澄み渡る青い空。鮮やかな日差し。いつもの霧が嘘のように、晴れ渡っていた。
まるで、私たちの門出を祝福しているかのようでいて。迷いのない私の心を移すようで。素直に美しいと感じた。
「たしか。9番線に、あ、いた。おーい。」
駅のプラットホームでエリックを見つける。私の姿をみて、何かぽかんとしていた。
「おはよう。オリビア。その荷物ってことは。」
「そう。今日はただのお見送りよ。」
「そっか。適わないな。オリビアには。」
私は、もう迷わないって決めたのだ。ユージンを選べて。ユージンに選んでもらえて、私は今、とても幸せだ。そう心の底から思えた。だけど、エリックと一言も話さずお別れするのはさみしいから。今日は彼を見送りに来たのだ。
「いい顔をするようになったねオリビア。」
「えへへ。ありがとう。」
「僕じゃあその顔にさせられなかった。だからこれでよかったんだけれど。」
「だけど?」
「やっぱり。振られるっていうのは悲しい物だな。」
「泣かないで。って、私が言えた口じゃないけれど。でも、きっとエリックなら。いい人見つかるわよ。」
「そうだと良いんだけれど。」
「そう。だから、振り返らないで。こんな浮気性ウサギの事なんか忘れた忘れた。さあ、もうすぐで電車出ちゃうわよ。」
「あっとと。」
そういって彼を電車に押し込めた。発車時間はもうすぐだ。彼と。故郷との別れももうすぐだ。
この街は。今日も生きている。辛いことも多いし、嫌な部分だっていっぱいあった。でも、私にとって思い出をくれた大切な場所だ。あの、美しい景色を見せてくれた大切な場所だ。これからも。きっと彼と私で多くの思い出を作っていくだろう。
遠い未来に夢をはせながら。最後に彼に手を振った。
これから私は、きっと大変な道を歩むと思う。貴族と庶民との結婚だ。覚えることもたくさんある。でも、この恋を通じて、全てが嫌な事ばかりではないと気付いた。全てが私を嫌っているわけではないと。だから、きっと。これからは、前を向いて歩いて行ける。そんな気がした。
「最後に一つだけ教えてほしい。」
発車間際。窓のそばに座ったエリックが、見送る私に話しかけてきた。
「なに。」
「彼と僕とは、何が違ったんだ。何か僕が悪いことをしてしまったかい。」
「そうね…。あなたに悪い部分は何もなかったかな。ただ。」
「ただ?」
「これは。食べられたいって思うくらい。素敵な恋だっただけ。」
私は笑顔でそう答えた。
汽笛が鳴る。彼の声をかき消すように、煙を出しながら。汽車が遠ざかっていく。