泣きながら。夜の街をさまよい歩く。
こんな夜に、女が一人で歩いているのは、とても危ないことだって。ママから教わったのに。誰かに食べられてしまっても文句は言えない。殺されてしまっても文句は言えない。
ただ、今は、そんなことはどうでもよかった。どうせならば死んでしまいたい。今の悲しい気持ちをなくしてしまいたい。
ああ、でも、どうせ殺されるのならユージンがよかったと。こころのなかで思いながら。
ぐるぐると私の中の何かが周っていた。前が見えない。声も聞こえない。
「ぉ…びあ。」
こんな時に思い浮かぶのは、ママのあの言葉だった。
『男の子は狼よ。だから、簡単に信じちゃだめ。』
ユージンは狼だったけど、狼じゃなかった。私を食べてくれなかった。
「おりびあ」
誰かが私を呼ぶ声が聞こえる。もしかしたら、彼が追ってきてくれたのかもしれない。でも、私は、振り返りたくはなかった。
いしきがどんどんとおのいていく
かなしいきもちでいっぱいになる
もう、ぜんぶおわりにしたい
もう、ぜんぶおわりにしよう
「オリビア!」
突然、聞きなれない声に意識を戻された。
「エリック…。」
「しっかりしろ!オリビア!」
「エリック!どうしてここに?」
「どうしてじゃない!なんでこんなところにいるんだ!オリビア!」
「わたし、私は…。うぁあぁああ。」
ただ、悲しくて。私は泣く事しかできなかった。
そして、なにかがぷっつりと切れた
ーーーーーーーーーーー
「…ここは。」
目が覚めると、そこは、少し広い部屋だった。質素だけれど、高価そうな飾りが飾れたベットの上だった。
「オリビア…よかった…目が覚めて。」
「エリック…。ここは何処。」
「ああ。ここはうちの大学の寮だよ。いま、僕が住んでいるところ。」
「なるほど?」
「突然、目の前で気を失って、驚いたよ。大丈夫だったかい。」
「ええ。わたしどのくらい寝てたの?」
「いや、そんなに時間は立ってない。せいぜい30分くらいかな。」
「ふーん。」
「はい、ココア。安物だけど、結構落ち着くよ。」
「ありがとう。…ふぅ。」
「にしても、どうしてあんなところで泣いていたんだい。」
「…。振られたの。」
「え?」
「前言ってた彼氏に振られたの。それがちょっとショックで。」
「…そっか。大丈夫かい。よかったら僕が話でも…。」
「いいわよ。エリック。これは私の問題だもの。」
そう。これは私の問題だ。きっと誰かに聞いても答えはないし、誰かに言う必要もない。
「ねえ。オリビアは、なんでそんなに抱え込むんだ。」
「え。」
返ってきたのは意外な答えだった。
「いつも、何か一人で抱え込んで、それを誰にも悟られないようしてさ。でも、突然何かを起こしてさ。僕たちにはどうしたいのか分からないんだよ。」
「だって。あなたには関係ない。」
「関係あるよ。3年前だってそうだ。前から、オリビアがあの村に不満があることはなんとなくわかってた。だから、僕たちがどうにかしようって思って。でも君はいつも笑うだけで、何も話してくれなかった。それで突然いなくなっちゃうんだから。不安だったよ。僕らがオリビアに嫌なことをしたんじゃないかって。」
「そんなことは…。」
「僕は、心配なんだ。君の笑顔がなくなるのは。だって。僕は。僕だって...君を愛してるから。」
「エリック。」
「あ、愛してるってのは。その。そういう意味じゃなくて。」
「ありがとう。エリック。」
「へ?」
「また。相談してもいい?」
「あ、ああ。僕でよければ。」
「ありがと。」
私は、意固地になりすぎていたのかもしれない。ママに言われたあの言葉のせいで、人をちゃんと見ていなかったのかもしれない。
まだ、心は晴れないけれど、それでも、少しだけ、前を向けるような気がした。
「そろそろ帰らなきゃ。ルームメイトに怒られちゃう。」
「そっか。帰りは送ってくよ。」
また、いつもの日常が始まっていく。