星の降りたこの街で   作:わし座53番星

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変わらない日常

「おはよう。朝帰りなんて随分といいご身分ね。」

「おはよう。相変わらずあんたは嫌味ね。アビー。」

 

結局あの後眠ってしまって、帰ってきたのは日の出始めた所だった。帰りはエリックに送ってもらったものだから、アビーに小言を言われている。まあ、いつも通りの朝だ。

 

「しかも、いつもとは別の男と帰ってくるなんて。男に困ってないなんて良く言えたものね。」

「あ、そのことなんだけど。」

「え。」

「あの狼とは別れた。」

「はぁ!大丈夫なのあんた。あんなにラブラブだったのに、よく普通に過ごせるわね。」

「ラブラブって。それに、私。アンタみたいに男に依存したりしないから。」

「はあ。図太いというかなんというか。」

 

余計なお世話だ。ただ、今日は、ふと聞いてみたいことがあった。

 

「アビーてさ、何だかんだ私のこと心配してくれるよね。」

「はぁ!何よ急に。」

「この間だって、私にアドバイスくれたじゃん。それに、傷ついたときに色々話聞いてくれるし。」

相変わらず口は悪いけれど。

「…見てられないのよ。昔の自分を見るようで。」

「え。」

「私だって21歳。アンタより4年も長く生きてるの。私だって昔は故郷が嫌いだったし、身の程知らずの恋だってした。そう言うときの傷は私が一番よく知ってるから。」

「アビー。」

「まあ、アンタは先輩に対してすっごく態度悪いから。いつもは嫌いだけど。なんだか放っておけなくてね。」

「…ありがとう。」

「なによ。今日はやけに静かじゃない。張り合いがないわよ。」

「いいの。私は正直に生きたいって決めたから。」

 

こうやって、私たちの日常は過ぎていく。少しずつ。みんなが寄り添いあって生きていく。

心の傷は癒えないけれど。きっといつかは。

 

「オリビアちゃん。なんか吹っ切れたみたいな顔してるね。」

「え。何ですか急に。」

常連さんの図星に笑って答える。

「いやぁ。最近はなんか疲れた顔してたからさ。まあ、昔に比べて辛そうなのは変わらないけれど。」

「そうですか。」

「こうやってオリビアちゃんも成長していくんだろうな。いつか俺の手の届かないところに。」

「ばか言ってんじゃないよ。オリビアは今だってあんたじゃ届かないんだからさ。」

「おかみさん。」

「オリビア。アンタに何があったかは知らない。ただ、今は仕事中だ。泣いたら容赦しないからね。」

「はい。今日も頑張ります。」

 

辛い恋だった。苦しい恋だった。でも、それも今日で終わり。私はいまできる最大限の仕事をするし、この街で生きていく。きっと彼のことも、どんどん忘れていくのだろう。

でも。そう思うと、心の奥がちくっとした。

 

 

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