その日は、朝から苦い雨が降っていた。
いつもだったらこんな日は、家でゆっくりしていたいものだけれど。今日は用事が出来てしまった。
「ああ、オリビア。明日買い出しに行ってもらえるか。」
「え、私ですか。」
「ああそうさ。手が空いてるのが君ぐらいしかいなくてね。スノーフォード1番通りの調味料屋さんに、このリストをわたしておくれ。」
「結構遠いじゃないですか。」
「荷馬車が壊れちまったみたいでね。しばらく配達ができないらしいんだ。まあでも、歩いて行ける距離ではあるだろう。」
「はいはい。分かりました。」
て言っても。私はあまり外に出かけるタイプじゃない。そもそもっ方向音痴だし。だから、当然のように道に迷ってしまった。
「はぁ。ここ何処よ。」
分からずにあてずっぽうで、時に人に道を聞いたり。それでも何とか目的地にたどりついて、目的を果たしたのだけれど。問題は帰り道だった。
いざ帰ろうと思った矢先。行きと違う風景に戸惑って、きっと目的地とは間違った方向に進んでいたのだろう。
普段は見慣れない、おしゃれでなんだか新しそうな路地についてしまった。
「あの、すみません。」
「……」
さっきから何だか無視されやすい。そもそも、街を歩いている人たちも、なんだか高そうな服を着ていて、私が話しかけると嫌な顔をする人が多かった。
そんなこんなで、街をさまよっていた。街の中心地にどんどんと入りこんでいくようだった。
ふと、何か直感のような物を感じて、商店街のショウウィンドを覗き込んだ。
そこには、おしゃれなブティックがあった。真新しいドレスが並べられ、キラキラ輝いていた。
ふと、店先のガラスの奥に。何かの影が動くのが見えた。それは二匹の狼だった。
二人は、何を言っているのか分からなかったけれど、とても楽しそうだった。
特に一匹の女性の狼は、男性の狼に身を寄せて、次々と綺麗な服を選んでいた。
はたから見ると、それはまさしく運命のつがいに見えた。
「ユージン。」
彼の顔を見て、初めて嫌な気分になった。
覚悟だって決めていた。いつか別れないとって思ってた。でも、こんなに早く来るなんて思ってもなかった。
私がいたら、彼らの平和をなくしてしまう。私はきっと、彼らの隙に入ることなんてできないと。そう思った。
私は、胸のもやもやを抱えたまま。そのままその店を離れていった。
「……」
「どうしました。ユージン。」
「いいや、何かの視線を感じたんだ。気にすることはないよ、ローザ。」
雨の中。霧の深いこの街で、私の心は町の中に溶けていく。