『柱島泊地 -鉄屑艦隊- 』 艦隊これくしょん二次創作小説   作:龍改二

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第2話です。2日に1話ペースで更新予定です。


第2話. 戦艦・陸奥

 

夕闇が柱島を包み始める頃。 桟橋に、心地よい駆動音と共に叢雲が帰還した。

「……ただいま。言った通り、近海のゴミ掃除は完璧に終わらせてきたわよ」

少しだけ息を弾ませ、額に汗を浮かべた叢雲。被弾こそないものの、初めての実戦と長時間の哨戒で、その小さな身体には確かな疲労が滲んでいた。 しかし、彼女は誇らしげに胸を張り、龍壁に向かって『どう?』とでも言いたげなドヤ顔を向けている。

 

「おかえりなさい、叢雲ちゃん! 完璧な初陣だったわね」

ボイラーの煤で少し顔を汚した明石が、タオルを手に出迎える。

「それでね、提督の指示で……じゃじゃーん! 居住区の入渠施設……つまり『お風呂』を大至急直しておいたの! 北条大将からの貴重な燃料、ちょっとだけ贅沢に使っちゃったけどね」

明石が指差した先、半壊した居住区の奥から、白い湯気と石鹸の微かな香りが漂ってきた。

「お、お風呂……!?」

叢雲は目を丸くし、ポカンと口を開けた。 彼女にとって、帰還後とは『冷たい鉄の作業台で損傷箇所を修理される』だけの時間だと思っていたのだろう。まさか、人間のように温かいお湯で疲れを癒やす場所が用意されているなど、想像もしていなかったのだ。

叢雲は龍壁の方をチラリと見上げ、そしてバッと顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。

「な、なによ……! 私は兵器なんだから、別にお風呂なんか入りたくてウズウズしてたわけじゃないんだからね! ……で、でも」

彼女はモジモジとスカートの裾を弄りながら、蚊の鳴くような声で付け加える。

「……せっかく、あんたが私のために……その、用意してくれたって言うなら。……入ってあげなくもないわ。……ありがと、司令官」

そして、逃げるように居住区の方へと駆け出していった。

 

「あははっ、素直じゃないですねぇ」

明石は笑いながら、龍壁と二人きりになった桟橋で、夜風に吹かれながら海を見つめる。

「……龍壁さん。彼女、きっと自分のことを『戦って沈むだけの存在』だと思ってたはずです。でも今日、あなたが艤装を丁寧に調整して命を守り、帰ってきたら温かいお風呂を用意して待っていた。……彼女の中で、何かが変わり始めたと思いますよ」

 

明石はふと、真剣な顔つきに戻り、手元のタブレットを開いた。

「さて、提督。彼女がゆっくり疲れを癒やしている間に、今後の話をしましょうか。 近海の安全は確保できましたが、この柱島を本格的に立て直すには、まだ戦力も人手も足りません。実は先ほど、本省の通信網から気になる情報を受信したんです」

明石は画面を操作し、二つの情報を提示した。

 

「まず、本土の工廠で、大型艦…それも戦艦の艤装が完成間近らしいです。まだ所属が決まっていないみたいで、適合者を呼んで、この柱島へ着任させられるかもしれません。それと、近海をパトロールした叢雲ちゃんの報告データの中に、民間航路から外れた怪しい輸送船か、貨客船のような船の痕跡がありました。調査すれば、なにか物資が見つかるかもしれません。どちらの情報を優先して調べますか?」

タブレットの画面上には、『所属未定』の文字が添えられた大型艤装のデータと、先ほど叢雲が帰投中に書き上げたであろう、簡素な戦果報告書が浮かび上がっている。

 

「大型艦の艤装か。うちのボロい設備で迎えられるかは分からんが、探りを入れる価値はありそうだな」

「さすが提督、戦力の要といえばやっぱり戦艦ですよね。……ただ、大型艦となると今のうちの設備じゃ、確かに受け入れ体制ギリギリですが」

 

