APP18(外見指数最高値)は特典じゃなくて自前です 作:アダルトデイズ
デメテラに来て一ヶ月、朝練して食っちゃ寝して、朝練して食っちゃ寝して、生活費と居住場所は全て国から補填されている。
魔族討伐の功績とはいえ、ジワジワ罪悪感が湧き上がってきた。
とはいえ食事を妥協したくない、それだけはしない。
なんらかの形で精算できないか考え、今は─
「みどりせんせーたかーい!」「ていこくがみえる!」「つぎ、わたし!」
保育士をしている。
仕事を探してると知ったミュラーから「私の保育園で働きませんか?」と提案された。
二つ返事で引き受けたけど、クマさんエプロンを渡されたときはギョッとした。
22の女が着るにはあざとすぎるが、子供に大ウケするのだから仕方ない。
あんまり恥ずかしがっても保育士に失礼なので、胸を張ってクマさんを見せつけてやろう。
かわいいだろ童達よ。
子供達は私の頭がお気に召したようで、列をなして肩車を所望している。
周りを見ると、保育士と園児が追いかけっこをしている。
どう考えても触ってないのに「さわった!」と男の子が叫び、泣き始めた。
必死の慰めも耳に入らず、ボリュームが上がる。
あり余る体力を保育士達にぶつけまくる園児達、それに翻弄される大人達。
「おとなしくしてほしい」と思いつつ、遊んでくれないと昼寝をしない…保育士は、そんなジレンマを常に抱えている。
「おいかけっこあきた〜」「ごはんたべる」「ねる!」
子供の心は天気みたいなもので、ときには数時間でも集中するし、ときには2秒でやめる。
昼寝とご飯はまだ先、あらゆる褒め言葉で遊びに誘うが、首を横に振られる。
殿下の宝刀を使うときがきたか、幼稚園時代に他の園児を虜にしたあの技をッ!
砂場の土に水を含ませ、圧縮しながら丸く成形する。
それを布でヤスリがけするように擦る。
発火しそうなほど高速で擦り、残像が発生して止まっているようだ。
幼稚園時代に磨かれた技術を、体技魔法によりさらに上のステージへと引き上げる。
園児だけでなく、保育士までもが固唾をのんで見守る。
完成された泥団子を見て、歓声が上がった。
圧倒的な身体能力により圧縮され、削られた泥団子は、真球と言ってもよいほど凹凸がない。
日光に照らされ、もはやブラウンの宝石。
「私のいた国では、泥団子で遊具を買えるんだよ」
「すげぇ〜!」「こうきゅーとりだ!」「ピカピカしてキレイ」
これは嘘ではない。
人気の積み木や遊具を使いたくて、お弁当を早く食べても、早食いの男子には敵わない。
しかし…この泥団子で男子を買収することにより、欲しい遊具を手に入れた。
それを見た女子達が、教えを乞いに来た。
男子達の目が肥え、泥団子のインフレが起こり、泥団子は新たな紙幣となったのだ。
「泥団子という遊びを用いて、集中力を培わせ、付加価値や取引の基礎を覚えさせる。
これがジャパニーズ保育原論なのですね」
ミュラーからとんでもねぇ勘違いされてるけど、日本の保育原論を知らないので反論ができない。
──────
仕事が終わったが、帰路には着かない。
見渡す限りの小麦畑、その中にポツンと、木で作られた店があった。
木造建築という意味ではない、木が建物のような形に変形している。
「デメテラに来て一ヶ月…ついにこのときが」
中に入ると「森の中か?」と勘違いするほど、木の香りで満ちている。
マイナスイオンに摂取量があるなら、ぶっ倒れている。
呼び鈴を鳴らすと、コツ…コツと足音が近づいてくる。
扉が開くと、焼けたチーズの匂いと共に、エプロンを付けた金髪の女性が現れた。
「ご来店ありがとうございます、セキシロさん」
「はじめまして、アリーナさん」
ここが待ちに待った、かのイタリア人が営むイタリアンレストランである。
席に案内されるやいなや、メニューを広げ、カプレーゼ・ペペロンチーノ・マルゲリータ・アクアパッツァetc、イタリアンそのものといった料理を注文した。
