オレ、
「ひぃ〜!おたすけ〜!」
大事な弟分、
生徒たちをかき分けて階段を駆け降りようとする輝乃、ため息混じりに、追いかけまわすやつの前に立ち塞がってやる。輝乃は泣きそうな目でひっついてくる、よしよし。
「おいやめろよ!輝乃が嫌がってるだろ!」
「ひぃ〜ん!」
「あわわ、おっすおっすです古鳥っち!」
「古鳥っちじゃない!稲杜さんと呼べ!リピートアフターミー!い・な・も・り・さ・ん!」
「古鳥たぶんそういうことじゃないと思う」
「え〜、いいじゃないですか!それよりもぉ♪」
あげはは五角形のものを取り出してくる、ヒーロンアイコン、それを見て息を呑んだ。
「古鳥っちもやってくれるんですよね、ギラギラズぅ♪言ってくれたじゃないですかぁ♪」
「そ、それは……っ!」
そしてオレもこいつに弱みを握られている、そのせいで強く輝乃のことを守れない。くっ、あの日のことを後悔する、どうしてあんなことを、ちがう、不可抗力だった、あれは。
「輝乃〜♪ 古鳥っち〜♪ 二人とも逃しませんからねぇ♪ 3人でやりましょう!
「やだ〜〜!!」
どうしてこうなったのか、話は3日前の入学式の翌日に遡る……
灰色の無秩序な建造物が並び、影も光も全てが灰色。空にかかる雲には常時真っ白な稲光がまたたく、そんな白黒テレビのような世界があった。
世界の名は「オン」。荷電国家ヂバジデの存在する世界である。
建物群のなかには雲まで伸びる木のような巨大なオブジェがあり、中心部には人と怪物を合わせたような名状しがたい顔の意匠が。
ところどころになった実のような部分の内部には、灰色の世界では浮いてるだろう黄緑、ピンク、紫、黒の極彩色の戦闘員、ジャミンが細菌のごとく蠢いている。
ヂバジデの本拠地「黎明の塔」である。
その一番上、パラボラアンテナと鳥の顔を合わせた部分の内部には虹色の蔦で覆われた真っ黒の空間があり、地面から灰色の腕が3本伸びてきたかと思うと、手のひらにそれぞれ人物が乗っていた。彼らこそヂバジデの幹部「3C」である。
レイ、腰まで伸ばした水色の髪に白い氷の結晶のアクセサリーをつけた女性。さまざまな青みが差し色に入った深紅の軍服の腰には、まるで武器のように知恵の輪がかけられている。
「先日のヂストーブによるアンの侵攻だが、何者かによって防がれたと聞いたな」
「はいレイさま、生き残ったジャミンによる報告によると、ギラギラモスフォ、ギラギラザウルスという名のヒトの子供二人が、ヂストーブを破壊したとのことで」
振袖のついた群青のスーツを着て、先端にアンテナのつきの旧時代のテレビがついた錫杖を持った男が言う。目は赤と青のオッドアイで、黒い髪には差し色とばかりに黄色いメッシュ。唇は青く、ネクタイはジャミンと同じ配色をしている。名前はイロと言った。
「うむ、それは興味深いことだね」
口をはさんだのは鳥の巣のようなもじゃもじゃ頭の男だった。くるぶしまで届く白衣を羽織り、首にはハンガー型のネックレスをぶら下げ、丸メガネは洗濯バサミがついたせいでパーティー眼鏡のようになっている。
「ヂストーブは吾輩が作ったテラフォーミング専門のヂェスターだった、つまり真価を発揮する前に倒されては全く意味のないということだ。まったく、不愉快なことだよ」
「テメェの感想はいい、それよりもこれを受けて次の作戦を進めたいと思うが」
「レイさま、なにかあるのですか?」
「レイちゃんは氷の女、いちいち余計な感情に縛られているわけにはいかない、来い」
レイが手を叩くとけたたましいベルの音とともにママチャリに乗ったサイクリングジャージを着た男がやってくる。その目にはなぜか水泳用のゴーグルをつけ、ニッと笑ってみせた。
「お呼びでしょうか!レイさま!ヂジテンシャ、ただいま到着いたしましたっシャ!」
「ほう、ヂジテンシャか」
ナガレはもじゃもじゃ頭を掻いて、
