守るべきもの、怒るべきもの、斬るべきもの、喰うべき謎 ――キラ、承太郎、カイエン、ネウロのごった煮会話劇   作:ギアっちょ

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ダグラス・カイエンは修理報告書を書きたくない

◆ 剣聖ダグラス・カイエンは、まだ合宿を終えられない

 

 会津若松での二泊三日の剣術合宿を終えて、翌日。

 

「……ふぁぁぁ……」

 

 大きな欠伸をする男がいた。

 

 星団最強の騎士。

 

 剣聖ダグラス・カイエンである。

 

「……ったく」

 

 肩を回しながら、ぼやいた。

 

「旅行から帰ってきたってのに、まだ仕事が残ってやがるとはナ……」

 

 その隣では、Xiが苦笑していた。

 

「……師匠」

 

「……何だヨ?」

 

「昨日、研修日報を出したばかりだもんね」

 

「おう!」

 

 カイエンは、大きく頷いた。

 

「オマエも書いたろ? あんな長ぇのをヨ!」

 

「……うん」

 

「しかも、オレは一度書き直しだゼ?」

 

「……最初の四行が短すぎたんだよ」

 

「間違ったことは書いてなかっただろうがヨ!!」

 

 Xiは、思わず笑ってしまった。

 

「……あははは!」

 

 そして。

 

「……でも、師匠」

 

「……ん?」

 

「今日の仕事は、報告書を書くことだけじゃないんだよね?」

 

「……おう」

 

 カイエンは、少しだけ表情を引き締めた。

 

「シュペルターの修理だナ」

 

「……うん」

 

 Xiも、頷いた。

 

 会津からの帰りの列車で発覚した、衝撃の事実。

 

 カイエンは以前、愛機シュペルターで戦闘を行った際、

 三分身からのMBT三連撃という超絶剣技を繰り出した。

 

 その結果。

 

 シュペルターの背骨シャフトが曲がってしまった。

 

 しかも。

 

 その三連撃は、敵に直接とどめを刺すためのものではなかった。

 

 相手の足場を崩し、体勢を乱すための技だったという。

 

「…………」

 

 Xiは、しばらく考えた。

 

 そして。

 

「……師匠」

 

「……何だヨ?」

 

「……やっぱり、何回聞いてもすごい話だよね」

 

 カイエンは、にやりと笑った。

 

「ハハッ! そうかヨ!」

 

「……うん」

 

 Xiは、頷いた。

 

「……すごいっていうか」

 

 少し考える。

 

「機体が壊れるほどの大技を三連撃して、

 それでも決め技じゃないって、どういう戦い方なの?!」

 

 カイエンは、大笑いした。

 

「ハハハッ! 勝ちゃいいんだヨ!」

 

「シュペルターの修理が必要になってるでしょ!!」

 

 その時。

 

「……二人とも」

 

 背後から、落ち着いた声がした。

 

 振り向くと。

 

 ログナー司令が立っていた。

 

「……そろそろ出発するぞ」

 

 Xiが、顔を上げた。

 

「……司令!」

 

「本日はA.K.D.側の整備格納庫で、シュペルターの点検を行う」

 

「……うん」

 

「カイエン」

 

「……おう?」

 

「お前には、破損した時の状況を正確に説明してもらう」

 

「……分かってるヨ」

 

 ログナーは、静かに頷いた。

 

「それから、修理報告書も必要だ」

 

「…………」

 

 カイエンの動きが、止まった。

 

「……あ?」

 

 ログナーは、平然と続けた。

 

「今回の破損原因、修理内容、今後の再発防止について記録する」

 

「…………」

 

 Xiが、少し笑った。

 

「……師匠」

 

「……何だヨ」

 

「また報告書だね」

 

 カイエンは、天井を仰いだ。

 

「何で剣聖が、こんなに書類書かなきゃならねぇんだヨ!!」

 

 ログナーは、即答した。

 

「機体を壊したからだ」

 

「…………」

 

 カイエンは、何も言い返せなかった。

 

 Xiは、思わず吹き出した。

 

「……あはははは!!」

 

 ……こうして。

 

 剣聖ダグラス・カイエン。

 

 会津合宿終了後、二日目。

 

 今度は修理報告書という強敵に挑むこととなった。

 

◆ ソープ様は、シュペルターを診察したい

 

 A.K.D.側の整備格納庫。

 

 巨大な整備設備が並ぶ建屋の奥に、一騎のモーターヘッドが静かに佇んでいた。

 

 シュペルター。

 

 剣聖ダグラス・カイエンの愛機である。

 

 巨大な騎体。

 

 美しく整えられた外装。

 

 そして、見る者を圧倒する存在感。

 

「…………」

 

 Xiは、思わず息を呑んだ。

 

「……うわぁ」

 

 カイエンが、嬉しそうに笑った。

 

「ハハッ! どうだヨ?」

 

「……すごいね」

 

 Xiは、機体を見上げた。

 

「……これが、師匠のシュペルター……」

 

