壊獣戦隊ギラギラズ   作:こけしんツヴァイ

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第一章
第一ギラズ「はじめのいっぽ!」


 

 

花々目覚める春爛漫。桜舞い散るあの海辺、夕暮れ、ある女の子と出会いました。

こちらに向けた、その朗らかな笑顔、潮の香りになびく黒髪、赤く溶ける唇、まるで絵のなかのような景色に、私は見惚れてしまったのです。

彼女が伸ばした腕は透き通るように白く、逆光になった影は妖精のようにおそろしく、

「一緒に、やりませんか」

その手に私は、手を重ね、

 

第一ギラズ「はじめのいっぽ!」

 

海の街、充戸ジュウト。小高い丘の上、開発された住宅地の一角にその家はあった。

海宝家、かつて政治家として名を馳せた海宝カイホウメイが建てたその家は、なかに一軒家が10軒入ってしまうほど広大な敷地を持つ、和風モダンな豪邸である。

その朝、ひとりの少年がかけ布団から顔を出し、細い目を嫌そうに擦っていた。

海宝輝乃テルノ、命の孫であり、街にある東方中学への入学を目前に控えた、12歳の少年だ。

水色のパジャマを揺らしてリビングに進むと、そこには亜麻色の着物の男が朝食を用意して待っている。使用人、セブンである。

「輝乃さま、白米に卵焼きと味噌汁、ヨーグルト、今日の朝食でございます」

「ありがと〜セブン、ふわぁ〜あ……」

木の椅子にちょこんと座った輝乃は、セブンと同時に手を合わせて、

「いただきます」

 

 

「輝乃さま、昨日はいい絵を描けましたか?」

「むー?……うん、まあ、ぼちぼち、かな」

輝乃の箸の動きは遅かった、彼は味噌汁に映った自分の顔を見て、ひとつため息をつく。

「私、不安なんだ、中学のこと」

「大丈夫でございますよ!」セブンは笑ってみせる。

「他の方のことが怖ければ、妄想のなかに逃げてしまっても構わないのです!それに古鳥さまもご一緒なのでしょう?ならば心配することはありません!」

「でも古鳥ばかりに頼ってられないよ、忙しいし、私が変わらなきゃいけないんだ……」

スズメの囀りが聞こえる。セブンは戸棚に置かれた写真を見る、それは幼い頃の輝乃が両親と一緒に公園で笑っている写真だった。

大洋タイヨウさまと月世ツクヨさまは、現在モンゴルにいると聞きます。次の帰国は4ヶ月後、寂しいかもしれませんが、夏休みにはまた会えますよ」

「うん、そうだね」

それから終始無音のまま時間が進む、そして朝8時半、朝食を終えた輝乃は洗い物をセブンに任せ、窓から見える海を見ながら言った。

「今日は街を散歩してくるよ。そうだ、なにか買ってこなきゃいけないものとかない?ついでに行ってくるから」

「いえいえ!輝乃さまにお手数をおかけするわけにはございません!創作には外の空気が大事、どうぞごゆっくり、いってらっしゃいませ」

「そっ、か……」

窓ガラスの外でトンビが風に乗っていた。

 

 

 

充戸の駅前、都心からさほど離れていないこの場所は、居酒屋やコンセプトカフェなどがビルの中に乱立し、どこか薄汚れて、乱雑した繁華街の様相を醸し出していた。

バスから降りて空を見上げた輝乃は、またひとつため息をついて足を進める。

「(他人のことが怖くなったのは、いつの頃だったか覚えてない。知らない誰かに話しかけられることが、なんでだか猛獣に襲われるみたいで、むしろこういう人混みの方が安心できる気がした)」

スマホを片手に進む会社員、営業スマイルでチラシを配るメイドカフェの店員、路地裏でタバコを吸う金髪の青年たち。彼らを後目にビルのエレベーターに乗った輝乃は、監視カメラを見て壁に寄りかかった。

「(自分は立派な人間じゃないってつくづく思う、お父さんたちは冒険家で、世界を巡って本を書いて、みんなから好かれているし、例えば友達の古鳥、昔からスポーツが得意で、今度水泳で大きな大会に出るらしい)」

「(そんな人たちと一緒にいるのに、私は昔から運動も勉強も、なにをやってもダメだった。絵は好きだけど、それも下手なんじゃないかって、最近は思う。夢なんてものも、ない)」

扉が開いてサブカル専門の書店に出る。店内を歩きまわりながら、流行りの日常系アニメの広告を見かけた輝乃は、楽しそうなそのキャラクターの笑顔を見て独りごちた。

「私も、あんな風になれるかな」

 