「確かにこの子は心強い、咲き乱れることなく終わったヂストーブの代わりに、君が吾輩の芸術を魅せてくれたまえ」
「はいっシャ!」
「それでは次の作戦も決まったところで」
イロは錫杖を天に突き叫ぶ、レイとナガレもそれに続いた。
「我らが偉大な指導者、荷電皇の名のもとに、オンに彩りが与えられんことを!」
「「与えられんことを!」」
テレビのついた錫杖の先、そこには灰色の巨大な脳みそがあった。
東方中学校、入学式翌日、
「一緒にやりませんか!壊獣戦隊、ギラギラズ!」
あげはとの再会、キラキラ笑顔と同時に差し出された手、それを見て輝乃は、
「う、う、うわーーーーーっ!!!!!」
逃げた、それはもう脱兎のごとく逃げたのだ。
「あーっ!?どうして逃げるのですか!?」
ピンチに陥ったときの輝乃の足は早い、今朝行ったばかりの2階の男子トイレに飛び込むと鍵をかけて個室に閉じこもってしまったのである。
「あれー?輝乃どこ行ったんでしょうか?」
外の方で通り過ぎていくあげはの声、頭を抱えた輝乃はパニックのまま、
「(むむむむむ!ど、ど、どうしよう!わ、私、逃げちゃった、けど、あの子が私と同じクラスで、あの時のことは夢じゃなくて、なんか変なこと言われて、周りに変な目で見られて、むむ、むむ、むむむむむーーーーっ!!??)」
ふと思い出す、セブンから教えてもらったリラックス方法、胸に手を当てて、目を瞑って、ひっひっふー、ひっひっふー、その繰り返し。そうして頭のなかの酸素が交換されると幾分か落ちついてきた。
「と、とりあえず教室戻らなきゃダメだよね……?たぶん色々あると思うし、怒られるのもやだし、それにあの子ともきちんと話、しなくちゃ……」
ビクビクと震えながら鍵を開ける、そしてゆっくりとドアを開けて出入り口の方を見ると、
「見つけましたよっ!てーるのっ!」
「ぎゃーーーーっ!!!!」
輝乃の絶叫がこだました。
保健室にて、輝乃が目を覚ますと、そこには古鳥の姿が。
「ややっ!輝乃っ!大丈夫かっ!?」
「ことり、なんで?」
「なんでって、お前が倒れたって聞いたから急いできたんだよ!たく、だから一人じゃ心配だったんだって……」
「あ、あのっ!」
古鳥の後ろから声が、そこにはあげはが申し訳なさそうにもじもじしていた。
「さっきはごめんなさいです!つい面白くてやり過ぎてしまいました……!」
「あっ!いえっ!」
それを見て逆に申し訳なさそうにする輝乃、だが古鳥は違った、
「本当だよ!おまえがイタズラしなけりゃ輝乃は倒れることはなかったんだ!」
あまりの大声に保健室の先生の咳払いが聞こえたので、古鳥はボリュームを下げて、
「輝乃はな、昔から体が弱くて、運動オンチで、気も弱くて、運動オンチで!」
「なんで二度も言ったの」
「だから!」
ぎゅーっとハグする古鳥、保健室の先生は「あらっ」と声を出し、輝乃は鬼灯のように顔を赤くした。
「むっ!?むむむむっ!?」
「こいつはオレが守ってやらなきゃいけないんだ!オレは運動が得意だから、輝乃にできないことをしてやることができて、だから、おまえみたいな知らないやつが輝乃に迷惑かけんじゃない!」
「わーっ!わーっ!恥ずかしいってーっ!!」
「そうだったんですか……」
目を細めるあげは、しかし、
「でも、わたし、輝乃ともっともっとお話ししたいんです!輝乃にはわたしよりもっとヒーロンの才能があって!巻き込んじゃったことを謝りたくて!だからいろいろ話してあげたいんです!ヂバジデとか、そういうことについて!」
「おまえ〜っ!」
春の風がカーテンを揺らす、草木が舞う音を耳に、輝乃は射抜かれたように目を丸くした。
「いいよ古鳥!」
「てるの?」
チワワのように食ってかかりそうな古鳥を輝乃は止めた、彼はそのまま微笑むと、
「えっと、あげは、さん?」
「あげはでいいですよ!」
「分かった、今度の土曜日うちに遊びにきて。今はいろいろ急すぎるから、その時にじっくり話してくれない?」