 ソープも、嬉しそうに眺めていた。

 

「ふふ。やっぱりいい騎体だねぇ!」

 

 ラキシスが、微笑んだ。

 

「はい、ソープ様」

 

 アウクソーも、静かに頷いた。

 

「マスターの愛機でございますから」

 

 バクスチュアルも、機体を見上げた。

 

「大キイ。立派」

 

 Xiは、少し考えた。

 

「……でも」

 

 首を傾げる。

 

「……外から見る限り、壊れてるようには見えないね」

 

 カイエンが、頷いた。

 

「おう。別に外装をぶっ壊したわけじゃねぇからナ」

 

 ソープも、微笑んだ。

 

「うん。問題は内部構造の方だね」

 

 そう言って、整備端末を操作する。

 

 モニターに、シュペルターの構造図が表示された。

 

「……さて」

 

 ソープは、少し真面目な顔になった。

 

「まずは、状態を確認しようか」

 

 整備スタッフが、頷いた。

 

「はい!」

 

 機体の外部診断が始まる。

 

 各部の状態を読み取り、内部構造を確認していく。

 

「…………」

 

 Xiは、興味深そうにモニターを見ていた。

 

「……へぇ」

 

 画面に、背骨シャフトの形状が表示される。

 

 その一部が、わずかに歪んでいた。

 

「……あっ」

 

 Xiが、目を丸くした。

 

「……ここ?」

 

「うん」

 

 ソープが、頷いた。

 

「本来は、ここの軸が正しい位置に収まっているんだけどね」

 

 画面上に、正常な状態の輪郭が重ねて表示される。

 

 その輪郭から、実際のシャフトが外れていた。

 

「……なるほど」

 

 Xiは、頷いた。

 

「……本当に曲がってる」

 

 カイエンが、肩をすくめた。

 

「だから、そう言ってんだろ?」

 

「……うん」

 

 Xiは、少し考えた。

 

「……でも、師匠」

 

「……何だ?」

 

「何をしたら、こんな太い部品が曲がるの?!」

 

「MBT三連撃だヨ!!」

 

「知ってるよ!! だから怖いんだってば!!」

 

 ソープが、くすっと笑った。

 

「ふふ。でも、Xiの疑問はもっともだよ」

 

 そして、モニターを指さした。

 

「こういう構造部材には、ただ一方向から力がかかるわけじゃないんだ」

 

「……うん」

 

「剣を振る時の姿勢変化や、騎体を加速させる力。それに、反動を受け止める力もある」

 

 Xiは、頷いた。

 

「……なるほど」

 

「それが短い間隔で重なると、設計上の限界を超えることがあるんだよ」

 

 ソープは、別の画面を呼び出した。

 

 そこには、今回の戦闘時に記録された負荷の推移が表示されていた。

 

 ひとつ。

 

 大きな山が立ち上がる。

 

 そして。

 

 続けざまに、ふたつ。

 

 さらに大きな山が現れた。

 

「…………」

 

 Xiは、しばらく画面を見ていた。

 

 そして。

 

「……陛下」

 

「何?」

 

「……これ」

 

「うん?」

 

「一発目の反動が収まりきる前に、二発目と三発目が来てるんじゃない?!」

 

 ソープは、嬉しそうに笑った。

 

「そう! よく気づいたね!」

 

「…………」

 

 Xiは、ゆっくりとカイエンを見た。

 

「……師匠」

 

「……何だヨ」

 

「シュペルターが可哀想だよ!!」

 

「おい!!」

 

 アウクソーが、静かに頷いた。

 

「……Xiさんのおっしゃることも、もっともです」

 

 カイエンは、振り向いた。

 

「……アウクソー?!」

 

「マスター。騎体にも、限界はございます」

 

「……おう」

 

「今回は、その限界を超えてしまったのでしょう」

 

「…………」

 

 カイエンは、少し気まずそうに頭を掻いた。

 

「……まあ、そういうことだナ」

 

 ソープは、モニターを見ながら続けた。

 

「とりあえず、曲がったシャフトは交換した方がいいね」

 

「……おう」

 

「それから、周辺の支持部分や接続部にも歪みがないか、詳しく調べよう」

 

「……頼むゼ」

 

 Xiが、少し安心した。

 

「……直せそう?」

 

 ソープは、微笑んだ。

 

「うん。今のところ、修理はできそうだよ」

 

「……良かった!」

 

 カイエンも、嬉しそうだった。

 

「おお! さすがソープ!」

 

 ソープは、にこにこしている。

 

「でも、ちゃんと検査が終わるまでは、無理に動かしちゃ駄目だよ」

 

「……おう」

 

「特に、試しにMBTを撃ったりしないでね?」

 

「撃たねぇヨ!!」

 

 Xiが、思わず口を挟んだ。

 

「師匠、前科があるからね!!」

 

「オマエもいつまで言ってんだヨ!!」

 

 ……なお。

 

 この時点でログナー司令は、既に修理報告書の記入項目を確認していた。

 

