守るべきもの、怒るべきもの、斬るべきもの、喰うべき謎 ――キラ、承太郎、カイエン、ネウロのごった煮会話劇   作:ギアっちょ

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桂木弥子はクリスと街を歩く

◆ 1.皇帝陛下のモーニング

 

地球滞在、二日目。

 

朝の陽光が、ホテルのレストランに差し込んでいた。

 

大きな窓からは、地球の街並みが見渡せる。

 

テーブルには、焼きたてのパン、卵料理、新鮮な野菜、そして果物が美しく盛り付けられていた。

 

ダイ・グ「……おはよう、みんな」

 

Xi「あっ! おはよう、ダイ・グさん!」

 

弥子「おはようございまーす!」

 

クリスティン「皆さん、おはようございます」

 

泉「おはようございます。お二人とも、よくお休みになれましたか?」

 

ダイ・グ「はい。おかげさまで」

 

クリスティン「とても快適でした」

 

Xi「よかったぁ!」

 

弥子「じゃ、さっそく朝ご飯にしよう!」

 

Xi「……弥子ちゃん。まず席に着こうよ」

 

弥子「……あっ!」

 

泉「ふふふ」

 

一同は、笑いながら席に着いた。

 

◆

 

今回の宿泊先は、以前Xiたちも利用したことのあるホテル。

 

そのレストランは、ヘキサクス社と提携していた。

 

ただし、ヘキサクス製品をそのまま提供するわけではない。

 

料理長が食品としての安全性を確認し、必要に応じて調理法を工夫したうえで、独自の料理として完成させているのである。

 

Xiも、以前このホテルで食事をした経験があった。

 

Xi「……ここの料理、本当に美味しいんだよね」

 

ダイ・グ「そうなんだ」

 

Xi「うん! ちょっと変わった食材を使うこともあるけど……」

 

クリスティン「……変わった食材?」

 

Xi「……あっ」

 

弥子「……Xi?」

 

Xi「……いや、安全性はちゃんと確認されてるから大丈夫!」

 

泉「……Xi君。最初から警戒させるような説明は控えましょうね」

 

Xi「……はーい」

 

その時。

 

「おお! 皆さん、お揃いで!」

 

明るい声が響いた。

 

Xi「……あっ!」

 

弥子「ジョーイ係長!」

 

現れたのは、ヘキサクス社のジョーイ係長だった。

 

ジョーイ「いやぁ! 今日はフィルモア帝国から大切なお客様がお越しやそうで!」

 

ダイ・グ「お世話になります。ダイ・グです」

 

クリスティン「クリスティン・ビィと申します」

 

ジョーイ「これはご丁寧に! どうぞ、ゆっくりしていってください!」

 

Xi「……ジョーイ係長、今日はどうしたの?」

 

ジョーイ「いやな、せっかくの機会やから、ちょっとええもんを紹介しよう思いまして!」

 

Xi「…………」

 

弥子「……?」

 

ジョーイ「とびっきりの高級珈琲があるんですわ!」

 

Xi「…………」

 

ジョーイ「ブラック・アイボリー、いう珈琲なんですけどな!」

 

Xi「…………」

 

Xi「……あ」

 

弥子「……あっ!」

 

ダイ・グ「……?」

 

クリスティン「……?」

 

◆

 

ジョーイ「実はこの珈琲、製法がちょっと珍しゅうございましてな!」

 

Xi「……ジョーイ係長」

 

ジョーイ「なんや?」

 

Xi「……あの、ちゃんと説明してあげてね?」

 

ジョーイ「もちろんや!」

 

ジョーイは、誇らしげに説明を始めた。

 

ジョーイ「象が珈琲の実を食べましてな。その消化過程を経た豆を回収し、きちんと洗浄、乾燥、焙煎して仕上げるんですわ!」

 

ダイ・グ「…………」

 

クリスティン「…………」

 

ジョーイ「独特の製法から生まれる、非常に希少な珈琲でしてな!」

 

ダイ・グ「……なるほど」

 

クリスティン「……象、ですか?」

 

ジョーイ「そうなんです!」

 

ダイ・グ「……地球には、そんな珈琲があるんだね」

 

Xi「……ダイ・グさん?」

 

ダイ・グ「……?」

 

Xi「……抵抗、ない?」

 

ダイ・グ「ふふ。珍しいとは思うけれど、きちんと食品として加工されているんだろう?」

 

ジョーイ「もちろんです! 正式に流通している商品を、適切に管理しておりますで!」

 

ダイ・グ「それなら、せっかくだから飲んでみたいな」

 

Xi「……おお!」

 

クリスティン「……私も、少し興味があります」

 

ジョーイ「そらよかった! では、お二人にお出ししましょう!」

 

弥子「私も!」

 

Xi「……弥子ちゃんも?」

 

弥子「うん! でも、おかわりのパンもお願いしまーす!」

 

Xi「朝からそっちも?!」

 

ジョーイ「ハハハッ! もちろんですわ!」

 

◆

 

やがて、小さなカップに珈琲が運ばれてきた。

 

芳醇な香りが、テーブルに広がる。

 

ダイ・グ「……いい香りだね」

 

クリスティン「……はい」

 

二人は、静かにカップを手に取った。

 

そして、一口。

 

ダイ・グ「…………」

 

クリスティン「…………」

 

Xi「……どう?」

 

ダイ・グ「……美味しい」

 

Xi「……!」

 

ダイ・グ「とても飲みやすいね。香りもいい」

 

クリスティン「……はい。思っていたよりも、ずっと柔らかい味わいです」

 