 

運動部の声かけが空に響いている。

東方中学、2日後に入学する予定のこの場所を、緑の茂る道、輝乃はフェンスの向こうからレジ袋を片手に見つめていた。

「むぅ〜やっぱりプレッシャーだよここ……あーヤダヤダ」

「あれ、輝乃?」

振り向くと既に中学のジャージを着た友人、稲杜イナモリ古鳥コトリがいた。入学は明後日、なんだかチグハグな景色にパチクリさせていると、古鳥は気づいたように口を開けて、

「あーそっか、ほら!オレ、水泳で入ったからさ!入学前からこうやってガッコーに来てんだよ!」

「はえー、すごいね古鳥は」

「ふっふっふー!褒めるがよいぞよいぞ!なんで褒められたのか分かんないけど」

「すごいから褒めたの、うん」

「それで?輝乃おぼっちゃまがガッコー見学なんて珍しいんじゃないかにゃあ?」

「たまたま!たまたま散歩の途中で来ただけだから!」

「ふぅむ、やや?」

ふとレジ袋が目に入った古鳥、頬を上げて輝乃の肩に引っついた。

「ややややや!それ駅前のオレンジ堂の袋でしょ!?今日はなぁに買ってきたの!?」

「むっ!?もー引っつかないでよ!」

「いーじゃんいーじゃん!ピッカピカの中学生にはなかなか入りずらいトコなんだし!庶民さまには漫画も高いんだから!見せて見せて!」

「いーやーだー!」

「お願い!ちょっとだけ!先っちょだけだから!」

「いやなんの」

「なんだろうね?……あ!あそこに空飛ぶエチゼンヒューマンが!」

「なんだその生き物」

とは言いながらも指差した方向を見た輝乃に、

「隙あり!」

「みゃっ!?ちょ、ちょっとぉもー!」

古鳥は脇腹にくすぐりをかけレジ袋を落とすことに成功、中の漫画をとりだして眺める。

「あー!ズルい!」

「しめしめ、さーて、わ、また変な漫画買ってる、なになに、王子様系アンソロジー?壁ドン、顎クイ?優しくて強引な美少女たち?」

「ちょっとぉ……恥ずかしいから朗読しないでよぉ……!」

「ふーん、輝乃はこんなの好きなんだ……?」

「えっ?なになになにっ!?」

少し考えた古鳥は輝乃を追い込んで、ドンと平手を顔の右横に押し、フェンスを揺らした。

「なあ、ドキっとした?」

「すこし?」

「そっかー!」

レジ袋ごと漫画を返し、古鳥は学校のなかへ戻っていく。

「イタズラして悪かったな!気をつけて帰りなはれー!」

「う、うん!じゃあね!」

向こうで見知らぬ少年たちと談笑をはじめる古鳥の姿が見える、輝乃はフェンスを握ると、またため息をついてトボトボと歩きだした。

 

 

「本当にすごいなぁ、古鳥は」

街の本屋の前、キャッキャと笑いながら過ぎていく幼稚園児たちを見て輝乃は呟いた。

「もう知らない人たちとも仲良くできて、部活もはじめて、なんだか青春って感じ」

遠くで波の音が聞こえる、正午を過ぎて日も傾きはじめ、街の影も輝乃にかかりはじめた。

「むー!ダメダメ!変わらなきゃって思ったんだ!ちゃんとしなきゃ!うん!」

海の方へ無意識に歩き出す輝乃、すぐ止まり、それでも頭を振って海岸へと向かう。

 

 

充戸海岸、かつて合戦も起きたというこの場所に、気づけば輝乃はやってきていた。

「……あれ?」

砂浜でヘッドホンをつけた少女が、踊るような身のこなしで飛びかかるような動きをし、拳を突き出したかと思うと、回し蹴りを繰り出した。無に向かって。

「あの子、なにしてるのかな?」

なんとなく気になって近づいてみる輝乃。ヘッドホンをしているせいか、少女は輝乃のことにいっさい気づかず、やがて近づいていた輝乃に、

「えいやーっ!」

「みゃっ!?」

危うく蹴りを繰り出すところだった。

「あわわっ!?ごめんなさい!」

輝乃に気づいた少女はヘッドホンを外して手を振りまわす。

「あのっ!おケガとかありませんか!?わたし、集中しちゃうと周りが見えなくなっちゃうタイプで、ああやっちゃったぁ……!」

「そ、そんなに謝らなくていいですよ!近づいた私も悪かったわけで……!」

お互いにアタフタした姿が少し面白かったか、二人は顔を合わせると笑ってしまっていた。

流木の上、二人は座って話しだす。

「わたし、いつもここで練習してて」

「なんの?ダンス?」

「ヒーロンですよ!」

「ヒーロン?」

「知らないんですか!?」

少女は赤いラインの入った五角形の白い印籠のようなものを見せた。

「まー、ゲームみたいなものです!このヒーロンアイコンで変身して、例えば敵に見つからずにトロフィーを取ってくるとか、バーチャル世界に入って色々なお題をクリアする、体を動かすタイプのやつです!」