 剣聖の苦難は、まだ始まったばかりである。

 

◆ ログナー司令は、破損理由を知りたい

 

 点検作業の合間。

 

 格納庫に設けられた打ち合わせスペース。

 

 ログナーは、カイエンの向かいに座っていた。

 

 机の上には、シュペルターの点検結果。

 

 そして、破損経緯報告書。

 

「……さて」

 

 ログナーが、静かに口を開いた。

 

「カイエン」

 

「……おう?」

 

「機体の破損については、おおむね状況が分かった」

 

「……そうか」

 

「三分身からのMBT三連撃。その際に発生した過大な負荷によって、

 背骨シャフトが変形した」

 

「……おう」

 

 カイエンは、頷いた。

 

「そういうことだナ」

 

 ログナーも、頷いた。

 

「……なるほど」

 

 そして。

 

 少し考えた。

 

「……しかし、カイエン」

 

「……何だヨ?」

 

「一つ、疑問がある」

 

「……おう?」

 

 ログナーは、静かに尋ねた。

 

「お前がそこまでするほどの強敵だったのか?」

 

「…………」

 

 カイエンが、少し考えた。

 

 そして。

 

「……まあ」

 

 肩をすくめる。

 

「……いいじゃねぇかヨ」

 

「……何?」

 

 カイエンは、にやりと笑った。

 

「たまには、思いっきり大技を使いたい時だってあるだろ?」

 

「…………」

 

 沈黙。

 

 ログナーは、黙ってカイエンを見つめた。

 

 その横で。

 

 Xiが、固まっていた。

 

「…………」

 

 そして。

 

 慌ててカイエンへ身を寄せた。

 

「……師匠! 師匠!」

 

「……あ?」

 

 Xiは、声を落とした。

 

「そこは、嘘でも『そうしなきゃ勝てなかった』とか言っといた方が……!!」

 

「……おう?」

 

 その時。

 

「Xi」

 

「…………」

 

 Xiが、ぴたりと止まった。

 

 ログナーだった。

 

「……はい?」

 

 ログナーは、静かに言った。

 

「虚偽の報告を勧めるな」

 

「聞こえてた?!」

 

「当然だ」

 

「…………」

 

 Xiは、少し考えた。

 

 そして。

 

「……ごめんなさい」

 

 素直に頭を下げた。

 

「……そうだよね。嘘を書いちゃ駄目だよね」

 

 ログナーは、頷いた。

 

「そういうことだ」

 

 カイエンが、大笑いした。

 

「ハハハッ!! Xi、オマエまで怒られてやんの!!」

 

 Xiが、振り向いた。

 

「誰のために言ったと思ってるの?!」

 

 ログナーは、深く息を吐いた。

 

「……カイエン」

 

「……おう?」

 

「では、確認しよう」

 

 そして。

 

「その戦闘で、敵の足場を崩す必要があったことは理解した」

 

「……おう」

 

「だが、三連撃である必要はあったのか?」

 

「…………」

 

 カイエンが、少し考えた。

 

「……まあ」

 

「……うむ」

 

「……一撃でも、ある程度は崩せたかもしれねぇナ」

 

「…………」

 

 Xiが、頭を抱えた。

 

「師匠ぉぉぉ!!」

 

 ログナーは、さらに尋ねた。

 

「では、なぜ三度も撃った?」

 

 カイエンは、少し考えた。

 

 そして。

 

「……一撃目で足場を崩して」

 

「……うむ」

 

「二撃目で、逃げる方向を塞いで」

 

「……なるほど」

 

「三撃目で、完全に体勢を崩したんだヨ」

 

「…………」

 

 ログナーは、頷いた。

 

「……つまり、段階的に相手の動きを制限したわけだな」

 

「おう!」

 

 カイエンは、嬉しそうだった。

 

「そういうことだ!」

 

 Xiが、顔を上げた。

 

「……なるほど」

 

 そして。

 

「……師匠、ちゃんと考えて使ってたんだね」

 

 カイエンは、にやりと笑った。

 

「当たり前だろうがヨ!」

 

 ログナーは、静かに頷いた。

 

「戦術的な意図は理解した」

 

「……おう」

 

「実際に、その後の攻撃で敵を倒したことも事実だ」

 

「……おう」

 

 そして。

 

「だが、その三連撃が唯一の手段だったかは、別問題だな」

 

「…………」

 

 カイエンは、少し考えた。

 

「……まあナ」

 

 ログナーは、続けた。

 

「お前ほどの騎士ならば、ほかにも手段があったのではないか?」

 

「…………」

 

 少しの沈黙。

 

 そして。

 

「……ああ」

 

 カイエンは、頷いた。

 

「……そりゃ、あっただろうナ」

 

 Xiが、ため息をついた。

 

「……やっぱり」

 

 ログナーは、静かに言った。

 

「ならば、報告書にはそのことも記載しろ」

 

「……おう?」

 

「戦術上の意図はあった。しかし、使用した技は機体の限界を超え、結果として破損が発生した」

 