ジョーイ「おおきに! 気に入っていただけて何よりですわ!」

 

Xi「……よかったぁ」

 

泉「……Xi君。珈琲を飲んでいただくだけで、随分緊張していたんですね」

 

Xi「……いや、だって」

 

ダイ・グ「……ふふ」

 

Xi「……?」

 

ダイ・グ「昨日もそうだったけれど、Xi君は本当に僕たちのことを気遣ってくれるんだね」

 

Xi「…………」

 

Xi「……まあ、その……」

 

クリスティン「ありがとうございます、Xiさん」

 

Xi「……うん!」

 

少し照れたように笑った。

 

その時。

 

ジョーイ「ちなみに、世界にはジャコウネコが関わる珈琲もありましてな!」

 

ダイ・グ「……ジャコウネコ?」

 

クリスティン「……猫、でしょうか?」

 

ジョーイ「猫という名前ですけど、分類上はちょっと違うんですわ!」

 

Xi「…………」

 

弥子「……へぇ!」

 

ジョーイ「こちらも、動物が食べた珈琲の実を……」

 

Xi「ジョーイ係長!! 今日は象の珈琲だけで十分だから!!」

 

ジョーイ「……なんや、興味ないんか?」

 

Xi「興味はあるけど! まず朝ご飯を食べさせてあげて!!」

 

ダイ・グ「……ふふふっ!」

 

クリスティン「……ふふっ!」

 

こうして、フィルモア皇帝とハイランダーは、地球の珍しい珈琲を楽しんだ。

 

……もっとも。

 

弥子「すみませーん! パン、もう一皿お願いしまーす!」

 

Xi「弥子ちゃん!! 今ので三皿目だよ?!」

 

弥子「朝ご飯は一日の基本じゃない!」

 

泉「……桂木さん。お昼もありますからね?」

 

弥子「……はーい!」

 

皇帝陛下よりも、朝食のパンのほうが気になる女子高生が一人いたことは、言うまでもない。

 

◆ 2.クリスティンはお洋服を選ぶ

 

朝食を終えた一行は、泉の案内で市内の大型ショッピングモールへ向かった。

 

今日は、弥子とクリスティンの買い物を中心にした観光の日である。

 

弥子「クリス! 今日はいっぱい見て回ろうね!」

 

クリスティン「はい。よろしくお願いします!」

 

泉「まずは、こちらのお店からいかがでしょう?」

 

明るく開放的な店内には、季節の衣類が並んでいた。

 

クリスティン「……まあ」

 

弥子「どう? 可愛い服がいっぱいでしょ?」

 

クリスティン「……はい。地球の服は、本当に色々な種類があるのですね」

 

泉「デザインだけでなく、着心地や動きやすさも重視されていますからね」

 

クリスティン「……なるほど」

 

弥子「クリス、こういうの似合いそう!」

 

弥子が手に取ったのは、淡い色合いのブラウスだった。

 

派手すぎず、上品なデザイン。

 

クリスティン「……素敵ですね」

 

弥子「でしょ?!」

 

クリスティン「……ですが、私には少し可愛らしすぎるのでは……」

 

弥子「そんなことないよ!」

 

泉「私もお似合いになると思いますよ」

 

クリスティン「……そうでしょうか」

 

弥子「試着してみようよ!」

 

クリスティン「……えっ?」

 

弥子「せっかくだし!」

 

クリスティン「……はい!」

 

◆

 

しばらくして。

 

試着室のカーテンが開いた。

 

クリスティン「……あの」

 

弥子「…………!」

 

泉「……まあ!」

 

Xi「……おお!」

 

そこには、いつもの騎士としての装いとは違う、柔らかな印象のクリスティンが立っていた。

 

弥子「すっごく似合ってる!!」

 

クリスティン「……あ、ありがとうございます」

 

泉「とても素敵ですよ。色合いもよくお似合いです」

 

Xi「……うん! 姉弟子、すごくいいよ!」

 

クリスティン「……Xiさんまで……」

 

少し、頬が赤くなった。

 

そこへ。

 

ダイ・グ「……クリス?」

 

クリスティン「…………!」

 

ダイ・グ「……その服、選んだんだね」

 

クリスティン「……はい。弥子さんが勧めてくださって……」

 

ダイ・グ「……そうなんだ」

 

彼は、少しだけ目を細めた。

 

ダイ・グ「……とても似合っているよ」

 

クリスティン「…………!」

 

ダイ・グ「……クリス?」

 

クリスティン「……あ、ありがとうございます……!」

 

弥子「…………」

 

Xi「…………」

 

泉「……ふふ」

 

弥子「……Xi」

 

Xi「……何?」

 

弥子「……今の、聞いた?」

 

Xi「……聞いた」

 

弥子「……あま……」

 

Xi「まだお店の中だからね?!」

 

弥子「……っ!」

 

慌てて口を押さえた。

 

泉「ふふふっ」

 

◆

 

その後も、弥子とクリスティンは楽しそうに店内を見て回った。

 

弥子「じゃあ、次はこれ!」

 

クリスティン「……あっ、こちらも素敵ですね!」

 

弥子「でしょ?!」

 

クリスティン「……弥子さん」

 

弥子「ん?」

 

クリスティン「……お洋服を選ぶだけでも、こんなに楽しいものなのですね」

 

弥子「……え?」

 

クリスティン「……いえ。普段は、あまりこういう機会がありませんので」

 

弥子「……そっか」

 

少し考えてから。

 

弥子「……じゃあ、今日はいっぱい楽しもう!」

 

クリスティン「…………」

 