一瞬、無音のなかを風の音だけがすぎる、輝乃のハッキリとした態度に古鳥は目を丸くし、あげははというと、
「あわわ〜っ!輝乃〜っ!」
「むむっ!?」
「やっ!?」
輝乃に抱きついた、それも古鳥ごと。とうの輝乃は困惑しながらもどこか嬉しそうな顔だったが、巻き込まれた古鳥はというと、
「(やや〜〜っ!!この女なんなんだよ〜っ!!)」
頬を赤に膨らませて悶えていた。
それからしばらくして、古鳥もあげはも教室に戻って残された輝乃。貧血のためベッドから窓の外を見ていると、ふとカーテンが開いて隣のベッドに寝ていた男の子が顔を出した。
「あっ、や、やっぱり起きてた」
「……誰?」
「そ、その、隣でさっきのこと全部聞いてて、なんか、仲いいんだな〜って思って、ふふ」
「あ、うん、そうだね、あげはさ、あげはとは私もちょっと前に会ったばっかりなんだけど、古鳥なんか私のことを心配してくれて、ありがとうっていつも思うというか……あ!? ごめん、うるさかったよね! 今度は静かにするように言っておくから!」
「えへへへ!」
「む?」
笑い出した男の子に呆気にとられた輝乃、男の子は髪に隠された目で輝乃を見つめ、
「きみ、面白い!あ、あのね、ぼく、
「えっ!?あ、はいっ!」
突然の告白に輝乃は手を布団で拭いて男の子、五雨の手を握る。
「こ、こちらこそよろしくお願いします!海宝輝乃って言います!です!」
「うん!よ、よろしくね!それで、その、いつもなにやってるの!?」
「えっ!?えっと、絵を描いたり、本読んだりしてます……」
「ぼくも!それでどんな絵を描いてるの!?」
「そ、そ、それは、そんなたいした絵は……っ!」
「聞かせてよぉ!ねぇ!ねぇ!!」
五雨の猛攻にタジタジとなりながら、笑顔の奥で輝乃はただただ困ることになったのだ。
「(うっわぁ……一気に友だち2人も増えちゃったぁ……!)」
同じ頃、教室の違いで別れることになった古鳥はあげはを指差して、
「言っておくけど!オレはお前のことなんて認めてないんだからな!輝乃がいくら認めてもオレはお前が輝乃の友だちだなんて絶対認めないもん!」
「あはは……」
あげは、あんまりのセリフに苦笑いで、
「えっと、ツンデレさんですか?」
「ややややっ!?はぁっ!?んなことないし!?オレはなぁ!!」
「まあいいです!輝乃のお友だちさん!わたし、佑月あげはって言います!これもなにかの縁、これからよろしくお願いします、です!」
「ややっ!?えっと、い、稲杜古鳥です、よろしく……じゃなくってぇ!!」
ピンポンパンポーン、チャイムの音が鳴り会話は中断。
「あ、それじゃあまた会いましょう!ことり、そうだ、古鳥っち!じゃあ!」
「こ、古鳥っちだぁっ!?」
古鳥の声があげはの背中に溶けて消えた、ふと自分も急がなきゃと思いながらも、心のなかのモヤモヤに悶えながら、
「なんなんだよもうっ!なに言ってんだよオレはもうっ!」
健康診断が終わり、教科書も配布され、あっという間に下校時刻。
そのちょうどギリギリ前、カシャンと校門をママチャリが飛び越え、ゴーグルの反射がカーブミラーに映り込んだ。
「ここがヂストーブを破壊したやつらのハウスっシャね……」
「そこのお前!なんだ!」
その怪しげな男を無視するわけにもいかず声をかける守衛さん、だが、
「ジテンジテンジテン!ジュテーヌ、ムッシュ、最初の実験体はお前っシャ!」
「う、うわぁぁああっ!!??」
またもや保健室、輝乃が五雨の猛攻に目を回していると、
「失礼します!」
大声と一緒にカーテンが開けられる、そこにいたのは赤いメガネをかけた長身の人、そう、そういえば校長の挨拶の時に見たことがある、確か、
「
宙くんがおっきな声で叫んだ、うるさい、すると韋舵先輩も負けない声で、
「覚えていてくれたんだね!いやぁ、嬉しいなぁ!」
なんなのこの2人?
