アンダーボスはキヴォトスへ   作:ただの紅茶好き

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12スレ目/予見眼

 翌日、アルクはエンジニア部に向かう前にゲーム開発部に顔出しすることにし、現在はゲーム開発部の扉の前までたどり着いた。

 

「お邪魔しまーす」

 

 アルクがそう言って入ると部室の中では積み上がったゲームのパッケージの山の中にアリスが座ってゲームをしていた。

 

「…まじかよ」

 

 アルクはこの時点でアリスがこのゲームソフトを寝ずに攻略したのだと気づいてしまったと同時に、この量のゲームを攻略しきったことにも驚いていた。

 

 アリスがアルクの声が聞こえ、振り返る。

 

「おお、よくぞ参ったな、異界の旅人よ」

 

「異界の旅人って…まぁ間違ってないからいいか。まぁでも俺のことは代理人って呼んでくれ」

 

 アルクが困惑しながらもアリスと会話をしているとミドリが目を覚ます。

 

「う、うーん…えっ、もう朝!?しまった、準備しなきゃ!ってあれ?どうして代理人が?」

 

「ん?あぁエンジニア部に用があって来たからついでにこっちにも顔見せしておこうかと思ってな」

 

 アルクはそう言って腰に掛けている小物入れに仕舞っておいた現状保存キューブを取り出しその中からサンドイッチを取り出す。

 

「ほれ、とりあえず朝飯代わりに俺からの差し入れのサンドイッチでも食うか?一応ミレニアムの購買で買ったものだから毒とかは入ってないぞ」

 

 アルクはそういいながら現状保存キューブを小物入れに仕舞い、ゲーム開発部全員分のサンドイッチが入った袋を差し出す。

 

「あ、ありがとう…ございます?」

 

 ミドリは困惑しながらもアルクが差し出したサンドイッチ入りの袋を受け取る。

 

「ちなみになんでサンドイッチなんですか?」

 

 ミドリは不思議そうにアルクに向かってそう問いかける。

 

 アルクはあっけらかんとした様子でその質問に答える。

 

「ん?あぁ俺がサンドイッチ好きだから。もしかして苦手だったか?おにぎりとかのがよかったか?」

 

「い、いやそういうわけじゃ…」

 

「なら良かった。まぁ次からは確認してからにするか」

 

 アルクはそう言って先ほど取り出した現状保存キューブとは異なる現状保存キューブを取り出してその中に入れてた落花生をつまみながら時間を潰すことにした。

 

 その様子を見ていたミドリが恐る恐る聞いてくる。

 

「待ってください。そのキューブどこから出したんですか?」

 

「ん?この小物入れ」

 

「じゃあさっきのサンドイッチを入れてたキューブは?」

 

「同じ小物入れ」

 

「入らないですよね!?その小物入れ、どう見てもそのキューブが2つも入るようなサイズじゃないですよね!?」

 

 ミドリがそう叫びながらアルクの持っている小物入れに対して驚きのツッコミを行う。

 

 ミドリの言葉を聞いたアリスがアルクに近づいて小物入れをジロジロと見渡す。

 

「もしかして代理人はインベントリを持っているのですか?」

 

 アリスがどこか慣れない喋り方をしながらもアルクにそう質問してくる。

 

「インベントリか、ある意味正解だな。これは正式名称を次元カバンって言ってな、規定の容量までならサイズを無視して物体を仕舞える優れモノだ。まぁ黒い沈黙の手袋やデカいサイズの次元カバンよりは容量が少ないんだけどな」

 

 アルクがその様に自身の小物入れについて説明しているとゲーム開発部の扉が勢いよく開け放たれる。扉の前には何かを持ったモモイが立っていた

 

「おはよう!あれ代理人も来たの?まぁとりあえずアリス、これ」

 

 モモイがそう言って手に持っていた物を渡す。ぱっと見では何かの資料のような紙のようなものであると推測できる。

 