弥子「クリスが好きなもの、いっぱい探そうよ!」

 

クリスティン「……はい!」

 

弥子「……それにさ」

 

クリスティン「……?」

 

弥子「今度フィルモアに遊びに行った時、クリスが選んだ服を見せてもらうのも楽しそう!」

 

クリスティン「…………」

 

弥子「どう?」

 

クリスティン「……ふふ」

 

そして。

 

クリスティン「……はい。約束です!」

 

二人は、嬉しそうに笑い合った。

 

◆

 

少し離れたところでは。

 

ダイ・グ「……楽しそうだね」

 

Xi「……うん」

 

ダイ・グ「……クリスがああしてお洋服を選んでいるところ、あまり見たことがなかったな」

 

Xi「……そうなんだ」

 

ダイ・グ「……うん」

 

Xi「……でも、似合ってたでしょ?」

 

ダイ・グ「……ああ」

 

少しだけ、微笑む。

 

ダイ・グ「……とても」

 

Xi「…………」

 

Xi「……ふふ」

 

ダイ・グ「……?」

 

Xi「……なんでもない!」

 

ダイ・グ「……ふふ?」

 

Xi(……兄弟子も、なかなか分かりやすいなぁ)

 

もちろん、本人には言わなかった。

 

それも、弟弟子としての思いやりである。

 

◆ 3.桂木遥、現る

 

昼前。

 

一行は、ショッピングモールの別のフロアへ移動していた。

 

弥子「次は、こっちの雑貨屋さん!」

 

クリスティン「はい!」

 

泉「その後、お昼のお店へ向かいましょうか」

 

Xi「……うん!」

 

ダイ・グ「楽しみだね」

 

その時だった。

 

「あら?」

 

聞き覚えのある声。

 

弥子「……?」

 

「あらあら! 弥子じゃない!」

 

弥子「……あっ!」

 

振り返ると。

 

買い物袋を提げた女性が、にこにこと微笑んでいた。

 

桂木遥。

 

弥子の母親である。

 

弥子「お母さん!」

 

遥「まあ! 今日はお友達と一緒なの?」

 

弥子「うん!」

 

Xi「…………!」

 

遥「あら、Xi君も!」

 

Xi「……こ、こんにちは!」

 

遥「こんにちは。今日は賑やかねぇ」

 

弥子「フィルモアから遊びに来てくれた、クリスちゃんとダイ・グさん!」

 

クリスティン「初めまして。クリスティン・ビィと申します」

 

ダイ・グ「ダイ・グです。弥子さんにはお世話になっています」

 

遥「まあまあ! 遠いところから、ようこそ!」

 

遥は、嬉しそうに頭を下げた。

 

遥「弥子がお世話になっております」

 

クリスティン「いえ! 私のほうこそ、とても親切にしていただいて……」

 

弥子「えへへ!」

 

遥「まあ! それはよかったわ!」

 

和やかな挨拶が続いた。

 

……ここまでは、何の問題もなかった。

 

遥「……そうだ!」

 

Xi「…………!」

 

遥「せっかく遠くから遊びに来てくださったんですもの」

 

弥子「…………!」

 

遥「お昼ご飯は、私が腕をふるって……」

 

Xi「お気持ちだけいただきます!!」

 

遥「……あら?」

 

泉「……あっ! 実は、もうお昼のお店を予約しておりまして!」

 

Xi「そうなんです!!」

 

弥子「うん! もう決まってるんだ、お母さん!」

 

遥「まあ、それは残念ねぇ」

 

Xi「……ははは……」

 

遥「じゃあ、今度いらした時には、ぜひご馳走させてくださいね!」

 

クリスティン「……あ、ありがとうございます」

 

ダイ・グ「お気遣い、ありがとうございます」

 

遥「いいえ! 皆さん、どうぞ楽しんでいらしてね!」

 

弥子「うん! お母さんも買い物楽しんでね!」

 

遥「ありがとう。じゃあ、またね!」

 

遥は、にこにこと手を振りながら去っていった。

 

◆

 

しばらくして。

 

ダイ・グ「……それにしても」

 

Xi「……?」

 

ダイ・グ「弥子さんのお母さんの好意を無下にして、悪いことをしたね」

 

クリスティン「……そうですね。今からでも戻って、お言葉に甘えてもよろしいのでは?」

 

Xi「…………」

 

泉「…………」

 

弥子「…………」

 

クリスティン「……?」

 

弥子「……クリスちゃん」

 

クリスティン「はい?」

 

弥子「うちの母の手料理は、テロ行為なんです。」

 

ダイ・グ「そんなに?!」

 

クリスティン「……えっ?!」

 

弥子「クリスちゃんに、そんなものを食べさせるわけにはいきません!」

 

クリスティン「……ですが、とてもお優しそうな方でしたよ?」

 

弥子「うん! 優しいお母さんだよ!」

 

クリスティン「……では、どうして……?」

 

弥子「優しさと料理の腕は別問題だから!」

 

Xi「弥子ちゃん!! そこは本当に正論だね!!」

 

泉「……お母様のお気持ちは、とてもありがたいんですけれどね」

 

ダイ・グ「…………」

 

クリスティン「…………」

 

Xi「……まあ、詳しくはあとでカイエン師匠にでも訊いてください」

 

ダイ・グ「……カイエン先生に?」

 

クリスティン「……先生まで、ご存じなのですか?」

 

Xi「……うん。色々と」

 

ダイ・グ「…………」

 

クリスティン「…………」

 

Xi「剣の腕前と、食卓での生存能力は別だからね。」

 

