仮面ライダーガタック スライムと戦いの神   作:フェンネル

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大鬼族の里

フューズの言った通り、魔物の脅威度として大鬼族1人のランクはB。

数いる魔物の中でも個々の強さに関してはかなりの高さである。

まともに戦った場合、普通の冒険者であれば装備を整えるなり強いスキルを保持していなければ怪我は必至の危険な存在なのだ。

 

「うおおおおっ!」

 

そんな存在と、加賀美は戦っていた。

 

「そりゃっ!」

 

玉蹴りで。

今は大鬼族の里の中で、子供達と騒いでいる。

何故こんなことになったのか。

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

「大鬼族って、結構人間っぽいんですね」

 

静江と共に草木に隠れながら、加賀美は言った。

意外にも、和風な造りの里の中で日常を過ごす大鬼族達の風景は、人里と何ら変わりない平和で楽しげなものだった。

 

「でも戦闘力は人間とは比べ物にならないよ。今の新くんだとちょっと厳しいかな?」

 

事実、装備が心許ない加賀美では主に防御に不安があった。

もしも互いに一撃を食らってしまえば、不利になるのはこちらである。

 

「静江さんがくれた魔法道具もありますし、ただじゃやられませんよ!」

 

「(私は、怪我して欲しくないんだけどなぁ……)」

 

静江を守るために身を懸ける加賀美と、そんな加賀美に危険な思いをして欲しくない静江。

2人の思いはすれ違っていた。

 

「(新くんも、1度決めたら頑固だもんね……)」

 

心の中で分かりつつも何とか気づいてくれないものかと視線を向ける。

 

「でも、あんなに楽しそうだと戦う気になりませんね」

 

笑いながらそう言う加賀美の首に、何者かの刃が触れようとしていた。

 

「離れて!」

 

静江は声を荒らげた。

加賀美が反応する前に何者かと加賀美の間に入り、その刃を防ぐ。

 

「ほっほ、やりおる」

 

刃を向けた者の正体は、大鬼族の老人だった。

かなり高齢であろう外見ながら、その剣捌きは正しく達人のそれ。

加賀美では太刀打ちできない相手だった。

 

「(せめて新くんだけでも……!)」

 

静江は剣を構えながら、加賀美をこの場から離れさせる方法を考える。

対する老人は、現状の弱点である加賀美に狙いをつけた。

 

「っ、新く───」

 

それを察知した静江は咄嗟に呼びかけるが、間に合わないことを悟る。

なりふり構っていられなくなってしまった。

 

「(───イフリート!!)」

 

静江の剣に炎が纏われる。

加賀美を守るため、老人の方へ一直線に飛び出す。

一方で老人は先程のように音もなく加賀美の後ろに忍び寄り、横に一閃。

 

「うわっ!」

 

が、加賀美はこれを躱した。

これには老人も目を見開く。

 

「(この小僧……!)」

 

その最中、加賀美は双剣を引き抜く。

老人は加賀美からの反撃に備えて、集中して動きを見る。

 

「(どうくる……!?)」

 

動作の起こりを警戒しているのだ。

しかし。

 

「(妙じゃ……動きが大き過ぎる)」

 

加賀美の動きはあまりにも緩慢かつ無防備で、攻撃性をまるで感じなかった。

 

「っ!!」

 

一方で、どこからか強烈な殺気が全身に降りかかった。

 

「(この娘は───!)」

 

その正体は静江で、老人を塵一つ残さず灰にしようとせんばかりに圧倒的な火力を以て、刃を振るおうとしていた。

 

「(まずい、防御が───)」

 

加賀美の動きに肩透かしを食らった事で反応が一瞬遅れてしまう。

多少のダメージを覚悟して老人が攻撃の隙を狙いすましていると、2人の間に割り込む影が。

 

「静江さん!」

 

それは、武器を持たぬ加賀美だった。

老人を守るように腕を広げている。

 

「っ!」

 

静江は驚きつつも咄嗟に反応したことで刃に纏われて荒ぶる炎も収まり、すんでのところで加賀美を切らずに済んだ。

 

「俺たちに戦う意思が無いことを見せれば、分かってくれますよ」

 

この時の加賀美は、随分と落ち着いていた。

 

「……わかった」

 

静江は剣をしまう。

想像もしていなかった景色に警戒する老人の前で、加賀美は武器を捨てて見せた。

これには老人も混乱した。

 

「お主、何を……」

 

「戦うつもりはないんです。ただ大鬼族の里を見に来ただけで」

 

とても信じられなかった。

しかし、目の前の人間は実際に丸腰になって見せた。

武器を構える自分の前で。

静江も武器を捨ててはいないものの、戦闘の意思は消えていた。

 

「(こやつらは……)」

 