「……おう」

 

「そして、ほかの戦術を選択できた可能性もある」

 

「…………」

 

 カイエンは、少し考えた。

 

 そして。

 

「……分かったヨ」

 

 ログナーは、頷いた。

 

「それでいい」

 

 Xiも、少し安心した。

 

「……良かった」

 

 ところが。

 

 ログナーは、続けた。

 

「……それと、カイエン」

 

「……何だ?」

 

「『たまには大技を使いたかった』という発言についても、

 使用判断の経緯として記録しておけ」

 

「…………」

 

 カイエンが、固まった。

 

「……あ?」

 

 ログナーは、平然としていた。

 

「実際にそう考えていたのだろう?」

 

「……いや、まあ」

 

「ならば、隠す必要はない」

 

「…………」

 

 Xiが、思わず吹き出した。

 

「……あははは!」

 

 カイエンは、頭を抱えた。

 

「正直に言うんじゃなかったゼ!!」

 

 ログナーは、即答した。

 

「正直に報告するのは当然だ」

 

「そうじゃなくてヨ!!」

 

 ……どうやら。

 

 剣聖ダグラス・カイエン。

 

 剣の腕前は星団最強だが、言い訳の技術については未熟だった。

 

◆ ソープ様は、壊れた理由を研究したい

 

 その頃。

 

 シュペルターの整備作業は、順調に進んでいた。

 

 機体の内部構造を確認した結果、背骨シャフトの変形に加え、周辺の支持部分にも調整が必要なことが判明した。

 

「……うーん」

 

 ソープは、モニターを眺めていた。

 

「なるほどねぇ」

 

 ラキシスが、隣から覗き込む。

 

「ソープ様。いかがでしょうか?」

 

「うん。修理そのものは大丈夫そうだよ」

 

 ソープは、微笑んだ。

 

「でも、思っていたより負荷が大きかったみたいだね」

 

 画面には、戦闘時の負荷を再現した計算結果が表示されていた。

 

 一撃目。

 

 二撃目。

 

 三撃目。

 

 そのたびに、シャフトに大きな負荷がかかっている。

 

「……へぇ」

 

 Xiが、興味深そうに眺めた。

 

「……やっぱり、すごい力なんだね」

 

「うん!」

 

 ソープは、頷いた。

 

「特に、三連撃のタイミングが問題だったみたい」

 

「……タイミング?」

 

「そう」

 

 ソープは、画面を指さした。

 

「一撃目の負荷が残っているうちに、二撃目が来ているんだ」

 

「……うん」

 

「さらに、その影響が残っているところへ三撃目」

 

「…………」

 

 Xiは、少し考えた。

 

「……つまり」

 

「うん?」

 

「……無理が重なっちゃったんだね」

 

「そういうこと!」

 

 ソープは、嬉しそうに笑った。

 

 そして。

 

「……でも、面白いねぇ!」

 

「…………」

 

 Xiが、ぴたりと止まった。

 

「……陛下?」

 

 ソープは、目を輝かせていた。

 

「この負荷のかかり方、興味深いなぁ!」

 

「……うん?」

 

「普通の剣撃とは、全然違うんだよ!」

 

「…………」

 

 Xiは、少し嫌な予感がした。

 

「……陛下」

 

「何?」

 

「……まさか」

 

 慎重に尋ねる。

 

「……もう一回、三連撃を試したいとか言わないよね?」

 

 ソープは、きょとんとした。

 

「……え?」

 

 そして。

 

「ああ! 大丈夫、大丈夫!」

 

「……本当?」

 

「うん!」

 

 ソープは、にこにこしている。

 

「実機をまた壊しちゃ困るから、計算とシミュレーションで調べるよ!」

 

「…………」

 

 Xiは、深く息を吐いた。

 

「……良かったぁ……!」

 

 その時。

 

 カイエンが、近づいてきた。

 

「……おう、ソープ」

 

「……あっ、カイエン!」

 

「どうだヨ?」

 

「うん。修理できそうだよ!」

 

「おお!」

 

 カイエンは、嬉しそうだった。

 

「助かるゼ!」

 

 ソープは、続けた。

 

「それでね、今回の負荷を調べてみたんだけど」

 

「……おう?」

 

「次に同じような戦術を使うなら、もっと機体への負荷を減らす方法を考えた方がいいかもしれないね」

 

「……おっ!」

 

 カイエンの目が、輝いた。

 

「そいつはいいナ!」

 

 ソープも、嬉しそうだった。

 

「うん! 例えば、剣撃のタイミングを少し変えるだけでも……」

 

「ほう!」

 

「それから、機体の制御を……」

 

「……おお!」

 

 Xiが、固まった。

 

「…………」

 

 そして。

 

「ちょっと待って!!」

 

 二人が、振り向いた。

 

 ソープ「……何?」

 

 カイエン「……何だヨ?」

 

 Xiは、二人を交互に見た。

 

「何で早速、次の三連撃の相談を始めてるの?!」

 

