仮面ライダーガタック スライムと戦いの神   作:フェンネル

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叶うなら

「どれにしようかな……」

 

ブルムンドでは多くの冒険者たちがどのクエストに行こうかと騒がしく話していた。

その悩んでいる冒険者たちの中に、加賀美はいた。

3人の冒険者パーティーと共に。

 

「カガミはまだCランクなんだろ?だったら魔物の数が少ないやつの方が良いと思うぞ」

 

「そうそう!魔法が使えないんなら余計にね!」

 

「あっしらも協力したいところでやんすが……ギルマスに調査を頼まれてるんで行けないんでやんすよ」

 

彼らはカバル、エレン、ギド。

ブルムンドの冒険者でフューズが度々頭痛を引き起こす要因の、問題児3人組である。

日々クエストを選ぶ加賀美は他の冒険者と交流する機会も多く、中でもこの3人組とはかなりの頻度で出会っていたことから仲良くなったのだ。

 

「また今度、俺らと加賀美の相棒の5人が揃ったらBランクのクエスト行こうぜ!」

 

「その時は私の魔法で完璧にえんごしてみせるんだから!」

 

「あっしの盗賊スキルで先手はバッチリでやんすよ!」

 

今の加賀美にとって、気を抜いて接することができる大切な友人たちだった。

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

「……思えば、カガミがこの世界に来てからですかね」

 

椅子に腰掛けながら、フューズは感慨深そうに言った。

 

「俺は、あなたが気を張らずに過ごせていることが嬉しいです」

 

以前と比べて随分力の抜けた様子の静江を見て、何か良い心の変化があったこと、そしてそれには加賀美が関わっているであろうことを察していたのだ。

 

「カガミは不思議な奴ですよ。あいつの人となりは、他の人間を惹きつける。俺も……あなたも」

 

「うん……そうだね」

 

静江は加賀美の姿を思い浮かべ、唇に触れる。

その表情はとても綺麗なもので。

 

「この口紅ね、新くんがくれたの」

 

静江は思った。

貰った時のことは、生涯忘れないだろうと。

 

「ほぉ、あいつもやりますね」

 

フューズが今度からかってやろうと悪い笑みを浮かべていると、先程の雰囲気から打って変わり、静江は緊張しながら少しの期待も込めて質問した。

 

「や、やっぱり特別な意味とかあるのかな?」

 

その姿は、可愛らしい少女そのものだった。

 

「え?あー……」

 

フューズは答えることを少し躊躇った。

静江たちの世界でどうかは知らないが、この世界に贈り物の意味はしっかりとあるのだ。

 

「あるにはありますけど……」

 

「ど、どんな……?」

 

「あいつは知らないんじゃないですかね?」

 

「うっ……」

 

しかし、異世界に来たての加賀美がそれを知っているとは到底思えなかった。

つまり、意味を込めた贈り物ではない、という事になる。

 

「そ、そうだよね……」

 

貰ったことを喜びつつも、少し肩を落とす静江。

 

「ただ……あいつがシズさんの為に生きてるということはよく知ってますよ」

 

気まずく思ったフューズは視線を逸らしつつ、窓の外でクエストを選ぶために四苦八苦している加賀美を見る。

 

「”あの時”のあいつの言葉、シズさんだってまだ覚えてるでしょう?」

 

その顔は実に楽しそうだった。

 

「あいつはバカだが……誰よりも真っ直ぐで、どこまでもお人好しだ」

 

フューズの言葉を、静江は笑顔で肯定する。

2人にとって加賀美という存在は目が離せない、気にかけたくなるものだった。

 

「元の世界に帰るまで……この世界の嫌な部分は見ないで欲しいものです」

 

「……そうだね」

 

しかし2人は知らなかった。

かつて、加賀美が残酷な運命に巻き込まれていたことを。

加賀美のこれまでの戦いを唯一知っている、静江でさえも。

 

「そういえば、シズさんはどうするんですか?」

 

「どうって?」

 

突然なんのことか分からない話を振られたことで疑問符を浮かべた静江の問いに、フューズは分かりきったように、当たり前のようにこう答えた。

 

「カガミに惚れてるんでしょう?」

 

その言葉は部屋の中でやけに響いた。

静江は理解するのに少々の時間を要した。

フューズはそんな静江の反応を待つ。

双方しばらく無言であり、その間は沈黙が場を支配していた。

 

「……へっ!?」

 

数秒後、静江はあまりの驚きに間の抜けた声を出し、目を見開く。

その顔はまるで林檎のように真っ赤に染まっていた。

 

「……隠せてると思ってたんですか?」

 

フューズはその反応を見て、英雄と言えども鈍い所もあるものだと意外に感じた。

 

「そ、そんなに分かりやすいかな……?」

 

静江は両手を頬に当てて慌てていた。

先日の店員といいフューズといい、ここまで来ると自分の振る舞いに問題があると認めざるを得なかったからだ。

 

「えぇ、まぁ……」

 

「ど、どうしよう……新くんに気づかれてないかな……!?」

 

静江は焦る。

もし加賀美が気付かないふりをしていたなら。

以後どのような顔をして接すれば良いのだろうかと。

 

「そこは大丈夫じゃないですか?」

 

そんな静江を落ち着かせたのはフューズの言葉だった。

 

「あいつも男ですし、気づいてたら何かしらの反応はするものでしょう」

 

「そ、そっか……!」

 

「そもそもあいつは嘘を吐くのが下手なタイプでしょうしね」

 

ならば今のところは安心か、と静江は胸を撫で下ろす。

加賀美に自分の想いが気づかれることを、必要以上に避けようとしているようだった。

 

「その様子だと、伝える気は無いという感じですね」

 

「……うん」

 

このことは、静江自身強く決めていた。

加賀美の優しさに甘えて、この世界に長くいさせてしまうことを避けたかったからだ。

 

「シズさんはそういうタイプだと思ってましたよ」

 

「あはは、さすがだね」

 

「……もう少しくらい、わがままになっても良いと思いますがね」

 

その事は、フューズも薄々感じ取っている。

静江が何においても自分の気持ちを抑えがちなことは、付き合いの長さで知っているからだ。

 

「これでも結構わがままなんだよ?」

 

とはいえ抑えているだけで、抱える思いは確実にあった。

 

「叶うなら、最期まで一緒にいたいって思ってるし」

 

それは、小さな独占欲。

 

「それはまた随分と……」

 

「……これも伝えるつもりはないんだけどね」

 

そんな会話があった事など、加賀美本人は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

ある日、加賀美は静江と共にジュラの大森林にいた。

 

「結局行くことになっちゃったね、大鬼族の里」

 

2人が里に来た理由は戦闘ではなく、あくまで調査。

見れる限りで内情を把握することが目的だった。

つまり大鬼族との接触は必要なく、慎重に立ち回ることが重要になるクエストだった。

このことは、フューズからも釘を刺されている。

主に加賀美が。

 

「わかってると思うけど、危ないことは絶対しちゃダメだからね?」

 

「わ、わかってますよ」

 

「…………」

 

以前勝手に危険なクエストに行こうとしていた手前、静江の視線は実に疑り深いもので。

クエスト中、加賀美は終始静江に監視されてしまっていた。

 

 

 

 

 

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