明石はタブレットの画面をスワイプし、暗号化された本省のデータにアクセスする。 流れていく文字列を追っていた彼女の目が、ふと、ある一点で止まった。

「……あ。このデータ……」

明石の明るい声が少しだけトーンダウンし、真剣な、そしてどこか痛ましいものを見るような技術者の顔つきに変わる。

「龍壁さん。本土で艤装の完成を待っている適合者……戦艦『陸奥(むつ)』です」

 

その名を聞いて、龍壁の脳裏にも海軍の負の伝説がよぎった。 海軍最高権力者である南郷元帥が指揮し、多くの艦娘を文字通り『使い捨て』にして海域を奪還した地獄の作戦——『不退転作戦』。

「彼女は、あの不退転作戦の数少ない生き残りです。作戦中この柱島の近海で起きた爆発事故で以前の艤装を完全に失い、本土で新しい艤装の再建造を待機していたようですね。……ようやく完成の目処が立ったみたいです」

 

明石はタブレットを操作しながら、さらに言葉を続ける。

「艦娘は艤装が完成して初めて、適合者を本土から呼んで着任させることができます。彼女は自分が一度死にかけた因縁の場所だからこそ、この柱島への着任を強く望んでいるとか」

 

そこまで説明したところで、明石は大きく息を吐き、いつもの快活な笑顔を作って龍壁に向き直った。

「ビッグ7と呼ばれる最強クラスの戦艦です。彼女が来てくれれば、この泊地の防衛力は飛躍的に跳ね上がりますよ! ……ただ、問題は提督の言う通り『ウチのボロい設備』です」

 

明石は、窓の外に見える無惨に崩落した大型艦用ドックを指差した。

「戦艦サイズの艤装の最終調整を、あの小さな第一ドックでやるのは不可能です。彼女を迎え入れるなら、最低限、あの大型ドックの瓦礫をどかして、巨大な艤装を広げられるだけのスペースを確保しなきゃいけません」

 

明石が腕まくりをして気合を入れたその時、背後の扉がバタンと開き、お風呂上がりで髪からほんのりと湯気を立てた叢雲が執務室に入ってきた。 石鹸の香りを漂わせ、少し頬を紅潮させた彼女は、龍壁と明石のただならぬ雰囲気に首を傾げる。

「……なによ。私がいない間に、随分と難しい顔して話し込んでるじゃない。何か厄介事でも見つけたわけ?」

叢雲を一瞥すると、龍壁は明石に向き直った。

「明石、正式に陸奥の着任要請を出してくれ。そうと決まれば、大型ドックを使えるようにしなきゃならんな。叢雲、手伝ってくれ」

 

「了解です! 善は急げ、ですね」

明石はすぐに通信機へ向かい、本省の回線へ暗号化された要請データを打ち込み始めた。

「えーと……『柱島泊地司令、龍壁古毅の名において、戦艦・陸奥の当泊地への配備を要請する』……と。送信、完了です!」

数分と経たないうちに、通信機から短い電子音が鳴り響く。

「おっ、早っ! 即時受理されましたよ。……本省の連中、あの『不退転作戦』の生き残りをどう扱うか持て余してたみたいですね。艤装と適合者を乗せた特務輸送船が、明日の朝にはここへ到着する手筈になりました!」

 

明石が明るく報告する横で、先ほどまで湯上がりでほんのりと上気していた叢雲の顔が、みるみるうちに引き攣っていく。

「……は? ちょっと、待ちなさいよ!」

叢雲は濡れた髪を拭いていたタオルをバンッと机に叩きつけ、龍壁に詰め寄った。

「私、たった今! あんたが直してくれたお風呂で、死ぬほどサッパリしてきたばっかりなんですけど!? なんで上がって数分で、土方作業の命令が出てるのよ!」

抗議の声を上げる彼女だが、龍壁は既に作業用の手袋をはめ、瓦礫撤去の算段を始めている。それを見た叢雲は『あーもうっ!』と頭を抱えながらも、すぐに龍壁の後を追って執務室を飛び出した。

「……分かったわよ! あんたがどうしてもって言うなら、手伝ってあげるわ! その代わり、後でもう一回お風呂のお湯、沸かし直しなさいよね!」

 