「それで、イダ?先輩はどうしてここに?」
「こほん、倒れた生徒が出たと聞いて、お見舞いに行かなくちゃと思って来たんだ、気づいてやれず申し訳ない!体調は大丈夫かい?」
「ま、まあ、なんとか?」
「だ、大丈夫だと思います……」
「うん!二人とも偉いぞ!よしよし!」
「なにがですかぁ!?」
「偉いから偉いんだ!頭を撫でさせてくれ!」
ガシガシ、強引によしよしされてなんだか不思議な気分。でもちょっと嫌。宙くんもそうだよね、そう思って横目で見ると、
「えへへぇ……先輩ありがとぉございますぅ……♪」
彼は年齢制限がかかりそうな顔をしていた。
水泳部のプール、そよ風に揺れる水面には紺色のキャップを被った古鳥が映っている。口をへの字に曲げ、細めた目の下にため息をついていた。
「(やぁ〜!!なんでこんなモヤモヤすんだよ〜!これってユーウツ?それとも……なにぃ?)」
そのときである、水面の像が崩れ、さざなみが古鳥にかかった。驚いて見ると、なぜか守衛さんがプールの中心で溺れており、しばらく誰も呆気に取られていたが、教師の救助指示で水泳部は動き出した、だが、
「バイシクルクルビーム!」
茂みから飛んできたビームを浴びた水泳教師は消えたかと思うと、更衣室の屋根の上で悶えていた。体が動けないのか痙攣して呻いており、それを見た生徒たちは悲鳴をあげて逃げてゆく。
「バイシクルクルビーム!」
それは他でも同じだった、謎のビームを浴びた生徒や教師は同じような症状で苦しみはじめ、放課後の学校はパニックになっていく。古鳥が目で追うと水泳のゴーグルをつけたママチャリの男が右手の親指と人差し指と小指をあげながら校庭を走っており、思わず首を傾げた。
「なに!?不審者!?」
古鳥、ジャージを羽織り校庭に向かって走ってゆく。
ところ変わって黎明の塔、人々の苦しみを受信したイロの錫杖のテレビが砂嵐を写し、それは次第に自転車の形へとくっきりしていく。それを見てナガレは楽しそうに、
「うん、ヂジテンシャがアンの人間の邪電を発電しはじめたようだね」
「だがこれでは足りない、もっと邪電を集めオンに彩りをもたらせ」
腕を組みながらレイは語る、その先には氷の塊があり、ヂジテンシャの行動が映しだされていた。
走ってやってきたあげは、彼女は目の前の悪行に叫んでいた。
「ヂバジデ!こんなところにまで来ないでください!てか来んな!」
「ヂバジデ?」
「ジテ?どうしてヂバジデの名前を知っているっシャ?」
「それはわたしが、壊獣戦隊ギラギラズだからです!」
あげははヒーロンアイコンを取り出し、持った両手を突き出して回すとまた突き出して叫ぶ。
「ヒーロンチェンジ!」
《リズムスタート!》
あげはの体が緑色のノイズに包まれ、緑色の蝶のようなスーツに変身。そして現れたギラギラした戦士にママチャリの男も古鳥も目を丸くした。
《蝶のように舞え!バタフライスキーンッ!マっちゃえーっ!》
「緑色鱗粉蝶!ギラギラモスフォ!」
「あいつ、変身した!?」
「なるほど、なるほど」
ママチャリの男は笑いながらベルをジリジリ鳴らし、
「お前がヂストーブを壊したやつっシャね!よろしい、ジュテーム、マドモアゼル、ボクは荷電国家ヂバジデ所属ヂジテンシャ、バリバリ
親指と人差し指と小指を立てた男の体にノイズが走り、それが晴れるとカーブしたハンドルのツノを持つ、一つ目の自転車のような怪人、ヂジテンシャとなったのである。
「か、怪物っ!?」
「ジャミンども!」
ヂジテンシャの命令でノイズから現れる戦闘員ジャミンたち、
「ビビビビ!」
「いけぇっ!」
「ギラギラと〜ぶっ壊すっ!えいやーっ!」
うちわ武器「モスファン」を取り出したギラギラモスフォは、踊るような足取りで立ち向かっていく!
学園内、空間に走ったノイズからジャミンらが現れ、生徒たちの悲鳴が上がり始めた。
それは保健室も同じ、廊下の方から悲鳴があがったかと思うとドアを蹴り破ってジャミンが到来、光線銃ビビビームを向けられ、
「「「わーーーっ!!!???」」」
輝乃、五雨、學天の3人は素っ頓狂な悲鳴をあげて逃げた、それをジャミンらも追いかける、全ては人間の悲鳴の電波、邪電を集めるため、彼らに人の心はないのだ。
壊される壁、踏みにじられる花壇、砕け落ちる電灯、混沌のなかを走る3人はジャミンらを撒くと、体育倉庫のなかに隠れてやり過ごした。
「なに!?なんなのあれっ!?」
「だ、大丈夫だ二人とも!なんだか分からないが、生徒会長として、小生が守ってあげるからね!ね!」