料理を待ちながらメニューを見るが、驚くほど料金が安い。
そして、レシピ本が無料配布されていた。
太っ腹すぎる…それはそれとして、ありがたく貰う。
「作れそうなやつがあったら、連邦の人らにも出してやろう」
レシピ本を読んでいると、前菜とパスタが運ばれてきた。
レストランなので上品に食べたかったが、途中から夢中になっていた。
サービスで、
「本当によく食べますね…見ていて気分がいいわ」
ドルチェまで食べきって、アリーナと雑談した。
転移後の他愛もない話から、苦労した話までを、笑い話として語り合った。
「私はカトリックだから、教会がないことが困りました。
ミサも什一献金もできないので」
あまり宗教のことは知らないけど、それらはクリスチャンにとっては重要なことなのだろう。
「でも元を辿れば、教会が豪華絢爛である必要はない。
誰に対しても開かれた信仰の場、このレストランだって神の倉だと思っています。
ここへ使うお金も、きっと献金になるでしょう」
俯きながら語られる内容は、無宗教の私にはピンと来なかった。
それでも私は肯定した、きっと彼女が言うのなら良いことのはずだ。
すっかり日も暮れたので、お会計をして店を出た。
アリーナは、姿が見えなくなるまで手を振ってくれた。
「いい一日だった」
確信を持ってそう言える。
鼻歌を歌いながら歩いていると、帰り道の新聞屋に変わった材質の新聞があった。
「それ?帝国から取り寄せた新聞だよ」
国が違えば材料も違うのか、少し高かったが興味本位で買ってみた。
広げた一面に載っていた内容は
『病魔の化身、疫災のギメル ゼーレを襲い始めて三ヶ月が経過した。
一年前に帝国の馬車を襲い、その存在が公のものとなった。
ギメルは病を操り、かかった者は目眩・嘔吐・痙攣・錯乱などの症状を発症する(生き残った者の証言)。
死亡した人間を解剖したところ、心肺停止が主な死因とされている。
生き延びた者も、後遺症により寝たきりの生活を余儀なくされている。
国交は断絶、偵察すら送ることができないため、ゼーレの被害者数は未知数』
「───え?」
─────────────
『疾病を与える魔法』
生まれてから、自分の魔法が嫌だった。
雑魚共や群れには無類の強さを発揮するが、最上位の魔物達には決定打がなさすぎた。
正面から挑んでも圧倒的な体躯や、災害のような力に翻弄されて殺されるのが関の山。
勝てるやつを狩り、化物からは姿を隠す、そんな生活を続けていた。
そんなある日のこと
「今日は挨拶に来たんだ!俺は
こいつは
サキュバスを侍らせ、酒を浴びるように呑み、あらゆる魔物を様々な方法で調理している。
会いたくもないが、私の容姿が気に入ったようで、住処にやってくる。
許可なく肩に触れて、ドレスにシワをつけてくる、「もっと太った方が健康的で好み」などと、ネズミのクソ未満の講釈を垂れてくる。
支配関係でしか女に触れたことがない、クソ野郎の老害。
ビエストロが、私を見る目は熱を帯びていた。
品定めをするように舌舐めずりをする、気色悪い…脳みそが腐って死ねばいいのに。
「あっそ」
こいつと戦っても殺されるだけなので、睨みつけながらも会話は止めない。
しかし気分は悪くない、どうせ人間の女と、食材が目当てなんだろうが…こいつがいなくなるなら、どうでもいい。
「素っ気ないなぁ…まぁいい、そのうち会えるだろう」
「………どういう意味よ?」
「お前はいずれ人間に興味を持つ、確信を持って言える。
じゃあな、ギメル」
あいも変わらず意味不明な言葉を残して、渓谷内に向かった。
また狩って、隠れて…アイツがいないだけ快適だった。
支配者がいなくなった一帯の社会的な魔物達は、徐々に活気を取り戻し、各々が暴れて争い始めた。
鬱陶しかったから皆殺しにしたけど、本当に耳障りな叫び声。
私の力に逆らえず這いつくばる姿は気分がいいが、一斉に奏でられる不協和音は耳にこびりつく。