* * *

 

月明かりと、明石が用意したあり合わせの投光器に照らされる大型ドック。 そこでの作業は、まさに元・本廠のエースエンジニアである龍壁の独壇場だった。

「叢雲、その鉄骨は無理に引くな。上のコンクリートが崩れる。右舷の艤装の出力を使って、斜め45度から押し上げてくれ」

「明石、先にコッチを溶接してくれ。……クレーンのワイヤーにキンクがあるな。替えはあるか?」

的確で無駄のない指示。 それに合わせて、叢雲が艤装の圧倒的な馬力を使って巨大な瓦礫を次々と海へ退かし、明石が手際よくドックの基礎フレームを溶接して補強していく。 油と泥にまみれながらも、龍壁の頭の中にある『完璧な大型艦用ドック』の設計図が、現実の空間に急ピッチで描き出されていった。

 

「……ふぅ。やればできるもんね」

夜明け前。すっかり泥だらけになった叢雲が、肩で息をしながらも、綺麗に整地された巨大なドックの床面を見下ろして誇らしげに笑った。

「お疲れ様です、提督!叢雲ちゃんも! これなら、戦艦サイズの艤装を広げても十分なクリアランスが確保できますよ!」

明石も汗を拭いながら、二人に労いの水筒を差し出す。

 

そして——朝靄が柱島の海を白く包み始めた頃。 重々しい汽笛の音と共に、水平線の向こうから一隻の巨大な輸送船が姿を現した。

甲板に積載されているのは、駆逐艦のそれとは比較にならないほど巨大で重厚な、鋼鉄の城とも呼べる戦艦の『艤装』。 そして、タラップが下ろされ、一人の女性がゆっくりと柱島の大地へ降り立った。

 

美しい栗色の髪。豊満な胸元を包む洗練された衣服。 どこか艶やかで、大人の余裕と包容力を感じさせる微笑みを浮かべた彼女は、出迎えた龍壁たちを見てふわりと目を細めた。

 

「あら。あなたが私を呼んでくれた、新しい提督ね?」

彼女はゆっくりと歩み寄り、龍壁の顔を興味深そうに覗き込む。

「私は戦艦、陸奥。……ふふっ、思ったより若い……それに、随分と泥だらけで男らしい提督さんね。こういうの、嫌いじゃないわ」

色気のある声でそう囁いた後、彼女はふと、海風に乗って漂う匂いにピクリと眉を潜めた。 その瞳の奥に、一瞬だけ——紅蓮の炎と、爆発に吹き飛ぶ仲間の姿という『消えないトラウマ』の影がよぎる。

「……あのね、提督。私、着任早々で悪いんだけど、一つだけお願いがあるの」

陸奥は龍壁の顔のすぐ近くまで顔を寄せる。

「火遊びは、あまりしないでね? 私……火薬の匂いや、火の気にはすっごく敏感なの。タバコの火の不始末なんて見つけたら、怒っちゃうわよ?」

少し冗談めかした、しかし底知れぬ真剣さを帯びた声だった。

 

「提督の龍壁だ、よろしく頼む。タバコは……辞めたよ。随分と前にな。だが火の手には十分に気をつけよう。泊地は見ての通りの惨状だが、頼りにしているぞ、陸奥」

龍壁の嘘偽りのない、静かで力強い言葉を聞いて、陸奥の瞳の奥に微かに揺らいでいた『炎の影』は、スッと霧散していった。彼女は少しだけ驚いたように目を丸くし、やがて、心底安堵したような……そして、包容力のある艶やかな微笑みを浮かべる。

「あら……。ふふっ、本当に? それなら安心ね。タバコを吸わない大人の男の人って、素敵だと思うわ。……約束よ、提督。私、あなたを信じるから」

 

陸奥は海風に髪をなびかせながら、龍壁たちが徹夜で泥まみれになりながら切り拓いてくれた大型ドックと、廃墟の泊地を見渡した。

「それにしても、本当に酷い有様ね。……でも、不思議と嫌な気はしないわ。だってここは……。いえ、なんでもないわ」

 