 ソープは、少し不思議そうだった。

 

「……だって」

 

「……うん?」

 

「……壊れないように改良した方がいいでしょう?」

 

「……それはそうだけど!」

 

 Xiは、少し考えた。

 

「……そもそも、そこまでの大技を三連続で使う必要があったのか、って話をしてたんだよ!」

 

 カイエンが、笑った。

 

「ハハッ! まあ、使える技は多い方がいいだろ?」

 

「師匠!!」

 

 その時。

 

「……陛下」

 

 静かな声がした。

 

 ログナーだった。

 

「……あっ、ログナー!」

 

 ソープが、嬉しそうに振り向いた。

 

 ログナーは、少しだけ疲れた顔をしていた。

 

「……まずは、今回の修理を終わらせましょう」

 

 ソープは、頷いた。

 

「うん! そうだねぇ!」

 

「将来の改良については、その後で検討すればよろしいかと」

 

「……うん!」

 

 ログナーは、ほっと息を吐いた。

 

 そして。

 

 カイエンを見た。

 

「……カイエン」

 

「……何だヨ?」

 

「お前の報告書は、まだ終わっていないぞ」

 

「そっちも忘れてなかったのかヨ!!」

 

 Xiが、大笑いした。

 

「あはははは!!」

 

 ……A.K.D.整備格納庫。

 

 技術者たちは、実に有意義な議論を行っていた。

 

 ただし。

 

 ログナー司令だけは、議論の方向が危険な方へ進まないよう、常に注意を払わなければならなかった。

 

◆ 剣聖は、機体にも限界があることを学ぶ

 

 修理作業は、慎重に進められた。

 

 変形した背骨シャフトを取り外し、状態を詳しく確認する。

 

 交換用の部材についても、ソープと整備スタッフが規格を確認した。

 

 さらに、周辺の接続部分も点検していく。

 

「……うーん」

 

 Xiは、少し感心していた。

 

「……すごいね」

 

 ソープが、振り向く。

 

「……何が?」

 

「……モーターヘッドって、ただ壊れた部品を交換すれば終わりじゃないんだね」

 

 ソープは、嬉しそうに頷いた。

 

「うん!」

 

 そして。

 

「例えば、曲がった部品を交換しても、周りの部品まで歪んでいたら、また無理がかかっちゃうからね」

 

「……ああ」

 

「だから、ちゃんと全体の状態を確認して、必要なところを調整するんだ」

 

 Xiは、頷いた。

 

「……なるほど」

 

 カイエンも、腕を組んで見守っていた。

 

「…………」

 

 しばらくして。

 

 アウクソーが、静かに声を掛けた。

 

「……マスター」

 

「……おう?」

 

「今回の修理が完了しましたら、しばらくは慎重な運用をお願いいたします」

 

「……おう」

 

「シュペルターは、マスターの剣技に耐えられるよう設計された機体ではありますが」

 

「……おう」

 

「無制限に負荷をかけてもよいわけではございません」

 

「…………」

 

 カイエンは、少し考えた。

 

 そして。

 

「……まあ、そうだナ」

 

 アウクソーは、穏やかに微笑んだ。

 

「はい」

 

 その時。

 

 Xiが、口を開いた。

 

「……師匠」

 

「……何だ?」

 

「……今回の合宿で、僕に教えてくれたよね」

 

「……おう?」

 

「……どんなに強い力があっても、どう使うかを考えないといけないって」

 

 カイエンは、少し笑った。

 

「……おう」

 

 Xiは、続けた。

 

「……それって、モーターヘッドでも同じなんじゃない?」

 

「…………」

 

 カイエンは、Xiを見た。

 

 そして。

 

「……ハハッ!」

 

 小さく笑った。

 

「……そうだナ」

 

 Xiも、微笑んだ。

 

「……うん」

 

 カイエンは、改めてシュペルターを見上げた。

 

 巨大な騎体。

 

 長年、自分と共に戦ってきた愛機。

 

 どれほど強大な力を持っていても、限界はある。

 

 そして。

 

 その限界を見誤れば、機体を傷めてしまう。

 

「…………」

 

 カイエンは、静かに頷いた。

 

「……悪かったナ、シュペルター」

 

 Xiが、少し驚いた。

 

「……師匠?」

 

 カイエンは、機体を見上げたままだった。

 

「……次は、もうちっと考えて使ってやるヨ」

 

 アウクソーが、微笑んだ。

 

「……はい、マスター」

 

 ソープも、嬉しそうだった。

 

「うん。きっとシュペルターも喜ぶよ!」

 

 Xiは、少し笑った。

 

「……そうだね」

 

 そして。

 

「……でも、師匠」

 

「……何だ?」

 

「……今の言葉、修理報告書にも書いたら?」

 

「…………」

 

 カイエンが、止まった。

 

「……あ?」

 

 Xiは、嬉しそうに笑った。

 

「……再発防止策になるでしょ?」

 

「…………」

 

 カイエンは、少し考えた。

 

 そして。

 

