすればいいじゃあないか」
ネウロが、愉快そうに笑った。
「ククク……次も我が輩と貴様で同室にするか?」
露伴は、目を輝かせた。
「……それも面白そうじゃあないか!」
カイエンが、即答した。
「オマエら二人で、勝手に徹夜してろヨ!!」
一同が、大笑いした。
その笑い声に混じって。
「……ろっけんろー!!」
すえぞうが、元気よく鳴いた。
カイエンは、嬉しそうに笑った。
「ハハッ! すえぞうも、次の合宿が楽しみみてぇだナ!」
Xiも、笑った。
「……うん!」
そして、少し考えた。
「……でも、すえぞう」
「……うっす?」
「……今の、ここぞって時だった?」
すえぞうは、少し考えた。
「…………」
そして。
「……ココゾ!」
「…………」
カイエンが、満足そうに頷いた。
「ヨシ!!」
Xiは、思わず吹き出した。
「師匠!! もう何でもアリになってない?!」
笑い声が、再び車内に広がった。
……もちろん、周囲のお客様に迷惑にならない程度に。
やがて、列車は郡山へと近づいていく。
会津での三日間も、いよいよ終わりを迎えようとしていた。
だが。
Xiには、まだ知らないことが一つあった。
それは。
旅行費用を負担したログナー司令が、合宿終了後に何を要求してくるのか。
……そのことである。
剣術の稽古。
温泉。
美味しい食事。
そして、楽しい旅行。
全てを満喫したXiとカイエン。
しかし。
本当の意味で合宿が終わるまでには、まだ少しだけ、やるべきことが残っていた。