 アリスは不思議そうにそれを受け取る。

 

「アリスは『正体不明の書類』を獲得した」

 

 まるでRPGゲームのような言い回しをするアリスにモモイが説明を行う。

 

「これは学生証って言うんだよ。生徒名簿にもヴェリタスがハッキ…いや、登録してくれたから、これがあればアリスも正式に私たちの仲間だよ!」

 

 今ハッキングって言おうとしただろ。とアルクはそうツッコミそうになったがその言葉を押し殺す。

 

「仲間……なるほど、理解しました」

 

 アリスがぼそっとそう呟く。

 

「パンパカパーン、アリスが『仲間』として合流しました!」

 

 まるでどこかのドラゴンなクエストのような言い回しを行いながらもアリスは自身がこのゲーム開発部に正式に迎え入れられたことを理解したようだ。

 

「ねぇ、今『ハッキング』って言わなかった…?」

 

 アルクがあえて黙っていたことにミドリがツッコむ。

 

 モモイはそれに対して大丈夫だと言っているがアルクは絶対大丈夫ではないだろと心のなかで思っていた。

 

「それじゃあ、後は…武器、だね」

 

 モモイはそう言うと何かを思いついたのかある提案をアリスにする。

 

「よし。アリス、せっかくだし案内するよ。私たちの学校、ミレニアムを!」

 

 モモイはそう言うとアリスに向かって説明を始める

 

「ミレニアム……ううん、キヴォトスの生徒は、みんなそれぞれ自分の武器を持ってるの。だからアリスにも武器を見繕ってもらわないとね。」

 

「一番手っ取り早くちゃんとした武器が手に入れられる場所といえば…やっぱりエンジニア部かな」

 

 モモイがそう言うとアリスはエンジニア部が何なのかよくわからないと言った様子で頭にハテナマークを浮かべていた。

 

 その様子を見たミドリがエンジニア部について説明を行う。そしてモモイがその説明に補足を入れた後、アリスの手を取ってエンジニア部に連れて行く。

 

 アルクも元々エンジニア部に寄る前にゲーム開発部の様子を見に来ていただけなので、本来の目的である武器の受け取りに行くためにエンジニア部に向かった。

 


 

 アルクがエンジニア部の部室に入るとモモイ達はすでにウタハに事情説明を終えたのか積み上がった武器の山の中からアリスに合いそうな武器を探していた。

 

 少しするとウタハはアルクが来たことに気づいたのか、アルクに声をかける。

 

「やぁ代理人、武器の受け取りに来たのかな?すでに改造は終えてある。持ってくるから少し待っててくれ」

 

 ウタハはそう言って少し席を外す。

 

 アルクはその武器の山の中を少し見てみる。その山の中に合った殆どの物は実用性をかなぐり捨てた(ロマンのある)武器がほとんどであった。

 

(物の出来がいいだけに残念だなぁ…都市なら普通に一線級の工房になれるけど頭の禁忌に抵触するタイプの武器ばっかだわ)

 

 そんなことをアルクが考えていると、アルクは嫌な想像が脳裏をよぎる。

 

(…もしかしてここ(エンジニア部)を頼ったの失敗だったか?)

 

 アルクがやらかしたかと考えていると不意にアリスが武器の山の中のある場所に目を向けているのに気づく。アリスの視線の先には巨大な白い何かがあった。

 

「なんだアリス?これに興味があるのか?」

 

 アルクがアリスにそう問いかけると、アリスは首を縦に振った。

 

「コトリちゃん、アリスちゃんが見てるこの大きいのって何?」

 

 どうやらミドリもアリスが武器の山の中に置かれていた巨大なものに目を奪われているのに気づいたらしくコトリに質問する。

 

 コトリはその質問に待ってましたと言わんばかりに答える。

 

「いい質問ですね。これはエンジニア部の下半期の予算、そのうち約70%近くをかけて作られた……エンジニア部の野心作、『宇宙戦艦搭載用レールガン』です!」

 