クリスティン「…………!」

 

ダイ・グ「…………!」

 

弥子「……そういうこと!」

 

ダイ・グ「……なるほど」

 

Xi「……納得しちゃった?!」

 

ダイ・グ「……いや、カイエン先生の名前まで出されたら、気にはなるよ」

 

Xi「……だよね」

 

クリスティン「……今度、お尋ねしてみます」

 

Xi「……うん。でも、師匠が答えてくれるかは分からないよ?」

 

ダイ・グ「……?」

 

Xi「……世の中には、思い出したくないこともあるから」

 

泉「……さて! そろそろ予約のお時間ですね!」

 

Xi「そう! お昼ご飯に行こう!!」

 

弥子「やったぁ!」

 

ダイ・グ「……ふふふっ」

 

クリスティン「……ふふっ」

 

二人は、顔を見合わせて笑った。

 

地球には、まだまだ知らないことがある。

 

どうやら、その中には。

 

知らないままでいたほうが幸せなことも、あるらしい。

 

◆ 4.皇帝陛下、もんじゃ焼きを作る

 

昼食。

 

一行が訪れたのは、以前、空条承太郎が案内してくれたもんじゃ焼きの店だった。

 

ダイ・グ「……ここが?」

 

Xi「うん! 前に承太郎さんに教えてもらったお店なんだ!」

 

クリスティン「……もんじゃ焼き、ですか?」

 

泉「はい。鉄板で作って食べる、日本の料理です」

 

弥子「美味しいよ!」

 

店内では、鉄板を囲む人々が楽しそうに食事をしていた。

 

ダイ・グ「……面白いね」

 

クリスティン「……はい」

 

案内された席にも、大きな鉄板が備え付けられていた。

 

Xi「じゃあ、まずは僕が作ってみるよ!」

 

泉「お店の方にお願いすることもできますよ?」

 

Xi「……ううん。前に承太郎さんに教わったし!」

 

弥子「頑張って、Xi!」

 

Xi「……よし!」

 

◆

 

鉄板に具材を広げ、ヘラを使って炒めていく。

 

Xi「……まず、野菜を炒めて……」

 

ダイ・グ「……なるほど」

 

クリスティン「……良い香りですね」

 

Xi「……それから、こうやって土手を作るんだ」

 

弥子「……うんうん!」

 

Xi「で、この中に生地を……」

 

流し込んだ、その瞬間。

 

じゅわっ。

 

Xi「…………」

 

土手の一角が崩れた。

 

Xi「……あっ」

 

じゅわじゅわっ。

 

弥子「……Xi?」

 

Xi「……ちょっと待って」

 

さらに流れ出す生地。

 

Xi「わわわっ!!」

 

弥子「Xi! 土手が崩れてる!!」

 

Xi「分かってるよ!!」

 

泉「……あらあら」

 

ダイ・グ「……ふふっ」

 

クリスティン「……あっ!」

 

Xi「……ごめん! もうちょっとで……」

 

慌ててヘラで土手を修復するXi。

 

弥子「承太郎さんなら、もっと綺麗に作ってたよ!」

 

Xi「承太郎さんと比べないでよ!!」

 

ダイ・グ「……Xi君」

 

Xi「……はい?」

 

ダイ・グ「僕も、手伝っていいかな?」

 

Xi「……えっ?」

 

ダイ・グ「せっかくだから、一緒に作ってみたいんだ」

 

Xi「……もちろん!」

 

クリスティン「……あの、私もお手伝いします」

 

Xi「うん! 姉弟子も!」

 

こうして。

 

フィルモア皇帝ダイ・グ・フィルモア5世。

 

皇帝代理騎士クリスティン・ビィ。

 

そして怪物強盗Xi。

 

三人が、鉄板を囲んでもんじゃ焼きの土手を修復することになった。

 

……実に平和な光景である。

 

◆

 

ダイ・グ「……こっちを押さえればいいのかな?」

 

Xi「うん! そこ!」

 

クリスティン「……では、私は反対側を……」

 

弥子「……あっ! いい感じ!」

 

Xi「……よし!」

 

泉「ふふ。うまくまとまりましたね」

 

ダイ・グ「……ふふっ」

 

クリスティン「……あははっ!」

 

Xi「…………」

 

思わず、Xiも笑ってしまった。

 

Xi「……なんだか変だね」

 

ダイ・グ「……?」

 

Xi「フィルモア皇帝とハイランダーが、僕と一緒にもんじゃ焼きの土手を作ってるなんて」

 

ダイ・グ「……ふふ」

 

クリスティン「……確かに、不思議ですね」

 

ダイ・グ「でも、楽しいよ」

 

クリスティン「……はい!」

 

◆

 

やがて、もんじゃ焼きが完成した。

 

泉「では、小さなヘラで少しずつ取ってくださいね」

 

ダイ・グ「……こうかな?」

 

クリスティン「……なるほど」

 

弥子「そうそう! 鉄板でちょっと焼き付けても美味しいよ!」

 

ダイ・グ「……いただきます」

 

一口。

 

ダイ・グ「…………」

 

クリスティン「…………」

 

ダイ・グ「……美味しい!」

 

クリスティン「……本当ですね!」

 

Xi「……よかった!」

 

弥子「でしょ?!」

 

ダイ・グ「食べながら、みんなで作るのが楽しいね」

 

クリスティン「……はい」

 

少し考えてから。

 

クリスティン「……宮廷では、完成したお料理をいただくことが多いですから……」

 

ダイ・グ「……そうだね」

 