彼女が感慨深げに呟いたその時。 泥だらけのセーラー服の裾をパタパタと払いながら、叢雲がズンズンと陸奥の前に歩み出た。腰に手を当て、持ち前の気の強さで真っ直ぐに見上げる。

「ちょっと、新入り! そこに突っ立って感傷に浸ってないでよね。あんたのそのバカデカい艤装を広げるために、私と司令官が夜通しで泥んこになって瓦礫をどかしたんだから! ビッグ7だか何だか知らないけど、手こずらせたらただじゃおかないわよ!」

 

自分よりも遥かに背が高く、圧倒的な質量を持つ戦艦に対しても一歩も引かない叢雲。 陸奥はそんな彼女の泥だらけの頬を見て、ふわりと優しく目を細めた。

「ふふっ、ごめんなさい。そして、ありがとう。……とても頼もしくて『可愛い先輩』ね。ええ、任せて。あなたたちが作ってくれたこの場所で、私はもう一度、誇り高く戦ってみせるわ」

「か、可愛いって言うな! 私は駆逐艦、叢雲よ! あんたの先輩なんだから、しっかり敬いなさいよね!」

顔を真っ赤にして抗議する叢雲を、陸奥はクスクスと楽しそうに見つめている。

 

「はいはい、感動の対面はその辺にして! 陸奥さん、早くこっちへ!」

明石が、輸送船からクレーンで降ろされつつある巨大な鋼鉄の塊——戦艦の艤装を指差して声を張った。

「本土の工廠で組み上げられた最新型の戦艦艤装……いやぁ、すごい質量と複雑な構造ですね。これを陸奥さんの身体と神経にリンクさせる『火入れ』の最終調整が必要です」

 

明石はタブレットを片手に、少しだけ緊張した面持ちで龍壁を振り返った。

「龍壁さん。駆逐艦の艤装とは比べ物にならない情報量と、機関の出力です。少しでも同調にズレがあれば、彼女の身体がその重圧に耐えきれずに悲鳴を上げます。……主機関の接続と、バイタルラインの最終クリアランス調整。あなたにお願いしてもいいですか?」

陸奥もまた、少しだけ緊張した面持ちで龍壁を見つめている。

「私の新しい身体……提督の手で、目覚めさせてくれるかしら?」

 

龍壁は腕組みをしながら、運び込まれる巨大な艤装をじっと見つめた。

「ああ、大型艦の艤装を触るのは久しぶりだが、任せてくれ。そこに座ってくれ。始めよう」

「ふふっ。頼もしいわね。それじゃあ、少しだけ……私の身体、預けるわ」

龍壁の静かで揺るぎない声に、陸奥は艶やかな笑みを浮かべ、ドックの中央に用意された冷たい作業用の椅子に静かに腰を下ろした。 彼女の華奢な背中と腰回りに、クレーンで慎重に降ろされた巨大な鋼鉄の城——41cm連装砲を備えた戦艦の艤装が、ゆっくりと近づけられていく。

 

龍壁は作業用グローブを外し、素手でその冷たい鋼鉄の表面に触れた。

「……ほう、本土の連中もなかなかいい仕事をするもんだ」

 

設計図通り、寸分の狂いもなく組み上げられた一級品の兵装。 しかし、いかに精巧であっても、そのままではただの『重すぎる鉄の塊』に過ぎない。これを生身の少女のバイタルラインと直結させるのが、工廠エンジニアの最も過酷で、最も重要なたった数ミリの仕事だ。

 

龍壁は艤装の接続部を開き、陸奥の背筋に沿うようにメインケーブルを這わせた。

「……んっ……」

陸奥が微かに眉をひそめ、色っぽい吐息を漏らす。 戦艦クラスの莫大な情報量とエネルギーが、強引に人間の細い神経に流れ込もうとする瞬間。通常であれば、全身を焼き尽くすような激痛と、火花(スパーク)が散るほどの拒絶反応が伴うはずの工程だ。

 

