Re:ゼロから始める浪人生活   作:猫色鼠

2 / 10
リゼ浪EXコース『ゼロカラハジメルロウニンセイカツ』はifルートですので本編とは関係ないことをご了承ください。以下本編です。


第一章 『怒涛の高三生』
第一章1  『深海魚は使えない』


 菜月昴は、平成日本生まれのゆとり教育世代出身である。

 

 彼の人生は十七年、その全てを語り尽くすにはそれこそ十七年の時間を必要とする。

 

 それらを割愛し、彼の現在の立場を簡単に説明するのならば――『県内有数の進学校に通う高校三年生にして、成績下位常連の深海魚』となる。

 

 詳細に説明するなら、『受験を目前に控えた時期にも関わらず、周囲との差に心が折れ、努力することすら放棄したどうしようもないクズ』といったところだ。

 

 そうなった理由は、特別なものではない。

 

 最初はほんの小さなズレだった。

 

 授業についていけなくなった日。

 小テストで平均を下回った日。

 模試の判定が目に見えて落ちた日。

 

 その一つ一つを「まあいいか」で流し続けた結果、気付けば戻れない位置まで沈んでいた。

 

 いわゆる、“深海魚”である。

 

「その結果がこの状況か……もはや自分で言ってて意味わかんねぇな」

 

 ため息とともに、スバルは空を見上げる。

 

 放課後の校舎裏。

 人通りは少なく、コンクリートはひび割れたまま放置されている。

 

 グラウンドの喧騒もここまでは届かず、やけに静かだ。

 

「現状確認。進学校三年、偏差値は底辺付近、志望校は未定、やる気はゼロ」

 

 口に出して並べてみると、笑えるくらい終わっている。

 

 日頃から現実逃避に費やしてきた時間のおかげで、こういう自己分析だけはやけに早い。

 

 だが、それが何かを変えるわけでもない。

 

「よし、いいぞ俺。状況整理は完璧。で、ここからどうすんだ?」

 

 自問して、答えは出ない。

 

 参考書は積んである。

 問題集も買った。

 やろうと思った日は、確かにあった。

 

 ――全部、“思っただけ”で終わった。

 

「まぁ、才能ないやつが頑張ってもな……」

 

 自嘲気味に呟き、視線を落とす。

 

 周囲はみんな前に進んでいる。

 クラスの上位層は志望校を語り、下位ですら何かしらの対策を始めている。

 

 その中で、自分だけが取り残されている感覚。

 

「このままじゃ落ちる、ってのはわかってんだけどな」

 

 わかっている。

 

 わかっているが、動けない。

 

 それが一番、質が悪い。

 

「とりあえず当面の目標は生き延びること……って、受験にそれ使うの終わってんな」

 

 苦笑して、スバルはポケットの中身を確認する。

 

 スマホ(通知なし)、財布(中身ほぼ空)、コンビニで買った安い菓子パン。

 

 どれも、今の自分を象徴するようなラインナップだ。

 

「終わったな……」

 

 呟きながら、壁にもたれかかる。

 

 何もしていないのに、時間だけが過ぎていく。

 

 焦りはあるのに、行動には繋がらない。

 

 ――このまま何もないまま終わるのか。

 

 そんな考えが頭をよぎった、そのとき。

 

 ふいに、足音がした。

 

 人気のないはずの校舎裏に、不自然なほどはっきりと響く音。

 

 顔を上げる。

 

 路地の入口に、三人ほどの男が立っていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。