大鬼族の里。
ある倉庫の中で、2人の男が探し物をしていた。
男たちが探しているのはとあるベルト。
それがあれば大切な存在を守る力を得ることができる、大きな力だった。
時は数日前まで遡る。
○○○○○
「爺から聞いたが、不思議な帯を探してるらしいな」
大鬼族の若頭は、そう言って加賀美を倉庫の前に連れていった。
「少し前、爺がここに直していた記憶がある」
あまりにも多くの物が置かれているその倉庫。
視界いっぱいに広がる景色に加賀美は圧倒された。
「み、見た感じ無いけど……」
「……適当に放っていたからな。俺にもどこにあるか分からないんだ」
それを聞いた加賀美は膝をついた。
この中から探すのは、砂場で蟻のコンタクトレンズを探すようなもの。
「よければ俺も手伝うが」
「本当か!?」
しかし思わぬ援軍を得た。
これにより効率も上がることから、多少の希望が見えてきた。
「よーし、絶対見つけるぞー!」
○○○○○
かくして加賀美のベルト捜索は始まったのだが、あまり進捗は良くなかった。
「カガミー!あそんでー!」
「かけっこしよー!」
ベルトを探し始めたは良いものの、大鬼族の子供たちは加賀美を遊びに誘ってくるのだ。
「ちょ、ちょっと待ってくれ皆!」
「コラ、お前達───」
「わかさまもいこーよ!」
「───うおっ!?」
集団で引きずられそうになる加賀美と若。
「うぐぐ……!」
「こ、子供だからと侮った……!」
しかし数の暴力とは残酷なもので、完全に力負けしていた。
加賀美に至っては子供2人に担がれている。
「みんな、邪魔しちゃダメだよ」
しかし、そんな2人を助ける者が。
「し、静江さん……!」
「シズおねえちゃん!」
子供達はすぐ静江の周りに集まった。
「2人は忙しいから、あっちで私と遊ぼう?」
「はーい!」
教員としての経験からか静江は子供の扱いが上手く、集まっていた子供達を引き連れて倉庫から離れた。
倉庫の中はすぐに静かになった。
2人はベルト探しを再開した。
「探してる帯は、一体どういうものなんだ?」
その中で若から、ふとそんな質問が飛んできた。
「あれがあると変身できるんだよ」
「変身?」
「あぁ。結構すごいんだぞ?」
「俺たちが巻いても何にもならなかったが……気になるな」
「巻くだけじゃダメなんだ。もう1つ必要なものがあって───」
加賀美は簡単にベルトの説明をした。
資格ある者でなければ効果を発揮しないこと、得られる力のこと。
「つまり、お前がその資格を持つ者だということか」
「俺の想像してるベルトで間違いなかったらだけどな」
「それにしても変身か……進化とは違うんだな」
「進化?」
若は不思議そうに言った。
加賀美は「進化」という単語が気になった。
「あぁ。知ってると思うが俺たち魔物は名を与えられると進化するんだ」
「あ、聞いたことあるぞ」
「進化の幅はそれぞれだが、中には姿が大きく変わる者もいるらしい」
「なるほどなぁ……大鬼族って進化するとどうなるんだ?」
「俺たちは鬼人になるな」
「なんか強そうだな」
安直な感想だった。
だが間違いでもない。
「皆に名前をつけたらその鬼人になるってことか?」
「名付けた者が強ければな。ま、遠い話だろう」
鬼人。
大鬼族の進化した姿。
いつか見てみたいものだと加賀美は思った。
「名前があれば呼びやすくなるんだけどな」
「人間はそうだろうが、魔物にとって名前は無い方が当然だ。仕方ないことだよ」
「若は名前が欲しいとは思わないのか?」
「前に来た魔人みたいな小物じゃなければ、喜んでつけてもらうんだがな」
「魔人?」
加賀美は思った。
おや?知らない単語が出てきたぞ。
未だに自分はこの世界のことを全然知らないな、と。
「あぁ、急に里に来て「名をやろう」って言ってきた奴がいてな。俺含めて全員から突っぱねられて悪態つきながら帰ってったよ」
若曰く、ベルトはその魔人が去り際に投げつけていったものだという。
ドワーフ王国でベルトを買ったのはそいつだったのかと、加賀美の中で点と点が繋がった。
そして使い物にならなかったので里に捨てていったのだろうと推理する。
「良いのか?チャンスだったんじゃ……」
それはそれとして、大鬼族たちが名を得るチャンスを断ったことを少し不思議に思った。
「言っただろ?小物だって。主に見合わなけりゃこっちだって御免だ」
そもそも大鬼族は戦闘種族。
他種族や人間に傭兵として雇われることもあるので、強い者に従事することに抵抗はない。
ただその魔人が大鬼族たちのお眼鏡にかなわなかっただけなのだ。
「実際俺は、そう強く名を望んでるわけじゃない。機会があれば、程度に思って……お?」
ここで、若は里の中で見かけない形のものを発見した。
「なぁ、これじゃないか?」
「ん?どれ───」
加賀美の目玉が、外国のアニメよろしく飛び出した。
思わずぎょっとする若。
しかしそれも仕方ない反応なのだ。
何故ならば、若が見せたのは機械的な帯。
「そ、それは……!」
何かをはめ込む場所がある。
「ラ、ラ……!」
加賀美にとって見覚えしかないそのベルトは正しく。
「ライダーベルトだあああ!!」
○○○○○
「見つかって良かった……!」
倉庫から慌ただしく出てきた加賀美は、真っ先に静江にその事を伝えた。
「静江さん!」
「うひゃあ!?」
縁側にて休んでいた静江は突然現れた加賀美に驚き、思わず可愛らしい声を出した。
「ベルト、ベルトが見つかりましたよ!」
「ほんと!?」
加賀美が意気揚々とベルトを見せると、静江は拍手を送った。
「見つかって良かったよ……新くんの大事なものだもんね」
「はい!やっとですよ!」
静江はベルトをまじまじと見つめる。
確かに、真ん中には何かをはめ込む場所があった。
「ね、前に言ってた姿に変身ってできるのかな?」
これを見ると、自然と加賀美の言っていた姿が気になってしまう。
そんな静江に対して。
「ふっふっふ、後で見せてあげますよ!」
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「ほっほ、見つかって何よりじゃわい」
「爺が適当に片付けてなければもっと早く見つかったんだがな」
少し疲れた様子の若。
「若よ、いじめてくださいますな。その日中に見つけるとは思いませんでしたぞ」
「偶然だ。それより……」
「うむ、あの帯の力が気になるところですじゃ」
これは若と老人だけでなく、加賀美の報告を聞いた大鬼族たちはベルトの使い方が気になったようで、外に集まってベルトを巻いている加賀美に注目していた。
「よーし!」
当の加賀美はやっと来たこの時を待ちわびていたようで、はしゃぐ気持ちを抑えているものの、口元が緩みきっていた。
「加賀美新、変身します!」