「お前か、俺の家族のヘアクーポンを盗んだカスは」
子供はそう言って目の前にいるヘアクーポン泥棒を蹴りつけた。
鈍い轟音と骨が折れる音が木霊し激しい電子音学を一瞬かき消す。でも子供は決してクーポン泥棒を殺さない。
きっとそれは、子供にとって家族に恥をかかせる行為なんだろうね。
「な、なんで殺さない…」
「…俺がお前を殺せばそれは俺の家族を一生ボサボサで生きさせる羽目になる。早く行け、俺の気が変わらないうちにな」
子供がそう言うとクーポン泥棒はその場から一目散に逃走していく。
子供がしばらく待ってから電子音楽を切る。すると子供のもとに別の子供がやってくる。
「兄貴!少し頼みがあるんだ!!」
オールバックに撫でつけた髪に暗い夜でも決して手放さないサングラスが特徴的な子供はあるお願いをしたんだ。
「なに?東部に逃げてきたやつの執行をやりたいって?」
「あぁ、俺がボサボサで生きていかなきゃならなくなった苦痛を俺の手でアイツに刻んでやりたいんだ!」
子供は一瞬悩んでから結論を出した。
「…数日後俺等がとある案件で東部から居ない時間がある。それまでに帳簿の執行をいくつか手伝ってくれるってんなら構わねぇぞ」
「ま、マジか兄貴!おう分かったぜ!どんな野郎でもすぐに執行してきてやる!!」
「ふ、威勢がいいな。それじゃあこれとこれと…あとこれも頼めるか?」
「任せてくれ!!」
フサフサな髪の子供はそう言ってその場を後にしたんだ。
数日後
子供は今、外郭のとある場所を一人で探索していたんだ。
「相変わらず辛気臭い場所だ」
子供がそんな風に言ってると目の前からビル1棟分はありそうな巨大な蛇が現れる。
「肩慣らしにはちょうどいいな」
子供は刺青を光らせ大きく跳躍しその蛇の頭を踵で容易く押し潰す。辺りには頭の潰れた大蛇の死体と子供の踵落としの時に出来た地面のひび割れだけが残っている。
「はぁ…もう少し持ってくれよ。これじゃ全然楽しめないじゃねぇか」
子供がそんなため息を付くと、物陰から複数の音がする。
「あぁ、今の発言は取り消そう。これなら少しは楽しめそうだ」
子供が舌なめずりをする。その視線の先の物陰には先程の大蛇が数十匹は蠢いていた。
「テメェら全員、鏖殺だ!!」
子供はそう言って刺青を光らせ、大蛇の群れに突撃していく。
大蛇の群れをすべて屠った後、子供はその先に進んでいく。
やがて子供は終着点に到着する。子供の視線の先には氷の柱に包まれたまるで山のような黒竜の死骸があった。
「ふぅ…相変わらずここに来ると足枷が少し外れた気がするな」
子供はその死骸に向かって語りかける。
「久しぶりに、帰ってきましたよ。母上」
そう語る子供の目は、わずかに赤く染まり、光り輝いていた。