老人は長年生きてきた故に行動の裏を警戒するが、2人の行動が正直なものであると直感で感じ取った。

静江はともかく、加賀美が馬鹿正直過ぎたのだ。

 

「……仕方ないの」

 

結果的に自分を庇ってくれた馬鹿正直な男の行動に免じ、2人を里に連れてくることにした。

 

 

 

 

 

○○○○○

 

 

 

 

 

という出来事の後、里に連れられた加賀美はすぐに大鬼族と打ち解け、静江と共に楽に過ごさせてもらっていた。

今加賀美は子供達と遊び、静江は老人と縁側で話している。

 

「ごめんなさい。あなた達が警戒するのは当然なのに」

 

静江は、老人に刃を向けたことを謝罪した。

 

「ほっほ、構わぬよ。儂とて早とちりした身、おあいこじゃ」

 

戦闘中とは違い、老人は穏やかな雰囲気だった。

先程まで2人の間で散っていた火花は、まるで最初から無かったように消えていた。

 

「あの小僧は無防備過ぎるからの。お嬢さんがあぁなるのも理解できるわい」

 

とはいえ。

 

「まさかあの一撃を避けるとは思わなんだ」

 

「えぇ、私も驚いたわ」

 

2人が思い返すのは、老人の不意打ちを咄嗟に避けた加賀美の姿。

 

「意外と良いものを持ってるかもしれんのう」

 

老人はしごきがいがありそうだと言わんばかりに笑った。

静江も心の中で誇らしくなる。

 

「でも、今の彼は本調子じゃないらしいの」

 

「ほう?気になる言い方ですな」

 

実際、加賀美の慣れ親しんだ武器は双剣であるのは事実。

しかし本当に馴染み深いのは、”あの姿”なのだ。

 

「私もお話で聞いただけだけど、新くんは元々持ってた武器?を無くしてるの。それがあれば結構戦えるって自分で言ってたから」

 

「ふむ……」

 

老人は顎に手をやる。

その武器を携えた加賀美の戦闘を見たくなったのだ。

 

「その武器というのが気になるのう」

 

「ゴツゴツした機械的な帯らしいんだけど、何か知らないかな?」

 

思えば、ここ最近はベルト探しに注力していなかった。

そもそも加賀美が望んでいるわけではないので当然と言えるが。

 

「機械的な帯?はて……」

 

老人は記憶を探る。

機械的な帯、というものには少し引っかかりがあった。

 

「少し時間を頂くぞ」

 

「え?えぇ……」

 

老人は里の大鬼族たちに声をかけ始めた。

静江はその間暇になったことで、なんとなく加賀美の元へ駆け寄った。

 

「うぐぐ……!」

 

「新くん大丈夫?」

 

加賀美は大鬼族の子供達に構い倒され、少し疲弊していた。

今は地面に大の字になって伏している。

 

「よ、余裕ですよ!」

 

「もう、強がるんだから」

 

静江は倒れている加賀美を縁側まで運び、子供達の元へ向かった。

子供達は、すぐに静江にも懐いた。

 

「おねえさんだれー?カガミのともだち?」

 

「え、えっと……うん、お友達だよ」

 

静江がそう答えた瞬間、倒れていたはずの加賀美はばっと起き上がり、静江たちのもとへ大急ぎで向かった。

 

「違うぞ君達!俺と静江さんは相棒だ!」

 

そこは拘るところだろうか?

そう思う静江だったが、相棒という響きは満更でもないので口には出さなかった。

 

「あいぼーってなにー?」

 

「いいか?相棒っていうのは背中を預けて2人で戦う、かっこいい関係だ!」

 

これから加賀美が静江がいかに凄いかを説明しようとした時。

 

「おとうさんとおかあさんみたいだね」

 

子供たちは、純粋に思ったままのことを言った。

 

「えっ!?」

 

しかしそれは、今の静江にとって重大な問題で。

 

「うーん……まぁそうだな!」

 

一方加賀美はおおよそ間違っていないと、いとも簡単に頷いた。

 

「あ、新くん!?」

 

静江は突っ込まずにはいられなかった。

 

「あの子たちが言ってるのは大切な人ってことでしょ?」

 

今、静江の胸中には様々な思いが巡っていた。

そんなことを知るはずもない加賀美だが。

 

「それは俺にとっての静江さんですから」

 

その言葉に嘘偽りは一欠片もなかった。

それを知っている静江だからこそ、みるみるうちに熱くなる身体を止められず。

 

「……きゅう」

 

キャパオーバーしてしまった。

 

「静江さん!?」

 

加賀美は倒れてきた静江を受け止め、大急ぎで家に運び込んだ。

その景色を大鬼族たちと話しながら見ていた老人は一言。

 

「ほっほ、若いのう」

 

達人の目は誤魔化せなかった。

 

 

 

 

 

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