「はえ、はじめて知った……」

「あわわ、ネットじゃ常識ですよ、ちょっとした大会もあったりして」

「ごめんね、うち、ネットとかまだ早いって言われてて……」

セブンの顔が思い浮かぶ。

「それは、まあ、お気の毒に」

言い淀む輝乃に少女もなにか察して同情するような声をかけた。

「さっき言ったように、ヒーロンってけっこー体を使うゲームで。変身できたら少しは強くなれますけれど、やっぱり練習はあった方が有利と言うか。あ!あとそれにですね!」

少女は輝乃の前に両手を伸ばして立ち上がる、それがちょうど太陽と重なって逆光となり、輝乃はハッと目を丸くした。

「ヒーロンで一番大事なことは、心からゲームを楽しむことです!心のリズムを合わせて、体を動かして!全てが最高にゲームをクリアできたら、それが本当に気持ちよくて!!」

潮に揺れる長い黒髪、語らいかける朗らかな笑顔、

「そうだ!せっかくだからわたしが教えてあげますよ!ですから!」

そして伸ばされた腕は白く透き通っていて、

「一緒にヒーロン、やりませんか!!」

「……うん」

焼きつかれた情景に、輝乃は思わず手をとってしまっていた。

 

 

「これ、あなたにあげます!」

少女にヒーロンアイコンを渡され、輝乃は眉を歪めた。

「いいの?大事なものじゃないの?」

「予備だから大丈夫です!お下がりは嫌でしたか?」

「い、いやっ!嫌じゃないよ!?」

「どっち?」

手のひらの五角形にわずかに温もりがある、それを感じることがなんだかいけないことをしているみたいで、輝乃はドキドキしていた。

「それじゃあ最初はチェンジからがいいですね!まずアイコンを両手で持って」

「両手で」

「で、次にこう!やって前に突き出します」

「こう!……?」

「もうちょっと捻りを加えるといいかもです」

「あ、はい」

「それで右手で持ったまま両腕をタイヤのように回して左の腰に持っていって」

「うわっ!?ちょっと動きが早いって!!」

「あ!ごめんなさい!ゆっくりやりますね!」

ここまでの一連の動きをゆっくりやってみせる少女、輝乃はチラチラと見ながらそれを真似した。

「最後にまた前に突き出して……ヒーロンチェンジ!って叫びます!」

「ヒーロンチェンジ?」

「それでアイコンの下にあるボタンを押すのです!」

「えっと、それってつまり最後のボタンだけ押しちゃえばいいんじゃ……」

「あわ?なんですか?」

輝乃を少女は睨みつけ、まくし立てた。

「ヒーローっていうのは変身ポーズが大事なんです!かっこいい決めポーズと言葉を言って!最後に決めゼリフ!それがヒーローってやつなんですよ!それにヒーロンチェンジは言わなきゃ稼働しませんし!」

「えっと……ごめん……」

「それじゃもう一度やりますね!まずアイコンを……」

そのとき、頭上の方で「ドゴゴン」と雷の鳴る音がし、同時にじわじわと周りの温度が上がっていく。急に上がった気温に、輝乃は服をパタパタさせて少女に聞いた。

「ねえ、なんか暑くない?この時間はまだ冷えると思うんだけど……」

少女は上を向いていた、その顔は険しく、輝乃は少し怖く感じる。

「えっと、どうしたの……?」

「はやく逃げてください!」

「えっ!?なに、急にどうしたのっ!?」

「いいですから!ヂバジデが……」

「じば、なに?」

「ヂバジデが、きます!!」

見上げる大空、とつじょ紫色の暗雲が立ち込めたかと思うと、まるでバグったかのようにノイズが走り、紫の電光とともに空に穴が開き、1体の怪人が落下する。

砂埃を払い現れたのは、その筒状のボディに炎を燃え上がらせた、ダルマストーブを人間の形にしたような姿、ヂバジデのヂェスター(怪人)、ヂストーブである!