クリスティン「……こうして、一緒に作って食べるのは、とても新鮮です」

 

弥子「じゃあ、もう一枚作ろうよ!」

 

Xi「……うん!」

 

弥子「次は明太もちチーズもんじゃ!」

 

Xi「……うん」

 

弥子「その次はお好み焼き!」

 

Xi「……うん?」

 

弥子「それから、焼きそば!」

 

Xi「…………」

 

弥子「あと、そばめしも!」

 

Xi「弥子ちゃん!! まだ最初の一枚を食べてる途中だよ?!」

 

弥子「だって、美味しいんだもん!」

 

泉「……桂木さん。皆さんのお腹とも相談しましょうね」

 

弥子「……はーい!」

 

ダイ・グ「……ふふふっ!」

 

クリスティン「……あははっ!」

 

◆

 

結局、その後も何枚か追加注文することになった。

 

もちろん、弥子の食欲は相変わらずだった。

 

しかし、ダイ・グもクリスティンも、途中からはすっかり慣れた手つきでヘラを動かしていた。

 

ダイ・グ「……クリス。こっちも焼けたよ」

 

クリスティン「……はい。ありがとうございます」

 

ダイ・グ「……熱いから、気をつけてね」

 

クリスティン「……はい」

 

弥子「…………」

 

Xi「……弥子ちゃん?」

 

弥子「……ん?」

 

Xi「……さっきから、なんでそんなにニコニコしてるの?」

 

弥子「……えへへ!」

 

Xi「……?」

 

弥子「……なんでもない!」

 

Xi「……ふーん?」

 

弥子(……クリス、楽しそうだなぁ)

 

フィルモアで初めて友達になった時。

 

クリスティンは、少し緊張した面持ちで弥子と話していた。

 

それでも、食事を楽しみながら、少しずつ笑ってくれるようになった。

 

そして今。

 

彼女は、ダイ・グと一緒に鉄板を囲んで笑っている。

 

それが、弥子には嬉しかった。

 

◆ 5.普通の女の子として

 

午後。

 

一行は、再び街を散策していた。

 

泉の案内で、雑貨店や小さなショップを見て回る。

 

途中、ダイ・グとXiは別の売り場へ。

 

泉も、近くで買い物の案内をしていた。

 

弥子とクリスティンは、二人でアクセサリーショップを眺めていた。

 

弥子「……あっ! これ可愛い!」

 

クリスティン「……まあ!」

 

小さなチャームが並んだ棚。

 

花や星、動物など、様々な形があった。

 

弥子「クリスは、どれが好き?」

 

クリスティン「……そうですね」

 

少し考えてから、星の形をしたチャームを手に取った。

 

クリスティン「……これが素敵だと思います」

 

弥子「……いいね!」

 

クリスティン「……弥子さんは?」

 

弥子「私は……」

 

しばらく迷ってから、別の小さな星を選んだ。

 

弥子「……これ!」

 

クリスティン「……まあ。似ていますね」

 

弥子「うん! ちょっとお揃いっぽい!」

 

クリスティン「……お揃い?」

 

弥子「そう! 友達同士で、同じようなものを持つの!」

 

クリスティン「…………」

 

弥子「……どう?」

 

クリスティン「…………」

 

少しだけ、考えて。

 

クリスティン「……素敵ですね」

 

弥子「……!」

 

クリスティン「……私、そういうことをあまりしたことがありませんでした」

 

弥子「……そっか」

 

クリスティン「……ですから、とても嬉しいです」

 

弥子「……えへへ!」

 

二人は、顔を見合わせて笑った。

 

◆

 

買い物を済ませた後。

 

二人は、店の外のベンチに腰掛けていた。

 

弥子「……ねえ、クリス」

 

クリスティン「はい?」

 

弥子「……今日、楽しい?」

 

クリスティン「……はい!」

 

迷いのない返事だった。

 

弥子「……よかった!」

 

クリスティン「……本当に、色々なものを見せていただいて……」

 

弥子「うん!」

 

クリスティン「……こんなふうにお友達と買い物をするのは、久しぶりで……」

 

弥子「…………」

 

クリスティン「……いえ。もしかしたら、初めてかもしれません」

 

弥子「…………」

 

少しだけ、沈黙。

 

クリスティン「……弥子さん」

 

弥子「ん?」

 

クリスティン「……ありがとうございます」

 

弥子「……え?」

 

クリスティン「私と、こうして一緒に過ごしてくださって」

 

弥子「…………」

 

クリスティン「……本当に、嬉しいんです」

 

弥子は、少しだけ首を傾げた。

 

弥子「……クリス」

 

クリスティン「……はい?」

 

弥子「……前にも言ったけどさ」

 

クリスティン「……?」

 

弥子「私が友達になりたいと思ったのは、今ここにいるクリスなんだよ」

 

クリスティン「…………」

 

弥子「だから、お礼なんていらないよ!」

 

クリスティン「……!」

 

弥子「私も、クリスと一緒に遊べて楽しいんだから!」

 

クリスティン「…………」

 

しばらくして。

 

クリスティン「……ふふっ」

 

弥子「……?」

 

クリスティン「……そうですね」

 

そして。

 

クリスティン「……ありがとう、弥子さん」

 

弥子「……だから、お礼はいらないってば!」

 

クリスティン「……ふふふっ!」

 

弥子「……あははっ!」

 

二人は、声を上げて笑った。

 

◆

 

少し離れたところ。

 

Xi「…………」

 

ダイ・グ「……Xi君?」

 

Xi「……ん?」

 

ダイ・グ「……何を見ているんだい?」

 