混乱する二人を見て黙っていた輝乃だったが、はぁ、とため息ひとつ吐くと、深呼吸2回、ひっひっふー、ひっひっふー、よし、話そう。
「ヂバジデって言うらしいです、あれ」
「知っているのかい海宝くん!?」
「前に少し、襲われたことがあって……」
「だ、大丈夫!?」
「あのとき、クラスメイトのあげはちゃんが助けてくれたんです。ヒーローになって、助けてくれて、私も一緒に戦ったんですよ、だけど」
手を握る、内側にこもる汗、息苦しそうに目を瞑る。
「怖かった、あんな怪物を目の前にして、それもあるけど、なにより、自分が自分じゃないなにかに変わっちゃうみたいで、それが、怖くて……」
「そんな、君たちは……」
震える輝乃の手を五雨は握った、ほのかに生まれる熱、そのまま抱きしめられ、輝乃は目を丸くした。
「みゃっ!?な、なにっ!?」
「怖いならやらなくていいと思う、する必要なんてないよ!だって、あげはさんが戦ってくれたんでしょ?なら、無理にやらなくても……って、ぼ、ぼく、思います……」
「宙くん……」
爆音、体育館の扉が蹴り壊され、ビビビ、響くジャミンらの鳴き声、3人は跳ねて驚き、そして身を寄せ合った。
走りながら、襲いかかるジャミンをモスファンで切り裂いてゆくギラギラモスフォ。ジャミンはバタリバタリと切り捨てられモスフォのリズムもアガってゆく。
「バイシックル!」
大鎌「バイシックル」を持ったヂジテンシャは車輪の幻影をまとった斬撃を飛ばし、それはモスフォがモスファンを煽いで発生させた突風で四散するも、そのあまりの量に煽ぎきれなくなり、そして、
「ジテンジテンジテン!ライ
バイシックルを回転させ起こされる突風、車輪の幻影は量を増し、やがて巨大な車輪がギラギラモスフォを攻撃。爆発が起こり、車輪のひとつがプールに命中。ボロボロと崩れるそれを、古鳥は見て愕然とするしかない。
古鳥の元に転がってくるギラギラモスフォ、彼女は立ち上がるとモスファンを突きつけて吠える。
「クソォ!あげは様を舐めんじゃねぇ!」
「人変わりすぎ……」
そんなことを言いながらモスフォの足を掴む古鳥、驚いたモスフォを睨み、古鳥は彼女のベルトにかかったヒーロンアイコンのひとつを掴む。
「わわわっ!?ちょっ!?なに!?ですか!?」
「うるさい!おい、それがあればオレもヒーローになれんだろ!?だったら変身させてくれよ!!」
「ずっと見てましたよね!?これはゲームなんかじゃないんです!いや、本当はゲームなんだけど……ああもう!とにかく危険です!離れてください!」
「危険かどうか判断すんのはオレなんだよ!あのプールはな、水泳は!オレにとって大事な夢なんだよ!だから守りたいんだよ!オイ!」
「ジーッテッテッテ!!」
バイシックルで襲い掛かられ応戦するギラギラモスフォ、モスファンとバイシックル、鍔迫り合いのまま離れていく彼女たちのいた場所には、ヒーロンアイコンがひとつ残されており、古鳥はそれを掴んだ。
「これ!」
「……水泳!夢なんですよね!」
古鳥は頷き、ヒーロンアイコンを握り締め立ち上がる。
3人を探して体育館をうろつくジャミンたち、それを鍵穴から見ていた學天は唾を飲んで抱き合う2人に話しかけた。
「……ここは小生がなんとかするよ!」
「先輩!?」
「いいんだ、生徒会長として、生徒の危険は見逃しておれない!小生がどうにかしている間に、君たちは早く逃げるんだ!」
シャベルを持って今にも外へ飛び出そうとする學天、それを見る輝乃には、ヂストーブの猛攻に敗れそうになっていたギラギラモスフォが重なる。はじめの一歩、活躍するギラギラザウルス、思い出した輝乃は、
「あああああああ!!!!!!」
飛び出した、學天より先に。そしてジャミンにタックルするが軽くあしらわれ体育館の横を滑り壁に激突する。
「海宝くん!?どうして!?」
「……あのとき、あのとき私は、あげはさんを守ろうと思ったんだ、そう思うと体が勝手に動き出して、今だって同じ!今は先輩たちを守りたい!こんなやつらから!そうしなきゃいられない!!」
戦うギラギラモスフォ、すると、ベルトのヒーロンアイコンのうち一つが赤い光と共に体育館へ向かって飛んでゆく。
「輝乃……!」
輝乃の手のひらに赤い光が集まり、それはヒーロンアイコンになる。握り締めた輝乃はジャミンらを睨みつけると、両手を突き出して回しはじめた。
「なりたい!変わりたい!二度と後悔しないために!」
同じ頃、古鳥もアイコンを持った手を天にかかげると、片方の手で羽ばたくような動作をして自分のなかのリズムを高める。その目にはギラギラモスフォが映っていた。