「ストーン!我こそは荷電国家ヂバジデのヂェスターにして、人間界侵攻の一番隊!ヂストーブなり!この世界の人間、全てヂバジデのために使われるといい!ストーン!!」

ヂストーブは体から強烈な熱波を放射、輝乃たちは吹き飛ばされ、海岸の木々は瞬く間に燃え出した。

「うえっ……うえっ!?な、本物の怪人っ!?」

「下がっててください!」

少女はヂストーブの前に出ると、ヒーロンアイコンを握り、睨みつけた。

「なんだ?人間」

「この時がくるのは分かっていました、わたしが、おまえを倒します!」

アイコンを持った両腕を前に突き出し、回して左腰に持っていくと、また突き出して叫ぶ。

「ヒーロンチェンジ!!」

そして下部のボタンを押すと、歌うようなアナウンスが鳴り響き、少女の体は緑色のノイズに包まれた。

《リズムスタート!蝶のように舞え!バタフライスキーンッ!!マっちゃえーっ!!》

ノイズの体は徐々に緑色の蝶を模したスーツに纏われていくと、最後は顔が歪み、ギラギラとしたマスクに覆われる。

そうして全身がスーツに包まれた少女、踊るような足取りでヂストーブに指さした。

「緑色鱗粉蝶!ギラギラモスフォ!!」

「うっそ……本当に変身した……」

流木の向こうで輝乃は驚いている。

「ギラギラと、ぶっ壊します!」

「我をぶっ壊す、だとぉ?」

決めセリフのギラギラモスフォにヂストーブは指をならす、すると空間にノイズが走り、それはバグったかのような色彩の戦闘員、ジャミンへと変わった。

「そこの人間を倒せ!ジャミンども!」

ビーム銃で襲い掛かるジャミンたち、対してギラギラモスフォはうちわのような武器、"モスファン"を召喚すると光線を全て跳ね返してしまうのだった。

「なにい!?」

「えいやーっ!」

飛びかかったギラギラモスフォがモスファンを振るうと緑色の風が発生、風とファンの刃でジャミンらは次々と切り捨てられていき、ノイズを残して消滅していく。

「すごい!あの子、強い!」

ジャミンを一掃したギラギラモスフォはヂストーブへと襲い掛かる、その猛攻に怪人もかわすことで精一杯となるが、ふと隙を見つけると、熱波を放って吹き飛ばし、ギラギラモスフォはテトラポットに激突してしまう。