Xi「……ああ」

 

Xiは、二人のほうを指さした。

 

Xi「……姉弟子、すごく楽しそうだね」

 

ダイ・グ「…………」

 

ダイ・グ「……うん」

 

Xi「……弥子ちゃんと、すっかり仲良くなったね」

 

ダイ・グ「……そうだね」

 

彼は、静かに微笑んだ。

 

ダイ・グ「……本当に、嬉しいよ」

 

Xi「…………」

 

ダイ・グ「クリスが、あんなふうに笑っているところを見られるなんて」

 

Xi「……うん」

 

ダイ・グ「……ありがとう、Xi君」

 

Xi「……え?」

 

ダイ・グ「地球へ招いてくれて」

 

Xi「…………」

 

少しだけ、照れくさそうに笑った。

 

Xi「……僕だけじゃないよ」

 

ダイ・グ「……?」

 

Xi「弥子ちゃんも、泉さんも、キラもラクスも、みんな二人に楽しんでほしいと思ってるんだ」

 

ダイ・グ「…………」

 

Xi「……それに」

 

ダイ・グ「……?」

 

Xi「兄弟子と姉弟子には、幸せでいてほしいからね!」

 

ダイ・グ「…………」

 

少し、驚いた顔をした。

 

そして。

 

ダイ・グ「……ふふ」

 

Xi「……?」

 

ダイ・グ「……ありがとう、Xi君」

 

Xi「……うん!」

 

その時。

 

弥子「Xiー!!」

 

Xi「……ん?」

 

弥子「そろそろおやつにしようよー!!」

 

Xi「お昼、あれだけ食べたのに?!」

 

弥子「別腹!!」

 

ダイ・グ「……ふふふっ!」

 

Xi「……兄弟子」

 

ダイ・グ「……何かな?」

 

Xi「……弥子ちゃんの胃袋だけは、僕にも理解できないんだよ」

 

ダイ・グ「……そうなんだ」

 

Xi「……うん」

 

ダイ・グ「……でも、元気でいいじゃないか」

 

Xi「……そうだね!」

 

……それもまた、平和な休日の光景だった。

 

◆ 6.今夜は限定ディナー

 

夕刻。

 

一行は、宿泊先のホテルへ戻ってきた。

 

今夜の夕食は、ホテルのレストランで用意された特別なディナーである。

 

弥子「……楽しみだなぁ!」

 

Xi「……弥子ちゃん、朝からずっとそれ言ってない?」

 

弥子「だって、ここの料理美味しいんでしょ?」

 

Xi「……うん。美味しいよ」

 

泉「……桂木さん。今日はコース料理ですから、ゆっくり楽しみましょうね」

 

弥子「はーい!」

 

クリスティン「……ふふ」

 

ダイ・グ「……楽しみだね」

 

レストランへ入ると、料理長が一行を出迎えた。

 

料理長「ようこそお越しくださいました」

 

ダイ・グ「お世話になります」

 

クリスティン「よろしくお願いいたします」

 

料理長「本日は、特別なコースをご用意しております。どうぞ、ごゆっくりお楽しみください」

 

Xi「……料理長!」

 

料理長「おや、Xi様。お久しぶりでございます」

 

Xi「……今日は、例の赤ワイン煮込みも?」

 

料理長「もちろんでございます」

 

Xi「……やった!」

 

料理長「以前お召し上がりいただいた際にも、ご好評をいただきましたから」

 

Xi「……うん! あれ、本当に美味しかった!」

 

料理長「ありがとうございます」

 

◆

 

席に着くと、まず前菜が運ばれてきた。

 

丁寧に盛り付けられた料理。

 

続いて、濃厚なコーンポタージュ。

 

ダイ・グ「……美味しいね」

 

クリスティン「……はい。とても優しい味です」

 

弥子「……ん~! 美味しい!」

 

泉「ふふ。よかったですね」

 

Xi「……ここの料理長、本当に腕がいいんだよ」

 

やがて。

 

料理長「それでは、本日のメインディッシュでございます」

 

運ばれてきたのは、深い赤褐色のソースをまとった牛ほほ肉の煮込みだった。

 

柔らかく煮込まれた肉。

 

艶やかなソース。

 

芳醇な香り。

 

料理長「希少なヴィンテージ赤ワインを用いた、牛ほほ肉の赤ワイン煮込みでございます。」

 

ダイ・グ「……これは、美味しそうですね」

 

クリスティン「……素晴らしい香りです」

 

弥子「……わぁ!」

 

Xi「……待ってました!」

 

◆

 

ただし。

 

Xi「……あの、料理長」

 

料理長「はい?」

 

Xi「……念のため確認なんだけど」

 

料理長「……?」

 

Xi「……今日の料理も、ちゃんと安全な仕上がりになってるよね?」

 

料理長「もちろんでございます」

 

Xi「……よかった!」

 

料理長「原料の特性を踏まえ、適切な処理と確認を行ったうえで、お出ししております」

 

Xi「……うん!」

 

料理長「以前、Xi様にもお召し上がりいただいた製法でございますので、ご安心ください」

 

Xi「……ありがとう!」

 

ダイ・グ「……Xi君」

 

Xi「……はい?」

 

ダイ・グ「……また安全確認?」

 

Xi「…………」

 

Xi「……まあ、念のため!」

 

ダイ・グ「……ふふ」

 

クリスティン「……ふふふっ」

 

料理長は、そのやり取りを見て穏やかに微笑んだ。

 

自分の料理を安心して食べてもらうこと。

 

その大切さを、よく理解している料理人だった。

 