辺りに腐敗臭が立ち込めて、また魔物達が寄ってくる。
居心地が悪くなったので、引っ越しをすることにした。
どうせなら違う場所がいい、適当に歩き続けると、巨大渓谷の近くまで来ていた。
偶然だった、気まぐれだった、中に入ってみた。
宛もなく歩いていると、一台の馬車が野原を進んでいた。
「ま…魔族……」
馬車を先導する男は、私を見るなり顔が真っ青になった。
疾病をかけると、心臓を抑え、足をバタバタと動かし始める。
馬車は転倒し、中にいた人間達が地面に倒れた。
「……ゴブリンより弱いわね」
苦しんでいる人間の中に、身なりのいい女がいた。
貴族かなにかか?その女の顔を覗き込んだ。
酸欠で顔が青白くなり、潤み充血した瞳が、私を見上げている。
必死に逃げようと藻掻くが、足がガタガタ震えて動かない。
「─ㇶャ」
一歩だけ近付くと、ビクッと身体を跳ねさせて、口から小さな悲鳴が漏れ出る、その表情には絶望しかない。
「………なっ、なに…♡?」
その表情を見て、息をのんだ。
心臓がポンプとなり、全身に血液が送られる。
脳みそが沸騰しそうになり、クラッと立ちくらみが起きた。
その表情や仕草が視界に焼き付き、下半身が熱く火照る。
ある者は高く、ある者は低く、一つとして同じ声はない。
魔物とは違い、その阿鼻叫喚は上品さえ感じる。
滾った思いのまま、その女に抱きついて、太ももを絡みつけた。
「…柔らかい」
胸に耳を当てると、ドクドクと早く脈動している。
女は押し返そうとしてる…のかな?これが生命の危機を感じた本気の抵抗なら、あまりにも儚すぎて興奮する。
次第に心臓の音が小さくなり、完全に止まった。
「はぁ♡」
口から出た吐息が、いつもより熱い。
私はこれのために、疾病の魔法を得た。
直感だった、今の今までコンプレックスですらあった、この力には意味があったんだ。
それからも出会った人間で、色々と楽しんだ。
あまりにも弱すぎて、猛毒を使ったら一瞬で死ぬのは難点だったけど、疾病だけでも充分楽しめた。
出張ってくる騎士団とやらは弱すぎたし、魔物達も雑魚すぎて自由行動ができた。
渓谷内では、単なるドラゴンやキマイラが最強だというのだから驚きだ。
そのドラゴン達ですら極一部の地域しか出現せず、単体行動のコイツらが脅威になることはない。
そうして充実した旅を続けてると、ゼーレ国家と呼ばれる小さな国に着いた。
丁度よかったので、ここでしばらく遊ぶことにした。
国家というプライドを、私一人に溶かされる様はなんとも甘美で、子供の泣き声が心地良い。
その気になれば、国全体に猛毒を撒けるが、そんな無粋な真似はしない。
次第に外部からも人が来なくなり、食料や日用品が尽きつつある。
一つの解毒薬を買うために、家族が金を出し合うほどだ。
まぁ…そんなので、治らないんだけど。
次第に彼らは、私を『疫災』と呼んだ。
・アリーナ モレッティ
HP:50 MP:100 APP:14 身長:178 体重:70 AGE:26
性別:女
特典:植物魔法
武器:騎士の剣
防具:鋼鉄ウールの服
イタリアの転移者。
国を防衛する傍ら、イタリアンレストランも経営している。
料理のレシピは公開してて、価格は低価格。
国から土地の所有権を貰っているが、農家や貧困層に超低価格で貸しているので、手取りはほぼない。
神から翻訳能力を貰ってるから日本語で話せる。
カトリックのため、神々と会話するさい"祈り"ではなく"念じ"ている。
・疫災のギメル
HP:50 APP:18 身長:186 体重:68 AGE:306
性別:女
魔法:疾病魔法
武器:渓谷外のレイピア
防具:渓谷外のドレス
短髪アルビノで、純白のドレスを着た女。
ゼーレ国家と戦争しているという体になっているが、国家全域に猛毒を散布できるので遊んでるだけ。
ファナラビの転移者が使う魔法と酷似しているが、関係はない。
収斂進化のように、たまたま同じ形態になっただけ。