「絶対に守る!オレの夢を!友達を!好きなことを!そのために!」
「「ヒーロンチェンジッッッ!!」」
ボタンを押した、体育館と校庭、二つの場所で赤と青に光がまたたき、輝乃と古鳥の体にノイズがかかる。
《リズムスタート!》
《火を吹け!怪獣スキーーンッ!ノっちゃえーーーっ!!》
《巻き起こせ!怪鳥スキーーンッ!アガっちゃえーーーっ!!》
晴れる光、驚く怪人ども、輝乃は赤き恐竜のごとき戦士に、古鳥は青き怪鳥のごとき戦士に変わり、心のリズムのまま叫ぶ。
「火吹き壊獣!ギラギラザウルス!」
「風速怪鳥!ギラギラバード!」
モスファンでヂジテンシャを切り裂き、ギラギラモスフォは楽しそうに言い放つ。
「壊獣戦隊!ギラギラズ!ギラギラと〜〜〜〜っ!ぶっコワ〜〜〜っす!!」
それぞれの場所で動きはじめた戦いの音楽、そのなか、ジャミンたちに立ち向かってゆくギラギラザウルスの姿に五雨は目を輝かせていた。
「輝乃くん、カッコいい〜〜〜!」
ビビビームを一斉射するジャミンたち、翼を広げたギラギラバードは飛翔、かわしながら両腕にクロー武器「クロバード」を身につけ急降下しながら次々と攻撃、攻撃を受けたジャミンたちは爆散してゆく。
爆炎の間を突っ切りヂジテンシャへ向かうとクロバードで斬撃、ギラギラモスフォと並び立ち同時に武器を構えた。
「飲み込みが早いじゃないですか!」
「水泳で鍛えててな!」
バイシックルを振り回し車輪幻影をいくつか放つヂジテンシャ、2人は急接近すると斬撃の強襲、行き着く間もなく切り裂くモスファン、アクロバットに飛んで攻撃をかわしながら足蹴りと同時に引き裂くクロバード。風と飛翔、2つが合わさり、ヂジテンシャは劣勢に追い込まれてゆく。
「ジテンジテン!?こんなのありえないッシャ!?」
「古鳥っち!」
「オラァ!」
ギラギラモスフォの起こした風に乗り、ダメ押しとばかりにバタ足の要領で連続キックを食らわせるギラギラバード。蹴り飛ばされたヂジテンシャは地面に背中をつけることになった。
体育館、警棒に変えたビビビームで殴りかかってくるジャミンたち。ギラギラザウルスは走りながらジャミンの攻撃をかわすと次々とザウルソードで切り捨ててゆく。
それでもなお湧き出てくるジャミンたちに囲まれたギラギラザウルスだったが、ザウルソードにヒーロンアイコンをセットし赤いエネルギーを身に宿した。
《テンポアップ!》
「ザウルス
《ノリノリだぜーーーーッッッ!!!》
背中から起こした炎に乗って舞い上がったギラギラザウルス、焼かれて悶えるジャミンたちに急降下すると、炎の刃先で次々と切り捨て、爆発。
ノイズ走る炎のなかにギラギラザウルスはただ1人佇んだ。
「ライ
巨大な車輪を飛んでかわすギラギラバード、モスフォ。彼らもそれぞれの武器にヒーロンアイコンをセットし、青と緑のエネルギーをその身に宿してゆく。
『テンポアップ!』
「「風雲ドリル・花雷
《ノリノリだぜーーーーッッッ!!!》
巻き起こる風に打ち上げられるヂジテンシャ、そこを怪鳥の幻影をまとったバードが両腕のクロバードで斬撃、落下したところを蝶の羽の幻影をまとうモスフォが一刀両断。上半身と下半身が分離しながらノイズのかかったヂジテンシャは断末魔の絶叫、
「シャッ!シャッ!謝罪――ッ!」
そして爆発、青と緑のオーラのなか2人は着地し、労いのアナウンス。
《お疲れ様でしたーーーッッッ!!!》
オン、それを見ていたレイはイロに声をかける。彼女は髪を指に一心に巻き付けていた。
「イロ、ヂバジ電波を」
「いいのですか?アンで起動させればどんな効果がでるか分かりませんが」
「テメェの意見はどうでもいい、レイちゃんは面白いものを見たいのだ」
「了解しました」
イロは錫杖をあげる、すると先端のテレビにアンテナの絵文字が映し出された。
「巨大化成長!ヂバジ電波!送信!」
ヂジテンシャの持っていたガラパゴス携帯「ヂバジデンワ」に着信、なんとか掴んだ上半身はそれを耳に当てる。
「……も……もしもし……っっ!!???」
そのときである、ヂバジデンワから受信されたヂバジ電波がヂジテンシャの体に流れ込み、上半身、下半身、そしてママチャリを含め合体し肥大化。10階建てビルに相当する大きさまで巨大化したのだった。
「ホシガリマセン!カツマデハ!」
「「「うえええええ!!!?????」」」
大きくなったヂジテンシャに驚く学園の一同、彼らの目の前でヂジテンシャはママチャリに跨るとウィリーで街を走りはじめ、どこかしこからも悲鳴が上がる。