◆

 

ダイ・グ「……いただきます」

 

ナイフを入れる。

 

肉は、驚くほど柔らかかった。

 

一口。

 

ダイ・グ「…………」

 

クリスティン「…………」

 

ダイ・グ「……美味しい」

 

クリスティン「……本当に!」

 

ダイ・グ「……このソース、素晴らしいね」

 

クリスティン「……はい。とても深い味わいです」

 

Xi「……でしょ?!」

 

弥子「……ん~っ!!」

 

Xi「……弥子ちゃん?」

 

弥子「やっぱり美味しい!!」

 

Xi「……うん!」

 

弥子「お肉がすっごく柔らかいし、ソースも濃厚!」

 

料理長「ありがとうございます」

 

弥子「パンにつけても美味しそう!」

 

料理長「もちろんでございます。どうぞ、お好みでお召し上がりください」

 

弥子「……やった!」

 

Xi「……弥子ちゃん、さすがだね」

 

弥子「だって、このソースを残すなんてもったいないよ!」

 

泉「……ふふ。お行儀よく楽しみましょうね」

 

弥子「……はーい!」

 

◆

 

しばらく、食事が続いた。

 

ダイ・グ「……今日は、本当に色々なものを食べたね」

 

クリスティン「……はい」

 

ダイ・グ「朝は珍しい珈琲。お昼はもんじゃ焼き。そして、今夜はこんな素敵な料理まで」

 

クリスティン「……どれも、とても美味しかったです」

 

ダイ・グ「……うん」

 

少し考えてから。

 

ダイ・グ「……でも」

 

クリスティン「……?」

 

ダイ・グ「僕は、昼間のもんじゃ焼きも、すごく印象に残っているかな」

 

クリスティン「……そうなのですか?」

 

ダイ・グ「……うん」

 

そして、彼女を見つめた。

 

ダイ・グ「クリスと一緒に作ったからね。」

 

クリスティン「…………!」

 

ダイ・グ「……ふふ」

 

クリスティン「……あ、あの……」

 

弥子「…………!」

 

Xi「…………!」

 

泉「……ふふ」

 

クリスティン「……私も、とても楽しかったです」

 

ダイ・グ「……よかった」

 

クリスティン「……はい」

 

弥子「…………」

 

Xi「……弥子ちゃん?」

 

弥子「…………」

 

Xi「……?」

 

弥子「……あまーーーー……」

 

Xi「弥子ちゃん!! 今は高級レストラン!!」

 

弥子「……っ!!」

 

慌てて口を押さえた。

 

ダイ・グ「……?」

 

クリスティン「……?」

 

Xi「……い、いや! 料理の話! ソースに甘みもあるよねって!」

 

料理長「……はい。味わいの奥行きには、甘みも大切な要素でございます」

 

Xi「……そう! それ!!」

 

泉「……ふふふっ」

 

弥子「……えへへ……」

 

クリスティン「……?」

 

ダイ・グ「……ふふ?」

 

……どうやら。

 

今回の限定ディナーで一番甘かったのは、料理のソースではなかったらしい。

 

◆

 

食事を終えた後。

 

Xiは、料理長に声をかけた。

 

Xi「……今日は、本当にありがとうございました」

 

料理長「……こちらこそ」

 

Xi「ダイ・グさんも、クリスティンさんも、すごく喜んでたよ」

 

料理長「それは何よりでございます」

 

Xi「……うん!」

 

料理長「Xi様」

 

Xi「……?」

 

料理長「……当店の料理を、大切なお客様に勧めていただけたことを、光栄に思います」

 

Xi「…………」

 

料理長「今後も、安心してお召し上がりいただける美味しい料理をご提供できるよう、努めてまいります」

 

Xi「…………」

 

少しだけ、微笑んだ。

 

Xi「……うん。これからもよろしくね!」

 

料理長「ありがとうございます」

 

危険な製品を、そのまま人々に与えるのではない。

 

手間をかけ、知恵を絞り、安全で美味しいものに変えていく。

 

同じ会社に関わる品物でも、それを扱う人間が違えば、結果はまったく違う。

 

Xiは、改めてそう感じていた。

 

今日も、危険物処理件数はゼロ。

 

それが、何より嬉しかった。

 

◆ 7.友達になれて、よかった

 

夜。

 

ホテルのロビー。

 

大きな窓の向こうには、地球の街の明かりが広がっていた。

 

食事を終えた一行は、しばらくロビーでくつろいでいた。

 

弥子「……あ~、美味しかった!」

 

Xi「……弥子ちゃん、満足?」

 

弥子「もちろん!」

 

泉「ふふ。今日はよく食べましたね」

 

弥子「うん!」

 

Xi「……いつもだけどね」

 

弥子「……何か言った?」

 

Xi「……なんでもない!」

 

ダイ・グ「……ふふふっ」

 

クリスティン「……ふふ」

 

一同は、笑い合った。

 

◆

 

やがて、弥子はクリスティンと並んで窓際に立った。

 

弥子「……ねえ、クリス」

 

クリスティン「はい?」

 

弥子「……今日、楽しかったね」

 

クリスティン「……はい」

 

弥子「お洋服も見たし、もんじゃ焼きも作ったし!」

 

クリスティン「……ふふ。Xiさんが土手を崩してしまった時は、少し驚きました」

 

弥子「……あははは!」

 

クリスティン「……でも、とても楽しかったです」

 

弥子「……うん!」

 

少し、沈黙。

 

クリスティン「……弥子さん」

 

弥子「……ん?」

 