「……おお」

 

 にやりと笑った。

 

「そいつはいいナ!」

 

 Xiも、頷いた。

 

「……うん!」

 

 カイエンは、嬉しそうだった。

 

「ハハッ! じゃあ、そう書くか!」

 

 その時。

 

 ログナーが、静かに口を開いた。

 

「……カイエン」

 

「……何だ?」

 

「『もう少し考えて使う』では、具体性が足りんぞ」

 

「…………」

 

 カイエンが、固まった。

 

「……またかヨ?!」

 

 ログナーは、平然としていた。

 

「どのような条件下で使用を控えるのか。使用する場合、機体への負荷をどう評価するのか。そこまで記載しろ」

 

「…………」

 

 Xiが、思わず笑った。

 

「……師匠」

 

「……何だヨ」

 

「……司令、厳しいね」

 

「オマエが言い出したんだろうがヨ!!」

 

 ……こうして。

 

 剣聖ダグラス・カイエンは、機体への負荷を考えることの大切さを学んだ。

 

 ただし。

 

 それを文章で説明することについては、まだまだ修行が必要だった。

 

◆ ソープ様は、修理を完了させたい

 

 それから数日。

 

 A.K.D.整備格納庫では、シュペルターの修理が進められていた。

 

 変形した背骨シャフトは交換され、周辺の支持部品も調整された。

 

 各部の位置関係も、入念に確認される。

 

 そして。

 

「……よし!」

 

 ソープが、嬉しそうに顔を上げた。

 

「ひとまず、修理作業は完了だね!」

 

 整備スタッフが、頷いた。

 

「はい!」

 

 カイエンが、嬉しそうに笑った。

 

「おお! 助かるゼ!」

 

 ソープは、微笑んだ。

 

「でも、最後に動作確認をしないとね」

 

「……おう」

 

 カイエンは、頷いた。

 

「……じゃあ、ちっと動かしてみるか」

 

 すると。

 

「……マスター」

 

 アウクソーが、静かに声を掛けた。

 

「……おう?」

 

「動作確認は、整備用の制限出力でお願いいたします」

 

「……分かってるヨ」

 

 バクスチュアルも、頷いた。

 

「安全、第一」

 

 Xiも、深く頷いた。

 

「……そうだね」

 

 ソープは、にこにこしていた。

 

「うん。今回は、剣を振る必要もないからね」

 

「……おう」

 

 カイエンは、少しだけ残念そうだった。

 

「……そうかヨ」

 

 Xiが、ぴたりと止まった。

 

「……師匠?」

 

「……あ?」

 

「……何で残念そうなの?」

 

「……別に?」

 

「…………」

 

 Xiは、深く息を吐いた。

 

「……まあ、いいけど」

 

 こうして、動作確認が始まった。

 

 シュペルターの各部を、整備用の低出力で慎重に動かしていく。

 

 脚部。

 

 腕部。

 

 胴体。

 

 そして、背骨シャフト周辺の動き。

 

「…………」

 

 ソープは、モニターを確認していた。

 

 アウクソーも、各部の状態を監視している。

 

 バクスチュアルは、記録を整理していた。

 

 やがて。

 

「……うん!」

 

 ソープが、嬉しそうに笑った。

 

「いい感じだね!」

 

 カイエンが、顔を上げた。

 

「……おっ?」

 

「うん。動作は正常だよ!」

 

 アウクソーも、頷いた。

 

「支持部分の挙動にも、異常は認められません」

 

 バクスチュアルも、小さく頷いた。

 

「確認、完了」

 

 Xiが、嬉しそうに笑った。

 

「……良かった!」

 

 ソープは、頷いた。

 

「うん! これで修理は完了だね!」

 

 カイエンが、大きく息を吐いた。

 

「……いやぁ!」

 

 そして、嬉しそうに笑った。

 

「助かったゼ、ソープ!!」

 

 ソープも、にこにこしている。

 

「ふふ。どういたしまして!」

 

 ラキシスが、優雅に微笑んだ。

 

「ソープ様、お疲れさまでございました」

 

「うん!」

 

 カイエンは、シュペルターを見上げた。

 

「……また頼むゼ」

 

 その声には、いつもより少しだけ穏やかな響きがあった。

 

 Xiも、静かに微笑んだ。

 

 ……修理が終わった。

 

 シュペルターも、無事に元の姿へ戻った。

 

 そして。

 

 カイエンも、機体を大切に使うことの意味を少し理解したようだった。

 

 もちろん。

 

 剣聖が今後一切、規格外の大技を使わなくなるという保証はない。

 

 ……むしろ、その可能性は低いかもしれない。

 

 だが、少なくとも。

 

 今回の経験は、無駄ではなかった。

 

◆ 剣聖は、また報告書を書く

 

 シュペルターの修理が完了した翌日。

 

 ログナーの執務室。

 

「……さて」

 

 ログナーが、机に座っていた。

 

 その向かいには、カイエンとXi。

 

 そして、ソープ。

 