「そうだヂジテンシャ!アンの人間から邪電を集めろ!」
「おいおいおい!あ、あれどうすんの!?」
「あげはさん!」
戸惑うギラギラバードたちの元にやってくるギラギラザウルス、その声を聞いてギラギラバードはさらに驚いた。
「や!?あ!?輝乃ッ!?」
「もしかして古鳥?」
そんな彼らに気づいたヂジテンシャ、彼は怒り心頭で。
「よくもやってくれたッシャね!お前たちをプッツリしてやるッシャ!ジュテーム!」
「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい」
巨大ママチャリで迫る巨大ヂジテンシャ、しばらく俯いていたギラギラモスフォだったが、
「仕方がないけど……使うしかない!」
「何を!?」
「爆誕!大壊獣!!」
《ビートアップ!》
ヒーロンアイコンのボタンを押すと、ヂジテンシャのいる空間にノイズが走り、空が七色に染まる。地面が割れ恐竜型の壊獣が、ビルの窓から蝶型の壊獣が、屋上からは鳥型の壊獣が現れヂジテンシャに突進、ママチャリから落ちてしまった。
「「やや(むむ)ーーーーー!!!???」」
「輝乃は恐竜みたいなのに!わたしは蝶みたいなの、古鳥は鳥みたいなのに乗るんです!お願いします!」
「いや、や、乗るってもねぇ!?」
「問答無用!壊獣合身!」
「マッッッッ!!!????」
ザウルス、バード、モスフォの3人は赤青緑の3色の光球に変化。そのままそれぞれの壊獣へ融合。命が宿った壊獣たちはけたたましく吠える。
《灼熱暴君壊獣!ティラーッギラズ!》
恐竜型の壊獣ティラギラズが叫ぶ。炎が口から溢れ出た。
《水圧彗星壊鳥!トリーッギラズ!》
怪鳥型の壊獣トリギラズが翼を開く。水飛沫があたり一面に飛び散った。
《突風虹彩壊蝶!モスーッギラズ!》
蝶型の壊獣モスギラズが羽ばたく。突風が巻き起こった。
「なんだか知らないけど返り討ちにしてやるッシャ……!」
再びママチャリに乗ったヂジテンシャは突進、同じく突進したティラギラズはママチャリごと受け止め、ビルの間から飛んできたトリギラズが翼のカッターで斬撃。怯んだ隙に猛烈なパワーでティラギラズが押し返す。
「ティラノフレイム!」
ティラギラズは口から炎を吐き追い討ち。モスギラズが飛んでくると爆発性の鱗粉を撒きさらにダメージを与え、そこにトリギラズが嘴から流水を放ち吹っ飛ばす。
「壊獣大合体!」
《ティラ!トリ!モス!ミキシング!》
《刻め!大合体!歌え!踊れ!ダイダイ合体!歌え!踊れ!ダイダイ合体!》
生命の神秘、壊獣たちはリズムのままに変形すると合体し、そこにさらに巨大な壊獣が爆誕し遠吠えをあげた。
「「出現!トリオ合体壊獣!キングギラズ!」」
《酒池肉林!キーッング!ギラーーーッッズ!!!フィーバーーーーッッッ!!!》
「うるせぇ!ッシャ!!」
ママチャリからミサイルを発射するヂジテンシャ、しかしキングギラズに避けられ、苛立ちながらペダルを踏む。
充戸の街を舞台に繰り広げられる大チェイス。爆走するヂジテンシャをキングギラズも負けないスピードで追いかけ、どこからともなく取り出したバイシックルで攻撃するヂジテンシャだったが、キングギラズに咥えられ、タックルをくらい何度めの転落、海に落ちて水飛沫をあげた。
「も、もうヤダ……あッ!?」
キングギラズの口に赤、青、緑のエネルギーが集中、どんどん肥大化し眩い光を発しはじめた。
「「トリオ熱線!ギラズビーーーーッム!!!!」」
《ノリノリだぜ〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!!》
3色のビームがヂジテンシャに命中、体に風穴を開けられ、体には再びノイズが走る。
「事典曰く現時点で地球の自転の速さは所により様々、日本だと時速1500キロで、新幹線の5倍くらいの速さだそうッシャ!ジュテーーーーッム!」
言い終わるとヂジテンシャは爆散。爆発から赤、青、緑の3色のオーラが発生し、破壊された街と七色の空はノイズと共に元通りに。
《お疲れ様でしたーーーーーッッッ!!!》
勝利の雄叫びをあげるキングギラズも消滅し、輝乃、古鳥、あげはの3人が戻った、が。
「はぁ……はぁ……疲れ、マシた……」
足から崩れてしまうのだった。
元に戻っていく街、そのなかのマンションの屋上にいた黄色メッシュの少女は、苦々しい表情を浮かべていた。
夕暮れの浜辺、砂削る波、流木、海を眺める輝乃たち。
最初こそ静かにしていた3人だったが、もどかしそうに古鳥が静寂を裂いた。