 コタマがそう言い終わると同時にアルクが武器の山からレールガンを引き抜く。その裏でコトリたちが何か話していたが、アルクは右から左に聞き流しながらあることを考えていた。

 

(これだけデカいと流石に使いにくいよな…あ、そうだ)

 

 アルクは何かを思いついたのか小物入れに入れていた現状保存キューブを取り出し、その中からとある物を取り出す。

 

 それは以前ブラックマーケットで買った機械、名を予見眼という未来が見えるアイテムであった。

 

 アルクがそんなことを考えていると改造したガンブレードをウタハが持ってくる。

 

「代理人、武器の最終確認を頼みたいんだが…って、その手に持ってるものはなんだい?」

 

 ウタハは予見眼に興味があるのか、アルクの手に持っているそれをじっと見つめている。

 

「ん?あーこれか?これは予見眼って言ってな。まぁ簡単に言うと未来が見える義眼だ」

 

 アルクがそう言うとその場にいたほとんどの者たちが喰い付く。

 

「まぁ未来が見えるって言ってもせいぜい数秒だ。しかも見えるのは実際に起こる未来じゃなくて今までこの目に映した情報をもとに演算された結果だ。だから実際は未来が見える目というより超高精度の小型予測装置というのが正しいな」

 

 そこまで言うとその場にいた者たちから落胆の声が上がる。

 

「じゃあ何故代理人はそれを取り出したんだい?」

 

 ウタハがこれからアルクのしようとしていた話について先んじて質問してくる。

 

「いい質問だな、俺はこれをレールガンに組み込もうと思うんだ

 

「レールガンに?」

 

「組み込む?」

 

 モモイとミドリがそう言って首を傾げる。それとは対象的にエンジニア部のメンバーはアルクのやりたいことについて即座に理解した様子であった。

 

「なるほど、そういうことか代理人」

 

「そういうことですね!」

 

「ごめんコトリちゃん未だに把握できてないから解説お願いしてもいいかな」

 

 ミドリがそう言うとコトリはまるで水を得た魚の如く得意げに解説を始める。

 

「おそらく代理人がやろうとしてるのはレールガンの後付けの電子スコープなどのアタッチメントにこの機械を接続して相手の次の動きを常に予測しながら行動できる補助としての役割をつけようとしてるのだと思います!更に超高精度の演算装置ということはそれを流用するだけで姿勢制御や弾道の補正など幅広い用途で使うことが出来るのです!!」

 

 ミドリはその解説を聞いて納得の表情を浮かべる。対してモモイは未だに少し頭にハテナマークを浮かべていた。

 

「ミドリ、つまりどういうことなの?」

 

 モモイのその質問に若干頭を抱えながらミドリが答える

 

「つまり代理人がしようとしてるのはレールガンの高性能化と未来予測演算機能をつけようとしてるんだよ」

 

 その説明を聞いて、ようやく合点がいったのか、モモイは納得の表情を浮かべる。

 

「でも代理人、それだけ高性能ならなにか欠点とかないの?」

 

 モモイがそのような疑問をアルクに投げかけると、その質問の答えを挙げる。

 

「あるかないかで言えばある。まず予測できるのはそれだけ高性能なものを使うならレールガンのバッテリーが持たないとかな。他にはその目はどうやら排熱周りの状態がやられてるっぽくてな、連続使用しすぎるとオーバーヒートする。こっちの問題に関しては元の持ち主も同様の問題を抱えていたから予想ではなく確定だ」

 

「ふむ、となると排熱機構やある程度の機能の制限などが必要かもしれないな。すこし弄ってみるから貸してはもらえないだろうか?」

 

 ウタハそう言ってアルクから予見眼を受け取る。

 

「そうだな…一時間くらいあるから代理人とモモイ達は少しレールガンを使った実戦を試してみるといいよ」

 

 ウタハそう言ってドローンなどを複数出し、工房に戻っていく。

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