 机の上には、今回の修理に関する書類が並んでいた。

 

「……まず」

 

 ログナーが、口を開いた。

 

「シュペルターの修理作業は、無事に完了した」

 

「……おう!」

 

 カイエンが、嬉しそうに頷いた。

 

 ログナーは、続けた。

 

「ソープ様、整備スタッフの皆様、ありがとうございました」

 

 ソープは、にこにこしていた。

 

「うん! 直って良かったねぇ!」

 

 ログナーも、頷いた。

 

「はい」

 

 そして。

 

「……カイエン」

 

「……おう?」

 

「お前の修理報告書も、確認した」

 

「……おっ!」

 

 カイエンが、嬉しそうに笑った。

 

「どうだヨ?」

 

 ログナーは、書類を見た。

 

 そして。

 

「……今回は、よく書けている」

 

「…………」

 

 カイエンが、目を丸くした。

 

「……おお?」

 

 ログナーは、続けた。

 

「破損原因、修理内容、今後の運用上の注意点。いずれも具体的だ」

 

「……おう」

 

「事実関係も、整備記録と一致している」

 

「…………」

 

 カイエンは、嬉しそうだった。

 

「……ハハッ!」

 

 そして。

 

「ようやく終わったナ!!」

 

 Xiも、嬉しそうに笑った。

 

「……良かったね、師匠!」

 

「おう!」

 

 ログナーは、静かに頷いた。

 

「これで、シュペルターの修理に関する書類は受理する」

 

「……おお!」

 

 カイエンが、大きく息を吐いた。

 

「……いやぁ!」

 

 そして。

 

「やっと終わったゼ!!」

 

 Xiも、嬉しそうだった。

 

「……うん!」

 

 ソープも、にこにこしている。

 

「ふふ。良かったねぇ!」

 

 ところが。

 

 ログナーは、続けた。

 

「……なお」

 

「…………」

 

 カイエンが、ぴたりと止まった。

 

「……あ?」

 

 ログナーは、机の上に別の書類を置いた。

 

「修理費用についても、別途処理が必要になる」

 

「…………」

 

 Xiが、顔を上げた。

 

「……修理費?」

 

「そうだ」

 

 ログナーは、頷いた。

 

「交換部材、整備作業、関連する点検費用。これらを適切に計上しなければならん」

 

「……ああ」

 

 Xiは、頷いた。

 

「……そうだよね」

 

 ログナーは、続けた。

 

「今回の会津合宿の旅行費用とは、もちろん別の会計だ」

 

「……うん」

 

 カイエンも、頷いた。

 

「……まあ、そうだナ」

 

 そして。

 

 少し考えた。

 

「……で?」

 

 ログナーが、顔を上げた。

 

「……何だ?」

 

 カイエンは、少し笑った。

 

「……今回の修理費、誰が払うんだヨ?」

 

「…………」

 

 ログナーは、静かに答えた。

 

「破損時の任務内容と使用判断を確認したうえで、適切に処理する」

 

「……おう」

 

「少なくとも、今回の温泉旅行の費用に混ぜる話ではない」

 

「…………」

 

 Xiが、思わず笑った。

 

「……うん。それはそうだね」

 

 カイエンも、頷いた。

 

「……まあナ」

 

 そして。

 

 ログナーは、最後に書類を整えた。

 

「……よし」

 

 静かに頷く。

 

「シュペルター修理の件は、これで一区切りだ」

 

「…………」

 

 カイエンが、嬉しそうに笑った。

 

「おお! やっと終わったナ!!」

 

 Xiも、大きく頷いた。

 

「……うん!」

 

 そして。

 

「これで、本当に会津合宿も終わりだね!!」

 

「…………」

 

 ログナーが、静かに顔を上げた。

 

「……Xi」

 

「……はい?」

 

「何を言っている?」

 

「…………」

 

 Xiが、固まった。

 

「……え?」

 

 ログナーは、別の書類を取り出した。

 

 そして。

 

「旅行費用の最終精算が残っているだろう」

 

「…………」

 

 Xiは、ゆっくりと目を閉じた。

 

 そして。

 

「まだ終わらないの?!」

 

 カイエンが、大笑いした。

 

「ハハハハッ!! 今度はオマエの番だナ!!」

 

「師匠!! 自分の書類が終わったからって!!」

 

 ログナーは、静かに続けた。

 

「キラ・ヤマトから、費用の整理が終わったとの連絡を受けている」

 

「……うん」

 

「参加者や所属組織ごとの負担額について、これから確認する予定だ」

 

「…………」

 

 Xiは、少し考えた。

 

「……ああ」

 

 そして。

 

「……弥子ちゃんの探偵事務所とか?」

 

「そうだ」

 

「……露伴先生の取材費とか?」

 

「それも含まれる」

 

「…………」

 

 Xiは、ゆっくりと顔を上げた。

 

 そして。

 

「……司令」

 

「……何だ?」

 

「露伴先生、ちゃんと払ってくれるかな……?」

 