しかし、龍壁はそれを許さなかった。 彼女が『火の気』や『爆発』にトラウマを抱えていることを理解している龍壁は、一切の火花を散らすことなく、極限の集中力でバイタルラインの同調弁をミリ単位で解放していく。 荒れ狂うエネルギーの奔流を、滑らかな川の流れに変えるような、神業とも言える精密な調整。

その指先からは、目の前にいる彼女を『絶対に生かす』という強い意志すら感じさせた。

 

「……嘘。痛く、ない……」

陸奥が驚きに目を見開いた。

「信じられないわ……。これだけの重武装なのに、まるで羽衣でも羽織っているみたい。私の神経の隅々まで、あなたの手が優しく……そう、とても優しく包み込んでくれているみたい……」

彼女は頬を紅潮させ、うっとりとした表情で自身の手に力を込めた。 空気を震わせるような重低音が響き、彼女の背後にそびえる巨大な41cm連装砲が、主の意思に呼応して滑らかに展開する。重心のズレも、駆動系のノイズも一切みられない。

 

「バイタルリンク、完全同調! シンクロ成功、エラー値ゼロ……! うわぁ、信じられない。あの暴れ馬みたいな戦艦の主機関が、たった数分で完全に手懐けられちゃいましたよ!」

手元のタブレットを見ていた明石が、目を丸くして感嘆の声を上げた。

 

「……ふん。言ったでしょ? そいつはただの陰気な男じゃないわ。私の司令官なんだから、これくらい当然よ!」

泥だらけのまま作業を見守っていた叢雲が、なぜか自分が褒められたかのように誇らしげに胸を張ってふんぞり返る。

「ええ、本当に……驚いたわ。あなたみたいな提督に出会えたこと、私の最大の幸運かもしれないわね」

 

陸奥は椅子から立ち上がり、巨大な艤装を背負っているとは思えないほど軽やかな足取りで龍壁に近づいた。 そして、泥と油で汚れた大きな手を両手でそっと包み込み、耳元で甘く囁く。

「ありがとう、提督。この完璧な身体と力で……私、あなたのこと、全力で守ってあげるわね。ふふっ、楽しみにしてて」

大人の色気と圧倒的な威風。 戦艦・陸奥の着任により、昨日までただの廃墟だった柱島泊地は、いまや反撃の狼煙を上げるに足る強固な『城』へと変貌を遂げた。

 

すっかり日の昇った本部棟の執務室。 夜通しの作業を終えた司令官に、明石が淹れた温かい代用コーヒーが差し出された。

「お疲れ様でした、提督。陸奥さんは今、叢雲ちゃんに案内されて居住区のお風呂へ向かいました。……なんだかんだ言って、叢雲ちゃんも頼れるお姉さんができて嬉しそうですよ」

明石はコーヒーの湯気を吹きながら、タブレットを龍壁の机に置いた。

 

「さて。これでウチの防衛力は盤石になりましたが、北条大将からもらった物資も、ドックの拡張と陸奥さんの受け入れでかなり消費してしまいました。……そろそろ、次の手を打ちたいところです」

明石は昨晩保留にしていた情報を、改めて画面に表示する。

「叢雲ちゃんが昨日のパトロールで発見した、『民間航路から外れた怪しい貨客船の痕跡』。戦力に余裕ができた今なら、陸奥さんと叢雲ちゃんの二人を出撃させて、この痕跡を追跡・調査させてもいいと思います」

 

明石は龍壁の顔を真剣な目で見つめた。

「本省の記録にない船です。もしかしたら、はぐれた艦娘か、あるいは深海棲艦の罠か……。どうします、提督? 二人に調査任務を命じますか?」

 

「怪しい輸送船、もしくは貨客船……か。そうだな、二人を向かわせよう。……だが、今は休息が先だ。出撃は午後からとする。俺も少し眠る」

龍壁の妥当な判断に、明石はホッとしたように表情を緩め、パチッとウインクをした。

「了解です!では、午後まで艦隊は待機としましょう。提督も、ソファでゆっくり休んでくださいね」

 

 




ここまでお読みいただきありがとうございます。
次回「第3話. 蘇る翼」は、4/25の18時頃に投稿予定です。
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