「にゃろー!」

なんとか立ち上がるとモスファンでまた切り掛かっていくギラギラモスフォだが、ヂストーブの熱波に着々とダメージを負っていき、ついにパンチを胸元に食らってしまう。

「うぐっ……!?」

「まだ我は遊び足りないぞ!」

倒れたモスフォにヂストーブは蹴りをくらわした、何度も踏みつけを行い、やがてマスクが消滅して少女の素顔が晒される。

「そんなっ……!ゲームじゃ完璧だったのに……っ!」

「ゲーム感覚で戦場にくるんじゃないぜ、ヒトメスちゃんよぉ」

一方、絶体絶命の少女の姿に、輝乃はヒーロンアイコンを片手に悩んでいた。

「(このままじゃあの子は……でも、あんなの、私は……!)」

ふと逆光の姿が脳裏に浮かぶ、自分に手を差し伸べてくれた、あの腕、あの笑顔、

「そうだ、私は、私はーーーっ!!!」

それは初めの一歩、

靴跡をしっかりと砂浜につけると、少女に言われた通り、両手を突き出して、回して、また突き出してアイコンのボタンを押す。

「ヒーロンチェンジ!」

《リズムスタート!》

輝乃の頭に光が走る、心臓が高鳴る、心が晴れやかになっていく、脳と、体と、心がリンクして、ノイズのかかった自分の姿が、別のなにかに変身していくのを感じていた。

《火を吹け!怪獣スキーンッ!!ノっちゃえーッ!!!》

次に訪れたのは体の奥底から湧き上がる炎、その瞬間に熱波が起こり、ヂストーブと少女は信じられないものを見るように立ち止まっていた。

「今度はなんだっ!?」

炎の向こう、ゆらめく陽炎、赤いトカゲ型怪獣のスーツを纏い、尻尾のごとき剣"ザウルソード"を片手に持った真紅のファイター、ギラギラザウルスが立っていたのである。

「うそ、あの男の子が、ですかっ!?」

「むっ?むむむっ!?」

だが一番驚いていたのは輝乃、ギラギラザウルス本人だった。身体中をペタペタ触りザウルソードを興味ありげに眺めていた。

「うそうそうそっ!なんだこれ、なんかカッコいい!!」

「気をつけて!」

気づけばヂストーブが灼熱の拳で襲いかかってきていた。やがて掴まれたまま後退させられていくが、本能的にザウルソードで腕を切り、攻撃から解放される。

「あっつっつ……!でもなんかいける気がしたから、いけた!」

「ヒーロンチェンジしたら変身後の戦士の本能が体に宿るのです!なかでも君の変身したものはウルトラレアな怪獣スキン!わたしも欲し……最強の超攻撃型ヒーローですよ!」

「な、なるほどっ!」

再びマスクをつけた少女は蝶のように飛びギラギラザウルスの隣に立った。そしてモスファンを手にすると力強く言い放つ。

「このまま一緒に、あいつをぶっ壊しましょう!」

「ガキどもが、舐めんじゃねぇーっ!!」

一段と強い熱波を放ち全てを焼き尽くさんとするヂストーブ、それをギラギラザウルスはザウルソードで一刀両断にすると、そこにギラギラモスフォが風に乗ったままモスファンで連撃。突風に乗せて上空にヂストーブを吹き飛ばした。

そしてそれぞれの武器にヒーロンアイコンを装着すると、赤と緑、二つのエネルギーが渦を巻いて二人を取り囲む。

《テンポアーップ!》

「「疾風迅雷、熱風ブレス!!」」

《ノリノリだぜーーーッッッ!!!》

けたたましいアナウンスと共に風と炎の斬撃を放つヒーローたち、彼らの攻撃は途中で巨大な炎の竜巻となり、そのなかでヂストーブを焼き尽くした。

「我が燃やされるとは!落ちます!落ちます!ストーン!」

海に落下したヂストーブは大きなノイズを起こすと爆発四散。肉片は電子と消え、それを背後に二人は決めポーズを取っていたのだった。

「「ゲーム、クリア!!」」

《お疲れさまでしたーッ!》

海岸の端、防波林のなか、黄色のメッシュのひとりの少女が戦いの様子を眺めていた。

その少女はヒーロンアイコンを持ち、舌打ちをするとその場を去っていく。

 

 

 

 

『彼女が伸ばした腕は透き通るように白く、逆光になった影は妖精のようにおそろしく、「一緒に、やりませんか」その手に私は、手を重ね、』

その夜、輝乃は日記を書きながらニヤニヤと笑っている。

 

戦いのあと、輝乃は少女にヒーロンアイコンを返却していた。

「やっぱりこれは返すよ、きっと、たぶん君にとって大事なものだと思うから」

「そんなっ!?……そう、ですか」

「あとさ、ありがとね、その、知らないものを見せてくれて、楽しかったよ!」

そう告げて少女から離れようとする輝乃、だが去り際の彼の腕を少女は掴んで言い放った。

「その!わたし、いつもここで練習してますから!だから、もし、もしまたヒーロンやりたくなったときは来てください!今度はじっくり教えます!だから、わたし、待ってますから!!」

 

「待ってます、か」

少女の声と顔を思い出す輝乃はふふっと笑って、

「不思議な子だったなぁ……なんか、あの子とは怖がらずに話し合えた気がする、古鳥のときと同じ、だから、中学、うん、きっと大丈夫だよ!」

日記を本棚にしまってルンルンとベッドのなかに潜っていくのだった。

 

 

 

2日後、東方中学。

慣れない黒い制服にギクシャクしながらも、輝乃は指定された教室に向かっていた。

「確か1の3、だったよね……?」

ガラガラとドアを開けると、無数の視線が集まって心臓の鼓動が高鳴り、眩暈が視界を歪ませた。

「(ヤバい、この空間、苦手……)」

卒倒しそうな自分を抑え、俯いてなんとか指定の席に向かう輝乃。だが席についた瞬間、隣から聞き覚えのある声がして小さな悲鳴をあげてしまった。

「あーー!あなたはおとといの!!」

顔を見る、左手を取られる、そこにはあの少女が笑顔で座っていたのだった。

「また会いましたね!わたしは佑月ユヅキあげはです!まさか同じ学校だなんてびっくりしました!」

頭が追いつかない、なに、なぜ、どうして、周りの目まで集めちゃってる、消えたい、

そんな思考も次の言葉の衝撃に、軽く受け流されてしまった。

「わたしと一緒にやりませんか?壊獣カイジュウ戦隊、ギラギラズ!!」

「……えっ?」

 

 

つづく

 

 

 

おまけ

 

東方中学学級日誌次回予告

 

皆さんはじめまして、海宝輝乃です

いよいよ中学本番、だけど私に待ち受けていたのは保健室の主に、変な委員長に、ストーカーはあの女の子!?おまけに変な喋り方のヂバジデまで現れて……もうヤダ!

次回「これってユーウツ?それともロボッツ?」

入学そうそう憂鬱だー!!

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