「や、ヤバかったなぁ!さっきのぉ!オ、オレさ!あのバケモンに睨まれたとき、すっごくビビってさ!その」
そこで一息呑んで、
「輝乃は、ずっとこんなことやってたの?オレに黙って……さ」
「ずっとじゃないよ、この前、入学式の3日前にあげはさんと会って、さっきのやつらに巻き込まれて、それではじめてなったんだ、あれに」
「怖くなかったのか?」
「怖かったよ、あげはさんのことも、今日だって関わるべきじゃないって思ったのに、自分はなにもできないって思うと、悔しくて……気づいたらさ、やっちゃってた、あはは」
「ごめんなさい!」
あげはが頭を下げる、輝乃を気絶させたとき以上の勢いだった。
「わたしが、わたしが輝乃のことを巻き込んだんです!輝乃は怖がってたのに、ヒーロンしよって、勝手に舞い上がって、すいません、自分勝手すぎました……嫌なら嫌でいいんです、わたし1人で戦えばいいことですから……!」
「あ!いやいや!私もそこまで嫌じゃなかったですから!ただ、その、まだ呼び捨ては早いかなって思って、あげはさん、でいいですか?」
「はい……」
煮え切らない態度のあげは、流木に座って足をぶらぶらさせていた古鳥は、はあ、ため息ひとつ吐くと胸をぽん、と叩き、
「……しょ、しょうがないな!」
「古鳥?」
「いいよ、やってやる!ギラギラズってやつ!ヒーロー活動って滅多にできないし、それに、オレも大切なものを守りたいっていうのは本当だから!」
はっ、気づく、輝乃とあげははポカンとしていた。わざとらしい咳払いでお茶を濁して、
「た、ただし水泳の方が優先だからな!だからお前たちのことが心配だとか、そんなことぜんぜん無いんだからな!覚えとけ!」
「こ、古鳥っち〜〜〜!!!!」
「ややっ!?」
真っ赤な古鳥に抱きつくあげは、顔を胸に擦り付けるが、よく見るとあげはは号泣し、ジャージで涙と鼻水を拭いていたのである。
「やややや〜〜〜〜〜〜っっっ!!!?????」
「ずみまぜ〜ん……!わだぢ、がんどうじじゃっでぇ〜〜〜!!!」
「お、おい!てめっ!ふ、拭くな〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!」
「で」
話は3日後に戻る、階段で会話をしていた3人、3日前のことを振り返り、
「なんであそこまで言ってまた
「ダジャレですか?」
「……あ!」
「ふふ、でも、まあそうですね、やっぱり諦めきれなかったので!」
「はぁ?!」
「ほらぁ?古鳥っちもギラギラズになってくれたことですしぃ、こちらとしても才能ある輝乃を逃したくはないって言いますかぁ?ね!だからやりましょうよ!ギラギラズ!」
「おかーさーん、この人怖いよー」
「よしよーし、いいこいいこ」
古鳥に抱きつく輝乃と頭を撫でる古鳥、あげは、それを見てぷうっと頬を膨らませて、
「も〜!2人ばっかり仲良しでズルいです〜!わたしも混ぜてくださ〜い!」
「「むむっ(ややっ)!!??」」
飛びついた!そのまま3人はもみくちゃになってしまい、
「しっし!あっちいけ!」
「い〜や〜で〜す〜!は〜な〜れ〜ま〜せ〜ん!」
「む!2人ともそんな動いた、らぁ!!??」
3人まとめて階段から落ちてしまった、がらがら、どっしゃーん、そのまま下の階で山盛りになってしまい、一番下からうめきが聞こえた。
「うぅ……っ!バリ重っ……!」
「あわわっ!?ごめんなさーーーいっ!!」
蜘蛛の子を散らすように飛び退く3人、するとそこには腰まで届いた黒髪に黄色のメッシュを入れたあの少女がおり、その顔を見てあげは驚く。
「あわわーーっ!もしかしてキングドラゴンちゃんですかーーっ!!??」
「キング?」
「ドラゴン?」
「女の子なのに?」
「貴女は……っ!」
あげはに気づいた少女は彼女のことを睨みつける、視線の先の本人はとぼけた顔で、
「あれ……?わたし、何かしちゃいました……?」
「ッ……!ホワチャァァアアアア!!!!」
竜の逆鱗。あげはの返答を聞いた途端、少女は彼女にドロップキックを繰り出した!!
つづく
おまけ
はい!佑月あげはです!
輝乃と古鳥っちをヒーロンの世界へご招待!だけどなんだか2人ともノリ気じゃなくて……えっ!?輝乃ってゲーム苦手なんですか!?
あーもうっ!古鳥っちのテンションも変ですしぃ!なんかチャイナドレスまで現れるしぃ!
こうなったらわたしがゼロからヒーロン教えてあげるです!
次回「もし佑月あげはがドラゴンのチャイナドレスに狙われたら」
わたしは今、狙われているー!