クリスティン「……今日、一緒に選んだチャーム、大切にしますね」

 

弥子「……!」

 

弥子は、自分の鞄に付けた小さな星のチャームを見せた。

 

弥子「私も!」

 

クリスティン「……ふふ」

 

弥子「……これ見たら、クリスのこと思い出せるね!」

 

クリスティン「…………」

 

少しだけ、目を見開いた。

 

そして。

 

クリスティン「……はい」

 

嬉しそうに微笑んだ。

 

クリスティン「……私も、弥子さんのことを思い出せます」

 

弥子「……えへへ!」

 

クリスティン「……遠く離れていても」

 

弥子「……うん!」

 

クリスティン「……友達、ですものね」

 

弥子「もちろん!!」

 

クリスティン「…………」

 

その言葉に、彼女は静かに微笑んだ。

 

◆

 

少し離れたところでは。

 

ダイ・グ「……Xi君」

 

Xi「……何?」

 

ダイ・グ「……明日で、休暇も終わりなんだね」

 

Xi「……うん」

 

ダイ・グ「……あっという間だったな」

 

Xi「……そうだね」

 

ダイ・グ「……でも、本当に楽しかったよ」

 

Xi「……うん!」

 

ダイ・グ「……ありがとう」

 

Xi「……こちらこそ!」

 

しばらくして。

 

Xi「……あのさ、ダイ・グさん」

 

ダイ・グ「……?」

 

Xi「……明日は、二人でゆっくり過ごしてみない?」

 

ダイ・グ「…………」

 

Xi「僕たちは、少し離れたところにいるから」

 

ダイ・グ「……二人で?」

 

Xi「……うん!」

 

ダイ・グは、少しだけ考えた。

 

そして。

 

ダイ・グ「……ふふ」

 

Xi「……?」

 

ダイ・グ「……それは、嬉しいな」

 

Xi「……!」

 

ダイ・グ「クリスにも聞いてみるよ」

 

Xi「……うん!」

 

Xi「……あっ、もちろん警護や連絡手段はちゃんと確保しておくから!」

 

ダイ・グ「……ありがとう。安心して楽しめそうだね」

 

Xi「……任せて!」

 

ダイ・グ「……ふふ」

 

◆

 

その時。

 

弥子「……Xi!」

 

Xi「……ん?」

 

弥子「……明日、動物園に行くんでしょ?」

 

Xi「……うん」

 

弥子「……クリスとダイ・グさん、二人で?」

 

Xi「……そうだよ」

 

弥子「…………」

 

Xi「……?」

 

弥子「…………」

 

Xi「……弥子ちゃん?」

 

弥子「……楽しみだねぇ!」

 

Xi「……うん!」

 

弥子「……二人、どんな感じになるかなぁ!」

 

Xi「…………」

 

Xi「……弥子ちゃん」

 

弥子「……何?」

 

Xi「僕たちは、邪魔しないで見守るんだからね?!」

 

弥子「分かってるよ!」

 

Xi「……本当に?」

 

弥子「うん!」

 

泉「……ふふ。遠くから見守るのも、お友達としての大切な役目ですからね」

 

弥子「……はーい!」

 

Xi「……ありがとう、泉さん」

 

泉「どういたしまして」

 

Xi「……明日もよろしく!」

 

泉「もちろんです!」

 

◆

 

その夜。

 

弥子は、鞄に付けた星のチャームを眺めていた。

 

小さな、地球の雑貨店で買ったもの。

 

特別に高価なものではない。

 

けれど。

 

弥子「……えへへ」

 

嬉しくて、少し笑ってしまった。

 

フィルモア帝国。

 

遠い星の、遠い国。

 

そこには、今日一緒に街を歩いた友達がいる。

 

クリスティン・ビィ。

 

皇帝代理騎士。

 

ハイランダー。

 

そんな肩書きは、もちろん立派なものだ。

 

けれど、弥子にとっては。

 

今日、一緒に洋服を選び、もんじゃ焼きを食べて、笑い合った友達。

 

それで十分だった。

 

弥子「……また一緒に遊ぼうね、クリス」

 

小さく、呟いた。

 

そして、楽しそうに笑った。

 

◆

 

一方。

 

別の部屋では。

 

クリスティンも、同じように小さなチャームを手に取っていた。

 

クリスティン「…………」

 

星の形をした、小さな飾り。

 

弥子と一緒に選んだものだった。

 

クリスティン「……ふふ」

 

静かに微笑んだ。

 

今日一日。

 

たくさん笑った。

 

たくさん話した。

 

美味しいものを食べた。

 

友達と買い物をした。

 

それは、特別な任務ではない。

 

騎士としての功績でもない。

 

ただの休日。

 

けれど。

 

クリスティン「……楽しかったな……」

 

その言葉は、自然に口からこぼれた。

 

誰かに聞かせるためではない。

 

誰かに認めてもらうためでもない。

 

ただ、自分自身がそう思えたから。

 

クリスティンは、もう一度チャームを見つめた。

 

そして、そっと大切にしまった。

 

明日は、地球滞在の最終日。

 

まだ、もう一日だけ。

 

大切な人と、大切な友達と過ごせる時間が残っている。

 

そのことが、とても嬉しかった。

 

翌朝。

 

二人きりの休日を楽しむため、ダイ・グとクリスティンは動物園へ向かうことになる。

 

もちろん、Xiたちも少し離れた場所から見守る予定だ。

 

……ただし。

 

その動物園で、とある天才発明家が、またしても「こんなこともあろうかと!」を発動することを。

 

この時のXiは、まだ知らなかった。

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