 ログナーは、少し考えた。

 

 そして。

 

「……それは、本人と編集部に確認する必要があるな」

 

「…………」

 

 Xiは、嫌な予感がした。

 

 ……非常に、嫌な予感がした。

 

 そして。

 

「……まさか」

 

 小さく呟いた。

 

「まだ、ひと騒動ある……?」

 

 カイエンが、大笑いした。

 

「ハハハッ!! ありそうだナ!!」

 

 ソープも、嬉しそうに笑った。

 

「ふふ。最後まで賑やかだねぇ!」

 

 Xiは、思わず頭を抱えた。

 

「陛下!! そこは嬉しそうにしないで!!」

 

 ……こうして。

 

 剣聖ダグラス・カイエンの修理報告書騒動は、無事に終了した。

 

 シュペルターも、修理完了。

 

 カイエンも、ようやく一息つくことができた。

 

 だが。

 

 会津合宿は、まだ終わらない。

 

 次に待っているのは。

 

 旅行費用の精算。

 

 各所への請求。

 

 そして。

 

 岸辺露伴と編集部による、取材費負担をめぐる攻防戦!!

 

 ……今度の戦場は、会議室。

 

 武器は、請求書。

 

 そして。

 

 最強の攻撃手段は、正論である。

 

◆ その頃、漫画家と編集者は

 

 同じ頃。

 

 岸辺露伴は、会津で描いたスケッチを整理していた。

 

「……ふむ」

 

 塔のへつり。

 

 大川の渓谷。

 

 剣聖ダグラス・カイエンの稽古風景。

 

 そして、すえぞうの六本指。

 

「……実に面白い」

 

 露伴は、満足そうだった。

 

「これだけの資料が手に入るとはな」

 

 その横で、泉京香が微笑んだ。

 

「露伴センセ、本当に良い取材旅行でしたね!」

 

「ああ」

 

 露伴は、頷いた。

 

「漫画家にとって、貴重な経験だったよ」

 

「はい!」

 

 泉も、嬉しそうだった。

 

 その時。

 

 こんこん。

 

 扉を叩く音。

 

「……失礼します」

 

 キラが、顔を出した。

 

「露伴先生、泉さん。少しよろしいですか?」

 

「……ん?」

 

 露伴が、振り向く。

 

「何だい?」

 

 キラは、微笑んだ。

 

「今回の会津旅行の費用について、確認したいことがあるんです」

 

「……ほう」

 

 露伴は、頷いた。

 

「費用?」

 

「はい。取材目的でのご参加でしたので、その負担分について相談させていただきたくて」

 

「……ああ」

 

 露伴は、あっさりと答えた。

 

「編集部で払ってくれ」

 

「…………」

 

 泉京香の笑顔が、止まった。

 

「……え?」

 

 露伴は、平然としている。

 

「取材費だろう?」

 

「…………」

 

 泉は、ゆっくりと露伴を見た。

 

 そして。

 

「露伴センセ?!」

 

 露伴は、不思議そうだった。

 

「……何だ?」

 

「編集部で払うなんて、そんな話、聞いてませんよ?!」

 

「おいおいおいおい! 今回の取材成果を見てくれよ!」

 

「……それは分かりますけど!」

 

「星団最強の剣聖の稽古風景だぞ?!」

 

「……はい!」

 

「しかも、六本指のドラゴンの観察記録まである!」

 

「……はい!」

 

「これほど有意義な取材旅行が、ほかにあると思うか?!」

 

「だからって、編集長の承認もなく取材費を請求しないでください!!」

 

「…………」

 

 露伴は、少し考えた。

 

 そして。

 

「……仕方ないな」

 

「……はい?」

 

「じゃあ、編集長に取材成果を見せて、相談しよう」

 

「……それなら分かりますけど……」

 

 キラも、ほっと息を吐いた。

 

「ありがとうございます。それでは、正式な負担先が決まってから精算しましょう」

 

「……ああ」

 

 露伴は、頷いた。

 

 そして。

 

「……ところで」

 

「……はい?」

 

 泉が、顔を上げた。

 

 露伴は、スケッチブックを開いた。

 

「今回の資料を整理していたら、カイエンにまだ聞きたいことが出てきたんだ」

 

「…………」

 

 泉が、固まった。

 

「……露伴センセ?」

 

「追加取材をお願いできないかな」

 

「…………」

 

 キラも、少し困ったように笑った。

 

「……カイエンさん、もう休みたいと思いますよ?」

 

 露伴は、少し考えた。

 

「……そうか」

 

 そして。

 

「……では、また次の機会にしよう」

 

「……はい!」

 

 泉が、ほっと息を吐いた。

 

 ……ところが。

 

 露伴は、続けた。

 

「次の合宿に参加すれば、自然に話を聞けるかもしれないしな」

 

「…………」

 

 泉が、再び固まった。

 

「露伴センセ?!」

 

 ……どうやら。

 

 剣聖ダグラス・カイエンの安眠を脅かす存在は、まだ健在だった。

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